●鬼神楽●
【〜楽業の章・第9話〜】
この色…東風
この色…鬼火
この色…武士・女中・ガヤ(注:ガヤ・全員部分は、ファイル名 セリフ番号_お名前 )
この色…その他
ガヤ:一本のファイルに、三パターンほど入れて下さい。
    その際には、それぞれの間を2秒ほど空けてくださると助かります】
※万一使用セリフに不安がある場合には、よろしければ、こちらから指定させていただきます。
セリフ番号
「セリフ」
(銃撃音が響く/静と共に武士に攻撃された芳、寸でのところで近衛に助けられる。
近衛、朱音とのやり合い、そして武士の包囲網を抜けるために傷を負っている)
01_近衛 「―――芳! 芳か!?」
02_芳 「近衛!? どうして…ここに!」
03_近衛 「芳…やはり、生きていてくれたんだな…! 怪我をしているのか!?」
04_芳 「近衛…! ああ、アンタこそ怪我を…アタシは大丈夫だよ。ほら、静も…
しずか…静…!? 嘘だろう!? 近衛、静が…ッ!」
05_近衛 「芳…!(抱き締める)」
06_芳 「………この子が死んで…この子の死を見て…こんなにも、
仲間の死が恐ろしい事だと、…はじめてわかった…!!」
07_近衛 「…仲間、か。あまりに当たり前すぎて、
無意識のうちに深く考える事を避けていたのかもしれん…」
08_芳 「近衛…アタシ…震えが…止まらないよ…」
09_近衛 「芳」
10_芳 「アンタがこの一族を率いてくれてたから、アタシたちは…ここまで生き延びてこられた。
アンタ以外じゃ、きっと無理だったよ。
近衛だからこそ…アタシを生かしてくれてたんだ―――」
11_近衛 「(静かに微笑んで)…そんな事は、初めて聴いたぞ?」
12_芳 「(返すように微笑んで)そりゃそうさ…アタシだって初めて言葉にした事だよ。
…こういう時でもなきゃ、口に出してなんか言えるもんか」
13_近衛 「芳―――、一族を、頼むぞ」
14_芳 「……アンタほどには行かないと思うけど、尽力するよ」
15_近衛 「ははは、いつになく弱気だな、東風の芳ともあろう者が」
16_芳 「近衛…」
17_近衛 「私は、ずっと思っていた。自分は何のために、この一族を率いているのかと。
自分は何のための頭領なのだろうと。
…芳。私たちもなれるだろうか。鬼火一族のように」
18_芳 「なれるさ。きっと、なれる。左京も、卓麻も、あの白銀さえも、
この一族が何よりも大事だって、アタシは知ってるよ。
アンタが一族の頭領であることも、認めてるよ…」
19_近衛 「そうか…だと、良いがな。…芳。もし、生きて、また巡り合う事があれば…
私と夫婦(めおと)になってくれるか?」
20_芳 「馬鹿だね…! アタシは、ずっと…そのつもりだったよ…!!」
21_近衛 「…そうか」
22_芳 「近衛…これからどうするんだい」
23_近衛 「奥座敷に向かう。…主に、直々に確かめるべき事があるんだ」
(モノローグ/完全に、これは瀬比呂のままで)
24_瀬比呂 「朱音さまが大好き。鬼火一族のみんなが大好き。彩登が大好き。

早く一人前になりたいな。
寿々加や夜紫乃くらい速く武器を振るって、千波流や亜夏刃くらいどっしりと構えて。
いつか、みんながびっくりするくらい強くなって、僕が彩登を守るんだ。

でも、最近自分の中で違う声が聞こえてくる。
そろそろじゃないのか?って。

ああ、そっか。もう、そんなに経つんだっけ。じゃあ、そろそろ行かなくちゃ。
なんだか、少し眠くなってきちゃったな。
『僕』が眠っちゃう前に、行かなくちゃ。

…でも、じゃあ、『僕』は何処に行くんだろう―――」
(モノローグ終わり/近衛の後姿を見送る芳)
25_芳 「(ため息をつく)近衛の後姿をこんなに不安な気持ちで見送るのは初めてだね…」
26_黒幕 「(突然現れる)そうなんだ?」
27_芳 「!? なんだ、おまえは―――!」
28_黒幕 「そろそろ飽きてきちゃったな。
それに、使えないものは、もういらないんだよね。…バイバイ、芳」
29_芳 「…! このえ…っ」
(銃声)
30_近衛 「(呼ばれたような気がして振り向く)芳…?」
(突然柱の影から飛び出した槍を受け流す近衛)
31_女中:1(2) 「くっ!?」
32_近衛 「―――女か」
33_女中:2 「何者じゃ!」
34_女中:3 「不心得者め!」
35_女中:1(2) 「何故このような場所におのこが!?」
36_女中頭 「騒ぐでない! みな! 武器を取り、ここに!!」
37_女中:全員 ※「は!」
38_近衛 「私はこの先に用があるのだ。通してもらおう」
39_女中:3 「待たれよ!」
40_女中:2 「その刀を下ろしなされ!」
41_女中頭 「そなたは、東風一族の者か」
42_近衛 「そうだ」
43_女中頭 「名は」
44_近衛 「私は東風の頭領、近衛」
45_女中頭 「近衛殿。この先は我らが殿のおわすべき場所」
46_女中:2 「そなたが誰であろうと、ここから先へ進む事は出来ませぬ」
47_女中:1(3) 「即刻、退(ひ)いて下さいませ」
48_近衛 「それは出来ぬな。私は、主・隆利さまに直にお目にかかるべくここまで来たのだ」
49_女中:1(3) 「今、殿にお会いする事は出来ませぬ」
50_女中:2 「どなたもお会いする事は出来ませぬ」
51_近衛 「そういうわけにはいかぬ。拝謁をお許しいただきたい」
52_女中頭 「出来ませぬ! 今すぐに、武器を退きなされ!」
53_女中:2 「さもなくば―――我ら女も全員、敵となりましょうぞ!」
54_近衛 「女といえども、東風の近衛、退きはせんぞ(刀を構える)」
55_近衛 「(M)この傷で…どこまでやれるかはわからんが―――
芳との約束を違えぬためにも―――私が、最後まで東風の頭領で居るためにも」
56_女中:1(2) 「お覚悟!」
(武器が交差する/タイトルコール)
57_瀬比呂 「『鬼神楽』最終章   〜楽業の章〜 第九話」
(東風の里から、主の屋敷へ戻ってきた朱音・佐久弥・伊織)
58_朱音 「…何か、空気が変だな」
59_伊織 「あ、朱音さま…」
60_佐久弥 「シッ…妙な音がする」
(間髪居れず、轟音が響いた)
61_伊織 「なに、今の音…!」
62_佐久弥 「…この屋敷は、屋敷中にカラクリが仕掛けられてる。
今の音は…壁が落ちた音に似てるみたいだ」
63_朱音 「…まさか」
(一度、扉まで戻る。押しても引いてもびくともしない)
64_朱音 「当たったな、佐久弥。扉があかない。閉じ込められたようだ」
65_伊織 「そんな…どうしよう」
66_朱音 「大丈夫だ、伊織。とにかく、誰かいないか探して合流しよう」
67_伊織 「みんなに会えるの!?」
68_朱音 「(小さく頷いて)何を目的としているかは分からないが…
ここまで私たちを来させた上に 丁寧にも退路を閉じたという事は」
69_佐久弥 「…最後の舞台は この屋敷の中、というわけ」
70_朱音 「そのようだな」
71_佐久弥 「(小さく頷き)それならきっと、仲間にも会わせるつもりだと思う」
72_朱音 「私もそう思う。わざわざここに集めて、何かをしでかすつもりだ」
(スクリーンの向こう側では)
73_黒幕 「(くつくつと笑う)やっぱり、生き残ったのは鬼火の方が多いか―――
さあ…これで役者は揃った。そろそろ、大詰め…かな」
(一人で屋敷をさまよっていた寿々加、こちらにも轟音が響き渡る)
74_寿々加 「…今の音…比奈伎と分かれたあのカラクリに似てるな…
音がした場所も近かった…誰かが何かしたのかもしれない」
(そっと気配を窺いながら歩く寿々加)
75_寿々加 「! …気配が…三つ、…まさか!! ―――お頭!?」
76_朱音 「寿々加か!」
77_寿々加 「お頭…! 伊織、佐久弥も…! 生きてたんだな!」
78_伊織 「寿々加こそ…っ、もう、会えないかと思ったよお!(半泣き)」
79_寿々加 「ばぁか。伊織、縁起でもねえ事言うなよ」
80_伊織 「だって…っ! みんなとはぐれちゃって…っ、それで、夜紫乃が…夜紫乃が…っ」
81_寿々加 「…夜紫乃が、何だよ」
82_朱音 「…寿々加。夜紫乃だけじゃ、ないんだ―――」
(分かれてから起こった出来事をそれぞれ話し出す。みなの脳裏に、みんなの元気な姿が)
83_夜紫乃 「(E)ねえ寿々加!
今度の戦から、僕がなるべく柄の長い武器を使ってみようと思うんだ。
そしたら、寿々加には結構大きな範囲で動いてもらえると思うんだよね。どう思う?
武器のことは、睦月に相談してみるからさ!」
84_夜紫乃 「(E)思ったより上手くいった!
朱音さま、これって佐久弥に報告したら喜んでもらえるかな!?」
85_夜紫乃 「(E)伊織、逃げろ…!!」
86_寿々加 「……そうか。俺たちが分かれてから、そんな事が…」
87_朱音 「だが、きっとまだこの屋敷内に何名かは残っているはずなんだ」
88_寿々加 「そうだな。探そうぜ」
89_佐久弥 「私は、もう少し先を見てくるよ」
90_寿々加 「じゃ、俺は逆を見てくる。お頭、アンタは伊織とここに残っててくれ」
91_朱音 「分かった。佐久弥、寿々加、頼む、気をつけてな」
92_寿々加
92_佐久弥
※「(返事)」
(しばらく進んでいき、気配を感じた佐久弥)
93_佐久弥 「(M)血の臭い―――それと、気配が一つ…これは」
94_佐久弥 「―――比奈伎?」
95_比奈伎 「…! さく、や?」
96_佐久弥 「……比奈伎」
97_比奈伎 「…(大きく息を吐き出す)……無事、だったんだな、佐久弥」
98_佐久弥 「(ふるふると首を振って)私だけじゃないよ、比奈伎」
99_比奈伎 「え?」
100_佐久弥 「朱音も、いるんだよ」
101_比奈伎 「朱音、が…」
102_佐久弥 「うん。向こうで、待ってるよ、比奈伎」
103_比奈伎 「―――…て、た」
104_佐久弥 「……うん」
105_比奈伎 「…生きて―――、…朱音は、生きて、いた…」
106_佐久弥 「うん」
107_比奈伎 「生きて、……っ、無事で、無事で、居てくれた…っ」
108_佐久弥 「うん…うん」
109_比奈伎 「…………、…佐久弥、…さらしを、持っていないか」
110_佐久弥 「…え」
111_比奈伎 「このままじゃ、会えない」
112_佐久弥 「…比奈」
113_比奈伎 「東風の切り込みにやられた。
血止めの薬草も効かないんだ―――なんとか、止血してる状態で」
114_佐久弥 「…」
115_比奈伎 「実を言えば、もう右腕の感覚も無い」
116_佐久弥 「比奈」
117_比奈伎 「…朱音には知られたくないんだ」
118_佐久弥 「…っ…ひな」
119_比奈伎 「まだ、走れるからな」
120_佐久弥 「…」
121_比奈伎 「誰にも、言うなよ」
(鬼火一族、ようやく生き残ってる人、合流。千波流・亜夏刃・彩登、寿々加・佐久弥・朱音・伊織・比奈伎)
122_千波流 「―――お頭!?」
123_彩登 「朱音さまあっ!!」
124_亜夏刃 「お頭」
125_朱音 「千波流、彩登、亜夏刃」
126_千波流 「! 伊織も、良く無事で…!!」
127_伊織 「千波流こそ、無事で良かった…っ」
128_彩登 「彩登…、伊織たちとはぐれちゃって、…怖かったよおっ」
129_伊織 「うん、彩登…ごめんね、ごめんね!」
130_千波流 「この先の廊下で、寿々加に会えたときは、夢かと思ったぞ…!
生きていて本当に良かった!」
131_寿々加 「ああ、この通りな。佐久弥と分かれて独りになってから、
合流が、遅くなっちまったけどな」
132_朱音 「千波流、亜夏刃ともに、良く彩登を守ってここまで残っていてくれた」
133_亜夏刃 「お頭こそ…無事で何よりだ」
134_千波流 「その佐久弥はどうした」
135_寿々加 「もちろん無事だぜ。ついでに、その佐久弥がもう一人見つけてな」
136_亜夏刃 「…比奈伎」
137_比奈伎 「みな…無事だったんだな」
138_亜夏刃 「…何とかな。だが…」
139_千波流 「…ああ。…実は、…」
(今まで、別れた者たちのことを語っていく…やはり次々に思い出されるその姿)
140_羽霧 「(E)お頭! 今度の斥候じゃ、ちょっと面白い情報が入りそうだ。
ついでに珠菜が生きの良い魚を獲ってくるってさ!」
141_羽霧 「(E)冗談じゃないぜ! はいそうですかと後ろに引っ込んでなんていられるか!
賄いと斥候は絶対にやり遂げる。どっちも俺の仕事だぞ!」
142_羽霧 「(E)…千波流…気をつけろ…! 同じだ……!」
143_各務 「(E)相変わらず、にぎやかな事だねえ。どれ…
ふふっ…我から見ればどちらも変わらぬように見えるが、
二人とも譲れぬのであろうなぁ」
144_各務 「(E)何を言う、お頭を一人にするわけにはいかぬえ。
我が目を離したせいで怪我でもされればそれこそ大事であろ。
お頭の『大丈夫』は信用出来ぬもの(くすくす)」
145_各務 「(E)みな…あの人を……お頭を、頼むえ―――」
146_朱音 「…そうか。羽霧も、各務も…」
147_千波流 「まさか、夜紫乃や、…睦月までも…」
148_珠菜 「(E)嫌ですわ羽霧ったら、そんなに血相を変えて…。
ちょっと塩加減を間違えただけじゃありませんこと」
149_珠菜 「(E)肩が濡れていますわ、亜夏刃。この布をお使いになって。
それにしても…本当に良く降りますわよね」
150_珠菜 「(E)先にお行きなさい―――わたくしは、一人で大丈夫ですわ」
151_珠菜 「(E)亜夏刃…わたくしを信じて―――」
152_亜夏刃 「珠菜とは、はぐれたままで、…自分たちは確認をしたわけじゃない」
153_彩登 「瀬比呂も、わかんないまま…」
154_朱音 「亜夏刃、彩登。消息が分からない者は、まだ希望はある。
私たちは最後まで仲間を信じよう」
155_千波流
155_亜夏刃
155_寿々加
155_比奈伎
155_佐久弥
155_伊織
155_彩登
※「(返事)」
156_朱音 「みな、無事で居てくれて感謝する。千波流、良く彩登を守ってくれた」
157_千波流 「はい。お頭こそ」
158_朱音 「彩登。大変だったな、良く頑張った。怪我はないか」
159_彩登 「うん、…はいっ!」
160_朱音 「亜夏刃、使える武器をそろえてくれ」
161_亜夏刃 「心得た」
162_朱音 「寿々加、私が相棒では心もとないかもしれないが、補佐を頼む」
163_寿々加 「はは、ご謙遜だな、そりゃ」
164_朱音 「伊織、千波流と共に、今度こそしっかり彩登を守っていてくれ」
165_伊織 「朱音さま…。はい、絶対に守ります!」
166_朱音 「佐久弥、後ろを頼めるか」
167_佐久弥 「うん」
168_朱音 「…比奈。少し顔色が悪い。大丈夫か?」
169_比奈伎 「あ、ああ。…大丈夫だ」
170_朱音 「そうか(微笑む)。(少し遠くに向かって)―――千波流! 屋敷の状況は分かるか」
171_千波流 「(少し離れた所で)はい。とにかく、東側はもう無理ですね―――」
172_亜夏刃 「出来るだけ状態を調べながら歩いてみたんだが」
173_千波流 「(頷く)あちこちで爆破されている割には、
一番外の…外壁には傷がつかないようなんです」
174_寿々加 「うーん…壊さないよう、狙ってやっているのかもしれないな」
175_朱音 「火薬が手に入れば、何処かを壊して出るという事も可能かもしれないが…」
176_千波流 「そうですね…しかし、それだけの火薬ともなると用意がありません」
177_寿々加 「んじゃ、どっか簡単に壊せそうな所を探してみるかぁ…」
178_朱音 「そうだな。どうもこの屋敷は得体が知れない。
出来るだけ早く、ここから出た方が良い気がする」
179_亜夏刃 「そのついでに、瀬比呂と珠菜を捜そう」
180_千波流 「そうだな」
(そのとき、向こう側の壁のあたりに人の気配を感じた)
182_寿々加 「―――シ! (気配の方に向かって)誰だ!?」
183_瀬比呂 「…みん、な?」
184_寿々加 「…え? 瀬比呂…瀬比呂か!?」
185_瀬比呂 「寿々加ぁ!!」
186_寿々加 「(駆け寄る)無事だったのか、瀬比呂…!! 良かった…!」
187_瀬比呂 「うん…! ………うん」
188_寿々加 「…瀬比呂?」
189_瀬比呂 「―――うん。僕は無事だよ、寿々加―――」
190_寿々加 「…瀬比呂?」
(一瞬、瀬比呂から冷やりとした雰囲気を感じた寿々加だが、他の面々が駆け寄りかき消される)
191_千波流 「(駆け寄る)瀬比呂! おまえ…無事だったのか…!」
192_彩登 「(駆け寄る)心配したんだよ、瀬比呂…っ、会えてほんとに良かったよぉお」
193_瀬比呂 「うん、ごめん、ごめんね、彩登…!」
194_朱音 「瀬比呂…! 本当に良かった」
195_瀬比呂 「朱音さまぁ…(涙ぐむ)」
(瀬比呂も合流。みんな喜び、今後の動向について話し合い、行動に移します)
196_亜夏刃 「よし…ひとまず、自分たちで屋敷内を少し調べてみよう」
197_寿々加 「だな。それなら、手を分けた方が良い」
198_朱音 「亜夏刃、寿々加、ひとまずここを拠点にしよう。
千波流はここで待っていてくれ。伊織、彩登、瀬比呂、おまえたちもだ」
199_千波流 「待ってください! 今度は俺も散策に加わります」
200_朱音 「いや、千波流、おまえが残っていてくれた方が安心出来る。
伊織たちを守っていてくれ」
201_亜夏刃 「自分は、使えそうな武器が無いかほかにも探してみる」
202_比奈伎 「では、俺も亜夏刃を手伝おう」
203_佐久弥 「比奈伎はここに残って、千波流と一緒にみんなを守って」
204_比奈伎 「佐久弥っ」
205_朱音 「比奈伎、どうした?」
206_比奈伎 「なんでもない! (ぼそ)…余計な事は言うなよ佐久弥、朱音に気付かれる」
207_佐久弥 「………じゃあ、私も武器を探すほうを手伝うよ」
208_亜夏刃 「こちらは武器を探すのにそんなに手間は要らない。
比奈伎と佐久弥はまた別の道から探してくれ」
209_比奈伎 「わかった」
210_朱音 「では、私は寿々加とあちらを回る」
211_瀬比呂 「朱音さま、待って!」
212_朱音 「瀬比呂、どうした」
213_瀬比呂 「僕も連れて行って! みんな、出口を探してるんでしょ?
僕、この先に抜けられそうな所を見つけたんだ!」
(所変わって、今、東風の生き残り組はというと)
214_茶々 「真木…そちらには、誰かいた?」
215_真木 「いえ…駄目ですわね」
216_茶々 「そう…。茶々の方も同じよ。誰も居ないわ」
217_真木 「円や春日も合流場所に戻ってこないし…浅葱とも逸れてしまった。
一体どうなってるのかしら」
218_八重 「(やけに落ち着いて)―――ねえ、茶々、真木」
219_真木 「なんですの、八重」
220_八重 「この結末がどうなるか、知りたくない?」
221_茶々 「…八重? 何を言っているの?」
222_八重 「自分たちは何かに踊らされているだけではないのか、
それを確かめるために、鬼火の頭領は一人でこの屋敷に乗り込んだ。
―――そのとき その瞬間から、鬼火は滅びる運命にあったんだよ」
223_真木 「八重…? 何を言っているのか、分かりませんわよ」
224_八重 「そして、鬼火がそういう行動に出てしまったからこそ、東風も巻き込まれた」
225_茶々 「…何の話をしているの…?」
226_八重 「類稀なる戦闘集団、なんて謳ってるけど、所詮は世間知らずの集まりだ。
潰すのなんて簡単だよね」
227_真木 「八重!?」
228_八重 「冷酷無比に作ったはずの東風も、結局は甘い連中が多かった。
戦の時…子どもだからって言って、白銀から庇ってやったりねえ」
229_真木 「(はっとする)まさか…」
230_八重 「ああいう甘い事されると興ざめだよね。
ま、アレはどこかでバグったせいだろうから、僕が消しておいたけど」
231_茶々 「…そういえば、いつだったか子どもの武士がいたけれど…
知らない間に誰かに殺されていて」
232_真木 「―――あれは、八重。貴方のせいだって言うんですの?」
233_八重 「く、く、く、甘いから、生き残れないんだよ。春日も円も、ほかのみんなもね」
234_真木 「…春日と円を、どうしたんですの」
235_八重 「(肩を竦めて)僕は何もしてないよ。
鬼火を捕まえて、油断して、あっさり殺されただけ」
236_茶々 「!! …そんな…春日が…円…円が…」
237_八重 「ふふ…おまえたちも、死にたくなかったら生き延びる事だよね。
近衛もそう言ってたじゃん」
238_真木 「貴方は―――!!」
239_八重 「向こうに鬼火の連中も居る―――まずは、向こうから潰してくるからさ。
僕が壊すまで、お前たちはちゃんと生き残っててよ?(ひらりと身を翻す)」
240_真木 「お待ちなさい! 八重!(走り出す)」
241_茶々 「ま、真木…! 駄目よ、追っては…! 真木…! 真木…!!」
(八重を追って真木も姿を消す/寿々加・朱音・瀬比呂、あたりを探りながら通路を進む)
242_瀬比呂 「朱音さま、寿々加、こっちこっち! ええっと、確かこの通路の奥に…」
243_寿々加 「あ、ちょっと待った瀬比呂! あぶねえから俺が見てくる」
244_瀬比呂 「う、うん。ここをずっと行くと、右に折れる細い通路があってね…」
245_寿々加 「どれどれ…(気配を窺いながら進んでいく)」
246_瀬比呂 「(その後姿に静かに)…ねえ、寿々加。脱出路を見つけて、それからどうするの?」
247_寿々加 「んー、とにかく、まずは屋敷から脱出して―――」
248_瀬比呂 「くす。ダメだって。逃げ出すなんて、そんな事言っちゃ。
もうちょっと待てば済む問題じゃん!」
249_寿々加 「(振り向いて)どういう事だ? 何を根拠に…」
250_瀬比呂 「だってさ、どうせみんな、消えちゃうんだから!」
(ここから先すべて瀬比呂&八重は【黒幕】で。ついに、明らかになっていくその正体とは…)
251_寿々加
251_朱音
※「瀬比呂…!?」
※「瀬比呂…!」
252_黒幕 「くすくす…思ったよりも生き残っていてくれて、本当に嬉しいよ」
253_朱音 「―――その、口調…どこかで」
254_黒幕 「東風も結構、良い線行くと思ったんだけどなぁ。鬼火の方が断然! 生き残ったね」
255_寿々加 「何を…言ってる…?」
256_亜夏刃 「(少し遠くから)お頭に、寿々加か?
こちらにはあまり使える武器は残っていないようだ…ん? どうしたんだ」
257_黒幕 「ふふっ…まずは、誰からにする?」
258_朱音 「亜夏刃、下がれ!」
259_亜夏刃 「!」
260_寿々加 「やめろ瀬比呂ォ!!」
(銃声)
261_亜夏刃 「ぐっ!(撃たれた)」
262_朱音 「亜夏刃っ!!!」
263_寿々加 「馬鹿、お前…っ!!」
264_亜夏刃 「くっ…だが、抑えたぞ…!(瀬比呂を羽交い絞め)」
265_黒幕 「うわああああ! ……なーんてね」
266_亜夏刃 「!?(刺さる)」
267_寿々加 「亜夏刃ァ!!」
268_朱音 「亜夏刃!」
269_亜夏刃 「(がくりと膝を突いて)…仕込み、か…っ」
270_黒幕 「(くすくす…)睦月の作った こんなおもちゃみたいな武器が、
役に立つなんて思わなかった。お礼を言わなきゃだね」
271_寿々加 「あれは…睦月の作った、仕込み武器じゃねえか…」
272_黒幕 「うん。東風の里に来た時にね、もらっといたんだ。
そうそう、睦月の死に様は、そりゃ見事だったよ?
みんなにも見せてあげたかったなぁ」
273_睦月 「(E)朱音さま。朱音さまのお刀は、アタシが責任もって研いでおきますからね!
ぴっかぴかに仕上げておきますから、安心して任せてください」
274_睦月 「(E)みんなが思い切り武器を使えるように、細かい調整とか、仕上げとか、
何でも言ってください。少しでも良い物になるよう、アタシ、頑張っちゃいます!」
275_睦月 「(E)みんなの足を引っ張るなんて…絶対しないんだから…!」
276_朱音 「…っ…睦月…っ」
277_黒幕 「とはいっても…ここに残ってるのは、強いのばっかりだもんなぁ。
じゃあ…まずは、あっちに残ってる連中からにしようか!」
278_寿々加 「何だと!?」
279_黒幕 「じゃあね!」
280_朱音 「待て…! (ハッと立ち止まる)」
(轟音と共に壁が閉まる/そして、現れる武士たち)
281_武士:7 「こちらだ!」
282_武士:ガヤ ※(わらわらっと現れる一言)
「急げ!」「出あえ出あえ!」「遅れをとるな!」など
283_大将 「ここから先へは行かせぬぞ!」
284_武士:2 「止まれ!」
285_武士:4 「武器を下ろせ!」
286_武士:5 「逆らうと分かっているだろうな!」
287_武士:6 「鉄砲隊、構え!」
288_寿々加 「(激しく舌打ち)こんな時に…っ!」
289_亜夏刃 「…ここは自分が抑える」
290_朱音 「亜夏刃!」
291_亜夏刃 「瀬比呂…いや、ヤツを追え…」
292_寿々加 「おまえ一人で残るっていうのかよ!?」
293_亜夏刃 「千波流たちが、―――危ない」
294_寿々加 「!」
295_亜夏刃 「早く戻ってヤツが本当の敵だと教えてやらなければ」
296_寿々加 「(頷く)朱音、比奈と佐久弥を拾って先に戻れ!」
297_朱音 「ああ!(身を翻す)」
298_亜夏刃 「寿々加、おまえも行け」
299_寿々加 「一人よか二人の方が戦いやすいだろうが!」
300_亜夏刃 「…(どんっと寿々加を突き飛ばす)」
(亜夏刃が壁をいじると、寿々加の目の前で壁が落ちてくる)
301_寿々加 「!? なっ…壁が!」
302_亜夏刃 「先ほど瀬比呂が、ここを触っているのを見たんでな…
こうでもしなければ、おまえは残ると言い張るだろう」
303_寿々加 「亜夏刃っ!? 開けろ…っ開けろって!! 聞こえてんだろうが!!」
304_亜夏刃 「…自分一人で抑える、と言ったはずだぞ、寿々加」
305_寿々加 「バカヤロ…バッカヤロォ…誰もこんな事してくれなんて…頼んでねーだろーが……ッ」
306_亜夏刃 「……寿々加。自分は、…珠菜を信じて、たった一人で残してここまで来たんだ」
307_寿々加 「…っ…亜夏刃」
308_亜夏刃 「だからと言うわけではないが…自分も、一人で、大丈夫なんだ」
309_寿々加 「亜夏刃…っ」
310_亜夏刃 「良いから、早く行け、寿々加」
311_寿々加 「良いか亜夏刃…絶対死ぬんじゃねえぞ…!」
312_亜夏刃 「こういった状態でのしんがりは、何度も経験している。
寿々加こそ、先走りすぎるなよ」
313_寿々加 「言ってくれるぜ…!」
314_亜夏刃 「行け!」
315_寿々加 「(走り出す)」
(寿々加が走り去ると、亜夏刃の後ろで小さな足音が)
316_黒幕 「―――わざわざ一人になってくれるなんて…ありがたいというか、愚かと言うか」
317_亜夏刃 「…瀬比呂」
318_黒幕 「(くすくす)うるさい武士共を下がらせて、
この僕がせっかく戻ってきてあげたって言うのに、何その顔?」
319_亜夏刃 「……いや、…もうお前は瀬比呂ではなく、総てを企てた、憎むべき相手、だったな…」
320_卓麻 「―――黒幕、とはな。…随分出世したじゃねえか」
321_亜夏刃 「!」
322_卓麻 「道理で昔から気に食わねえヤツだと思ってたぜ―――八重」
323_黒幕 「卓麻」
324_卓麻 「お前が裏で糸を引いてたとはな」
325_黒幕 「驚いたなあ、まだ生きてたんだねえ」
326_卓麻 「往生際が悪いからな」
327_黒幕 「ちょうど良いや。手間が省けちゃった。これ、殺っちゃってよ」
328_卓麻 「…鬼火か」
329_黒幕 「そ。卓麻の好きな、強い人間、だよ」
330_亜夏刃 「―――くっ…仲間か…」
331_黒幕 「きっと卓麻なら倒せるよ。頑張って」
332_卓麻 「ハ、よく言うぜ―――どうせ俺とこいつの相打ちでも狙ってんじゃねえのか」
333_黒幕 「ふふ…妙に勘が良いね卓麻。じゃあね、亜夏刃。
みんなにまた会いたかったら、卓麻を殺す事だよ」
334_亜夏刃 「…っ」
335_黒幕 「お前には、もうそれしか選択肢は残されてないんだ。あっははは!」
336_亜夏刃 「瀬比呂!」
337_卓麻 「せひろ? ははぁ…お前たちにとってあの顔はその名前の持ち主って事か」
338_亜夏刃 「…そうだ。お前たち東風にとっては、…八重、と言ったか」
339_卓麻 「薄気味悪い話だが…同じ顔がいるってのはどうやら本当らしいな」
340_亜夏刃 「あんな―――もの、に、良いように使われて、お前は―――なんとも思わないのか」
341_卓麻 「ハ、何を思えって? 裏切られて悲しい、とでも?」
342_亜夏刃 「…仲間、なんだろう」
343_卓麻 「生憎―――俺にはそんな感情はない。仲間意識なんざ、持ち合わせた事はねえよ」
344_亜夏刃 「なん、だと…?」
345_卓麻 「強ければ勝ち、弱ければ負ける―――即ち、死ぬ(刀を突きつける)。
俺にとってはただそれだけだ」
346_亜夏刃 「(刀を突きつけられて)! …。(小さな溜息)
…これが、東風と鬼火との明らかな違いか」
347_卓麻 「フン。お前…左腕をやってるようだが、戦えるんだろうな?」
348_亜夏刃 「………やるしかないようだな」
349_卓麻 「(笑って)退屈させてくれるなよ?」
350_亜夏刃 「仕方ないか―――(武器を構える)」
351_亜夏刃
351_卓麻
※「―――(互いに間合いを計り、しばし対峙)」
352_亜夏刃
352_卓麻
※「―――ハ!!(同時に武器を繰り出す)」
(武器が交差する効果音が響く/武器を探している比奈・佐久の元に駆け戻って来た朱音)
353_朱音 「比奈伎! 佐久弥! 急いで戻ってくれ」
354_佐久弥 「朱音。何があったの」
355_朱音 「…裏切っていたのは、瀬比呂だったんだ」
356_比奈伎 「瀬比呂が!? …どういう事なんだ、朱音」
357_朱音 「瀬比呂は…いや、やつは―――ずっと、仲間を演じてきたんだ。
一族と共にありながら…こうなるように私たちを影で導いていた」
358_佐久弥 「…盲点だったね」
359_朱音 「ああ。まさか…こんな事になるなんて思ってもいなかったさ」
360_寿々加 「(走って追いついてくる)お頭!」
361_朱音 「寿々加、後ろはどうなってる」
362_寿々加 「亜夏刃が残って足止めしてくれてるぜ」
363_朱音 「…そうか」
364_寿々加 「とにかく、早く千波流たちと合流しねえと…瀬比呂が、
…いや、ヤツが先回りしてたら、危ねえぞ」
365_朱音 「そうだな。…急ごう」
(朱音たちの懸念どおり、朱音たちが戻ってくる前に、瀬比呂が先回りして千波流たちの元に走ってくる。
怪しさを完全に消して『瀬比呂』として振舞う黒幕。千波流たちは気づかない)
366_黒幕 「千波流、伊織、彩登…! 良かった、みんな…無事だった!?
(ここは怪しさを消して完全に瀬比呂を演じてください)」
367_千波流 「瀬比呂!」
368_彩登 「瀬比呂っ!! 良かったぁ…っ」
369_千波流 「(駆け寄って)瀬比呂、お前…無事か!」
370_黒幕 「うんっ大丈夫だよ、千波流(ここは瀬比呂を演じてください)」
371_伊織 「向こうで凄い音がしてたから…心配してたんだよ!」
372_彩登 「瀬比呂だけ先に戻ってきたの? 朱音さまたちは?」
373_黒幕 「朱音さまなら、直ぐに戻ってくるよ(ここは瀬比呂を演じてください)」
374_千波流 「そうか!」
375_黒幕 「うん。朱音さまも、寿々加も、比奈伎も佐久弥も、
みんな、今、来るところだよ(ここは瀬比呂を演じてください)」
376_伊織 「みんな、無事だったんだ…良かった」
377_黒幕 「でも、亜夏刃が…(ここは瀬比呂を演じてください)」
378_彩登 「亜夏刃…亜夏刃がどうしたのっ!?」
379_黒幕 「亜夏刃…(泣き出して)僕を、庇ってくれて…っ、僕、ぼく…っ
(ここは瀬比呂を演じてください)」
380_千波流 「瀬比呂…(膝を突いて、瀬比呂の頭を撫でる)泣くな―――」
(そこに、朱音たちが戻ってくる)
381_佐久弥 「(遠くから)―――いけない!」
382_朱音 「(遠くから)千波流下がれぇっ!!」
383_千波流 「え―――(どしゅ、と腕を刺される)………っ」
384_黒幕 「…くすくす」
385_千波流 「(ぽたぽたと腕から血がたれる(辛うじて身体がかわし、腕で済んだ))せひ、ろ…!?」
386_彩登 「きゃあ!? 千波流ぅっ!! 腕が!」
387_伊織 「瀬比呂…っ、アンタ、何をっ!!」
388_黒幕 「僕、すごく怖かったよ、千波流…」
389_千波流 「お、前…っ!」
390_彩登 「な、なんなの…っ!?」
391_寿々加 「千波流っ! 大丈夫かっ!!」
392_比奈伎 「みんな下がれ! 瀬比呂から離れるんだ!」
393_伊織 「えっ……ど、…どういう事!?」
394_黒幕 「あーあ。全ー然急所を外しちゃった。これを避けたのって、戦う者の勘てヤツ?」
395_彩登 「……瀬比呂……?」
396_黒幕 「(彩登を見て微笑む)」
397_伊織 「まさか、…まさか!」
398_千波流 「…総ての黒幕は、……瀬比呂……お前だったのか…っ!?」
399_黒幕 「―――素直で実直な鬼火と、天邪鬼で純粋な東風と。
行き交うのは大変だったけど、面白かったよ」
400_千波流 「…な、に言ってるんだ…? 瀬比呂……」
401_黒幕 「『八重は、まだまだやれるって…言ったじゃん、彩登』」(ここは八重声で)
402_彩登 「―――八重の声!? ま、まさか…っ」
403_朱音 「…鬼火の瀬比呂、そして東風の八重―――そのどちらもお前であり、お前は…
私たちを影でずっと、滅びに導いていたんだな」
(明かされた事実に衝撃を受ける者たち。遠くで鳴り響く爆音が聞こえてくる)
404_千波流 「馬鹿な…馬鹿な! …瀬比呂が俺たちを裏切っていただと!?
そんな事信じられん!」
405_伊織 「そ、そうだよ…! ねぇ瀬比呂、嘘なんでしょ!?」
406_黒幕 「(鼻で笑って)相変わらずおめでたいな。まぁ、それが鬼火の良い所なんだけどねえ。
…千波流、変だと思わなかった?
下界の里には赤ん坊や母親もいるのに、一族にはいない」
407_千波流 「(言葉に詰まる)…それは、…」
408_黒幕 「しかもみんな、年少時代以下の記憶はない。いつ、どうやって里に来たのかも」
409_彩登 「…っそう、言えば…」
410_黒幕 「それに、武士に比べて随分桁外れだよねえ、みんなの強さは」
411_伊織 「そ、それは、…アタシたち一族が、特別な一族だからで、
…毎日修練だって欠かさなかったし、…だ、だから、どんな戦にでも絶対勝ってきたし」
412_黒幕 「そうだねえ。簡単に死なれちゃつまらないからね」
413_彩登 「ねぇ…っ、どうして、急に、みんな死んじゃったの!?
みんなすごく強いのに! 絶対、死んだりしないのに…っ」
414_黒幕 「(優しく)彩登―――まさか、そんな夢みたいな事、本気で思ってたわけ?」
415_彩登 「え…」
416_伊織 「だ、だって、…実際に、今まで、誰も…死ななかったよっ!」
417_黒幕 「伊織…可笑しいとは思わなかったの?
こんな年若い連中だけで、誰一人欠けることなく生き延びてこれていること」
418_朱音 「(ハッとする)―――まさか!」
419_黒幕 「そう! お前たちが壊れるたびに、僕が、取り替えてあげてたからだよ」
420_主 「(E)損じたのであれば取り替えれば済む事だ」
421_朱音
421_佐久弥
※「!」
※「…」
422_寿々加 「取り替えるだと…!? どういう事だ!」
423_黒幕 「(笑みを浮かべたまま皆を見回し、優しく)夢を見ただろう? 寿々加。それに、伊織も」
424_伊織 「え、…ゆ、夢?」
425_黒幕 「伊織だけじゃない。千波流もだよね。何人も、同じ夢を見てる」
426_彩登 「…その、夢って」
427_黒幕 「夢で、『朱音さま』が「おかえり」って言って、手を握るんだろう?」
428_伊織 「ど、どうしてその事」
429_黒幕 「(くつくつ笑いつつ)あれは、データのインプット…
つまり、記憶のすり替えを簡略化した、最高の方法だよ」
430_寿々加 「どういう、事だ…」
431_黒幕
「一度壊れた…つまり、『死んだ』者を回収して、設定を上げて戻す。
その際の以前の記憶の受け渡しが、朱音との握手、というわけ」
432_千波流 「記憶の、…受け渡し…?」
433_黒幕 「あとは、キーワード―――「おかえり」と言う言葉をきっかけに、
お前たちは何一つ疑問を抱かず里に戻り、
里の連中も何の違和感も無く受け入れる…ってこと」
434_寿々加 「…それじゃ、まさか…」
435_黒幕 「そう! つまり、その夢は現実に起こった事だ。それを見た事があるって事は―――
お前たちは少なくとも一度は、確実に『壊れた』って事だよ!」
(次々と明かされる事実に、みんな、言葉を失っていく。調子良く話を続けていく黒幕)
436_黒幕 「東風の方はそういうまどろっこしい事はなしで、いきなり里に放り込んだ。
仲間意識の違いは、これも要因かもね」
437_朱音 「私が、迎え入れるだと? そんな事は…私はしていない!」
438_黒幕 「朱音、お前は、修理の終わった仲間をその言葉と共に受け入れたあと、
その事実を忘れるよう、設定してあるからだよ」
439_朱音 「…っ!」
440_黒幕 「更には…こんな事もしてたって、知ってた?」
441_主 「―――『良く来たな、朱音。余は、そなたがいれば心強い』」
442_朱音 「! 斉彬、さま…!」
443_黒幕 「ついでに言えば、東風の方の主・隆利も、僕」
444_朱音 「主は…お前が演じていたのか!?」
445_伊織 「…この声…アタシの夢に出てきた…」
446_黒幕 「へえ…? 培養器にスピーカーで話しかけてたから、
潜在意識のどこかで覚えていたんだろう。また一つ新しいデータが増えたな」
447_朱音 「あの時の主の…『壊れたら取り替える』とは―――この事だったんだな」
448_黒幕 「ふふ…そうだよ。文字通り、新しく設定を変えて取り替えてたんだ。
…そうしたかったのに、出来なかった存在も居たけどねえ」
449_佐久弥 「…」
450_黒幕 「…ね、比奈伎。比奈伎も、何度も夢を見たんだろう?」
451_比奈伎 「(びくっ)……俺、は…迎えてもらう夢は、見てない…」
452_黒幕 「そうだね。比奈伎は一度も壊れなかった。壊したかったのに」
453_比奈伎 「―――」
454_謎の男 「(E)―――おいで―――」
455_黒幕 「でも、違う夢を見ただろう?」
456_謎の男 「(E)おいで…闇に身を任せれば総て終わる―――おいで…」
457_黒幕 「それこそ、何度も―――何度も…」
458_比奈伎 「…っ」
459_佐久弥 「それで、おまえの狙いはなに?」
460_黒幕 「(ちょっと目を見開いて)別に、狙い、っていう程のものじゃないけどねえ」
461_寿々加 「真面目に答えろ!」
462_黒幕 「そうだね。強いて言えば―――神の気分を味わいたかった。…かな?」
463_朱音 「…神、だと」
464_黒幕 「それに、『この中』にいるのもいい加減飽きたところだったしさ」
465_朱音 「貴様…ッ」
466_黒幕 「アハハハハハ!! …何だかんだいって、可愛いよねえ、鬼火の連中は。
疑うことを知らなくて、素直に言う事を聞く…
おかげで、ずいぶんやりやすかったよ。お前たちには感謝しなきゃね」
467_伊織 「…何もかも全部、仕組まれてたって言うの…?」
468_黒幕 「東風はもっと動かしやすかった。単純なんだよねえ。
光を見せて、後ろからちょっと突いただけで、すぐに行動に移してくれて」
469_彩登 「…瀬比呂…うそ、だよね…」
470_伊織 「こんなの、悪い冗談…」
471_黒幕 「まだ信じられない? じゃあ、まずは僕が瀬比呂だって言う証拠を見せてあげる」
472_千波流 「証拠だと?」
473_黒幕 「ほうら。これ、彩登が『僕』にくれたんだよね」
474_彩登 「その組紐…」
(エコー・彩登が、瀬比呂に組みひもをあげる回想シーン{鬼灯第四話・1の51〜 参照})
475_彩登 「あのね、そのね…。…瀬比呂…これ、あげる!!」
476_瀬比呂 「え? …この飾り紐、朱音さまからもらったものじゃないの? 彩登のお守りだよね」
477_彩登 「この前、彩登をいっぱい助けてくれたでしょ? だから…そのお礼なの!」
478_瀬比呂 「! ありがとー! 絶対絶対大事にするよ!!」
(回想シーン・エコー終わり/そのことを思い出して愕然とする彩登)
479_彩登 「ほんとに、瀬比呂、なの…?」
480_千波流 「瀬比呂、お前…っ、本当に俺たちを裏切っていたのか!?」
481_黒幕 「違うよ千波流。裏切りじゃあない。ずっと、こうなると決まってただけ。
僕の予定通りに事が運んだだけだよ」
482_伊織 「じゃ、じゃあ、アンタが瀬比呂だったとして…っ、なんでこんな…っ」
483_黒幕 「じゃ、証拠の次は、もっと面白いもの…見せてあげる」
484_朱音 「面白いものだと?」
485_黒幕 「ついておいで」
(黒幕についていくと、今まで見たことの無い大きなスクリーンのある部屋に。謁見の間よりも奥。
/そのスクリーンに何か写る/画面が移る電子音/ぼこぼこと、水が湧き上がるような音。
大きな、円柱型の水槽のようなものの中に、ぷかぷかと人が縦に立っているのが見える)
486_千波流 「…なんだこれは…!?」
487_伊織 「え…っ…なにこれ…っ、あ、アタシ…!?」
488_彩登 「え…っ!? ほ、ほんとだ、伊織だ…」
489_千波流 「伊織だけじゃない…俺たちが、全員いる…なんだ、この…水槽のような」
490_伊織 「なにこれ…、本物じゃないの?」
491_黒幕 「画像だよ。これは、培養所の映像だ」
492_伊織 「画像…?」
493_寿々加 「…(はっとして)謁見の間に行く直前にあった部屋にも…こんなのがあったな」
494_黒幕 「そう。あれは、屋敷内総て、それから里の様子を見るためのモニターだよ」
495_彩登 「も、にたー?」
496_黒幕 「簡単に言うとね。遠くからでも、おまえたちの事は毎日監視してたって事」
497_佐久弥 「…」
498_朱音 「人の気配の無い屋敷の中でも視線を感じたのは、これのせいなんだな」
499_寿々加 「これはいったい何なんだ! 俺たちそっくりの…人形みたいな」
500_彩登 「まるで本当の彩登たちみたい…」
501_黒幕 「そりゃそうだよ。これはおまえたちそのもの。培養した、ね」
502_伊織 「ば、培養?」
503_黒幕 「お前たちには説明しても分からないだろうけど…
つまり、この画面に写っているこの部屋がお前たちの誕生の場所。
お前たちが作られた場所だよ」
504_彩登 「…え? つ、作られた…?」
505_寿々加 「作られたって…どういう事だ!」
506_黒幕 「一番最初は…、そうそう、確か、佐久弥だったな」
507_佐久弥 「!」
508_佐久弥 「(E)私が一番最初だと思っている夢―――」
509_黒幕 「次は、朱音だったかな?
個々の身体能力から精神能力、総てを綿密に設定してね。苦労したんだよ?」
510_朱音 「…それでは、私たちは」
511_黒幕 「お前たちには親というものは存在しない。
何故ならそれは…お前たちが人工培養で飼育された、家畜だからだ」
【続く】