●鬼神楽●
【〜楽業の章・第10話〜】
この色…東風
この色…鬼火
この色…武士・女中・ガヤ(注:ガヤ・全員部分は、ファイル名 セリフ番号_お名前 )
この色…その他
ガヤ:一本のファイルに、三パターンほど入れて下さい。
    その際には、それぞれの間を2秒ほど空けてくださると助かります】
※万一使用セリフに不安がある場合には、よろしければ、こちらから指定させていただきます。
セリフ番号
「セリフ」
(モノローグ)
01_珠菜 「…どうして、こんな事になるなんて思えたかしら、と。
一族の中の誰もが、きっと思いもしなかった。
夢に見ることすらありえないことだった。
確かに昨日までいつも通りで、…あの人も傍にいたはずなのに。

いつもそこに居て、すべてがあるのが当然、だなんて…
誰に言われたわけでもなく、すっかり信じきっていた。

「絶対」だなんて、誰にも決められなかったはずなのに。

「絶対」が無いからこそ、わたくしたちはそれを守るために戦っていたはずなのに。
それなのに、心のどこかで優しい誘惑に甘えてしまっていた。
わたくしは、そんな幻のような不確かな物に惑わされたりはしない…
そう、思っていたはずなのに。

先陣を切って敵の只中に飛び込むことよりも、
傷ついた仲間を守ってただ一人敵と対峙することよりも、
ずっとずっと恐ろしいことが、…突然やってくるなんて―――」
(モノローグ終わり/黒幕の言葉に激昂する千波流)
02_千波流 「…これは…何の冗談だ!! いい加減なことを言うのはよせ!!」
03_黒幕 「そんなに怒鳴らないでよ、千波流。面白い話をしてるのに」
04_千波流 「面白い…だと!?」
05_朱音 「御託は良い。説明を続けろ」
06_黒幕 「はいはい。朱音さまは怖いなぁ。えーっと、何処まで話したっけ…。
おまえたちの生まれた話は、もうしたよね。
あとは、パノラマの世界に一つの時代を用意し…そこにお前たちを放り込む」
07_朱音 「おまえは、監視役兼案内人という事か」
08_黒幕 「その通り。お前たちが『此処』でどうやって生き延びていくか…
それを【上】から見ている僕らが賭けるんだ。
感謝してよね、僕はこの中で何年も付き合ってやってるんだから」
09_寿々加 「は…、気の長い話だな…! 賭けのために、ずっと仲間のふりをしてたってのか!」
10_黒幕 「フリじゃないよ、寿々加。フリなんてしてたら、すぐばれちゃうだろ?」
11_伊織 「どういうこと…?」
12_黒幕 「ちゃーんと、『瀬比呂』っていう別人格を用意してね。
まぁ難しい話になるから省くけど、今の僕は、体は瀬比呂のままだけど、
頭の中はもう、『瀬比呂』じゃないわけ」
13_彩登 「瀬比呂は…何処に行っちゃったの!?」
14_黒幕 「彩登。『瀬比呂』はね、もう消えちゃったんだよ。お別れしたかった?」
15_千波流 「貴様…っ」
16_黒幕 「くすくす…今回は特に楽しめたよ。
かたや生活感と愛情の溢れる鬼火。
かたや殺伐として生活感の無い東風。
それが同じサンプルから出来てるなんて、信じられないよね」
17_朱音 「それで、同じ顔だったと言うわけか」
18_黒幕 「ご名答!」
19_彩登 「そんな…」
20_黒幕 「実際には、ここで過ぎた時間は、「向こうに居る僕」にとっては、
ほんの数ヶ月…ここは、時の感覚すらも管理された、完全な箱庭なんだよ」
21_佐久弥 「…私たちの思考に、『世界の外』がなかったのも、その設定のせいと言うわけ」
22_黒幕 「さすが佐久弥。おまえは少し例外だったね。
余計な事まで探ってくれて、ヒヤヒヤさせられたよ」
23_佐久弥 「…私も、一度も『壊れなかった』からね」
24_黒幕 「そうだねえ。おまえも随分粘ったな。でもこの賭けはもう終わり。
お前たち鬼火が、上に対して反乱を起こす―――その時点で、僕の勝ちだからね。
これ以上はもう必要ない。
あとは、僕の精神をここから戻して、この時代を消去するだけだ」
25_寿々加 「消去だと!?」
26_黒幕 「簡単だよ? 「リセットボタン」って言ってね。それを、一度押すだけ。
たったそれだけの作業で、お前たちは消えてなくなる。この世界はなかったことになる」
27_伊織 「な、無かった事って…そんな!」
28_黒幕 「あとは…お前たちを戦の中で、華々しく死なせてあげる。これは僕の親心だよ」
29_千波流 「く…っ」
30_彩登 「(がくがくと震えながら)せ、瀬比呂、…な、…なんで、こんな事…」
31_黒幕 「(優しく)彩登」
32_彩登 「せひ、ろ」
33_黒幕 「(微笑)今更、これ以上もう何も知る必要はないよ。
―――どうせみんな死んじゃうんだからさ」
(タイトルコール)
34_珠菜 「『鬼神楽』最終章   〜楽業の章〜 第十話」
(壁が持ち上がって、武士が山ほど入ってくる)
35_武士:ガヤ ※(わらわらと集まって来て一族を囲んで構える一言)
「いたぞ!」「あそこだ!」等
36_寿々加 「(舌打ち)まぁた武士で人海戦術かよ…!」
37_伊織 「ど、何処にこれだけの人数が…っ」
38_大将 「鉄砲隊構え!!」
39_武士:2 「一斉射撃 用意!」
40_武士:全員 ※「一斉射撃、用意!!」
41_大将 「―――撃て!!」
42_千波流 「危ない!!」
43_朱音 「―――伏せろ!」
(銃撃がおさまる)
44_彩登 「お、おさまった…?」
45_千波流 「ああ、そのようだな」
46_朱音 「早くここから出るぞ! みんな急げ!」
(全員、息を切らして走っている・3秒ほど)
47_佐久弥 「っ! 空気が変わった」
48_比奈伎 「佐久弥、この音―――!」
49_寿々加 「―――ヤバイっ!! みんな急げぇっ!!」
(轟音が響いて、壁が落ちてくる/寿々加一人、壁の向こう側に取り残された)
50_比奈伎 「寿々加!」
51_寿々加 「…まぁた、カラクリかよ…!!」
52_千波流 「寿々加ぁっ!!」
53_寿々加 「みんな、無事か!」
54_朱音 「こちらは全員大丈夫だ! おまえは!」
55_寿々加 「ちょっと出遅れただけだ、心配ねえよ」
56_朱音 「しかし…どうにかこの壁をあける方法は無いのか!」
57_寿々加 「良いから先に行け。後から追いつく」
58_朱音 「寿々加!」
59_寿々加 「千波流! みんなを引っ張って先に走れ! 任せるぜ」
60_千波流 「…分かった。伊織、彩登、俺から離れるなよ」
61_伊織 「う、うん…でも、寿々加はどうするの!?」
62_彩登 「このまま、ここに置いてっちゃうの!?」
63_寿々加 「置いてかれやしねーって! 実は開け方は分かってるんだ。
まだちょっと時間はかかるが、直ぐ追いつくぜ」
64_伊織 「ほんとだよね!?」
65_寿々加 「ああ、だから、おまえらは早く行け!」
66_千波流 「よし、伊織、彩登、行くぞ!」
67_伊織
67_彩登
※「うん!」
(千波流、伊織と彩登をつれて走り去る)
68_寿々加 「比奈、佐久弥、そこに居るんだろ」
69_佐久弥 「居るよ」
70_比奈伎 「寿々加…っ」
71_寿々加 「お頭を守れよ」
72_佐久弥 「うん」
73_比奈伎 「寿々、まだ開けられないのか!?」
74_寿々加 「追いつくって言ってるだろ! 何もたもたしてる! さっさと行け!」
75_朱音 「寿々加―――絶対、死ぬなよ」
76_寿々加 「馬ー鹿。お頭…、いや、朱音。お前こそ、だろ!」
(壁の向こう側で銃声が響く)
77_朱音 「寿々加!!」
78_寿々加 「良いから行けえっ!!」
79_朱音 「…っ、比奈、佐久弥、行くぞ」
80_佐久弥 「…」
81_比奈伎 「朱音…ッ」
82_朱音 「行くぞ」
83_比奈伎 「…っ」
(どうにか、その場を走り去る朱音・比奈伎・佐久弥。そして残された寿々加の元には黒幕が)
84_黒幕 「あははっ、寿々加、お前一人でどうするつもり?」
85_寿々加 「絶対にあいつらの所へは行かせねえからな…!!」
(みんな息を切らせて走っている/それぞれセリフは、少し息を切らせつつ(キャラによりますが)
86_千波流 「ちっ、また左右に分かれてる!」
87_伊織 「ど、どっちに行けば良いの!?」
88_佐久弥 「お頭、屋敷の造りは?」
89_朱音 「私にも詳しい見取りは分からない。
何しろ、こんなに奥まで入り込めたのは初めてだからな」
90_千波流 「(唸る)」
91_朱音 「比奈伎! 後ろは」
92_比奈伎 「今の所―――追手は来ていないな」
93_朱音 「(頷く)だが、すぐに追いつかれるだろうな。とにかく、進もう」
94_比奈伎 「俺が最後につく。千波流は先を。お頭を頼む」
95_千波流 「分かった」
96_佐久弥 「最後尾には私もつく」
97_比奈伎 「佐久弥」
98_朱音 「よし。急ぐぞ。寿々加が時を稼いでいてくれるうちに少しでもここから離れた方が良い」
(みんなが先に走っている。それを追いかけて走る比奈伎と佐久弥)
99_佐久弥 「とりあえず―――すぐに私たちを追ってくるわけではないみたいだけど」
100_比奈伎 「だが、これから先も何を仕掛けてくるか分からないな」
101_佐久弥 「うん。先回りくらい簡単に出来るだろうしね」
102_比奈伎 「そうだな。……っ」
103_佐久弥 「え?」
104_比奈伎 「―――っ(膝ががくっと折れる)」
105_佐久弥 「比奈伎?」
106_比奈伎 「……、ぅ、…ハァッ、ハァ……ッ、…ぐっ、…ゴホッ…(吐血)……」
107_佐久弥 「―――」
108_比奈伎 「ハァ…ッ、……ここまで、か」
109_佐久弥 「比奈伎」
110_比奈伎 「…とうとう、走れなくなった、な」
111_佐久弥 「…」
112_比奈伎 「…佐久弥、…朱音を…、頼む」
113_佐久弥 「………」
114_比奈伎 「……そんな顔、するな、よ…」
115_佐久弥 「…ひな」
116_比奈伎 「良いから、…行け―――」
117_佐久弥 「(身を翻す)」
(朦朧とする比奈伎の視界の中で、佐久弥が走っていくのがおぼろげに見えた)
118_比奈伎 「……ごめ、ん―――さ…く……」
(攻撃音のあと、懸命に一人で戦い続ける寿々加)
119_寿々加 「(息を切らしている・苦しげ)」
120_黒幕 「はぁ…ほんと、しつこいなあ…寿々加」
121_寿々加 「うる、せえ…っ」
122_黒幕 「(嘲笑しつつ、蹴飛ばす)」
123_寿々加 「ぐ、う…っ!」
124_黒幕 「もういい加減、諦めたら? そうやって這いつくばってるのがお似合いだよ」
125_寿々加 「あいつらの所へは、絶対に、行かせねえ…っ」
126_黒幕 「そうやって粘るだけ無駄なのに」
127_寿々加 「へ…っ、どうかな?
こうしてる間に、あいつらはもう外へ出ちまってるかもしれねえぞ」
128_黒幕 「………」
129_寿々加 「屋敷の外に出さえすりゃ、俺たち一族に勝てるものはいない!」
130_黒幕 「…寿々加」
131_寿々加 「残念、だったな。所詮、てめえなんかの計算ずくにはいかねえんだよ!」
132_黒幕 「(ふぅ……)勘違いするな」
133_寿々加 「(突然変わった口調に緊張する)……なん、だと」
134_黒幕 「屋敷の中だろうと外だろうと、貴様らに生き延びる道などありはしない。
―――絶対に、だ」
135_寿々加 「―――!」
136_黒幕 「(くくっ)そっちこそ、残念、だったねぇ」
137_寿々加 「てめえ…!」
138_黒幕 「(くすくす)ばいばい」
(銃撃音がこちらまで聞こえてくる)
139_彩登 「な、何今の音!?」
140_伊織 「まさか、寿々加に何かあったんじゃ…っ」
(佐久弥、走ってきて先に行っていたみんなと合流する)
141_朱音 「―――佐久弥! どうした遅れているぞ、急げ!」
142_佐久弥 「(素早く駆け寄り、ぼそっと)朱音、戻って」
143_朱音 「何?」
144_佐久弥 「良いから、早く。…比奈伎が」
145_朱音 「…!」
146_佐久弥 「早く」
147_朱音 「(踵を返し)みな、先へ行っていてくれ、すぐに追う!」
148_千波流 「お頭!?」
(もうもうと煙が立ち上がる中、寿々加、力尽きて床に倒れている)
149_寿々加 「(少し咳き込んで)…ウ…。……もう、動けねえ、な…」
150_朱音 「(E)寿々加―――絶対、死ぬなよ」
151_寿々加 「(M)それは、お前だ、朱音―――生きて、生きて、…絶対に」
152_朱音 「(E)寿々加」
153_寿々加 「(M)…お前が生きてりゃ、…それだけで生きていけるヤツが、いるんだからな―――」
154_黒幕 「ふん…お前たちごときが、僕に勝てるわけないのにね。全く―――愚かだな」
155_寿々加 「…愚か、でも、…良い(床に倒れたまま)」
156_黒幕 「…なんだって?」
157_寿々加 「愚かでも、良いさ…。てめーみたいになるよりは、ずっと…マシだ」
158_黒幕 「(微笑んで)寿々加。僕は、お前の事は結構買ってやってたのに。惜しかったね」
159_寿々加 「……そーかよ。じゃぁ、…一緒に逝ってくれるよな?」
160_黒幕 「―――何?」
161_寿々加 「(懐からばっと爆薬を取り出す)てめぇも道連れだ…!!」
162_黒幕 「馬鹿な…やめろ寿々加!!」
(火種のはじける音/朱音が、走ってくる/比奈伎の目には映っていない)
163_朱音 「(少し遠くから)―――比奈伎!!」
164_比奈伎 「―――! 朱音!? 馬鹿…ッ、何故戻ってきた…(ハッとして)―――伏せろッ!!」
165_朱音 「!!」
(爆音/爆風に二人とも倒れる)
166_朱音
166_比奈伎
※「(爆風で壁に激突する)うっ!」
(爆風が収まる)
167_朱音 「……ゥ、ッつゥ…(頭を振る)」
168_比奈伎 「…ッ」
169_朱音 「!! ―――比奈伎!」
170_比奈伎 「…お頭、無事か」
171_朱音 「私は…、お前が…ッ」
172_比奈伎 「……俺は、…大丈夫、だ―――早く…行け。みんなが、待ってるぞ」
173_朱音 「! …お前…もう、目が…?」
174_比奈伎 「…まだ、千波流と佐久弥がいる。
変わらず、お頭を、支えてくれる―――寿々加も、すぐ追いつく…」
175_朱音 「しゃべるな、今血止めをする!」
176_比奈伎 「…死は―――恐れた事は無い…、仲間や……お頭を、喪う事の方が、ずっと―――」
177_朱音 「比奈伎ッ!」
178_比奈伎 「……ずっと…、ただ、一人のために……そればかりを想ってた…」
179_朱音 「良いからしゃべるな…ッ!!」
180_比奈伎 「…朱音…」
181_朱音 「比奈…ッ」
182_比奈伎 「(少し笑って)…約束…した、からな―――」
183_朱音 「約束…?」
184_比奈伎 「お前を…守ると…絶対に…。…だから……」
185_朱音 「…!! 死ぬな比奈伎!」
186_比奈伎 「朱音がいて―――、一族があれば―――」
187_比奈伎 「(M)―――俺は、…少しは、役に立てただろうか。約束を守る事が出来ただろうか。
俺にとっては、朱音の存在が生きる理由―――
朱音の為に生きる事が―――総てだった」
188_朱音 「比奈!」
189_比奈伎 「…朱音、…ぁ………」
190_朱音 「何だって? 聞こえない、比奈伎!」
191_比奈伎 「―――ぁ、………ぅ」
192_朱音 「比奈、もう一度…ッ」
193_比奈伎 「…あか、ね……―――(腕から力が抜ける)」
194_朱音 「…ッ」
(回想シーン。今から何年か昔。里にて)
195_寿々加 「―――ったく、お前も少しくらい笑えば、可愛げもあるのによぉ」
196_比奈伎 「おかしくも無いのに笑えるか」
197_寿々加 「おかしくても笑わねーくせに」
198_比奈伎 「ぅ、うるさいっ」
199_朱音 「―――比奈伎! そこに居たのか」
200_比奈伎 「(朱音を見て微笑む)…朱音」
201_寿々加 「(溜息)…だから、それを少しはこっちにだなぁ」
202_比奈伎 「なっ?」
203_朱音 「ははは、比奈伎の笑顔は私だけの特権だぞ、寿々加」
204_比奈伎 「あ、朱音っ!」
205_朱音 「(比奈伎の眉間に指を当てて)眉間にしわがよってるぞ。可愛い顔が台無しだ、比奈」
206_比奈伎 「…っ」
207_佐久弥 「笑えば可愛いのに」
208_比奈伎 「っ!?」
209_佐久弥 「くすくす、ね、比奈」
210_比奈伎 「ぅ、うるさい佐久弥っ、笑うなっ!」
(そこに、軽く足音が)
211_羽霧 「―――比奈伎! ちょっと見て欲しい書簡があるんだ」
212_寿々加 「お、羽霧」
213_比奈伎 「佐久弥もいるが」
214_羽霧 「主からの預かりもんがずらっと羅列してあるヤツだからさ。比奈伎の方が詳しいだろ」
215_比奈伎 「分かった」
216_朱音 「では比奈伎、羽霧。夕餉の時にな」
217_比奈伎 「ああ」
218_羽霧 「生きの良い魚が手に入ったからな、楽しみにしててくれ!」
(比奈伎と羽霧を見送って)
219_寿々加 「―――ああ見えて、実は結構泣き虫なんだよな、比奈伎のヤツ。
変な事で良く泣いてるぞ。な、佐久弥」
220_佐久弥 「(微笑んでいる)」
221_朱音 「ふふ。…あれは、私の代わりでもあるのさ」
222_寿々加 「え? 代わり?」
223_朱音 「(頷く)私が泣かない分、比奈が泣いてくれているのさ」
224_佐久弥 「ふふ…そうだね」
225_朱音 「(くすくす)ああ。だから本当は私の方が、比奈伎が居てくれないと、駄目なんだ」
(昔の思い出から、現在に戻って、目の前には息絶えた比奈伎の姿)
226_朱音 「比奈伎…ッ」
(比奈伎との会話が朱音の脳裏を反芻する)
227_比奈伎 「(E)約束したからな。絶対に、どんな事をしても守ると」
228_朱音 「(E)もちろん、信じてるさ」
229_比奈伎 「(E)愛している。…誰よりも、何よりも…愛している。あいしてる―――」
(朱音の見開いた瞳から、こらえきれず、大粒の涙が溢れる。朱音の、生涯でただ一度の涙)
230_朱音 「…!!(抱き締める)―――比奈伎ィ…ッ!!!」
(そのころ、朱音を待っている千波流・伊織・彩登・佐久弥)
231_彩登 「朱音さまたち、遅いね…」
232_伊織 「彩登…。朱音さまなら大丈夫。比奈伎がついてるんだし、絶対戻ってくるから」
233_佐久弥 「…」
234_千波流 「だが、ここに長く留まるのは危険だ…少し移動した方が良いかもしれん」
235_伊織 「で、でも、二人とはぐれちゃうかもしれないじゃん、千波流!」
236_佐久弥 「じゃあ、私が様子を見てくるよ」
237_千波流 「佐久弥!? 一人では危険だぞ!」
238_伊織 「そうだよ! ここで一緒に待ってた方が良いよ!」
(更に近づく轟音)
239_彩登 「! 今の爆発、すごく、近い…っ」
240_千波流 「やはり、向こうの部屋に移動しよう―――」
(そこに朱音、戻ってきて、千波流たちに声をかける)
241_朱音 「(少し遠くから)―――みんな! ここを出るぞ」
242_佐久弥 「(少しはっとしたように)―――朱音」
243_千波流 「お頭! ご無事で」
244_伊織 「朱音さま!」
245_彩登 「良かったぁ…っ」
246_朱音 「火薬の臭いがする。早くここを離れた方が良い。千波流! みんなを連れて先へ!」
247_千波流 「分かりました。行くぞ、伊織、彩登」
248_彩登 「う、うん」
249_伊織 「あれ? 朱音さま、比奈伎は?」
250_朱音 「アイツは他の通路から出口を探している。さあ、みんな、早く行け!」
251_千波流
251_伊織
251_彩登
※「(返事)」
(走って行く三人の後姿を見ながら)
252_佐久弥 「………」
253_朱音 「何だ佐久弥」
254_佐久弥 「―――良い、の?」
255_朱音 「(バンッ!と壁を殴る)」
256_佐久弥 「…」
257_朱音 「―――見縊るなよ。私は―――この一族の頭領だぞ」
258_佐久弥 「……」
259_朱音 「行くぞ」
260_佐久弥 「…うん」
(走り出す二人/朱音の脳裏に刻まれている言葉)
261_比奈伎 「(E)朱音を護る事が出来るなら、それだけで、他には何もいらない」
262_比奈伎 「(E)約束、したからな―――」
(今、朱音は涙を流していない。だが、隣を走る佐久弥には痛いほどの慟哭が感じられた)
263_朱音 「…―――(涙を見せず、でも本当は泣いている)」
(轟音が聞こえる中、出口を探して彷徨う5人)
264_朱音 「私はあちらを探す。千波流は、伊織と彩登を守り、ここで待て」
265_千波流 「分かりました」
266_佐久弥 「じゃあ、私は向こう側を」
267_朱音 「頼む。小半時以上は行動するなよ、その時はここに戻れ」
268_佐久弥 「(頷く)貴女も」
(二人、散る/朱音、しばらく一人で進んでいて、ふと立ち止まる)
269_朱音 「―――いい加減、出てきたらどうだ。…いるんだろう、そこに」
270_黒幕 「ふふ…さすがは鬼火の頭領と言う所かな」
(後ろから近づく小さな足音)
271_黒幕 「あーあ。みーんな、死んじゃったね。死んじゃったら、お終いだなぁ。
寿々加の、僕を巻き込んで自爆を選ぶなんていう思い切ったところは、買ってたけどねぇ」
272_朱音 「…」
273_黒幕 「僕が望んだのは、こういう状況でも生き残れる者…
そう…朱音。お前のようにね。その方が、面白くなるでしょ?」
274_朱音 「………面白い?」
275_黒幕 「そうだよ! お前たちは、僕の望み通りに動いて、壊れればそれで良い」
276_朱音 「……望んだ、だと…」
277_黒幕 「(クスクス)そうだよ。僕は、お前たちにとって世界の創造主―――
だから、僕の望みを叶えるのは、お前たちの義務なんだ」
278_朱音 「…望んだ、だと…? …これが…これが本当に望んだ事なのか!?
こんな事が、望むべき事だったと言うのか…!!」
279_黒幕 「…(冷めた笑いを浮かべている)」
280_朱音 「私たち一族は、こんな事のために今まで戦ってきたのか!?
主のため、一族のためと、それだけを考えて生き延びてきた者たちに、
―――この仕打ちか!!」
281_黒幕 「(冷笑)そういう事。残念だね」
282_朱音 「貴様…っ」
283_黒幕 「でも、それももう終わり。お疲れ様。もう、消えて良いよ?」
284_朱音 「…っなにを…」
285_黒幕 「それにしても…お前は、本当に運が強いなぁ。まさに理想的な人形だね。
まさか比奈伎に、お前を庇える力が残ってたなんて、驚いたよ」
286_朱音 「…!」
287_黒幕 「比奈伎は欠陥品だったのにな」
288_朱音 「………欠陥品、だと」
289_黒幕 「本当は使い物にならないはずだった。だから、
何度も交換の機会を与えてやったのに。例えば、…そう! いつかの、流行り病とか」
290_朱音 「…! あれも、お前が仕組んだ事だったのか…!」
291_黒幕 「僕が壊しちゃうのなんて簡単だけど、それじゃつまらないし?
わざわざウイルスを撒いてやったんだ。―――それなのに
お前たちが大事に守りすぎて、交換してやる機会を逃しちゃったじゃない」
292_朱音 「…………黙れ」
293_黒幕 「(くすくす…)あれはさすがに可哀想だったよねぇ。酷い苦しみようだったもの。
早く楽にしてあげれば比奈伎のためにもなったのに」
294_朱音 「…黙れ」
295_黒幕 「一度でも壊れれば、僕が新しい比奈伎にしてあげたのにな。他の者をそうしたように。
もっと性能が良くて、役に立つ、副頭領として相応しいヤツにさ」
296_朱音 「黙れ」
297_黒幕 「でも、駄目な子ほど可愛いって言うし? そりゃあ大事にしてたもんねえ」
298_朱音 「……」
299_黒幕 「本当は、一族より大事にしてたんだろう? たった一人の…『弟』だものね」
(ぎこちなく微笑む比奈伎)
300_比奈伎 「(E)朱音」
(兄弟という概念は植え付けられている。兄弟は仲間の中でも特に大切に思うもの)
301_黒幕 「ま、どうせお前と離れたら壊れる設定だけど!
一人で置いておくと、心から壊れていくんだよ。素敵だろ?
少しずつ少しずつ…最後は確実に心が壊れて、死ぬ。
そこまで見られなくって、残念だったな」
302_朱音 「黙れぇッ!!」
303_黒幕 「く、く、く…―――残念だったねぇ。大事に、大事にしてたのに、死んじゃって、さ!
ね、あ・か・ね・さ・ま」
304_朱音 「…(刀をゆっくりと引き抜く)」
305_黒幕 「…刀なんて抜いて、どうするつもり?」
306_朱音 「…ッ」
307_黒幕 「一族の長たるお前が、一族の仲間に、武器を向けるの?」
308_朱音 「……」
309_黒幕 「(しおらしく)朱音さまぁ…ボクを、殺すの?」
310_朱音 「! …瀬比呂」
311_黒幕 「(しおらしく)ねぇ、朱音さま…」
312_朱音 「クッ…(刀を握り締めた手を震わせ)」
313_黒幕 「(クスクス)」
314_朱音 「…っ!(振り上げる、が、どうしてもそれを振り払えない)」
315_黒幕 「…ふふ…あはははっ、あはははは! あーっははははは!
これで分かっただろう!!
―――所詮、お前たちが僕に逆らうことなんて、不可能なんだよ」
316_朱音 「クソ…っ、何故だ、何故だ…ッ!!」
317_黒幕 「お前にボクは殺せない―――。だって、そう、植えつけてあるんだから」
318_佐久弥 「―――私には殺せる」
319_朱音
319_黒幕
※「!」
※「(ややむっとした表情)」
(佐久弥がいつの間にか朱音の真後ろに来ている)
320_佐久弥 「―――行って」
321_朱音 「…佐久弥」
322_佐久弥 「ここは私が」
323_朱音 「…いや」
324_佐久弥 「良いから、行って」
325_朱音 「―――ッ、しかし…ッ」
326_佐久弥 「朱音。ここに残って貴女に何が出来るの」
327_朱音 「…ッ、……く」
328_佐久弥 「向こうには、みんなが居る」
329_朱音 「…!! それは…ッ」
330_佐久弥 「だから貴女は、……比奈伎と「逝かず」に―――「戻って」来たんだろう?」
331_朱音 「―――……っ、(唸るように)…仇討ち(あだうち)すらも…出来ないのか…」
332_佐久弥 「出来るなら止めない。でも、刃も向ける事すら出来ないのなら―――
…それでも、選ぶなら止めない」
333_朱音 「…っ…(頭を一つ振って)…。…この私が、…選んだ事だ。今更―――」
334_佐久弥 「…うん」
335_朱音 「後悔はしない、絶対にだ。…だが、それでも、…それでも、…っ」
(比奈伎と共に死にたいと思う朱音と、一族のために生き残ろうとする頭領として、激しく葛藤していた)
336_佐久弥 「…みんなを頼むね。―――お頭」
337_朱音 「……(ぎゅっと瞳を閉じ)。……ああ。(キッと顔を上げ)ああ、分かっている。
私は―――この一族の頭(かしら)、鬼火の…朱音だ」
(朱音、別室に居た千波流たちに追いつき、声をかける)
338_伊織 「―――あ! 朱音さまっ!」
339_朱音 「千波流! この先に出るぞ。風が流れている、何処か出口があるかもしれない」
340_千波流 「はい」
341_彩登 「佐久弥は?」
342_朱音 「大丈夫だ。…みな、すぐに追いつく。行くぞ!」
343_千波流
343_伊織
343_彩登
※「(返事)」
(三人は走って出て行く/朱音、その場で、背後の部屋に居るであろう佐久弥に)
344_朱音 「佐久弥。…頼む」
(朱音も出て行く/残った黒幕と対峙する佐久弥)
345_黒幕 「さーて。佐久弥…お前が一人残って、いったいどうする気?」
346_佐久弥 「(ゆっくり振り向く)」
347_黒幕 「何か面白いモノでも見せてくれるわけ?」
348_佐久弥 「…(刀を抜く)」
349_黒幕 「ヘエエ…!! お前、僕を殺そうって言うのかい!?
アッハハハハ!! でも無駄だよ、さっきの朱音の様子を見ただろう?
お前たちは、同じ一族の者を殺す事は出来ない―――
この僕に対して、武器を振るう事は、【絶対】に―――出来ないんだよ!」
(武器の交差する音/屋敷中を懸命に出口を探して走っている彩登たち)
350_彩登 「はぁ、はあ…っ。ま、また、行き止まり…!」
351_伊織 「もう、どうなってんの…!?」
352_千波流 「とにかく、壁を壊してでも外へ出られれば」
353_朱音 「ああ―――」
(武器と武器が交差する音、ぽた、ぽた、と垂れる音)
354_佐久弥 「ハァ、ハァ…」
355_黒幕 「………はぁ…はぁ…っ!」
356_佐久弥 「…」
357_黒幕 「馬鹿な…馬鹿なっ!」
358_佐久弥 「(息を整えつつ、刀を鞘に戻す)」
359_黒幕 「佐久弥…っ、お前えええっ!」
360_佐久弥 「…ッ!(刀を振るう)」
361_黒幕 「(それを受けて)馬鹿な…っ! このボクを、攻撃するなんて…!」
362_佐久弥 「私は…私の守るべき者のためなら、どんな汚名だって着る事が出来る…
例えそれが仲間殺しでも…!
そう植え付けたのは、ほかならぬ貴方なんだろう…!?」
363_黒幕 「く…っ(刀を受ける)」
364_佐久弥 「(ツバで競り合いながら)誰も出来ないのなら…私が殺す」
365_黒幕 「愚かだな…!(刀を弾き返す)」
366_佐久弥 「私は…お前が例え本当に瀬比呂のままだったとしても、殺せる―――
お前は、奪いすぎた。私の大切な、何もかも。私の大切な、者たちを―――」
367_黒幕 「…クッ…」
368_佐久弥 「鬼火の佐久弥を甘く見るな」
369_黒幕 「……(息を整える)」
370_佐久弥 「(刀を構え直す)」
371_黒幕 「―――ふん、だが、お前にはせいぜいそこまでだ、佐久弥。
お前は結局、最後の最後で詰めが甘い。
…そう埋め込んだのは、やっぱりこの僕だけどね」
(激鉄を起こす音、そして佐久弥、撃たれる)
372_朱音 「(突然足を止める)―――!」
373_伊織 「朱音さま?」
374_朱音 「…いや」
375_彩登 「どうしたの、朱音さま…?」
(不安そうに見上げる彩登の隣に、いつもならいるもう一人の少年の姿を思い出す)
376_瀬比呂 「(E)朱音さま」
(瀬比呂のあどけない笑顔が思い出される)
377_朱音 「……。…瀬比呂は、あの子は、今でも私の大切な一族の一人なんだ」
378_千波流 「…お頭」
379_朱音 「この手に、取り戻したい。……それに」
380_千波流 「え?」
381_朱音 「……いや。…私は佐久弥と合流する」
382_彩登 「朱音さま!?」
383_朱音 「千波流。私が戻るまで、全力で伊織と彩登を守れ」
384_千波流 「…! …分かりました」
385_伊織 「朱音さま…! 必ず、戻ってきてくださいね!!」
386_朱音 「ああ。約束する」
387_彩登 「絶対だよ!?」
(かつて、同じように朱音は瀬比呂と彩登と約束をした)
388_瀬比呂 「(E)朱音さま、絶対だよ!? 約束だからね! 僕も約束するから!」
389_朱音 「…ああ。ああ、約束する―――」
(踵を返す朱音/先ほどの銃撃で打たれた佐久弥、辛うじて身を捩り、銃弾は腕を貫いた)
390_佐久弥 「…!(腕を押さえて、ぐらりとよろめく)」
391_黒幕 「(むしろ優しく)ふふ…もちろん、知ってるんだよ、僕はね。
お前が誰よりも敵に対して冷酷になれる事も―――
誰よりも、仲間のために生きてきた事も、何を大切にしているかも」
392_佐久弥 「(俯いたまま)………そう、だね…」
393_黒幕 「ハハハハ! 全く、愚かだな…! …お前ごときの技で、
僕を完全に殺す事なんて出来やしないんだよ。残念だったね」
394_朱音 「それは、こちらの台詞だ」
395_黒幕 「…お前…」
396_朱音 「…その言葉は。その声は。その顔は、私たちの瀬比呂のものだ。
―――返してもらう」
397_佐久弥 「……朱音」
398_朱音 「そう不満そうな顔をするなよ、佐久弥」
399_佐久弥 「…私は、余程信頼されてないのかな」
400_朱音 「―――馬鹿な事を。そんな事が無いのはお前が一番良く知っているだろう?」
401_佐久弥 「…何故」
402_朱音 「―――お前なら、このまま黙って逃げて気が済むのか?
…私には耐えられない―――今にもこの身体から噴き出してしまいそうだ」
403_佐久弥 「…」
404_朱音 「…どうしても、どうしてもこの手で―――、私の、手で―――私は…」
405_佐久弥 「…朱音…もう、良いよ。…良く、分かってるから―――」
406_黒幕 「(鼻で笑って)何だお前たち…そろいも揃って、この僕に刃向かおうって言うの?
あっはは、良いよ、何処までやれるか見てやろうじゃない!」
407_朱音 「(剣を振るう、が、振り下ろせない)…くっ、やはり駄目か」
408_黒幕 「くすくす、…言っただろう? 一族殺しは、不可能なんだよ」
409_朱音 「…くそ」
410_佐久弥 「…(剣を振るう)朱音、私が援護する」
411_朱音 「(頷いて、飛び出す)ハ!」
412_黒幕 「(剣を受ける)頭の悪いヤツラだな…! だから何度も言ってるだろう。
お前たちなんかに、僕は殺せないんだよ!!」
413_佐久弥 「は!(切り込む)」
414_黒幕 「…くっ?(思い切り切り込まれて、受けるが少しよろけ、はじき返す)」
415_佐久弥 「…っ…(弾き返される)」
416_黒幕 「(頬に切り傷が)……そうか、そうだったな。佐久弥、お前は唯一の例外…
こうして僕に傷をつける事くらいなら出来るって事か」
417_佐久弥 「…貴方にとっては、私も欠陥品なんだろうね」
418_黒幕 「おまえは、比奈伎と違ってそれを有効に使う術(すべ)を心得てる。
…比奈伎より先に、おまえを壊すべきだったな」
419_佐久弥 「…そうだね。私にとっても、その方がどんなに良かったか―――!(剣を振るう)」
420_黒幕 「ちっ(受ける)佐久弥、お前のその剣がうっとおしい! そろそろ死んでくれない!?」
(黒幕、引き金を引く)
421_佐久弥 「―――ぐッ!!」
422_朱音 「佐久弥ッ!」
(撃たれて転がる佐久弥)
423_朱音 「佐久弥ッ!!!」
424_黒幕 「あーあ、モロに当たっちゃったな」
425_朱音 「ッ ハァッ!(踏み込む)」
426_黒幕 「おっと!(簡単に弾く)危ない危ない、くくくっ、どうしたの?
そんな剣捌きで、僕を殺せるの?」
427_朱音 「くっ…、どうしても、最後まで振り切れないのか…っ!?」
428_黒幕 「ふふふっ、ほーらほら、剣先が鈍ってるよ(軽くあしらう)」
429_朱音 「どうしたら良い、―――ッ!!」
(しばらくの間、朱音は必死に、黒幕は適当に、剣を交えあう)
430_黒幕 「(しばらくやりあい)…そろそろ飽きたな、ね、朱音さま」
(突如銃を撃つ黒幕/朱音、足を撃たれる)
431_朱音 「ぅっ!(倒れて転がる)」
432_黒幕 「ふふ…ざーんねん。ここまでかなぁ?」
433_朱音 「く…ッ」
434_黒幕 「…おっと(銃を朱音の顔の目の間に構える)それ以上余計に動かないでよね、朱音」
435_朱音 「…っ」
436_黒幕 「くすくす…『悲しまないで、朱音さま。大丈夫だよ、―――すぐに傍に逝かせてあげる』。
くすくす…向こうできっと待ってるよ、佐久弥も、貴方の大事な弟もね―――」
437_朱音 「ッ!」
438_黒幕 「ふ、ははは! 所詮、僕の完璧なプログラムに逆らう事なんて、
絶対に出来ないんだよ! あっはははははは!!」
(死んだと思っていた佐久弥、一瞬で飛び起きる)
439_佐久弥 「(がばっと身体を起こし)―――!(小刀を投げる)」
(佐久弥、神業的な速さで腕に仕込んであった小刀を投げつけ、黒幕の首に深々と突き刺さる)
440_黒幕 「ぐああああっ!?」
441_佐久弥 「ゼエ…ッ、ゼエ…」
(既に致命傷だったが、怒りに切れて我を失い、黒幕、佐久弥へ向き直り銃を構える)
442_黒幕 「ば、かな、佐久弥、お前…まだ…っ―――貴様ああああっ!!!」
(完全に黒幕に背を向けられた朱音、それに反射的に、弾かれたように動いて刀を横に凪いだ)
443_朱音 「! うおおおお!!(ざしゅ!)」
(その一閃は、黒幕の首を斬り落とす)
444_黒幕 「が…っ」
(…ごろん、…どさ/切り離された首が、あっけなく転がった)
445_朱音 「―――ゼエッ、ゼエ…ッ」
446_佐久弥 「ハァ、ハア…ッ、…っ(倒れる)」
447_朱音 「(辛うじて支える)佐久弥ッ!」
448_佐久弥 「ハァ…ッ……、大、丈夫、…私は、大丈夫だから…」
449_朱音 「(息を整えながら)……、…まさかこの手で、…私の一族の者を斬ることになるとはな…
………私は……瀬比呂を…」
450_佐久弥 「違う、朱音。彼を殺したのは、…私だよ。
同族殺しは、…例えお頭でも、決して出来ないのだから…私以外には」
451_朱音 「…佐久弥」
452_佐久弥 「朱音、走れる?」
453_朱音 「ああ、…まだ大丈夫だ」
454_佐久弥 「(頷いて)さぁ、…もうここも危ない。―――向こうで、みんなが待ってるよ」
455_朱音 「…、お前は…、私に、頭領であれと言うんだな」
456_佐久弥 「…」
457_朱音 「…佐久弥、…お前は?」
458_佐久弥 「……大丈夫。私も、…すぐに、みんなのところに、いくから…」
459_朱音 「―――、……わかった(立ち上がる)」
(バンッ、と壁を殴りつける千波流)
460_千波流 「くそっ、こっちも行き止まりか…!」
461_伊織 「いったい、どうなっちゃってるの…?」
462_彩登 「彩登、何だか、怖いよぉ…」
(そこへ戻ってくる朱音)
463_彩登 「あっ! 朱音さま!!」
463_千波流 「お頭! 無事だったんですね…良かった!」
464_朱音 「ああ。不安にさせてすまなかったな」
465_伊織 「ううん…!」
466_千波流 「お頭、こっちの奥は行き止まりです…どこか、脱出口を他に探さないと」
467_朱音 「ああ―――(異常に気づく)!! みんな伏せろォ!!」
(SE:連射)
468_千波流
468_伊織
468_彩登
※「お頭ーッ!!!」
※「朱音さまーっ!!」
【続く】