出演キャスト様 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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役名 | 番号 | 台詞 | 注釈 |
(みぎわと汀が部屋に飛び込むと、そこは血の海になっていた。 捕虜を含め、杯組、そして水輪の者も何人も切られて死んでいる。 汀たちが思わず立ちすくんでいると、奥に転々と血の続く後がある。 辿っていくとそれは、瀧子の部屋へと続いていた) |
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汀 | 001_001 | 「!!」 | |
みぎわ | 002_001 | 「!!」 | |
みぎわ | 003_002 | 「なっ……なによこれ……みんな殺されてるの!?なんで……!」 | |
(何人か水輪本家の仲間も死んでいる。 年長の男性に駆け寄り体を揺さぶるが、すでに死んでいる) |
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汀 | 004_002 | 「濠!濠ッ!!――ダメだ……ッ……死んでる――」 | |
(倒れた大人たちの中に、小さな子どもを発見) | |||
みぎわ | 005_003 | 「――洋汰!!」 | |
汀 | 006_003 | 「そんな……っ、こんな子どもまで!」 | |
みぎわ | 007_004 | 「洋汰っ、洋汰――!」 | |
汀 | 008_004 | 「(ハッとして)みぎわ!」 | |
みぎわ | 009_005 | 「えっ」 | |
潤河 | 010_001 | 「(ひゅう……)」 | |
みぎわ | 011_006 | 「(ハッと)潤河!!まだ息がある!」 | |
(駆け寄る) | |||
みぎわ | 012_007 | 「潤河!いったいなにが――」 | |
潤河 | 013_002 | 「――……すい……じ、んが……」 | |
みぎわ | 014_008 | 「水神……?瀧子様のこと!?」 | |
潤河 | 015_003 | 「……神が――降りて――……み、んな……を………………(手から力が抜ける)」 | |
(みぎわ、潤河を抱え) | |||
みぎわ | 016_009 | 「潤河…!…潤河!ヤダ…ちょっと……目を開けてよ!!」 | |
汀 | 017_005 | 「なん……なんだよ、これ……ッ」 | |
みぎわ | 018_010 | 「……(ハッとして)……滴は!?漣やこさめは!?みんな無事だよね!?」 | |
汀 | 019_006 | 「……血が……こっちに続いてる」 | |
みぎわ | 020_011 | 「!(その方向を確認して)……ね、ねえ……この先って、瀧子様の部屋だ」 | |
汀 | 021_007 | 「――みぎわ。水輪の誰かを探してきてくれ」 | |
みぎわ | 022_012 | 「で、でも、本家のみんなのほとんどが……っ」 | |
汀 | 023_008 | 「まだ親父様がいる。滴がいる、泪が、漣が、こさめがいる。とにかく、誰でもいい、誰か探してきてくれ。俺は――この後を追ってみる」 | |
みぎわ | 024_013 | 「わ、わかった……っ、必ずみんなを探してくる――汀、気をつけて!!」 | |
汀 | 025_009 | 「(頷く)」 | |
【みぎわ、走り去る】 | |||
(汀、そっと窺うと、瀧子の部屋の中にまで血が続いている。 そっと歩いていくと、瀧子の部屋の奥に、隠し扉が開いているのを見つけた) |
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汀 | 026_010 | 「隠し扉……!(すん、と鼻を動かし)潮の香りがする……。瀧子様の部屋は、海に通じてるって言われてたけど、本当だったんだな……」 | |
(気配を殺しながら、そっと扉を潜ると、下り階段。 ゆっくりと階段を下りていくと、その先は広くなっていて、人影が見えた) |
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汀 | 027_011 | 「――(息を詰める)」 | |
瀧子 | 028_001 | 「――……愚(おろ)かな。人の子よ。夢幻(ゆめまぼろし)にすがりつく己(おのれ)の手が、血にまみれたことに気づけぬのか。力など、所詮(しょせん)はまやかしに過ぎぬ。終焉(しゅうえん)を受け入れることこそが、この瀧子の意志」 | |
滴 | 029_001 | 「――それが……それがあなた様のお言葉だなどと……我は――信じぬ!!」 | |
【ザシュウ!!】 | |||
汀 | 030_012 | 「!!」 | |
(一番奥の中央、一段高くなったその上座では、瀧子が倒れているのが見えた。 そして。その傍に立つのは、滴。手には、血にぬれた槍を握っている) |
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汀 | 031_013 | 「滴!」 | |
【駆け寄る】 | |||
汀 | 032_014 | 「――滴!無事だったのか!なにがあった!!どうして瀧子様を……ッ!!」 | |
滴 | 033_002 | 「(わなわなと震え、青ざめている)」 | |
汀 | 034_015 | 「滴!!」 | |
滴 | 035_003 | 「――た……瀧子様が……っ、神降ろしの儀に、……失敗したのだ……!器に収めることができなければ、神はただの強大な力に過ぎない。神の力は、瀧子様の御身を奪い、その体を使って暴走して――そして、……そして、次々にみなを……!!」 | |
滴 | 036_004 | 「濠も……ッ潤河も洋汰も……ッ!!みな助けられなかった……!!」 | |
滴 | 037_005 | 「こうするしか……、こうするしかなかった……!瀧子様をとめるには、……こうするしか……!!(槍を握る手がぶるぶる震えている)」 | |
汀 | 038_016 | 「滴!なんで神降ろしの儀なんてやったんだ!?誰の指示だ!」 | |
滴 | 039_006 | 「――神を……降ろせなければ――なんのための巫女だ」 | |
汀 | 040_017 | 「滴!!答えるんだ、これはいったい、誰の指示だ!」 | |
滴 | 041_007 | 「…………時期だ」 | |
汀 | 042_018 | 「はっ・・・?」 | |
滴 | 043_008 | 「時期が来た、と、仰られたのだ」 | |
汀 | 044_019 | 「時期って……なんの」 | |
滴 | 045_009 | 「水輪が起って百余年――頃合だと――頃合だと仰られた――」 | |
汀 | 046_020 | 「だから頃合って、なんのだ!!」 | |
滴 | 047_010 | 「神を、神の力をその身に下ろすのだ!!そして、瀧子様は――否、この水輪は、真の神の一族となろう!!」 | |
汀 | 048_021 | 「しずく・・・おまえ、なにを言って・・・」 | |
瀧子 | 049_002 | 「――この瀧子と、かわらんとしたか、滴よ……」 | |
汀 | 050_022 | 「瀧子様!!まだ生きて……!!」 | |
滴 | 051_011 | 「――」 | |
瀧子 | 052_003 | 「そなたが――そなたが、楔(くさび)、か――?……神の力など……、竜神の子だなどと……、そんなものは結局、何の意味も持たぬものであった……この一族を――……そなたが終わらせるか――しずく――」 | |
滴 | 053_012 | 「終わらせる……?終わらせるだと!?この水輪を終わらせるなどと我は許さぬ!決して許さぬ!それが瀧子様のご意志であろうと、我は認めぬ――!」 | |
汀 | 054_023 | 「滴……!!」 | |
滴 | 055_013 | 「竜神とはかくも無力なものか!?己の身に降りかかる災厄すら、他者に守られることでしか払えぬ――――否、神の力とはそのようなものではない……この地を育み、波を操り、水輪を未来永劫守り生かし続けるもの!それができぬとは、なにが竜神の巫女か!――瀧子様が出来ぬのならば、我が代わりに竜神を身に受けようぞ。神降ろしの儀はこのまま続ける。我が神となる――!」 | |
比奈伎 | 056_001 | 「――これが竜神の力の末路か」 | |
汀 | 057_024 | 「!」 | |
(音もなく、背後の鬼の面をつけた青年が立っていた) | |||
汀 | 058_025 | 「あんた、鬼火の……!」 | |
滴 | 059_014 | 「――っ!」 | |
(その瞬間、滴の腕がしなって、汀を攻撃する。 普段の滴では考えられないほどの攻撃で、汀の目には見えなかった。 汀の目の前で、滴の槍が、比奈伎の刀によって受け止められる) |
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比奈伎 | 060_002 | 「――ッ」 | |
【ガキーン!!】 | |||
汀 | 061_026 | 「!?(かばわれた事に気づき)ッ、何故かばう!?」 | |
比奈伎 | 062_003 | 「(その力を受けたまま)――神の力とやらは俺が引き受ける。おまえは外へ」 | |
汀 | 063_027 | 「瀧子様を……滴をこのまま放っておけって言うのか!?」 | |
比奈伎 | 064_004 | 「落ち着け。竜神の子と名乗る水輪の者よ。おまえの技は人の技だ。だから、神には通じない」 | |
汀 | 065_028 | 「……っ俺は……俺たちは…………竜神の子なんかじゃ、なかった…………」 | |
比奈伎 | 066_005 | 「だが――、神には通じなくとも、人には通じる」 | |
汀 | 067_029 | 「っ!」 | |
比奈伎 | 068_006 | 「おまえはこれまで、なんのために戦ってきた?これから先は、なんのために戦う?――なぜ、誰のために」 | |
汀 | 069_030 | 「俺は……」 | |
比奈伎 | 070_007 | 「……」 | |
汀 | 071_031 | 「俺は……、――仲間を救いたい」 | |
比奈伎 | 072_008 | 「(ふと目を細めて)おまえが救うべき仲間は、もうここにはいない」 | |
汀 | 073_032 | 「――」 | |
比奈伎 | 074_009 | 「いけ!」 | |
汀 | 075_033 | 「っ(身を翻す)」 | |
【汀、走り去る】 | |||
【比奈伎のいた場所に槍が突き刺さる】 | |||
比奈伎 | 076_010 | 「っ」 | |
滴 | 077_015 | 「邪魔をするな、鬼の子らよ!我が神の力をその身に受けたいか!」 | |
比奈伎 | 078_011 | 「――俺は、神の力など信じない」 | |
滴 | 079_016 | 「愚弄するか!」 | |
比奈伎 | 080_012 | 「人の世に、神の力など存在しない」 | |
滴 | 081_017 | 「黙れ……ッ」 | |
比奈伎 | 082_013 | 「おまえが手に入れたかった神の力とは、人の心をなくしてまでも手に入れるほど価値のあるものか!?」 | |
滴 | 083_018 | 「黙れえええ!」 | |
比奈伎 | 084_014 | 「滴――」 | |
滴 | 085_019 | 「――」 | |
瀧子 | 086_004 | 「(E)――滴」 | |
比奈伎 | 087_015 | 「滴。大河の一滴をなすべき存在」 | |
瀧子 | 088_005 | 「(E)よき名じゃ。その名の通り、そなたはこの大河(たいが)をなす、尊(とうと)きひと滴(しずく)となろうな」 | |
滴 | 089_020 | 「(よろめく)……たきこ、さま」 | |
瀧子 | 090_006 | 「(E)滴。よき名じゃ……」 | |
滴 | 091_021 | 「あ……あ……っ」 | |
比奈伎 | 092_016 | 「――かつて……。巫女姫に竜神が降り、その力で一族を守ると信じられていた。だがそれは、滅びかけた一族の明日への希望が妄念となって、たった一人の女に背負わされただけだった。女はただ、神であれ、力ある存在であれと押し付けられ、『人でないもの』として扱われるようになったにすぎない――」 | |
滴 | 093_022 | 「……」 | |
比奈伎 | 094_017 | 「その結果として、一族が永らえたことが、『神の力』に対しての妄念に拍車をかけた。――だが。その『竜神の力』とやらを守るために、一族が行ったことはなんだ?一族を守るという名目で、どれだけの血が流れたか……――おまえが本当に手に入れたかったのは、血の海などではないはずだ」 | |
滴 | 095_023 | 「…………………………神殺しは大罪――ならば、我は命を持って贖(あがな)おう。だが我はこの身をもって竜神となろう!神にあだなす者は、その命を持って贖(あがな)うべし。ゆえに、我に逆らうのならばそなたもその命で贖え!」 | |
比奈伎 | 096_018 | 「――……退(しりぞ)かないか」 | |
滴 | 097_024 | 「退(ひ)かぬ!」 | |
佐久弥 | 098_001 | 「(そっと)――比奈伎」 | |
比奈伎 | 099_019 | 「(苦く)――俺がやると言っただろ。……一応、いまは頭領代理だからな」 | |
滴 | 100_025 | 「おおおおおおおおッ!!(槍を振るう)」 | |
比奈伎 | 101_020 | 「!!(刀で受ける)これが、女の力か……ッ」 | |
滴 | 102_026 | 「ははは!愚かな!!これが神の力よ!!」 | |
比奈伎 | 103_021 | 「愚かはどちらだ!!――『神の力』という幻に翻弄され、自らヒトであることを捨てるとは」 | |
(瞬間、滴の脳裏に、みんなの呼ぶ姿が) | |||
漁火 | 104_001 | 「滴」 | |
泪 | 105_001 | 「滴」 | |
漣 | 106_001 | 「滴」 | |
こさめ | 107_001 | 「滴」 | |
みぎわ | 108_014 | 「滴」 | |
汀 | 109_034 | 「滴」 | |
潤河 | 110_004 | 「滴さん」 | |
濠 | 111_001 | 「滴」 | |
洋汰 | 112_001 | 「滴ねえちゃん」 | |
瀧子 | 113_007 | 「滴――」 | |
【――ドシュ……!!】 | |||
滴 | 114_027 | 「あ――……(ぽた、・・・ぽた)」 | |
比奈伎 | 115_022 | 「――おまえは――『神』になる必要など、少しもなかった。そのままのおまえを、みな、愛していただろうに――……」 | |
滴 | 116_028 | 「…………」 | |
【ずる……とさ。】 | |||
佐久弥 | 117_002 | 「――比奈」 | |
比奈伎 | 118_023 | 「――(息を吐いて)……神の力、か……」 | |
佐久弥 | 119_003 | 「比奈伎?」 | |
比奈伎 | 120_024 | 「……案外、本当にそうだったのかもしれない。あの女は本気で――その力を信じていた。だからこその、……」 | |
佐久弥 | 121_004 | 「神の怒りに触れた者はみな殺された――。本来の彼女の力量では、水輪の者たちまでもを殺すことは出来なかったはず。……そう言うのなら、彼女はあの瞬間、本当に竜神だったんだろう」 | |
比奈伎 | 122_025 | 「ああ…………」 | |
(血まみれで倒れていた瀧子に近づき、体を支える比奈伎。瀧子はもう虫の息だ) | |||
比奈伎 | 123_026 | 「(抱き起こして、少し揺する)――瀧殿。瀧殿」 | |
瀧子 | 124_008 | 「(ひゅう……)………………鬼の……面……。そうか……そなた、……鬼火、の……」 | |
比奈伎 | 125_027 | 「はい」 | |
瀧子 | 126_009 | 「(ひゅぅ……)……やっと…………終わった、かえ……」 | |
比奈伎 | 127_028 | 「はい。あとは、人の子らが決着をつけるでしょう」 | |
瀧子 | 128_010 | 「……そうか」 | |
(瀧子、どこか遠くを見つめる) | |||
瀧子 | 129_011 | 「百余年(ひゃくよねん)も続く、水輪の一族――。竜神の威(い)を借りて他者(たしゃ)を喰(く)らい、この地に巣食(すく)ってきた、歪(ゆが)んだ一族……。どこかで、終止(しゅうし)符(ふ)を打たねばならなかった」 | |
佐久弥 | 130_005 | 「――ありもしない竜神の影に怯え、ここでは、多くの血が流れすぎた」 | |
瀧子 | 131_012 | 「(力なく頷く)……竜神など、幻想に過ぎない――そう伝えるには、この海では、神への畏(おそ)れが浸透(しんとう)しすぎていた……」 | |
比奈伎 | 132_029 | 「竜神を畏れる一方で、浅はかで単純な権力闘争が耐えなかった……。竜神はもはや、逆らうものの口を塞ぐためだけに利用されていたにすぎない」 | |
瀧子 | 133_013 | 「…………そうじゃ…………。竜神のため――否(いな)――、この瀧子のためと――幾人(いくにん)が殺されたか――……もはや数え切れぬほど………………。だが――」 | |
比奈伎 | 134_030 | 「――瀧殿」 | |
(そこに、傷を負った漁火が現れる) | |||
佐久弥 | 135_006 | 「――(漁火の気配に気づく)」 | |
漁火 | 136_002 | 「――瀧子様」 | |
比奈伎 | 137_031 | 「……長殿」 | |
瀧子 | 138_014 | 「……(じっと漁火を見つめる)……漁火、そなた」 | |
漁火 | 139_003 | 「――それでも――わしは……自分は…………」 | |
(漁火の姿に、かつて、若かりし頃の瀧子と袂をわかつた、BBBの姿が) | |||
漁火 | 140_004 | 「自分は、誓った――」 | |
BBB | 141_001 | 「自分は、誓った――」 | |
瀧子 | 142_015 | 「――!」 | |
AAA | 143_001 | 「――!」 | |
(それに答えるかのように、瀧子も若かりし頃の姿へ) | |||
AAA | 144_002 | 「……ああ…………そなたは――!」 | |
BBB | 145_002 | 「たとえ姿形を変えようとも、必ず、傍にあると。そして――」 | |
AAA | 146_003 | 「そなた…………」 | |
BBB | 147_003 | 「そして、『楔』になると」 | |
AAA | 148_004 | 「……そうか……。そなたは――……あなたは、ずっと、私の傍(そば)に居(い)てくれたの――」 | |
BBB | 149_004 | 「ずっと……傍にあった――。一族と――そして、貴様にとっての楔となるため」 | |
AAA | 150_005 | 「ああ……――、これで……やっと、……人の子として死ねるというもの……」 | |
AAA | 151_006 | 「長かった……とても……とても…………。……この、……数十年…………――」 | |
比奈伎 | 152_032 | 「――」 | |
(息を引き取った一人の老婆の遺体を、そっと横たえる。 彼女の死をもって、ここに、文字通り水輪一族は終わりを迎えた) |
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(もうBBBの気配はない) | |||
漁火 | 153_005 | 「(沈うつな溜息)……皮肉なもんだな。ヒトによって無理矢理ヒトの心を奪われ、神にされた瀧子様と。自らの意思でヒトの心を捨てて神を得ようとした滴と――」 | |
佐久弥 | 154_007 | 「……けれど。そのどちらもが、結局は――ヒトの選んだ道だ」 | |
比奈伎 | 155_033 | 「(静かに頷く)――これで……、これまで水輪一族の根幹だった、神の力は消えた。あとは、水輪の者が、人として、自分たちで決着をつけるだけだ」 | |
佐久弥 | 156_008 | 「(小さく頷いて)もう、竜神の力は通用しない。ただ人だったということが、彼らも、嫌というほど感じているだろうね……」 | |
比奈伎 | 157_034 | 「――それでも。彼らが自分たちで納めなければならない」 | |
漁火 | 158_006 | 「……ああ。そうだ」 | |
【漁火、武器を握って、みなの元へ向かう】 | |||
比奈伎 | 159_035 | 「――水輪にはつらい戦いになるだろうな」 | |
佐久弥 | 160_009 | 「……そうだね」 | |
(比奈伎、刀を握りなおして部屋を出て行こうとする) | |||
佐久弥 | 161_010 | 「……って、どこに行くの?比奈伎」 | |
比奈伎 | 162_036 | 「見ているだけというのも性に合わないからな」 | |
佐久弥 | 163_011 | 「駄目だよ」 | |
比奈伎 | 164_037 | 「佐久弥」 | |
佐久弥 | 165_012 | 「駄目」 | |
比奈伎 | 166_038 | 「――……」 | |
佐久弥 | 167_013 | 「比奈」 | |
比奈伎 | 168_039 | 「……(むぅ……)わかったよ」 | |
【チャキ】 | |||
比奈伎 | 169_040 | 「・・・って佐久弥、おまえこそどこに行くつもりだ」 | |
佐久弥 | 170_014 | 「どこって、もちろん決まってるだろう?」 | |
比奈伎 | 171_041 | 「……おまえ――今俺に駄目だって言ったばかりだろう」 | |
佐久弥 | 172_015 | 「だって、比奈伎は今、鬼火頭領の名代でここにいるんだよ。だから駄目」 | |
比奈伎 | 173_042 | 「おまえだって……」 | |
佐久弥 | 174_016 | 「ふふ。私は下っ端だから。下っ端が勝手にやることなら、きっと――神様も見逃してくれると思うよ」 | |
【颯爽と去っていく】 | |||
比奈伎 | 175_043 | 「(半ば呆れて)……なにが下っ端だ……、――鬼火随一の使い手が」 |