役名 |
番号 |
台詞 | 注釈 |
夜紫乃 |
001_001 |
「水輪の頭領が消えた!?」 |
|
比奈伎 |
002_001 |
「……」 |
|
佐久弥 |
003_001 |
「……嫌な空気だね」 |
|
比奈伎 |
004_002 |
「佐久弥」 |
|
佐久弥 |
005_002 |
「水輪は、一枚岩じゃないのかもしれない」 |
|
比奈伎 |
006_003 |
「お前もそう思うか」 |
|
佐久弥 |
007_003 |
「水流の中で一筋だけ澱んだところがある。そんな感じがする」 |
|
比奈伎 |
008_004 |
「…どう出るかな……。罠だと思うか?」 |
|
佐久弥 |
009_004 |
「それはまだ言い切れないな」 |
|
夜紫乃 |
010_002 |
「水輪の本家の中でも特に上の者を選んで、これ、かぁ。ってことはやっぱり、身内の中に、水輪の長と反する者がいるってことだろ。長の思惑(おもわく)を――覆(くつがえ)そうとしてる、もしくは、とりあえず邪魔をしてる。――例の書き付けの結果は?」 |
|
佐久弥 |
011_005 |
「どうやら絞れそうだ。それも、本家の中で」 |
|
夜紫乃 |
012_003 |
「ああ……そっか。……じゃあ、水輪の長の希望が、一つ減っちゃったね」 |
|
比奈伎 |
013_005 |
「………(溜息)」 |
|
佐久弥 |
014_006 |
「比奈」 |
|
比奈伎 |
015_006 |
「出来る限り穏便に済ませろといわれていたが………難しそうだな。瀧子殿のほうは」 |
|
夜紫乃 |
016_004 |
「また会合があったよ。杯組の一人が急に瀧子様に切りかかったって言って、大騒ぎになってた。切りかかった原因は不明。……これって、どういうことだろ」 |
|
比奈伎 |
017_007 |
「……」 |
|
夜紫乃 |
018_005 |
「瀧子様って、水輪一族を治めてるって言うから、朱音さまみたいに強いのかと思ってたけど……そうじゃないんだね。巫女さまって、そういうもの?」 |
|
佐久弥 |
019_007 |
「私たちと少し違うのは、そこだと思う。瀧子様は巫女で、その身体には水神……竜が降りるんだ。少なくともそれは……偽りではなく」 |
|
夜紫乃 |
020_006 |
「神様が近くにいるってこと?それって、宗教か何か?」 |
|
佐久弥 |
021_008 |
「それも少し違うと思う…。彼らは確かに水神を崇めてはいるけれど…まだ結論は出せないな」 |
|
夜紫乃 |
022_007 |
「――で、どうすんの?比奈伎。とりあえず朱音さまに報(しら)せを飛ばす?」 |
|
比奈伎 |
023_008 |
「――そうだな。この様子だと、いつ大嵐になるかわからない。お頭には少し足を速めてもらうべきだろう。それから、待機組には、武器の準備を進め、こちらに合流するように伝えてくれ」 |
|
夜紫乃 |
024_008 |
「りょーかい!(行きかける)」 |
|
佐久弥 |
025_009 |
「夜紫乃!」 |
|
夜紫乃 |
026_009 |
「なに、佐久弥」 |
|
佐久弥 |
027_010 |
「お頭への報せは伊織に任せて、すぐに戻って。いま、こちらの手を減らすわけにはいかないから。それから、亜夏刃にあの武器を借りるのを忘れないでね」 |
|
夜紫乃 |
028_010 |
「ん、わかってる!」 |
|
|
|
【ザッと消える】 |
|
比奈伎 |
029_009 |
「――杯組の男の乱心の話……どう見る?」 |
|
佐久弥 |
030_011 |
「いまはまだ。……でも、おそらく、人の手によるものだと思う」 |
|
比奈伎 |
031_010 |
「操るか、扇動するかして、男を動かしたと?」 |
|
佐久弥 |
032_012 |
「たぶんね。薬か、そういう技なのかはまだわからない。忍には、そういった術があるという話だけれど」 |
|
比奈伎 |
033_011 |
「ああ。おそらく、『なにか』を見極めるために利用されたんだろう。それから……」 |
|
佐久弥 |
034_013 |
「なに?」 |
|
比奈伎 |
035_012 |
「神の力は、俺が引き受ける。手出し無用だぞ、佐久弥」 |
|
佐久弥 |
036_014 |
「――それは」 |
|
比奈伎 |
037_013 |
「俺は、頭領の名代として出向く――とすれば、それが最良だ」 |
|
佐久弥 |
038_015 |
「比奈伎」 |
|
比奈伎 |
039_014 |
「俺に無理矢理、頭領代理を押し付けたのは朱音だぞ。ならばこれは、朱音の意志も同じ――違うか?」 |
|
佐久弥 |
040_016 |
「……」 |
|
比奈伎 |
041_015 |
「佐久弥」 |
|
佐久弥 |
042_017 |
「…」 |
|
比奈伎 |
043_016 |
「…どうでも、だめか」 |
|
佐久弥 |
044_018 |
「――…。…(ふぅ)……比奈。その聞き方はずるいな(苦笑)」 |
|
比奈伎 |
045_017 |
「そうかな」 |
|
佐久弥 |
046_019 |
「そういう言い方、朱音そっくりだよ」 |
|
比奈伎 |
047_018 |
「え――」 |
|
佐久弥 |
048_020 |
「それなら――。水輪の長の願いを、朱音自身が叶えたかったとして、それは何故だと思う?」 |
|
比奈伎 |
049_019 |
「それは……朱音の友人だろうから」 |
|
佐久弥 |
050_021 |
「うん。朱音にとって大切な存在には違いないからね。それに――私も、あの二人は似合いだと思ったよ。朱音も、海をすごく気に入っていたし、ここにこのまま居つくことも考えてた」 |
|
比奈伎 |
051_020 |
「!そ――」(そんなことが!?) |
|
佐久弥 |
052_022 |
「冗談だけど」 |
|
比奈伎 |
053_021 |
「こ――!」(こんなときに!!) |
|
佐久弥 |
054_023 |
「……くすっ」 |
|
比奈伎 |
055_022 |
「………ッ、……おまえのほうがずるいだろ!」 |
|
佐久弥 |
056_024 |
「(くすくす)そうかな」 |
|
(と、そこに――) |
夜紫乃 |
057_011 |
「たっだいま!」 |
|
比奈伎 |
058_023 |
「っ(らしからずちょっとドキッと)」 |
|
夜紫乃 |
059_012 |
「――ん?」 |
|
比奈伎 |
060_024 |
「い、いや、なんでもない」 |
|
佐久弥 |
061_025 |
「(変わらず)夜紫乃。ずいぶん早かったね」 |
|
夜紫乃 |
062_013 |
「うん、待機組(たいきぐみ)が先を読んでこっちに向かって動いててくれたからさ。あ、朱音さまへの報せは、佐久弥に言われたとおり伊織に頼んだんだけど、瀬比呂が引き受けてくれたよ」 |
|
佐久弥 |
063_026 |
「そうなんだ」 |
|
夜紫乃 |
064_014 |
「武器を扱えるものが多く残ってたほうがいいだろうから、って亜夏刃の提案」 |
|
佐久弥 |
065_027 |
「(頷く)そうだね」 |
|
夜紫乃 |
066_015 |
「で、僕は、到着した待機組と合流できるように、準備するね」 |
|
佐久弥 |
067_028 |
「うん。夜紫乃、ご苦労様」 |
|
夜紫乃 |
068_016 |
「うん!あ、そうだ。水輪の長のことは、寿々加が追ってくれてるから」 |
|
比奈伎 |
069_025 |
「そうか」 |
|
|
|
【その時、海のほうから唸り声のようなものが響いてきた気がした】 |
|
比奈伎 |
070_026 |
「――」 |
|
夜紫乃 |
071_017 |
「?どしたの、比奈伎」 |
|
比奈伎 |
072_027 |
「いや――」 |
|
佐久弥 |
073_029 |
「空気が変わった」 |
|
比奈伎 |
074_028 |
「……ああ」 |
|
佐久弥 |
075_030 |
「いよいよ、だね」 |
|
比奈伎 |
076_029 |
「――ああ。じきに来るぞ、――嵐が」 |
|
*** |
こさめ |
077_001 |
「――気に入らないな。きな臭いどころの話じゃない」 |
|
滴 |
078_001 |
「親父様と連絡がつかぬゆえ――我らだけではいかんともしがたいな」 |
|
汀 |
079_001 |
「このことを知ってるのは、まだ俺たちだけだ。そこは了承しておいてくれ」 |
|
滴 |
080_002 |
「わかっておるよ」 |
|
こさめ |
081_002 |
「それにしても、いつまで置いておくつもりだ?」 |
|
滴 |
082_003 |
「いつまで、とは」 |
|
こさめ |
083_003 |
「しらばっくれるんじゃない。鬼火の連中のことだ」 |
|
漣 |
084_001 |
「彼らは争うために来ているんじゃない。その敵意(てきい)むき出しの姿勢(しせい)を少し控(ひか)えたらどうなんです」 |
|
こさめ |
085_004 |
「ふん、ニコニコ笑って受け入れておけとでも?」 |
|
漣 |
086_002 |
「その度量(どりょう)の狭(せま)さが、自ら水輪を地(ち)に落としているんだと気づけないのは問題なのではありませんか」 |
|
こさめ |
087_005 |
「なんだって!」 |
|
滴 |
088_004 |
「やめぬか、こさめ!」 |
|
こさめ |
089_006 |
「最初に言い出したのはアタシじゃない!」 |
|
汀 |
090_002 |
「こさめの分が悪い。それくらいにしておけ」 |
|
こさめ |
091_007 |
「汀」 |
|
汀 |
092_003 |
「俺だってよそ者なんかに入り込まれて、思うところがないわけじゃないさ。それでも、いま鬼火に噛み付くのはまずいだろう。これは少なくとも、親父様の意思でもある――俺たちはまだ勝手に動くべきじゃない」 |
|
滴 |
093_005 |
「時期を待てと、そういうことだね?」 |
|
漣 |
094_003 |
「ただでさえ、本格的に嵐になる前にここの備蓄(びちく)を奪おうと、近隣(きんりん)の大名連中がうるさい時期なんですし……今はまだ、大人しくしておく方が得策(とくさく)でしょう」 |
|
こさめ |
095_008 |
「時期って言ったって……肝心の親父様はどこに行ったっていうんだい!」 |
|
*** |
(天候はますます荒れてくる) |
漣 |
096_004 |
「――そういえば……」 |
|
滴 |
097_006 |
「うん?漣、どうした」 |
|
漣 |
098_005 |
「時期といえば……、ずっと前に、瀧子様が似たようなことを仰(おっしゃ)っていたのを思い出して」 |
|
こさめ |
099_009 |
「瀧子様が?」 |
|
漣 |
100_006 |
「ええ。水輪が起(た)って百余年(ひゃくよねん)、……確か、『もうすぐ頃合(ころあい)だ』、と」 |
|
滴 |
101_007 |
「――頃合?瀧子様がそう仰ったのか?」 |
|
漣 |
102_007 |
「ええ。いつだったか、会合の終わったあとに」 |
|
滴 |
103_008 |
「そう……そうか……」 |
|
漣 |
104_008 |
「滴?」 |
|
|
|
【滴、懐から書き付けを取り出す】 |
|
漣 |
105_009 |
「滴、この書き付けは……まさか親父様の部屋から勝手に?」 |
|
滴 |
106_009 |
「おまえたちは、瀧子様のお力が弱まっていくのを、このままよしとできるのか?」 |
|
こさめ |
107_010 |
「それは……そりゃ、不安だけどさ」 |
|
滴 |
108_010 |
「誰も言わぬのであれば我が言おう。瀧子様のお力は、このままでは回復なさることはない」 |
|
こさめ |
109_011 |
「っ」 |
|
漣 |
110_010 |
「滴!」 |
|
滴 |
111_011 |
「瀧子様ももうご高齢――。お一人でひっそりと行なう禊(みそぎ)程度では、その御身に充分な水神の加護を受けられぬほど、弱まっておられるのだ」 |
|
滴 |
112_012 |
「とうとう、この時が来た……瀧子様のお力を、竜神のお力を守るため、これを行うべき時が。来(きた)る大嵐から、大名共から、水輪に降りかかるすべての災厄から、水輪を守る。今が、この水輪を真(しん)に守るべき、その時だ。絶対に逃(のが)してはならない。今が、かつてのごとく真(しん)に神のお力を取り戻すべき時。(キッと向き直って)――こさめ。漣。急ぎ支度をしや」 |
|
こさめ |
113_012 |
「……支度?いったいなんの支度だい、滴」 |
|
滴 |
114_013 |
「――『神降ろしの儀』だ」 |
|
|
|
【落雷】 |
|
*** |
みぎわ |
115_001 |
「……ねえ、汀」 |
|
汀 |
116_004 |
「うん?」 |
|
みぎわ |
117_002 |
「親父様はさ、内緒で動いてたこと、泪にも言ってないって言ってたでしょ」 |
|
汀 |
118_005 |
「……うん」 |
|
みぎわ |
119_003 |
「……親父様から事情を聞く前に、みんなに話しちゃって、……よかったかなぁ」 |
|
汀 |
120_006 |
「――」 |
|
みぎわ |
121_004 |
「みんなを疑う、とか、そういうわけじゃ……ないんだけど」 |
|
汀 |
122_007 |
「……そうだな。――俺にも――わからない。これが、吉とでるか、凶とでるかは――……」 |
|
みぎわ |
123_005 |
「うん……」 |
|
汀 |
124_008 |
「とにかく、俺はもう少し鬼火とやらと接触してみようかと思ってる。悪いけど、先に館に戻るよ」 |
|
みぎわ |
125_006 |
「ん、りょーかいっ」 |
|
(波打ち際を歩いている彩登を発見。みぎわ、駆け寄る) |
みぎわ |
126_007 |
「――ん?……あ!おーい!こらー!」 |
|
彩登 |
127_001 |
「えっ?」 |
|
みぎわ |
128_008 |
「こんな日に海の近くに出てちゃダメでしょ!雲を見なさい、もうじき波がもっと荒れて、アンタなんてあっという間に飲み込まれちゃうよ!」 |
|
彩登 |
129_002 |
「あ……彩登は……ううん、あたしは、その、海を見るのが初めてで、だから……」 |
|
みぎわ |
130_009 |
「あれ?――もしかしてアンタも鬼火?」 |
|
彩登 |
131_003 |
「あ……はい、あの」 |
|
みぎわ |
132_010 |
「へえ〜。鬼火にもこんな可愛らしい子がいるんだ〜。あの頭の固いいけ好かない副頭領と、得体の知れない笑顔の男みたいなヤツラばっかりかと思ってたわ」 |
|
彩登 |
133_004 |
「……えーと;」 |
|
みぎわ |
134_011 |
「おじょうちゃん、お名前は何ていうの?私はみぎわ」 |
|
彩登 |
135_005 |
「彩登、です」 |
|
みぎわ |
136_012 |
「彩登。可愛い名前ね」 |
|
彩登 |
137_006 |
「えへへ。ありがとう」 |
|
みぎわ |
138_013 |
「彩登。普段の海はとっても綺麗で見ごたえあるけど、波が荒れたら水輪一族でもない限り、そこから抜けるのは難しいよ。アンタじゃ絶対無理!だから、今日は一緒に館にかえろ。波が収まったら、絶好の場所を教えてあげるから!」 |
|
彩登 |
139_007 |
「うん!」 |
|
*** |
(瀧子が若かりし頃の話。竜神を降ろす巫女として存在することが、唯一、身内を守る術だった) |
|
|
【落雷】 |
|
AAA |
140_001 |
「親につけてもらったはずの名は、とうに忘れてしまった」 |
|
AAA |
141_002 |
「『瀧子』。いまは、それが私の名前。私の、身体を。入れ物をあらわす名」 |
|
AAA |
142_003 |
「あの時から、私は私でなくなった。私である必要がなくなった。私が私であってはいけなかった」 |
|
AAA |
143_004 |
「―――音も無く、嗅(におい)も無く」 |
|
AAA |
144_005 |
「ただ時の波に埋(う)もれ逝(ゆ)くが運命(さだめ)」 |
|
(昔の事を回想している) |
瀧子 |
145_001 |
「――『我ら』に名などはない。闇のさだめの一族」 |
|
(昔) |
BBB |
146_001 |
「――長が死んだぞ」 |
|
AAA |
147_006 |
「……そう。これで、少しは殺し合いの日々から逃(のが)れられるのかしら」 |
|
BBB |
148_002 |
「あれは殺し合いなどではない。我らは長の命に従い、敵を排除しているだけだ」 |
|
AAA |
149_007 |
「敵だって人間だわ。同じ人間よ」 |
|
BBB |
150_003 |
「いい加減にしろ。そんなことで、長亡き後、この一族を守っていけるのか?」 |
|
AAA |
151_008 |
「武力などで人をまとめることはできないわ」 |
|
BBB |
152_004 |
「間違えるな!この戦乱の世を生き抜くに必要なものは、情けなどではない!」 |
|
AAA |
153_009 |
「わかってるわ!!」 |
|
BBB |
154_005 |
「いい加減に目を覚ませ!この有様で、貴様はこの一族を率いていけるのか!?」 |
|
AAA |
155_010 |
「……ッ!」 |
|
AAA |
156_011 |
「好きで次期(じき)頭領(とうりょう)などやるのではない!生まれた時から決められていた。生まれた時からのがれられなかった。そこに自分の意思などただのひとかけらもなかった!」 |
|
BBB |
157_006 |
「一族のためだ!!」 |
|
AAA |
158_012 |
「あなたは……!!この私が、一族を守るためだけの飾(かざ)りに仕立(した)てあげられても構わないって言うの!?あなたも、この一族とやらを後生(ごしょう)大事(だいじ)に守りたいだけの、そんな人間なの!?」 |
|
BBB |
159_007 |
「――それは・・・」 |
|
AAA |
160_013 |
「……一族?笑わせないで」 |
|
BBB |
161_008 |
「……」 |
|
AAA |
162_014 |
「なにが一族よ。名すら持たず、ただ任務(にんむ)をこなすだけの毎日。壊れればすぐに取り替えられるだけの、道具の寄(よ)せ集めじゃない」 |
|
BBB |
163_009 |
「しかし、一族を失うわけには――」 |
|
AAA |
164_015 |
「一族ですって?笑わせないで。こんなものは――ただの駒(こま)よ」 |
(馬のアクセント) |
BBB |
165_010 |
「――(名を呼ぼうとしたが)」 |
|
AAA |
166_016 |
「あなたも一族の人間なら、もう二度と私に近づかないほうがいい。私はこれからこの一族の礎(いしずえ)にされるのよ。一族を守ろうとするものが、それこそ、――目の色を変えて欲しがるでしょうよ。私を守ることで一族の存続(そんぞく)が許されるのだと、本気で信じているの。私を守るためなら、彼らは――どんなことでもするわ」 |
|
BBB |
167_011 |
「(うな垂れる)」 |
|
AAA |
168_017 |
「――もう、あなたとは会わない。もう、二度と」 |
|
BBB |
169_012 |
「――自分は、それでも貴様を――……」 |
|
*** |
BBB |
170_013 |
「グ、オオオッ!!(刺された)な、ぜ……ッ!!」 |
|
??? |
171_001 |
「巫女姫に近づくものはあってはならぬ」※全員で |
|
AAA |
172_018 |
「――何故殺した」 |
|
??? |
173_002 |
「それがこの一族を救う唯一のすべだ」 |
|
AAA |
174_019 |
「何故殺した」 |
|
??? |
175_003 |
「この一族を守るため」 |
|
AAA |
176_020 |
「何故殺した」 |
|
??? |
177_004 |
「あなた様のため」 |
|
AAA |
178_021 |
「何故殺した」 |
|
??? |
179_005 |
「全ては――あなた様のため」 |
|
AAA |
180_022 |
「――ふざけるなぁぁあぁっ!!」 |
|
|
|
【落雷】【しとしとと雨が降っている】 |
|
(そっと近づくCCC。瀧子の若かりし頃の、同僚というか、同期のような存在。女性。) |
CCC |
181_001 |
「――泣いているの?」 |
|
AAA |
182_023 |
「だれが?私が?」 |
|
CCC |
183_002 |
「…………」 |
|
AAA |
184_024 |
「涙など、出ないわ」 |
|
|
|
【ざあああああ……】 |
|
AAA |
185_025 |
「人の心など、捨てた」 |
|
瀧子 |
186_002 |
「人の心など、捨てた」 |
|
*** |
(神降ろしの儀式の直前。何者かによって、濠、潤河、洋汰が殺される) |
|
|
【ドシュウ!!】 |
|
濠 |
187_001 |
「――こ、れは……ッ、これは何の真似だァ……ッ!」 |
|
|
|
【ドシュウ!!】 |
|
潤河 |
188_001 |
「な、ぜ…………なぜあなたが……ッ!」 |
|
|
|
【ドシュウ!!】 |
|
洋汰 |
189_001 |
「っ……、……どう、し、て――……?」 |
|
|
|
【……どさ、どさ、どさ】 |
|
*** |
AAA |
190_026 |
「――――涙など、出ない」 |
|
*** |
(彩登と一緒に戻ってきたみぎわ。館のなかがずいぶん騒がしい) |
みぎわ |
191_014 |
「――あれえ?なんか館がずいぶん賑やか」 |
|
彩登 |
192_008 |
「ほんとだ……」 |
|
みぎわ |
193_015 |
「あ。汀だ。おーい、汀ー!」 |
|
汀 |
194_009 |
「あ!みぎわ、それに彩登。一緒だったんだ」 |
|
彩登 |
195_009 |
「うん!」 |
|
|
|
【たったったった】 |
|
みぎわ |
196_016 |
「どうしたの。館中、お祭りみたいになっちゃってるけど」 |
|
汀 |
197_010 |
「俺も今戻ってきたばっかりで」 |
|
(そこに、タイミングよく現れる珠菜) |
彩登 |
198_010 |
「あ、珠菜!」 |
|
珠菜 |
199_001 |
「汀、みぎわ!お2人とも、どこにいってらしたの?館の中は今大変なことになってますのよ!」 |
|
みぎわ |
200_017 |
「え?」 |
|
汀 |
201_011 |
「っていうか、まさかあんたも鬼火?」 |
|
珠菜 |
202_002 |
「そんな紹介なんて後回しですわ。わたくしにはよくわからないのですけれど……、儀式をやるとか。それでみんな、その準備に大忙しで」 |
|
みぎわ |
203_018 |
「ぎしき?」 |
|
珠菜 |
204_003 |
「よくはわかりませんけれど、なんだかとてもまずい雰囲気ですわよ――」 |
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彩登 |
205_011 |
「儀式って?」 |
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珠菜 |
206_004 |
「――『神降ろしの儀』だとか」 |
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汀 |
207_012 |
「――神降ろし!?ちょっと待った、なんでそんな急に――」 |
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(その時、会合の間からたくさんの悲鳴) |
ガヤ |
208_001 |
「(たくさんの悲鳴、断末魔)」 |
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汀 |
209_013 |
「!!」 |
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みぎわ |
210_019 |
「!!」 |
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珠菜 |
211_005 |
「!!」 |
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彩登 |
212_012 |
「!!」 |
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汀 |
213_014 |
「会合の間だ!」 |
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【走っていく】 |
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彩登 |
214_013 |
「あ……っ」 |
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珠菜 |
215_006 |
「――彩登。とうとう始まりましたわ」 |
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彩登 |
216_014 |
「珠菜……っ」 |
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珠菜 |
217_007 |
「夜紫乃がこちらへ向かっていますわ。彩登は、そのまま夜紫乃と合流を。以降は、夜紫乃の指示に従うこと」 |
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彩登 |
218_015 |
「うん……、はいっ」 |
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珠菜 |
219_008 |
「わたくしは、比奈伎と佐久弥に知らせなくては!」 |
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【ざっと消える】 |
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*** |
(回想シーン) |
AAA |
220_027 |
「――もう、あなたとは会わない。もう、二度と」 |
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BBB |
221_014 |
「――自分は、それでも貴様を――……」 |
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【AAA、去っていく】 |
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BBB |
222_015 |
「自分は――自分は、それでも貴様を想う。……そして、誓おう。もし、貴様がこの一族を支えきれなくなった時――その時は、それを止める『楔』となることを。何年、何十年かかろうとも、必ず――。この姿形を変えてでも、自分は――……必ず、――必ず、傍に」 |
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【波の音に、声が消えていく】 |
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*** |
(報告に走った珠菜。比奈伎、佐久弥と合流した) |
比奈伎 |
223_030 |
「――神の力、か」 |
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佐久弥 |
224_031 |
「本当は……こうなる前に止めたかったけれど」 |
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比奈伎 |
225_031 |
「ああ……」 |
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珠菜 |
226_009 |
「このままでは、最悪の結果にまっしぐらですわ」 |
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比奈伎 |
227_032 |
「ここには、血が流れすぎた。俺たちは、来るのがあまりにも遅すぎたな」 |
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佐久弥 |
228_032 |
「比奈伎……」 |
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珠菜 |
229_010 |
「けれど、起こってしまったものはもう仕方がないですわよ」 |
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佐久弥 |
230_033 |
「――うん。あとはいかに最小限に抑えることが出来るか、だね」 |
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珠菜 |
231_011 |
「ええ」 |
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佐久弥 |
232_034 |
「でも……朱音は……、がっかりするね」 |
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比奈伎 |
233_033 |
「仕方がない。……覚悟はしていただろう、きっと」 |
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珠菜 |
234_012 |
「(武器を構えて)――頭領代理。指示を」 |
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比奈伎 |
235_034 |
「(眉を寄せて)珠菜……、その呼び方はやめて欲しいんだが」 |
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珠菜 |
236_013 |
「では、鬼火頭領朱音の名代、比奈伎。指示を」 |
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比奈伎 |
237_035 |
「…………(むぅぅ)」 |
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佐久弥 |
238_035 |
「……(小さくくすりと笑う)」 |
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珠菜 |
239_014 |
「さ、お早く!」 |
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比奈伎 |
240_036 |
「……、(気を取り直して)――水輪の長の願い通り、『力』を、この海から消滅させる。俺たち鬼火一族は、それに尽力する」 |
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珠菜 |
241_015 |
「ええ」 |
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比奈伎 |
242_037 |
「――人の手に負えぬ神の力は――――神に返す」 |
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珠菜 |
243_016 |
「(頷く)」 |
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佐久弥 |
244_036 |
「(頷く)」 |
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