出演キャスト様 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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役名 | 番号 | 台詞 | 注釈 |
(一の島にて、物資の配布が終了した2人。ぶらぶら中) | |||
【波の音】 | |||
みぎわ | 001_001 | 「汀」 | |
汀 | 002_001 | 「……」 | |
みぎわ | 003_002 | 「なーぎーさ」 | |
汀 | 004_002 | 「…………」 | |
みぎわ | 005_003 | 「なーぎーさー!」 | |
汀 | 006_003 | 「………………」 | |
みぎわ | 007_004 | 「もー!いい加減許してよ〜!知らない子にいろいろ喋っちゃったのは、ほんとに悪かったってばぁ。もー、めっちゃくちゃ反省してる!大反省!大大大反省っ!!」 | |
汀 | 008_004 | 「…………、(溜息)わかった」 | |
みぎわ | 009_005 | 「なぎさっ」 | |
汀 | 010_005 | 「ただし、本当に次は気をつけるんだぞ?みぎわの人を見る目を疑うわけじゃないけど……」 | |
(とかなんとか2人で話していたら、だいぶ先に誰かが立っているのが見える) | |||
みぎわ | 011_006 | 「――(ハッとして)汀、あれ」 | |
汀 | 012_006 | 「男か。……なんだ、あれ。――なにかの面をかぶってるみたいだ……」 | |
みぎわ | 013_007 | 「でも、私たちの竜の面じゃない――ということは、水輪の者じゃない……何者」 | |
汀 | 014_007 | 「――(チャキ、と槍を構える)」 | |
みぎわ | 015_008 | 「汀。……どうする」 | |
汀 | 016_008 | 「――(スッと立って)――討つ」 | |
*** | |||
(まだ潜んでいるみぎわ、汀。気配で比奈伎には見つかる) | |||
比奈伎 | 017_001 | 「――(ふと視線を向ける)そこからでは、自慢の槍は届かないだろう」 | |
みぎわ | 018_009 | 「!」 | |
汀 | 019_009 | 「……ばれてたか」 | |
【正体がばれては意味が無いので、姿を現す】 | |||
比奈伎 | 020_002 | 「…………(ふぅ)、水輪は、陸地でも武器を取るとは知らなかった」 | |
みぎわ | 021_010 | 「臨機応変って言葉、知らないの?」 | |
比奈伎 | 022_003 | 「いや――……なるほど」 | |
汀 | 023_010 | 「おまえは……目障りだ。――消えろ」 | |
比奈伎 | 024_004 | 「断る」 | |
汀 | 025_011 | 「っ(小さく息を呑む)」 | |
みぎわ | 026_011 | 「っ(小さく息を呑む)」 | |
比奈伎 | 027_005 | 「――と、言ったら?」 | |
汀 | 028_012 | 「……水輪一族の、竜神の子たる証をその目で見たいとみえる」 | |
比奈伎 | 029_006 | 「そうだな。それは興味深い。(スッと向き合って)もっとも――俺は神の子だなどと信じないが」 | |
みぎわ | 030_012 | 「!」 | |
汀 | 031_013 | 「!」 | |
汀 | 032_014 | 「……侮辱するか」 | |
比奈伎 | 033_007 | 「そんなつもりはない」 | |
みぎわ | 034_013 | 「おなじことだ!」 | |
汀 | 035_015 | 「(すっと手を出して止め)――なにが目的だ」 | |
比奈伎 | 036_008 | 「――鬼火頭領の名代にて、水輪一族の長に目通り願いたい」 | |
みぎわ | 037_014 | 「長に会ってなんとする」 | |
比奈伎 | 038_009 | 「(少し笑って)貴女に言う必要はない」 | |
みぎわ | 039_015 | 「!(いきなり切りかかる)」 | |
比奈伎 | 040_010 | 「ッ!(受ける)」 | |
【ガキィン!】 | |||
(打ち合いの勢いで、2人とも後方に下がる) | |||
【ズザザ!!】 | |||
比奈伎 | 041_011 | 「(しばし睨みあう)」 | |
みぎわ | 042_016 | 「(しばし睨みあう)」 | |
比奈伎 | 043_012 | 「―――、(小さく息をついて)ずいぶん手荒いな」 | |
みぎわ | 044_017 | 「そちらこそ、歓迎されると思っていたわけではないでしょ」 | |
比奈伎 | 045_013 | 「斬られる謂れはないと思うが」 | |
みぎわ | 046_018 | 「(鼻で笑って)よく言う。斬られるつもりなど毛頭ないくせに」 | |
比奈伎 | 047_014 | 「鬼火と知った上での行いならば―――俺も抜こう。(まだ抜かないまま、構えつつ)…女を斬るのは気は進まないが」 | |
みぎわ | 048_019 | 「女と侮るか」 | |
比奈伎 | 049_015 | 「そういう意味合いじゃない」 | |
みぎわ | 050_020 | 「同じことだ」 | |
比奈伎 | 051_016 | 「…刀を抜く以上は加減はしない。そちらも知っての通り俺は斬られるつもりはないが、そちらの都合までは配慮できないぞ。この場に屍が一つ転がることになっても、鬼火のあずかり知らぬこととなるが、異存はないか」 | |
みぎわ | 052_021 | 「屍をさらすのはそちらだろう!」 | |
(相手の男が構えた武器を見て、二人とも眉を上げる。それは短刀だった) | |||
汀 | 053_016 | 「短刀だって?そんな短いのでこの槍を相手するつもりか」 | |
みぎわ | 054_022 | 「よっぽど死にたいみたいね」 | |
比奈伎 | 055_017 | 「……どうかな」 | |
汀 | 056_017 | 「……気に入らないな、おまえ」 | |
(互いの呼吸を読む、しばしの対峙) | |||
比奈伎 | 057_018 | 「――」 | |
汀 | 058_018 | 「――」 | |
汀 | 059_019 | 「ッ!!(槍を振るう)」 | |
(汀の先行にて、打ち合う汀と比奈伎。右に左に激しく切りかかるが、比奈伎はそれをすべてギリギリでよけていく。 引いてばかりの相手に業を煮やした汀が渾身の力で槍を振るうと、比奈伎の短刀を弾いた) |
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汀 | 060_020 | 「ッ、ッ!!ハ!!(何度も切りつける)」 | |
比奈伎 | 061_019 | 「ッ、・・・ッ(ギリギリよけていく)」 | |
汀 | 062_021 | 「ッ(瞬時に互いの位置が入れ替わる)」 | |
比奈伎 | 063_020 | 「ッ(瞬時に互いの位置が入れ替わる)」 | |
汀 | 064_022 | 「――、ハァアッ!!(呼吸を読んで、一気に懐に!躊躇せず槍を突き刺す)」 | |
比奈伎 | 065_021 | 「!、く!(さすがに受け損ない、短刀が弾かれる)」 | |
(輪を描いてクルクルと短刀が宙を舞う) | |||
比奈伎 | 066_022 | 「(一瞬眉間に皺を寄せ)・・・」 | |
(汀、最後の止めを刺そうと、再び思い切り比奈伎の懐に飛び込んだ、 が、比奈伎の一瞬の抜刀により、倒れる) |
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汀 | 067_023 | 「ハアアアッ!!」 | |
比奈伎 | 068_023 | 「おおおお!!」 | |
汀 | 069_024 | 「(腹部に激しい痛み)う、ぐ……ッ!……ッ(ズルッと比奈伎に凭れるかのように倒れる)」 | |
【ザク、っと短刀が浜に突き刺さる】 | |||
みぎわ | 070_023 | 「!!!汀あああっ!!!」 | |
比奈伎 | 071_024 | 「……(息をつく)」 | |
みぎわ | 072_024 | 「(槍を振るい)――おのれ……ッ、鬼火、よくも!!」 | |
比奈伎 | 073_025 | 「――(少し戸惑う)」 | |
みぎわ | 074_025 | 「オオオッ!(槍を突き刺す)」 | |
比奈伎 | 075_026 | 「――!(抜いた刀で受ける)」 | |
(その音が響いた瞬間、水輪の長・漁火が姿を現す) | |||
漁火 | 076_001 | 「――見事!(叫んで、軽く手を叩く)」 | |
みぎわ | 077_026 | 「!親父様!!邪魔立て無用だ!」 | |
漁火 | 078_002 | 「槍(やり)を引け、みぎわ。どう見てもおまえのほうが分(ぶ)が悪かろう」 | |
みぎわ | 079_027 | 「…!なに…ッ!?」 | |
漁火 | 080_003 | 「力量も測れずに、鬼火の副頭領を討つつもりだったか?頭を冷やせ、馬鹿者。運よく打ち合えても、せいぜいがそこまでだ。その刀を最後まで抜かせていたら、そこに転(ころ)がるのは間違いなくおまえだった。いまだ立っていられることを感謝せにゃならんぞ」 | |
みぎわ | 081_028 | 「………ッ!(強引に槍を振るって)フン!いつから水輪の頭領は、鬼火とやらに傅(かしず)くようになったんだか!竜神の子が聞いて呆れる!」 | |
漁火 | 082_004 | 「みぎわ(宥めようと)」 | |
みぎわ | 083_029 | 「っなにが……見事よ!汀……ッ汀が……!!(涙ぐむ)」 | |
比奈伎 | 084_027 | 「――・・・(静かに刀を下ろす)」 | |
漁火 | 085_005 | 「……いやはや。相(あい)も変わらずの腕よな。鬼火頭領が推(お)すだけのことはある」 | |
比奈伎 | 086_028 | 「……恐縮です」 | |
みぎわ | 087_030 | 「(ついていけず軽く混乱する)……ちょっと!どういうこと!?」 | |
漁火 | 088_006 | 「みぎわ。こちらは、鬼火の副頭領、比奈伎殿」 | |
みぎわ | 089_031 | 「……知り合い!?」 | |
漁火 | 090_007 | 「いや?」 | |
みぎわ | 091_032 | 「は?」 | |
漁火 | 092_008 | 「ワシもこちらの副頭領殿にじかにお会いするのは初めてだが、長(おさ)殿(どの)とは飲み友達……いやいや、昵懇(じっこん)の仲だ」 | |
みぎわ | 093_033 | 「はあ!?」 | |
漁火 | 094_009 | 「落ち着かんか。よく見ろ」 | |
みぎわ | 095_034 | 「えっ・・・」 | |
(みぎわが下に眼をやると、汀が体を起こすところだった) | |||
汀 | 096_025 | 「(しこたま打たれた腹部をさすりながら)いててて……」 | |
みぎわ | 097_035 | 「ちょ…っ汀、だっ大丈夫なの!?(慌てて手を貸す)」 | |
汀 | 098_026 | 「(手をとって立ち上がりながら)大丈夫……じゃない、っ、もんのすごく痛い……(ちょっと涙目)」 | |
漁火 | 099_010 | 「(顎をなでつつ)こりゃどっか折れたかもなぁ」 | |
みぎわ | 100_036 | 「親父様!!(説明して!っていうか涙を返せ!的な)」 | |
漁火 | 101_011 | 「そうどなりなさんな。ワシは言ったぞ、『よく見ろ』と」 | |
みぎわ | 102_037 | 「!?」 | |
(よーく見ると、比奈伎の刀は逆に握られている) | |||
みぎわ | 103_038 | 「!!あれが峰打ち!?……持ち替えたっていうの!?あの一瞬で……」 | |
汀 | 104_027 | 「全然気づかなかった……。てっきり斬られたと思ったもんな(腹をさすりながら)」 | |
比奈伎 | 105_029 | 「・・・申し訳ない」 | |
汀 | 106_028 | 「?なんで謝る?」 | |
比奈伎 | 107_030 | 「加減がきかなかった。俺でなくほかの者であれば、おそらくそこまで打ち込まずに済んだはずだ」 | |
みぎわ | 108_039 | 「…………もっと強いのがいるって事?」 | |
比奈伎 | 109_031 | 「(小さく微笑って)何人かは」 | |
****** | |||
漁火 | 110_012 | 「――いやはや、すまんな。見ての通り血気(けっき)盛(さか)んな連中ばかりなもんで、手を焼いとる」 | |
汀 | 111_029 | 「血気盛んで悪かったな」 | |
みぎわ | 112_040 | 「なにも説明してくれなかった親父様が悪いんじゃない」 | |
漁火 | 113_013 | 「順を追って話をするから、先に戻っとれ」 | |
みぎわ | 114_041 | 「えー!?」 | |
漁火 | 115_014 | 「いいか、汀。みぎわ。ここに鬼火がいるということは、まだおまえたち2人しか知らんことだ。泪にも知らせておらん。――この意味が、わかるな?」 | |
汀 | 116_030 | 「――」 | |
漁火 | 117_015 | 「極秘(ごくひ)に、動かしたいことがある。――これは、命令だ。わしもすぐに戻る」 | |
みぎわ | 118_042 | 「……」 | |
汀 | 119_031 | 「――承知した。(くるっときびすを返して)みぎわ、俺たちは先に館に戻るぞ」 | |
みぎわ | 120_043 | 「はぁい」 | |
【二人は去っていく】 | |||
漁火 | 121_016 | 「(その後姿を見送る)」 | |
(比奈伎に向き合う漁火) | |||
漁火 | 122_017 | 「鬼火頭領・朱音殿は息災(そくさい)か」 | |
比奈伎 | 123_032 | 「――つつがなく」 | |
漁火 | 124_018 | 「そりゃなによりだ。久しぶりに一緒に酒でも飲みたかったんだが。副頭領殿はいかがだ?」 | |
比奈伎 | 125_033 | 「生憎、下戸なもので」 | |
漁火 | 126_019 | 「そりゃつまらんなぁ。下戸(げこ)というのは物の例えだろうが。わざわざ海まで来たんだ、ワシの顔を立ててちょっとくらい付き合わんか」 | |
比奈伎 | 127_034 | 「(少し笑いながら)ほかの者を寄越します」 | |
漁火 | 128_020 | 「(笑いながら)頭領と違ってかたいな、おぬしは。まぁせっかくだ、せいぜい綺麗どころを寄越(よこ)してくれ」 | |
*** | |||
(と、いうわけで、綺麗どころがきた。) | |||
佐久弥 | 129_001 | 「――鬼火の者を水輪に受け入れてくださったこと、感謝いたします」 | |
漁火 | 130_021 | 「こりゃあ…………」 | |
佐久弥 | 131_002 | 「はい?」 | |
漁火 | 132_022 | 「確かに綺麗どころだが、意味がちがうぞ!」 | |
佐久弥 | 133_003 | 「(少し笑って)それは、申し訳ありません」 | |
漁火 | 134_023 | 「鬼火は女子(おなご)も大層(たいそう)強く麗(うるわ)しいと聞いたのだが、女子はきとらんのか、女子は」 | |
佐久弥 | 135_004 | 「別の役目を負っているので……」 | |
漁火 | 136_024 | 「そりゃ……つまらん」 | |
佐久弥 | 137_005 | 「くすくす」 | |
漁火 | 138_025 | 「鬼火の女子(おなご)は、猛々(たけだけ)しさの中にも淑(しと)やかさを持ち合わせていると聞く。ぜひそれを、この目で見てみたかったんだがなぁ・・・。なにしろ、ほれ、水輪の女は、『ああ』だからな」 | |
佐久弥 | 139_006 | 「水輪一族は、特に激しい戦を強いられてきた一族のうちの一つ。自ずと、必要な力が特化されていくのでしょう」 | |
漁火 | 140_026 | 「水輪を見たか」 | |
佐久弥 | 141_007 | 「(小さく頷いて)限られたもののみが着用を許される竜の面。そして船を操る技」 | |
漁火 | 142_027 | 「おぬしはどう見た」 | |
佐久弥 | 143_008 | 「水軍より勝るといわれる海上での攻防、とくと堪能させていただきました。あれだけの波を受けながら、よく舵を操れるものだと」 | |
漁火 | 144_028 | 「懸命(けんめい)な修練を重ね、なによりも海を傍(かたわ)らにして育った、その経験ゆえの賜物(たまもの)の、術(すべ)だ」 | |
佐久弥 | 145_009 | 「(頷いて)水輪の真実(まこと)の力です」 | |
漁火 | 146_029 | 「――あれを、竜神の加護(かご)だと、水神(すいじん)の力ゆえだ、というものがいる。――水輪本家の者ですら。……否(いな)。身内のものであればあるほど、その力を信じ、頼みとしておる」 | |
佐久弥 | 147_010 | 「――」 | |
漁火 | 148_030 | 「――力、か」 | |
佐久弥 | 149_011 | 「――はい」 | |
漁火 | 150_031 | 「――わしは――、その『力』を、捨てる」 | |
【雷鳴】 | |||
*** | |||
(外で気配を窺っていた夜紫乃。戻ろうとしたところ、ばったり泪に見つかる) | |||
夜紫乃 | 151_001 | 「――!(はっと気配に気づく)」 | |
(夜紫乃が振り向くが早いか、泪が武器を振り下ろす) | |||
泪 | 152_001 | 「ッ(振り下ろす)」 | |
夜紫乃 | 153_002 | 「(受ける)うわ!」 | |
泪 | 154_002 | 「(三度振るう)」 | |
夜紫乃 | 155_003 | 「うわっ!と、っと!!」 | |
泪 | 156_003 | 「ハァッ!(振るう)」 | |
夜紫乃 | 157_004 | 「(受けながら、逃げながら)ちょっと、待った待った、待ってってば!」 | |
泪 | 158_004 | 「――」 | |
(一瞬、武器を引いたのを目にして、一瞬、ホッとする、が) | |||
夜紫乃 | 159_005 | 「(一瞬ホッとする)」 | |
泪 | 160_005 | 「――ハ!(踏み込む)」 | |
夜紫乃 | 161_006 | 「ッ、やば……!」 | |
(その隙をつかれて思い切り踏み込まれた夜紫乃。 手加減していたがゆえに避けきれず、あわや!というところで) |
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佐久弥 | 162_012 | 「(飛び込む)」 | |
【・・・ガキーン!】 | |||
(当然、佐久弥が飛び込んできました) | |||
泪 | 163_006 | 「――!」 | |
佐久弥 | 164_013 | 「――」 | |
(武器を交差したまま対峙する2人) | |||
泪 | 165_007 | 「――」 | |
佐久弥 | 166_014 | 「――」 | |
(武器はそのままで、じりっと踏みしめる泪) | |||
泪 | 167_008 | 「……おまえは誰だ?」 | |
佐久弥 | 168_015 | 「――鬼火の佐久弥」 | |
泪 | 169_009 | 「何者だ」 | |
佐久弥 | 170_016 | 「敵じゃない」 | |
泪 | 171_010 | 「信じろと?」 | |
佐久弥 | 172_017 | 「今は」 | |
泪 | 173_011 | 「――今は、か」 | |
夜紫乃 | 174_007 | 「さ、佐久弥……っ」 | |
泪 | 175_012 | 「顔も見せない相手を、ただ信じろと?それは虫が良すぎないか」 | |
佐久弥 | 176_018 | 「――確かにね」 | |
(お互いに、武器を振るって離れる) | |||
夜紫乃 | 177_008 | 「佐久弥」 | |
佐久弥 | 178_019 | 「大丈夫。――(ゆっくりと面を外す)――私たちは、鬼火の者。私は佐久弥。こちらは、夜紫乃。ゆえあって今はこの地にとどまっている」 | |
泪 | 179_013 | 「……」 | |
佐久弥 | 180_020 | 「(面を付け直しながら)……時期が来れば理由は自ずと知れるはず」 | |
夜紫乃 | 181_009 | 「……(2人のやり取りを見守る)」 | |
(やがて、警戒を解いた泪) | |||
泪 | 182_014 | 「……(ふぅ)。まぁ、確かにおまえたちからは殺気を全く感じなかったしな。とりあえず、敵ではないということは信じるさ」 | |
佐久弥 | 183_021 | 「(ふと笑って)…ありがとう」 | |
泪 | 184_015 | 「……ところで」 | |
佐久弥 | 185_022 | 「え?」 | |
泪 | 186_016 | 「おまえ、酒はいける口か?」 | |
佐久弥 | 187_023 | 「…え?」 | |
泪 | 188_017 | 「暇なら今夜、一杯付き合わないか」 | |
夜紫乃 | 189_010 | 「……あれ?」 | |
佐久弥 | 190_024 | 「ええと」 | |
泪 | 191_018 | 「これだけの綺麗どころを前にして、共に酒が飲めないという話はないだろう。払いは泪がもつ。ぜひとも付き合え」 | |
夜紫乃 | 192_011 | 「……君……もしかして」 | |
泪 | 193_019 | 「うん?」 | |
夜紫乃 | 194_012 | 「もしかして、水輪の長の、親戚かなにか…?」 | |
泪 | 195_020 | 「なんだ、親父にはすでに会ったのか」 | |
夜紫乃 | 196_013 | 「親父ぃ!?」 | |
佐久弥 | 197_025 | 「……」 | |
泪 | 198_021 | 「身内の者にすら全く似ていないといわれるのに、親父と泪の血が繋がっていると良くわかったな」 | |
夜紫乃 | 199_014 | 「えーと」 | |
佐久弥 | 200_026 | 「……なんだか、別の人にもよく似ている気がするよ」 | |
*** | |||
夜紫乃 | 201_015 | 「ところで、呑気(のんき)にお酒なんて飲んでて大丈夫なの?」 | |
佐久弥 | 202_027 | 「夜紫乃」 | |
泪 | 203_022 | 「――」 | |
夜紫乃 | 204_016 | 「あ…っ、……余計なことだったよね、ごめん」 | |
泪 | 205_023 | 「――外の者のほうがよく見える――か」 | |
夜紫乃 | 206_017 | 「え?」 | |
佐久弥 | 207_028 | 「……」 | |
泪 | 208_024 | 「……確かに今、水輪には何事かが起ころうとしている――。だが、内部に居ては、見えないことも多くてな。見ようとしても、なにかに目を塞がれてしまうのさ」 | |
夜紫乃 | 209_018 | 「なにかって?」 | |
泪 | 210_025 | 「わからない……。水輪の者の元々の性質かもしれないし、――瀧子様や竜神への畏敬の念のためかもしれない。なにかはわからないが――確かに、その『なにか』が、内部で起こっている何事かを、やんわりと隠してしまっているような気はするんだ」 | |
佐久弥 | 211_029 | 「あなたは――その気配に気づいているんだね」 | |
泪 | 212_026 | 「(肩をすくめて)泪は、親父と同じで『外』に近いからな」 | |
夜紫乃 | 213_019 | 「え?」 | |
泪 | 214_027 | 「(それには答えず)瀧子様のお力が弱まったとかで、ずいぶんバタバタもしているし…。海もずっと荒れているしな」 | |
佐久弥 | 215_030 | 「――泪」 | |
泪 | 216_028 | 「うん?」 | |
佐久弥 | 217_031 | 「事が起こる前に、館から離れていたほうが良い」 | |
泪 | 218_029 | 「え――……どういうことだ、何が起こるかお前にはわかっているのか?」 | |
佐久弥 | 219_032 | 「いや――」 | |
泪 | 220_030 | 「では」 | |
佐久弥 | 221_033 | 「『なにか』はわからない。けれど――もうじき嵐が来る。おそらく――これまでに経験したことのない、とても大きな………強い嵐が」 | |
*** | |||
(帰ってきたが、みんないない。会合の間へ行ってみた) | |||
汀 | 222_032 | 「あれっ?やけに静かだな」 | |
洋汰 | 223_001 | 「あれえ?汀にーちゃん、みぎわねーちゃん。一の島から戻るのずいぶん遅かったじゃん。とっくに会合はじまっちゃってるよ」 | |
みぎわ | 224_044 | 「どうりでみんないないと思った。どうする、汀」 | |
汀 | 225_033 | 「途中で入っていくと、瀧子様のご機嫌が悪くなるからな……終わるまで待ってよう」 | |
みぎわ | 226_045 | 「うん。……あれ?」 | |
洋汰 | 227_002 | 「ん?」 | |
汀 | 228_034 | 「どうした、みぎわ」 | |
みぎわ | 229_046 | 「――あの男。なんだか動きがおかしい」 | |
汀 | 230_035 | 「え?」 | |
洋汰 | 231_003 | 「えっ?」 | |
(みぎわと汀が見た方向、会合の間の入り口にふらふらと男が。瞬間、男は会合の間に飛び込んだ!) | |||
みぎわ | 232_047 | 「!」 | |
汀 | 233_036 | 「マズイ!」 | |
【2人も急いで後を追って飛び込む】 | |||
汀 | 234_037 | 「(入り口から)――瀧子様を守れ!!」 | |
漣 | 235_001 | 「!!」 | |
こさめ | 236_001 | 「!(一番早く反応し、瞬時に飛んで男の目の前に)…ハッ!(槍を振るう)」 | |
男 | 237_001 | 「ぎゃああ!(刺される)」 | |
【ドサッ】 | |||
漣 | 238_002 | 「瀧子様ッ!!」 | |
滴 | 239_001 | 「瀧子様!!」 | |
瀧子 | 240_001 | 「――大事無い」 | |
こさめ | 241_002 | 「(ハッとして)ですけど、血が……っ」 | |
瀧子 | 242_002 | 「返り血を浴(あ)びただけじゃ。瀧子のものではない、ゆえに案ずることはない。こさめ、ようやった」 | |
こさめ | 243_003 | 「(ほっとする)いえ、光栄です」 | |
瀧子 | 244_003 | 「この男は」 | |
漣 | 245_003 | 「は。先日加わったばかりの、杯組の一人です――」 | |
瀧子 | 246_004 | 「――漁火を呼べ(ひやりと)」 | |
泪 | 247_031 | 「(ハッとして)瀧子様、お待ちください!」 | |
汀 | 248_038 | 「!」 | |
みぎわ | 249_048 | 「!」 | |
滴 | 250_002 | 「!」 | |
漣 | 251_004 | 「!」 | |
こさめ | 252_004 | 「!」 | |
瀧子 | 253_005 | 「……なんじゃ、泪」 | |
泪 | 254_032 | 「親父の……いえ、真実、漁火の采配によって杯組が選ばれていたのならば、罰を与えられても文句は言えませぬが、これは……!」 | |
瀧子 | 255_006 | 「ひかえよ」 | |
泪 | 256_033 | 「これでは、あまりにも!」 | |
瀧子 | 257_007 | 「ひかえよ!」 | |
泪 | 258_034 | 「ッ!」 | |
瀧子 | 259_008 | 「漁火の代わりにそなたが罰せられたいと見える。ならば、望みどおりにしてやろうぞ」 | |
泪 | 260_035 | 「――っ(後ずさる)」 | |
汀 | 261_039 | 「(素早く止めにはいる)お待ちください、瀧子様!お気をお鎮めくださいませ。いまここで、水輪の、それも本家の数を減らすは、得策ではございません」 | |
瀧子 | 262_009 | 「ほう?」 | |
汀 | 263_040 | 「今は何よりも、瀧子様とこの場所が、血で穢れたことを清め払うことが大事。それには、漁火も泪も、なくてはならぬ者たちです」 | |
瀧子 | 264_010 | 「――」 | |
みぎわ | 265_049 | 「(同じように庇う)ここに血の穢れがある以上、更なる穢れは避けねばなりませぬ。瀧子様の御身のためでございますれば」 | |
瀧子 | 266_011 | 「(すっと目を細めて)……汀。みぎわ」 | |
汀 | 267_041 | 「は」 | |
みぎわ | 268_050 | 「は」 | |
瀧子 | 269_012 | 「此度(こたび)はそなたたちの顔を立てて、許そう。――泪」 | |
泪 | 270_036 | 「――は」 | |
瀧子 | 271_013 | 「この瀧子に声を荒げることは、二度と許さぬ。二度目は、そなたの死をもって贖(あがな)え」 | |
泪 | 272_037 | 「――は……ッ」 | |
*** | |||
(瀧子が下がった後) | |||
汀 | 273_042 | 「――この……馬鹿!!」 | |
泪 | 274_038 | 「っ」 | |
汀 | 275_043 | 「大馬鹿だおまえは!!今回は本当に運よく許されたからよかったものの、あんな馬鹿な行為ははじめて見たぞ!!」 | |
泪 | 276_039 | 「……(うつむく)」 | |
みぎわ | 277_051 | 「ほんっとに危なかったよ、泪。こっちの寿命が縮んだ」 | |
汀 | 278_044 | 「あの方に逆らうなんてどんな馬鹿だ!!おまえは命を捨てたかったのか!」 | |
泪 | 279_040 | 「……そうじゃない」 | |
汀 | 280_045 | 「今回はほんとに奇跡だぞ!?二度とこんな幸運はありえない。あの瞬間、おまえは間違いなく死んでたんだぞ!」 | |
泪 | 281_041 | 「――言われなくてもわかっている」 | |
みぎわ | 282_052 | 「泪」 | |
泪 | 283_042 | 「あのまま親父が罰せられるのは許されることじゃない。親父は、本当に何もしていないんだからな」 | |
みぎわ | 284_053 | 「……どういうこと」 | |
泪 | 285_043 | 「あれは親父の采配だといっていたが、実際はそうじゃない。あれは――瀧子様の指示だ。親父は、罪を着せられた」 | |
汀 | 286_046 | 「――・・・」 | |
みぎわ | 287_054 | 「(少し考え)瀧子様に、親父様を罰しなければならない理由がほかに生まれたということ?」 | |
泪 | 288_044 | 「――」 | |
汀 | 289_047 | 「泪」 | |
泪 | 290_045 | 「はきとはわからない。だが…………おそらく。親父は別の事で何かをした。それが、瀧子様の逆鱗に触れていたんだと思う」 | |
みぎわ | 291_055 | 「なにかって」 | |
泪 | 292_046 | 「それはまだわからない」 | |
みぎわ | 293_056 | 「……」 | |
汀 | 294_048 | 「……」 | |
泪 | 295_047 | 「……汀」 | |
汀 | 296_049 | 「(見る)」 | |
泪 | 297_048 | 「あの親父が、本当に、瀧子様のご不興を買うようなことを……すると思うか」 | |
汀 | 298_050 | 「――……わからないな」 | |
みぎわ | 299_057 | 「……親父様は、杯組だったから、じゃない?」 | |
汀 | 300_051 | 「――」 | |
みぎわ | 301_058 | 「生粋の本家の者ではない。けれど、力を見込まれて長になったわ。それでもやはり、生粋の水輪ではない」 | |
泪 | 302_049 | 「……ゆえに、外の者に近い」 | |
汀 | 303_052 | 「泪、みぎわ。その話、これ以上しないほうがいい」 | |
みぎわ | 304_059 | 「汀」 | |
汀 | 305_053 | 「危険だ。――あまりにも、危険すぎる」 | |
泪 | 306_050 | 「――」 | |
汀 | 307_054 | 「泪。おまえ、しばらく大人しくしてたほうがいい。もし本当に親父様がなにかをしたんだとしたら――、おまえも危険だ」 | |
泪 | 308_051 | 「……汀」 | |
汀 | 309_055 | 「泪。おまえは一の島へ行け。だいぶ波が高くなってきたけど、おまえなら渡れる。……たぶん……親父様は、おまえを守るための手はずは整えてるはずだ」 | |
泪 | 310_052 | 「?どういうことだ」 | |
汀 | 311_056 | 「なにをしてるかまではわからないけど――親父様が動いてることは確かだ。そしてそれはたぶん――俺たちを守るために」 | |
****** | |||
(外との繋ぎをとるため、一人、館の外に出た彩登。そこを汀に見つかる) | |||
彩登 | 312_001 | 「ええっと……。松の木、松の木……これ、かなぁ」 | |
***(思い起こす、先日の会話。館に潜入した珠菜・彩登に、接触してきた佐久弥) | |||
佐久弥 | 313_034 | 「(E)ようやく、水輪の頭領とつなぎが取れたよ。――私たちの思うよりもずっと速く、事が進んでいるのには気づいていると思うけど……もう猶予はない。お頭たち本陣はまだこの地に到着していないけれど、私たちだけで先に行動を起こす。そのつもりで、準備していて欲しい」 | |
珠菜 | 314_001 | 「(E)わかりましたわ」 | |
彩登 | 315_002 | 「(E)あ、彩登もっ」 | |
佐久弥 | 316_035 | 「こちらは、比奈伎、夜紫乃、そして私の三人。すでに比奈伎と夜紫乃は水輪と接触済みだから」 | |
珠菜 | 317_002 | 「ええ。それで、水輪の方(かた)は、なんと?」 | |
佐久弥 | 318_036 | 「幾人か、本家の中から協力を得られそうだ」 | |
珠菜 | 319_003 | 「(ほっと笑って)そう、それはよかったですわね。こちらも、例の書き付けの場所がわかりましたわ」 | |
佐久弥 | 320_037 | 「(頷く)」 | |
彩登 | 321_003 | 「誰が動くか、もうわかった?」 | |
佐久弥 | 322_038 | 「じきにね。明日、私が彩登を迎えに来る。――彩登」 | |
彩登 | 323_004 | 「うん、わかってる。大丈夫!」 | |
佐久弥 | 324_039 | 「(ふわりと笑って)うん。しっかりね。――それじゃ、明日――」 | |
***(回想終わり) | |||
彩登 | 325_005 | 「――目印の松の木、あれだ!」 | |
汀 | 326_057 | 「――それ、なに?」 | |
彩登 | 327_006 | 「!!」 | |
(振り向くと、すぐ後ろに汀が立っていた) | |||
彩登 | 328_007 | 「あ……、竜のお面……水輪一族の本家の人……」 | |
汀 | 329_058 | 「その、手に持ってるヤツ。それ、なに?」 | |
彩登 | 330_008 | 「……っな、なんでもないよっ」 | |
汀 | 331_059 | 「じゃあ見せてよ。なんでもないなら、見せられるだろ」 | |
彩登 | 332_009 | 「あ……はい」 | |
【彩登、手に持っていた書き付けを渡す】 | |||
汀 | 333_060 | 「(さっと開くが、白紙だった)……?なに、これ、何も書いてないけど」 | |
彩登 | 334_010 | 「(汀がきょとんとしたことにホッとする)」 | |
(回想) | |||
珠菜 | 335_004 | 「(E)――さあ、おさらいですわよ、彩登」 | |
彩登 | 336_011 | 「(E)明日の正午きっかりに、目印の松の木まで、この書き付けを持って行く。誰かに見つかって、もし書き付けを見せろと求められたら、渡してしまっても、大丈夫」 | |
珠菜 | 337_005 | 「(E)ええ。普通ではなにも読めないようになっていますから」 | |
彩登 | 338_012 | 「(E)それで、彩登は、佐久弥が来るまで待つ。見つかった相手が、水輪本家の、瀧子様とじかにお話ができる人だったら、その人とは、お喋りしても大丈夫、なんだよね?」 | |
珠菜 | 339_006 | 「(E)ええ。わたくしたちはすでに面通しも終わって、杯組の一人ですから。仲間として扱っていただけますわ」 | |
彩登 | 340_013 | 「(E)その人が、その書き付けを見てどんな反応をするか……を、見るんだよね」 | |
珠菜 | 341_007 | 「(E)そうですわ。重要なのは中身ではなく、『書き付け』そのものだから――」 | |
彩登 | 342_014 | 「……あ、あの、あなたは、水輪の本家の人、ですよね?」 | |
汀 | 343_061 | 「そうだけど……」 | |
彩登 | 344_015 | 「瀧子様と、直接お話が出来る人、ですよね」 | |
汀 | 345_062 | 「……そうだけど」 | |
彩登 | 346_016 | 「(またホッとして、ふと上を見上げる)」 | |
汀 | 347_063 | 「どういう意味、(視線を追って、気配に気づく)―――」 | |
佐久弥 | 348_040 | 「―――申し訳ないけれど」 | |
汀 | 349_064 | 「……だれだ?」 | |
佐久弥 | 350_041 | 「今はまだ詳しくは話せない。(彩登を見てふわりと微笑み)――ご苦労様」 | |
彩登 | 351_017 | 「佐久弥!」 | |
汀 | 352_065 | 「……変わってるな。おまえも鬼の面か。一応聞くけど、何者?」 | |
佐久弥 | 353_042 | 「私たちは、鬼火一族」 | |
汀 | 354_066 | 「鬼火。ああ……(やっぱりと思う)」 | |
佐久弥 | 355_043 | 「そちらは…」 | |
汀 | 356_067 | 「ハ。知ってて来たんだろ?海に生きる一族は、俺たちだけだからな」 | |
佐久弥 | 357_044 | 「(頷く)」 | |
汀 | 358_068 | 「それで――」 | |
佐久弥 | 359_045 | 「……それで?」 | |
汀 | 360_069 | 「(槍を構える)俺たちからなにを奪おうっていうんだ?鬼火とやらは」 | |
佐久弥 | 361_046 | 「――やめたほうがいい。あなたは、勝てないよ」 | |
汀 | 362_070 | 「(ちょっとムカッ)なんだそれ。ずいぶんだな、おまえ」 | |
佐久弥 | 363_047 | 「ごめん。でも、それが事実だから」 | |
汀 | 364_071 | 「――ハ!(とりあえず、槍を振るってみる)」 | |
佐久弥 | 365_048 | 「(いとも簡単に流す)」 | |
汀 | 366_072 | 「(突き刺すが)」 | |
佐久弥 | 367_049 | 「(当然払う)」 | |
汀 | 368_073 | 「――」 | |
佐久弥 | 369_050 | 「――、(ふわりと笑って武器を放す)」 | |
汀 | 370_074 | 「……ほんっとに強いんだな、おまえ。(さっさと槍を下げた)――このあたりで水輪のものより強い人間に会ったのは、二度目だ」 | |
佐久弥 | 371_051 | 「ふふ、ありがとう。一度目は、一の島で、だね」 | |
汀 | 372_075 | 「(頷く)。それで――その子も、鬼火ってわけか」 | |
彩登 | 373_018 | 「(頷く)」 | |
汀 | 374_076 | 「なにかをするために、水輪に入り込んだ。……一昨日の様子から見ると、親父様の差し金だな」 | |
佐久弥 | 375_052 | 「そうだ」 | |
汀 | 376_077 | 「みぎわが会ったとか言う、浅葱(あさぎ)色の髪をした若いのも、鬼火だな?」 | |
佐久弥 | 377_053 | 「ああ。あれは鬼火の夜紫乃。私は、鬼火の佐久弥」 | |
汀 | 378_078 | 「――親父様は、あとで事情を話すと言ってたが……一の島から戻ってこない。おまえ、事情を知ってるか?」 | |
佐久弥 | 379_054 | 「え……?」 | |
汀 | 380_079 | 「……なんだ、知らないのか」 | |
佐久弥 | 381_055 | 「戻っていない?あの後、一度も?」 | |
汀 | 382_080 | 「戻ってない。だから、俺たちはまだ『事情』とやらをなにも知らされてない」 | |
佐久弥 | 383_056 | 「――」 | |
汀 | 384_081 | 「どうなってる?」 | |
佐久弥 | 385_057 | 「……少し――時間をもらえるかな。こちらで確認してみる」 | |
汀 | 386_082 | 「――わかった」 | |
【ざ…】 | |||
汀 | 387_083 | 「それから、その子どもはこっちにもらう」 | |
彩登 | 388_019 | 「!」 | |
汀 | 389_084 | 「……おまえは、俺たち水輪の杯を受けたんだ。杯を受けたものなら、俺たちの家族と同じ。お前を守るのは、家族の一員である俺の役目でもある」 | |
彩登 | 390_020 | 「え――……」 | |
汀 | 391_085 | 「おまえは親父様と瀧子様に選ばれて、杯を受けた。それなら、おまえは水輪の家族になる資格があるってことだ」 | |
彩登 | 392_021 | 「……そう、なの?」 | |
(彩登、困ったように佐久弥を見上げる) | |||
佐久弥 | 393_058 | 「(ふわっと笑って)水輪のその性質、話には聞いていたけれど本当なんだな。確かに、それならこの子はそちらの家族だ。そちらに返すのが道理。今はね」 | |
彩登 | 394_022 | 「佐久弥……」 | |
佐久弥 | 395_059 | 「大丈夫だよ、彩登」 | |
汀 | 396_086 | 「あやと?それが、おまえの名前か?」 | |
彩登 | 397_023 | 「う、うん」 | |
汀 | 398_087 | 「俺は汀だ。水輪一族の、汀」 | |
彩登 | 399_024 | 「なぎさ……」 | |
汀 | 400_088 | 「鬼火一族の彩登。杯を受けた今は、おまえは水輪の彩登でもある。そうであるうちは、俺が守る。必ずな」 | |
彩登 | 401_025 | 「うん――!ありがとう、汀」 | |
汀 | 402_089 | 「その代わりと言ってはなんだけど――佐久弥とやら。親父様のことを頼む」 | |
佐久弥 | 403_060 | 「承知した」 |