●鬼神楽●
【〜楽業の章・第11話〜】
この色…鬼火
この色…幼年時代
この色…その他
セリフ番号
「セリフ」
(10話のラストを繰り返す/SE:連射/再収録はしなくて大丈夫です!)
_千波流
_伊織
_彩登
※「お頭ーッ!!!」
※「朱音さまーっ!!」
(みんなの叫びにかぶせて、ここから回想シーン・エコー小から、だんだん大きく)
01_比奈伎 「(E)約束したからな―――」
02_朱音 「(M)比奈伎………約、束―――?」
03_幼・比奈伎 「(E)―――約束する。絶対、約束―――」
(モノローグ)
04_朱音 「一族は、私の総てだ。

私の手足。私の体。私の誇り。私の命。私の存在そのもの。
何よりも守りたい物だ。
一族を統べる者として、
この命に代えても、私の総てと引き換えても、一族を守り抜きたい。

言うなればそれは、一族が守るべき対象である、主・斉彬よりもだ。
掟の上で、たとえ私の命が主と共にあるのだとしても、
叶う限りはこの一族の存命のため、私は、私の全てを尽くすだろう。
一族の中で、私は誰よりもこの一族のことを愛している。


その一族の頭領として、みなの上に立つに相応しい者であるために
みなが誇れるべき存在であるために
私は常に真っ直ぐ背を伸ばし、ただ正面のみを見据えている。
私の中には、『弱さ』は存在しない。
私は強き者。猛る者。一族の頭領としてだけ存在すべきもの。

そうあるべきだと。
そうあれと。

本来私の持つべき弱さを、全てその身に引き受けてくれた、
その存在を踏み台にして、私は今、揺るぎなく立っている事が出来る。


…本当は。心の奥底でいつも叫んでいる事がある。
朱音という一人の人間として、この魂と引き換えてでも
真実たった一つだけ守りたいもの…
頭領という立場ゆえに、口にすることすら許されない、この想い。
本当は、声に出して伝えたい―――たった一つの、本当の願い。

―――もし、許されるのならば―――

私は、……おまえを……おまえ、だけは……―――」
以下、幼年時代シーン/
★千波流・寿々加は、声変わり後、亜夏刃は声変わり前後?、比奈伎・佐久弥は声変わり前。

【参考までに、おおよその年齢です】
朱音・各務・千波流=16歳前後
寿々加=14歳前後
亜夏刃=12歳前後
比奈伎=10歳前後
珠菜=8、9歳
佐久弥=7歳前後

(亜夏刃に関しては現在よりも口は重たくありません(笑)、逆に佐久弥は口が重たいです)
(少年と少女は、鬼に対する恐怖心よりも、好奇心の方が勝っています。
 怖い、と悲鳴を上げながらも、その口調には何処か楽しさも混ざっています)
(子どもたちの騒ぐ声、重ねてF・IN)
05_里の少年 「鬼だー! 鬼がたくさん来たよ!」
06_里の少女 「鬼が山から降りてきたよ!」
07_里の少年 「つかまったらみんな食べられちゃうよ!!」
08_里の少女 「怖い怖い鬼が来たよー!!」
09_幼・寿々加 「(かぶせて)なんだよ、鬼じゃねえよ!」
10_幼・千波流 「こら寿々加、相手にするな、キリがないだろ」
11_幼・寿々加 「千波流! けどさあ!!」
12_里の少年
12_里の少女
※「きゃー!! 鬼が怒ったー!!」
13_里の少女 「逃げなきゃだよお! みんな逃げろー!」
14_里の女性 「(かぶせて)どうしたの、おまえたち…何の騒ぎ?」
15_里の少女 「あ、おかーさん、鬼が来たんだよ!」
16_里の女性 「な、なんですって!?」
17_里の少女 「子どもの鬼がいっぱい降りて来たよ!」
18_里の男性 「(かぶせて)何をしてる!」
19_里の少年 「おとーさん! 見て見て! 鬼が来たんだよ!」
20_里の女性 「(血相を変えて)二人ともやめなさい!! 連れて行かれたらどうするの!!」
21_里の男性 「お前たち、早くうちに入りなさい! …鬼どもめ、さっさと里から立ち去れ!!」
22_里の女性 「なんて忌々しい面…! さっさと消えて頂戴!」
23_里の男性 「早く消えろ! さもないと、ただではおかないぞ!」
24_里の少女 「やっぱり、食べられちゃうの?」
25_幼・寿々加 「そんな事しねーよ!」
26_里の少女 「わあ怒ったー!!」
27_里の少年 「逃げろー! 鬼に食べられちゃうよー!!」
28_里の女性 「早く消えて!!」
29_里の男性 「鬼はここから立ち去れ!!」
30_幼・寿々加 「俺たちは鬼じゃない!」
31_幼・朱音 「……寿々加。もう良いだろう、もうやめろ」
32_幼・寿々加 「朱音! でもさあ!」
33_幼・千波流 「ムキになるなよ寿々加」
34_幼・寿々加 「千波流…」
35_幼・千波流 「ここはあくまで里人たちの集落だ。
俺たちは、別にここで暮らしていくわけじゃないし、関わらなければ良いだけの話だろ」
36_幼・寿々加 「でもさ…」
37_幼・亜夏刃 「懲りないヤツだな、お前も…」
38_幼・寿々加 「亜夏刃」
39_幼・亜夏刃 「そもそも、彼らは自分たちとは『違う』ものだ。相容れるはずがない」
40_幼・各務 「…そうだよ寿々、もうおよし。我らが得体の知れぬ者に写るのは、仕方の無い事え。
無理に近寄ろうとすれば、かえって遠ざかるというもの…」
41_幼・佐久弥 「各務の言う通りだよ」
42_幼・寿々加 「佐久弥」
43_幼・佐久弥 「私たちが里人からは忌み嫌われてしまうのは、仕方のない事だから」
44_幼・珠菜 「そうですわね。普通の里人は、わたくしたちのように動けたりしないですもの。
要するに…わたくしたち、【普通】ではないのですわ」
45_幼・各務 「(頷き)そうだえ。里人にとっては、我らは異種…。
そして弱い者は得てして、異種を嫌うものだからね」
46_幼・珠菜 「そうして、自分たちの身を守ろうというわけですわよね。
仕方ありませんわよ、そうする以外には、自己防衛能力が無いのですもの」
47_幼・千波流 「……。……各務はともかく、珠菜も…本当に俺より年下かどうか疑うぞ…」
48_幼・珠菜 「(小さく笑って)どうですかしらね」
(千波流と珠菜の会話にかぶせて)
49_幼・比奈伎 「…朱音。どうして、俺たち鬼火一族は…
一族の里を降りるとき、この鬼の面を取っちゃいけないんだ?」
50_幼・朱音 「顔を見られると、仕事がしにくくなるからな。顔は見られないに越した事はないさ。
掟でもあるしな」
51_幼・佐久弥 「…比奈は、面が嫌い?」
52_幼・比奈伎 「き、嫌いとか、そういうのじゃなくて、…そんな事まで掟で決まってるのって」
53_幼・朱音 「(困ったように笑って)比奈…お前は、掟に従う事が苦痛か?」
54_幼・比奈伎 「…そうじゃない、けど。でも、鬼って呼ばれるのは…あんまり好きじゃない」
55_幼・朱音 「そうか」
56_幼・寿々加 「比奈のはただの臆病だろ、甘やかすなよ朱音!」
57_幼・比奈伎 「う、うるさいな、寿々だって、『鬼』って呼ばれて怒っただろ」
58_幼・寿々加 「だってよ、あんまり「鬼」「鬼」ってうるせえから」
59_幼・各務 「鬼面のせいだけでなく、我らが鬼と呼ばれるは、決して故なき事では無いえ」
60_幼・寿々加 「各務」
61_幼・各務 「里人たちにとっては、我らのこの尋常ならざる能力が、
人に為らざるモノ―――それこそ、『鬼』に見えるのであろ」
62_幼・千波流 「そうだな。俺たちはその力を生かして、主のために戦うんだ。
そのために、毎日修練してるんだろう? これほど名誉な事はないぞ」
63_幼・寿々加 「けどさぁ千波流、その主だって、そろそろ危ないって話じゃんか。な、そうだろ各務」
64_幼・各務 「ああ。近いうち、政権の交代もあろうな」
65_幼・亜夏刃 「では、新しく『自分たちの主』が起つんだな」
66_幼・朱音 「(頷く)そうだ。近く、主の交代がある。一族に、年若い、新しい仲間も加わる。
そうすれば、私が鬼火の頭領となる。
(優しく)比奈、お前は私を支える立場になるんだぞ?
しっかりしてもらわねばな」
67_幼・比奈伎 「! …わかってる! 俺は朱音の支えになる。そして朱音を守る。約束する」
68_幼・朱音 「そうか。頼もしいな」
69_幼・比奈伎 「絶対、約束する!」
70_比奈伎 「(かぶせて)絶対に、約束する―――」
71_朱音 「(かぶせて)ああ。信じている。―――もちろん、信じているさ―――」
(エコーにて消えていく声/昔の回想シーン終わる)
72_朱音(M) 「(M)……(微笑)ああ……ずいぶん、昔の、夢だな―――
あれから比奈伎は、徐々に私の背を追い越し、いつしか一人前の青年になり…
頼りない小さな手が、私の手を頼る事が少なくなった。
それは嬉しくもあり、同時に、寂しくもあり―――」
(SE:風・草原の草が揺れる/今から少し前の回想シーン)
73_朱音(M) 「(M)目を開けばそこには…目の前に草原が広がっていて―――」
(遠くから、楽しそうな面々の笑い声や、話し声がだんだん近づいてくる)
74_彩登 「(遠くで・楽しそうに)きゃー瀬比呂、待って待ってぇ!」
75_瀬比呂 「(遠くで・楽しそうに)あはは〜、こっちだよ! 彩登、こっちだってば!」
76_彩登 「(遠くで・楽しそうに)えーっ、見えないよぅ、瀬比呂〜、何処〜?」
77_瀬比呂 「(遠くで・楽しそうに)あははは、違うよ彩登、こっちこっち〜!!」
(見ると、一面の草原の中、彩登たちがまろぶように走ってくる)
78_朱音(M) 「(M)―――遠くから、笑い声が聞こえてくる―――
瀬比呂と彩登だ。競走でもしているのだろうか。
…風が吹くたびに、小さな二人の姿が、背の高い草々の隙間に見え隠れする」
(それを見ている朱音の元に、一人、また一人と一族の顔が)
79_各務 「(朱音に近づいてくる)―――ふふ…楽しそうだねえ、二人とも。
あんなに走って…転ばねば良いが」
80_朱音(M) 「(M)艶やかな錦とも見紛う存在の各務。
確実に私を補佐してくれる、頭領として頼るべき存在」
81_寿々加 「(やや遠くの方から)ほーら年少組! 前向いてねえと、こけるぞー!」
82_朱音(M) 「(M)目の前では、草が風にたなびいて、光を受ける海原のようにどこまでも美しい。
波のような草の中を泳ぐように、年少組を誘うように、先頭を行くのは寿々加。
その明るい笑い声は、私たちの心を満たしてくれる―――」
83_伊織 「(やや遠くの方から)そんな事言って、寿々加が転んだら笑える〜!」
84_夜紫乃 「(やや遠くの方から)って言ってる伊織が転んだら、いろんな意味で笑われるよねー」
85_伊織 「(やや遠くの方から)なによ夜紫乃、アタシはこけないわよっ!(ぼかっ)」
86_夜紫乃 「(やや遠くの方から)いってーっ!」
87_朱音(M) 「(M)優しくて面倒見が良く、一生懸命な伊織。
彼女を見守るようにして続く、見た目以上にずっと強く、頼もしい夜紫乃」
88_千波流 「よーし、彩登、良く見えるように肩車をしてやろう」
89_彩登 「ありがと千波流っ。(肩車をしてもらう)きゃーっ! たかーいっ!!
ふふふ、遠くまで良く見える〜。あーっ、瀬比呂、見ぃつけた〜!」
90_瀬比呂 「あーっ、彩登ずるいよぅ、僕も肩車して欲しいーっ! ねえ、亜夏刃、お願い!」
91_亜夏刃 「…(ふぅ)しょうがないな」
92_朱音(M) 「(M)真っ直ぐで大らかな千波流。
千波流に後ろを任せれば、私たちは安心して先陣を切る事が出来る。
そして、その力でいつも影からみなを支えてくれる、静かながらも頼もしく温かい亜夏刃」
93_睦月 「(やや離れた位置で)み、みんな早いですぅ〜! 待ってください〜」
94_朱音(M) 「(M)遅れてやってきたのは真面目で器用でしっかり者の睦月。
睦月の管理する武器以外には、私たちは使わない」
95_羽霧 「(やや遠くの方から)だぁから、お前のそのやり方が気に食わないって言ってんだろ!」
96_珠菜 「(やや遠くの方から)あらあら羽霧、これだから考えのない方は困りますわよねえ」
97_羽霧 「(やや遠くの方から)誰が考え無しだ! それはお前だろ!」
98_珠菜 「(やや遠くの方から)オマケに短気ですわ、困った方ですわよねえ」
99_羽霧 「(やや遠くの方から)誰が困ったさんだ珠菜!」
100_朱音(M) 「(M)羽霧と珠菜の息の合った明るい会話は、
変わらぬ一日の始まりを感じさせてくれる」
101_瀬比呂
101_彩登
※「(遠くから手を振る)朱音さま〜!」
102_朱音(M) 「(微笑んで、手を振り返す)(M)―――ふと後方に気配が現れた。
確認する必要は露ほども無い。見知った、温かい気配」
103_佐久弥 「(微笑む)」
104_朱音(M) 「(M)雪の降り積もった深夜を思わせる佐久弥。私の、信頼すべき右腕」
105_比奈伎 「…朱音」
106_朱音(M) 「(M)―――そして最後に。いつものように私の肩を軽く叩き、隣に並ぶ。
わずかに高い位置にある、私に良く似た深い色の眼差しを
小さな微笑みに変えて、互いに見詰め合い、みなへと視線を戻す」
107_朱音(M) 「(M)私たちはこれで充分。私の半身、比奈伎。私の、弟―――」
108_比奈伎 「(E)俺は、お前を守るためならどんな事でもする。絶対に、約束する」
109_朱音(M) 「(M)…小さな手で誓ってくれた時―――
そして、青年へと成長したお前が再び同じ言葉で約束してくれたあの瞬間が、
私にとって一番大切な時間だった事…」
110_比奈伎 「(E)鬼火一族の頭領は、朱音…お前だけだ」
111_朱音(M) 「誰に言われたのでもなく、
比奈伎がそう言ってくれた事が、何よりも大切だった事―――」
112_比奈伎 「(E)朱音」
113_朱音(M) 「仲間を率いる立場に居る私には、誰にもこの胸のうちを
明かす事は出来ない…私の生涯の秘め事―――」
114_比奈伎 「(E)…約束…した、からな―――」
115_朱音(M) 「もし。もしも許されるなら…その、たった一つの存在だけは守りたかったけれど」
116_比奈伎 「(E)朱音を、守るよ―――」
117_朱音(M) 「…比奈」
(そして、時は現実に戻る。みんなを庇って銃弾に倒れた朱音。千波流たちが周りを囲む)
118_千波流 「お頭ぁっ!!」
119_彩登 「朱音さまああ!」
120_伊織 「朱音さまぁっ!」
121_朱音 「(M) ―――ああ…そうだ。私は―――いつでも守られていた。
比奈伎の姉である事―――鬼火の頭領である事で、生かされていた…。
そうだ。私は、いつでも彼らと共にある。
彼らと共にあるために、生き抜いていたんだ―――」
122_千波流 「お頭…ッしっかりして下さい!!」
123_朱音 「(少し咳き込んで)…主の正体を疑った時から…私の命運は尽きていたさ…。
結局巻き込んでしまった…すまないな、みんな…
お前たちだけは、何とか―――生き延びて欲しかったというのに―――」
124_千波流 「何を言ってる…っ、あなたが頭領じゃなかったら、
俺たちは今まで生きてはこられなかった!!」
125_朱音 「……。………そうか」
126_千波流 「(搾り出すように)だから、恥じるな」
127_朱音 「(微笑んで)………ありがとう。私こそが、みなに、生かされていたよ―――」
128_千波流 「!! お頭…!? お頭…っ!!」
129_伊織 「朱音さまッ!」
130_彩登 「―――!! あ、あ…!」
131_伊織 「―――……あ、…朱音…さま…?」
132_伊織
132_彩登
※「…………ッ!!!」
133_伊織
133_彩登
133_千波流
※「朱音さまぁあ!!!!」
※「お頭ァッ!!!」
134_朱音 「(M)―――たった一度…ただ一度だけ、夢を見たことがある。
もし―――戦の無い時代に生まれていたのだとしたら…私は…
それでもきっと、一族のみなと、…そして、比奈伎と共に、生きているだろうかと―――」
(朱音の視界から、前を歩くみんなが見える。それぞれ振り向きつつお頭を呼ぶ)
135_彩登 「朱音さま」
136_瀬比呂 「朱音さま」
137_寿々加 「お頭」
138_伊織 「朱音さま」
139_夜紫乃 「朱音さま」
140_睦月 「朱音さま」
141_亜夏刃 「お頭」
142_珠菜 「お頭」
143_羽霧 「お頭」
144_千波流 「お頭」
145_各務 「お頭」
146_佐久弥 「お頭」
147_比奈伎 「朱音」
148_朱音 「(E)―――みなと、共に―――」
(タイトルコール)
149_朱音 「『鬼神楽』最終章 〜楽業の章〜 第十一話」
【続く】