●鬼神楽● 【〜楽業の章・第9話〜】 | |
この色…東風 この色…鬼火 この色…武士・女中・ガヤ(注:ガヤ・全員部分は、ファイル名 セリフ番号_お名前 ) この色…その他 | |
【ガヤ:一本のファイルに、三パターンほど入れて下さい。 その際には、それぞれの間を2秒ほど空けてくださると助かります】 ※万一使用セリフに不安がある場合には、よろしければ、こちらから指定させていただきます。 | |
セリフ番号 | |
(銃撃音が響く/静と共に武士に攻撃された芳、寸でのところで近衛に助けられる。 近衛、朱音とのやり合い、そして武士の包囲網を抜けるために傷を負っている) | |
01_近衛 | 「―――芳! 芳か!?」 |
02_芳 | 「近衛!? どうして…ここに!」 |
03_近衛 | 「芳…やはり、生きていてくれたんだな…! 怪我をしているのか!?」 |
04_芳 | 「近衛…! ああ、アンタこそ怪我を…アタシは大丈夫だよ。ほら、静も… しずか…静…!? 嘘だろう!? 近衛、静が…ッ!」 |
05_近衛 | 「芳…!(抱き締める)」 |
06_芳 | 「………この子が死んで…この子の死を見て…こんなにも、 仲間の死が恐ろしい事だと、…はじめてわかった…!!」 |
07_近衛 | 「…仲間、か。あまりに当たり前すぎて、 無意識のうちに深く考える事を避けていたのかもしれん…」 |
08_芳 | 「近衛…アタシ…震えが…止まらないよ…」 |
09_近衛 | 「芳」 |
10_芳 | 「アンタがこの一族を率いてくれてたから、アタシたちは…ここまで生き延びてこられた。 アンタ以外じゃ、きっと無理だったよ。 近衛だからこそ…アタシを生かしてくれてたんだ―――」 |
11_近衛 | 「(静かに微笑んで)…そんな事は、初めて聴いたぞ?」 |
12_芳 | 「(返すように微笑んで)そりゃそうさ…アタシだって初めて言葉にした事だよ。 …こういう時でもなきゃ、口に出してなんか言えるもんか」 |
13_近衛 | 「芳―――、一族を、頼むぞ」 |
14_芳 | 「……アンタほどには行かないと思うけど、尽力するよ」 |
15_近衛 | 「ははは、いつになく弱気だな、東風の芳ともあろう者が」 |
16_芳 | 「近衛…」 |
17_近衛 | 「私は、ずっと思っていた。自分は何のために、この一族を率いているのかと。 自分は何のための頭領なのだろうと。 …芳。私たちもなれるだろうか。鬼火一族のように」 |
18_芳 | 「なれるさ。きっと、なれる。左京も、卓麻も、あの白銀さえも、 この一族が何よりも大事だって、アタシは知ってるよ。 アンタが一族の頭領であることも、認めてるよ…」 |
19_近衛 | 「そうか…だと、良いがな。…芳。もし、生きて、また巡り合う事があれば… 私と夫婦(めおと)になってくれるか?」 |
20_芳 | 「馬鹿だね…! アタシは、ずっと…そのつもりだったよ…!!」 |
21_近衛 | 「…そうか」 |
22_芳 | 「近衛…これからどうするんだい」 |
23_近衛 | 「奥座敷に向かう。…主に、直々に確かめるべき事があるんだ」 |
(モノローグ/完全に、これは瀬比呂のままで) | |
24_瀬比呂 | 「朱音さまが大好き。鬼火一族のみんなが大好き。彩登が大好き。 早く一人前になりたいな。 寿々加や夜紫乃くらい速く武器を振るって、千波流や亜夏刃くらいどっしりと構えて。 いつか、みんながびっくりするくらい強くなって、僕が彩登を守るんだ。 でも、最近自分の中で違う声が聞こえてくる。 そろそろじゃないのか?って。 ああ、そっか。もう、そんなに経つんだっけ。じゃあ、そろそろ行かなくちゃ。 なんだか、少し眠くなってきちゃったな。 『僕』が眠っちゃう前に、行かなくちゃ。 …でも、じゃあ、『僕』は何処に行くんだろう―――」 |
(モノローグ終わり/近衛の後姿を見送る芳) | |
25_芳 | 「(ため息をつく)近衛の後姿をこんなに不安な気持ちで見送るのは初めてだね…」 |
26_黒幕 | 「(突然現れる)そうなんだ?」 |
27_芳 | 「!? なんだ、おまえは―――!」 |
28_黒幕 | 「そろそろ飽きてきちゃったな。 それに、使えないものは、もういらないんだよね。…バイバイ、芳」 |
29_芳 | 「…! このえ…っ」 |
(銃声) | |
30_近衛 | 「(呼ばれたような気がして振り向く)芳…?」 |
(突然柱の影から飛び出した槍を受け流す近衛) | |
31_女中:1(2) | 「くっ!?」 |
32_近衛 | 「―――女か」 |
33_女中:2 | 「何者じゃ!」 |
34_女中:3 | 「不心得者め!」 |
35_女中:1(2) | 「何故このような場所におのこが!?」 |
36_女中頭 | 「騒ぐでない! みな! 武器を取り、ここに!!」 |
37_女中:全員 | ※「は!」 |
38_近衛 | 「私はこの先に用があるのだ。通してもらおう」 |
39_女中:3 | 「待たれよ!」 |
40_女中:2 | 「その刀を下ろしなされ!」 |
41_女中頭 | 「そなたは、東風一族の者か」 |
42_近衛 | 「そうだ」 |
43_女中頭 | 「名は」 |
44_近衛 | 「私は東風の頭領、近衛」 |
45_女中頭 | 「近衛殿。この先は我らが殿のおわすべき場所」 |
46_女中:2 | 「そなたが誰であろうと、ここから先へ進む事は出来ませぬ」 |
47_女中:1(3) | 「即刻、退(ひ)いて下さいませ」 |
48_近衛 | 「それは出来ぬな。私は、主・隆利さまに直にお目にかかるべくここまで来たのだ」 |
49_女中:1(3) | 「今、殿にお会いする事は出来ませぬ」 |
50_女中:2 | 「どなたもお会いする事は出来ませぬ」 |
51_近衛 | 「そういうわけにはいかぬ。拝謁をお許しいただきたい」 |
52_女中頭 | 「出来ませぬ! 今すぐに、武器を退きなされ!」 |
53_女中:2 | 「さもなくば―――我ら女も全員、敵となりましょうぞ!」 |
54_近衛 | 「女といえども、東風の近衛、退きはせんぞ(刀を構える)」 |
55_近衛 | 「(M)この傷で…どこまでやれるかはわからんが――― 芳との約束を違えぬためにも―――私が、最後まで東風の頭領で居るためにも」 |
56_女中:1(2) | 「お覚悟!」 |
(武器が交差する/タイトルコール) | |
57_瀬比呂 | 「『鬼神楽』最終章 〜楽業の章〜 第九話」 |
(東風の里から、主の屋敷へ戻ってきた朱音・佐久弥・伊織) | |
58_朱音 | 「…何か、空気が変だな」 |
59_伊織 | 「あ、朱音さま…」 |
60_佐久弥 | 「シッ…妙な音がする」 |
(間髪居れず、轟音が響いた) | |
61_伊織 | 「なに、今の音…!」 |
62_佐久弥 | 「…この屋敷は、屋敷中にカラクリが仕掛けられてる。 今の音は…壁が落ちた音に似てるみたいだ」 |
63_朱音 | 「…まさか」 |
(一度、扉まで戻る。押しても引いてもびくともしない) | |
64_朱音 | 「当たったな、佐久弥。扉があかない。閉じ込められたようだ」 |
65_伊織 | 「そんな…どうしよう」 |
66_朱音 | 「大丈夫だ、伊織。とにかく、誰かいないか探して合流しよう」 |
67_伊織 | 「みんなに会えるの!?」 |
68_朱音 | 「(小さく頷いて)何を目的としているかは分からないが… ここまで私たちを来させた上に 丁寧にも退路を閉じたという事は」 |
69_佐久弥 | 「…最後の舞台は この屋敷の中、というわけ」 |
70_朱音 | 「そのようだな」 |
71_佐久弥 | 「(小さく頷き)それならきっと、仲間にも会わせるつもりだと思う」 |
72_朱音 | 「私もそう思う。わざわざここに集めて、何かをしでかすつもりだ」 |
(スクリーンの向こう側では) | |
73_黒幕 | 「(くつくつと笑う)やっぱり、生き残ったのは鬼火の方が多いか――― さあ…これで役者は揃った。そろそろ、大詰め…かな」 |
(一人で屋敷をさまよっていた寿々加、こちらにも轟音が響き渡る) | |
74_寿々加 | 「…今の音…比奈伎と分かれたあのカラクリに似てるな… 音がした場所も近かった…誰かが何かしたのかもしれない」 |
(そっと気配を窺いながら歩く寿々加) | |
75_寿々加 | 「! …気配が…三つ、…まさか!! ―――お頭!?」 |
76_朱音 | 「寿々加か!」 |
77_寿々加 | 「お頭…! 伊織、佐久弥も…! 生きてたんだな!」 |
78_伊織 | 「寿々加こそ…っ、もう、会えないかと思ったよお!(半泣き)」 |
79_寿々加 | 「ばぁか。伊織、縁起でもねえ事言うなよ」 |
80_伊織 | 「だって…っ! みんなとはぐれちゃって…っ、それで、夜紫乃が…夜紫乃が…っ」 |
81_寿々加 | 「…夜紫乃が、何だよ」 |
82_朱音 | 「…寿々加。夜紫乃だけじゃ、ないんだ―――」 |
(分かれてから起こった出来事をそれぞれ話し出す。みなの脳裏に、みんなの元気な姿が) | |
83_夜紫乃 | 「(E)ねえ寿々加! 今度の戦から、僕がなるべく柄の長い武器を使ってみようと思うんだ。 そしたら、寿々加には結構大きな範囲で動いてもらえると思うんだよね。どう思う? 武器のことは、睦月に相談してみるからさ!」 |
84_夜紫乃 | 「(E)思ったより上手くいった! 朱音さま、これって佐久弥に報告したら喜んでもらえるかな!?」 |
85_夜紫乃 | 「(E)伊織、逃げろ…!!」 |
86_寿々加 | 「……そうか。俺たちが分かれてから、そんな事が…」 |
87_朱音 | 「だが、きっとまだこの屋敷内に何名かは残っているはずなんだ」 |
88_寿々加 | 「そうだな。探そうぜ」 |
89_佐久弥 | 「私は、もう少し先を見てくるよ」 |
90_寿々加 | 「じゃ、俺は逆を見てくる。お頭、アンタは伊織とここに残っててくれ」 |
91_朱音 | 「分かった。佐久弥、寿々加、頼む、気をつけてな」 |
92_寿々加 92_佐久弥 |
※「(返事)」 |
(しばらく進んでいき、気配を感じた佐久弥) | |
93_佐久弥 | 「(M)血の臭い―――それと、気配が一つ…これは」 |
94_佐久弥 | 「―――比奈伎?」 |
95_比奈伎 | 「…! さく、や?」 |
96_佐久弥 | 「……比奈伎」 |
97_比奈伎 | 「…(大きく息を吐き出す)……無事、だったんだな、佐久弥」 |
98_佐久弥 | 「(ふるふると首を振って)私だけじゃないよ、比奈伎」 |
99_比奈伎 | 「え?」 |
100_佐久弥 | 「朱音も、いるんだよ」 |
101_比奈伎 | 「朱音、が…」 |
102_佐久弥 | 「うん。向こうで、待ってるよ、比奈伎」 |
103_比奈伎 | 「―――…て、た」 |
104_佐久弥 | 「……うん」 |
105_比奈伎 | 「…生きて―――、…朱音は、生きて、いた…」 |
106_佐久弥 | 「うん」 |
107_比奈伎 | 「生きて、……っ、無事で、無事で、居てくれた…っ」 |
108_佐久弥 | 「うん…うん」 |
109_比奈伎 | 「…………、…佐久弥、…さらしを、持っていないか」 |
110_佐久弥 | 「…え」 |
111_比奈伎 | 「このままじゃ、会えない」 |
112_佐久弥 | 「…比奈」 |
113_比奈伎 | 「東風の切り込みにやられた。 血止めの薬草も効かないんだ―――なんとか、止血してる状態で」 |
114_佐久弥 | 「…」 |
115_比奈伎 | 「実を言えば、もう右腕の感覚も無い」 |
116_佐久弥 | 「比奈」 |
117_比奈伎 | 「…朱音には知られたくないんだ」 |
118_佐久弥 | 「…っ…ひな」 |
119_比奈伎 | 「まだ、走れるからな」 |
120_佐久弥 | 「…」 |
121_比奈伎 | 「誰にも、言うなよ」 |
(鬼火一族、ようやく生き残ってる人、合流。千波流・亜夏刃・彩登、寿々加・佐久弥・朱音・伊織・比奈伎) | |
122_千波流 | 「―――お頭!?」 |
123_彩登 | 「朱音さまあっ!!」 |
124_亜夏刃 | 「お頭」 |
125_朱音 | 「千波流、彩登、亜夏刃」 |
126_千波流 | 「! 伊織も、良く無事で…!!」 |
127_伊織 | 「千波流こそ、無事で良かった…っ」 |
128_彩登 | 「彩登…、伊織たちとはぐれちゃって、…怖かったよおっ」 |
129_伊織 | 「うん、彩登…ごめんね、ごめんね!」 |
130_千波流 | 「この先の廊下で、寿々加に会えたときは、夢かと思ったぞ…! 生きていて本当に良かった!」 |
131_寿々加 | 「ああ、この通りな。佐久弥と分かれて独りになってから、 合流が、遅くなっちまったけどな」 |
132_朱音 | 「千波流、亜夏刃ともに、良く彩登を守ってここまで残っていてくれた」 |
133_亜夏刃 | 「お頭こそ…無事で何よりだ」 |
134_千波流 | 「その佐久弥はどうした」 |
135_寿々加 | 「もちろん無事だぜ。ついでに、その佐久弥がもう一人見つけてな」 |
136_亜夏刃 | 「…比奈伎」 |
137_比奈伎 | 「みな…無事だったんだな」 |
138_亜夏刃 | 「…何とかな。だが…」 |
139_千波流 | 「…ああ。…実は、…」 |
(今まで、別れた者たちのことを語っていく…やはり次々に思い出されるその姿) | |
140_羽霧 | 「(E)お頭! 今度の斥候じゃ、ちょっと面白い情報が入りそうだ。 ついでに珠菜が生きの良い魚を獲ってくるってさ!」 |
141_羽霧 | 「(E)冗談じゃないぜ! はいそうですかと後ろに引っ込んでなんていられるか! 賄いと斥候は絶対にやり遂げる。どっちも俺の仕事だぞ!」 |
142_羽霧 | 「(E)…千波流…気をつけろ…! 同じだ……!」 |
143_各務 | 「(E)相変わらず、にぎやかな事だねえ。どれ… ふふっ…我から見ればどちらも変わらぬように見えるが、 二人とも譲れぬのであろうなぁ」 |
144_各務 | 「(E)何を言う、お頭を一人にするわけにはいかぬえ。 我が目を離したせいで怪我でもされればそれこそ大事であろ。 お頭の『大丈夫』は信用出来ぬもの(くすくす)」 |
145_各務 | 「(E)みな…あの人を……お頭を、頼むえ―――」 |
146_朱音 | 「…そうか。羽霧も、各務も…」 |
147_千波流 | 「まさか、夜紫乃や、…睦月までも…」 |
148_珠菜 | 「(E)嫌ですわ羽霧ったら、そんなに血相を変えて…。 ちょっと塩加減を間違えただけじゃありませんこと」 |
149_珠菜 | 「(E)肩が濡れていますわ、亜夏刃。この布をお使いになって。 それにしても…本当に良く降りますわよね」 |
150_珠菜 | 「(E)先にお行きなさい―――わたくしは、一人で大丈夫ですわ」 |
151_珠菜 | 「(E)亜夏刃…わたくしを信じて―――」 |
152_亜夏刃 | 「珠菜とは、はぐれたままで、…自分たちは確認をしたわけじゃない」 |
153_彩登 | 「瀬比呂も、わかんないまま…」 |
154_朱音 | 「亜夏刃、彩登。消息が分からない者は、まだ希望はある。 私たちは最後まで仲間を信じよう」 |
155_千波流 155_亜夏刃 155_寿々加 155_比奈伎 155_佐久弥 155_伊織 155_彩登 |
※「(返事)」 |
156_朱音 | 「みな、無事で居てくれて感謝する。千波流、良く彩登を守ってくれた」 |
157_千波流 | 「はい。お頭こそ」 |
158_朱音 | 「彩登。大変だったな、良く頑張った。怪我はないか」 |
159_彩登 | 「うん、…はいっ!」 |
160_朱音 | 「亜夏刃、使える武器をそろえてくれ」 |
161_亜夏刃 | 「心得た」 |
162_朱音 | 「寿々加、私が相棒では心もとないかもしれないが、補佐を頼む」 |
163_寿々加 | 「はは、ご謙遜だな、そりゃ」 |
164_朱音 | 「伊織、千波流と共に、今度こそしっかり彩登を守っていてくれ」 |
165_伊織 | 「朱音さま…。はい、絶対に守ります!」 |
166_朱音 | 「佐久弥、後ろを頼めるか」 |
167_佐久弥 | 「うん」 |
168_朱音 | 「…比奈。少し顔色が悪い。大丈夫か?」 |
169_比奈伎 | 「あ、ああ。…大丈夫だ」 |
170_朱音 | 「そうか(微笑む)。(少し遠くに向かって)―――千波流! 屋敷の状況は分かるか」 |
171_千波流 | 「(少し離れた所で)はい。とにかく、東側はもう無理ですね―――」 |
172_亜夏刃 | 「出来るだけ状態を調べながら歩いてみたんだが」 |
173_千波流 | 「(頷く)あちこちで爆破されている割には、 一番外の…外壁には傷がつかないようなんです」 |
174_寿々加 | 「うーん…壊さないよう、狙ってやっているのかもしれないな」 |
175_朱音 | 「火薬が手に入れば、何処かを壊して出るという事も可能かもしれないが…」 |
176_千波流 | 「そうですね…しかし、それだけの火薬ともなると用意がありません」 |
177_寿々加 | 「んじゃ、どっか簡単に壊せそうな所を探してみるかぁ…」 |
178_朱音 | 「そうだな。どうもこの屋敷は得体が知れない。 出来るだけ早く、ここから出た方が良い気がする」 |
179_亜夏刃 | 「そのついでに、瀬比呂と珠菜を捜そう」 |
180_千波流 | 「そうだな」 |
(そのとき、向こう側の壁のあたりに人の気配を感じた) | |
182_寿々加 | 「―――シ! (気配の方に向かって)誰だ!?」 |
183_瀬比呂 | 「…みん、な?」 |
184_寿々加 | 「…え? 瀬比呂…瀬比呂か!?」 |
185_瀬比呂 | 「寿々加ぁ!!」 |
186_寿々加 | 「(駆け寄る)無事だったのか、瀬比呂…!! 良かった…!」 |
187_瀬比呂 | 「うん…! ………うん」 |
188_寿々加 | 「…瀬比呂?」 |
189_瀬比呂 | 「―――うん。僕は無事だよ、寿々加―――」 |
190_寿々加 | 「…瀬比呂?」 |
(一瞬、瀬比呂から冷やりとした雰囲気を感じた寿々加だが、他の面々が駆け寄りかき消される) | |
191_千波流 | 「(駆け寄る)瀬比呂! おまえ…無事だったのか…!」 |
192_彩登 | 「(駆け寄る)心配したんだよ、瀬比呂…っ、会えてほんとに良かったよぉお」 |
193_瀬比呂 | 「うん、ごめん、ごめんね、彩登…!」 |
194_朱音 | 「瀬比呂…! 本当に良かった」 |
195_瀬比呂 | 「朱音さまぁ…(涙ぐむ)」 |
(瀬比呂も合流。みんな喜び、今後の動向について話し合い、行動に移します) | |
196_亜夏刃 | 「よし…ひとまず、自分たちで屋敷内を少し調べてみよう」 |
197_寿々加 | 「だな。それなら、手を分けた方が良い」 |
198_朱音 | 「亜夏刃、寿々加、ひとまずここを拠点にしよう。 千波流はここで待っていてくれ。伊織、彩登、瀬比呂、おまえたちもだ」 |
199_千波流 | 「待ってください! 今度は俺も散策に加わります」 |
200_朱音 | 「いや、千波流、おまえが残っていてくれた方が安心出来る。 伊織たちを守っていてくれ」 |
201_亜夏刃 | 「自分は、使えそうな武器が無いかほかにも探してみる」 |
202_比奈伎 | 「では、俺も亜夏刃を手伝おう」 |
203_佐久弥 | 「比奈伎はここに残って、千波流と一緒にみんなを守って」 |
204_比奈伎 | 「佐久弥っ」 |
205_朱音 | 「比奈伎、どうした?」 |
206_比奈伎 | 「なんでもない! (ぼそ)…余計な事は言うなよ佐久弥、朱音に気付かれる」 |
207_佐久弥 | 「………じゃあ、私も武器を探すほうを手伝うよ」 |
208_亜夏刃 | 「こちらは武器を探すのにそんなに手間は要らない。 比奈伎と佐久弥はまた別の道から探してくれ」 |
209_比奈伎 | 「わかった」 |
210_朱音 | 「では、私は寿々加とあちらを回る」 |
211_瀬比呂 | 「朱音さま、待って!」 |
212_朱音 | 「瀬比呂、どうした」 |
213_瀬比呂 | 「僕も連れて行って! みんな、出口を探してるんでしょ? 僕、この先に抜けられそうな所を見つけたんだ!」 |
(所変わって、今、東風の生き残り組はというと) | |
214_茶々 | 「真木…そちらには、誰かいた?」 |
215_真木 | 「いえ…駄目ですわね」 |
216_茶々 | 「そう…。茶々の方も同じよ。誰も居ないわ」 |
217_真木 | 「円や春日も合流場所に戻ってこないし…浅葱とも逸れてしまった。 一体どうなってるのかしら」 |
218_八重 | 「(やけに落ち着いて)―――ねえ、茶々、真木」 |
219_真木 | 「なんですの、八重」 |
220_八重 | 「この結末がどうなるか、知りたくない?」 |
221_茶々 | 「…八重? 何を言っているの?」 |
222_八重 | 「自分たちは何かに踊らされているだけではないのか、 それを確かめるために、鬼火の頭領は一人でこの屋敷に乗り込んだ。 ―――そのとき その瞬間から、鬼火は滅びる運命にあったんだよ」 |
223_真木 | 「八重…? 何を言っているのか、分かりませんわよ」 |
224_八重 | 「そして、鬼火がそういう行動に出てしまったからこそ、東風も巻き込まれた」 |
225_茶々 | 「…何の話をしているの…?」 |
226_八重 | 「類稀なる戦闘集団、なんて謳ってるけど、所詮は世間知らずの集まりだ。 潰すのなんて簡単だよね」 |
227_真木 | 「八重!?」 |
228_八重 | 「冷酷無比に作ったはずの東風も、結局は甘い連中が多かった。 戦の時…子どもだからって言って、白銀から庇ってやったりねえ」 |
229_真木 | 「(はっとする)まさか…」 |
230_八重 | 「ああいう甘い事されると興ざめだよね。 ま、アレはどこかでバグったせいだろうから、僕が消しておいたけど」 |
231_茶々 | 「…そういえば、いつだったか子どもの武士がいたけれど… 知らない間に誰かに殺されていて」 |
232_真木 | 「―――あれは、八重。貴方のせいだって言うんですの?」 |
233_八重 | 「く、く、く、甘いから、生き残れないんだよ。春日も円も、ほかのみんなもね」 |
234_真木 | 「…春日と円を、どうしたんですの」 |
235_八重 | 「(肩を竦めて)僕は何もしてないよ。 鬼火を捕まえて、油断して、あっさり殺されただけ」 |
236_茶々 | 「!! …そんな…春日が…円…円が…」 |
237_八重 | 「ふふ…おまえたちも、死にたくなかったら生き延びる事だよね。 近衛もそう言ってたじゃん」 |
238_真木 | 「貴方は―――!!」 |
239_八重 | 「向こうに鬼火の連中も居る―――まずは、向こうから潰してくるからさ。 僕が壊すまで、お前たちはちゃんと生き残っててよ?(ひらりと身を翻す)」 |
240_真木 | 「お待ちなさい! 八重!(走り出す)」 |
241_茶々 | 「ま、真木…! 駄目よ、追っては…! 真木…! 真木…!!」 |
(八重を追って真木も姿を消す/寿々加・朱音・瀬比呂、あたりを探りながら通路を進む) | |
242_瀬比呂 | 「朱音さま、寿々加、こっちこっち! ええっと、確かこの通路の奥に…」 |
243_寿々加 | 「あ、ちょっと待った瀬比呂! あぶねえから俺が見てくる」 |
244_瀬比呂 | 「う、うん。ここをずっと行くと、右に折れる細い通路があってね…」 |
245_寿々加 | 「どれどれ…(気配を窺いながら進んでいく)」 |
246_瀬比呂 | 「(その後姿に静かに)…ねえ、寿々加。脱出路を見つけて、それからどうするの?」 |
247_寿々加 | 「んー、とにかく、まずは屋敷から脱出して―――」 |
248_瀬比呂 | 「くす。ダメだって。逃げ出すなんて、そんな事言っちゃ。 もうちょっと待てば済む問題じゃん!」 |
249_寿々加 | 「(振り向いて)どういう事だ? 何を根拠に…」 |
250_瀬比呂 | 「だってさ、どうせみんな、消えちゃうんだから!」 |
(ここから先すべて瀬比呂&八重は【黒幕】で。ついに、明らかになっていくその正体とは…) | |
251_寿々加 251_朱音 |
※「瀬比呂…!?」 ※「瀬比呂…!」 |
252_黒幕 | 「くすくす…思ったよりも生き残っていてくれて、本当に嬉しいよ」 |
253_朱音 | 「―――その、口調…どこかで」 |
254_黒幕 | 「東風も結構、良い線行くと思ったんだけどなぁ。鬼火の方が断然! 生き残ったね」 |
255_寿々加 | 「何を…言ってる…?」 |
256_亜夏刃 | 「(少し遠くから)お頭に、寿々加か? こちらにはあまり使える武器は残っていないようだ…ん? どうしたんだ」 |
257_黒幕 | 「ふふっ…まずは、誰からにする?」 |
258_朱音 | 「亜夏刃、下がれ!」 |
259_亜夏刃 | 「!」 |
260_寿々加 | 「やめろ瀬比呂ォ!!」 |
(銃声) | |
261_亜夏刃 | 「ぐっ!(撃たれた)」 |
262_朱音 | 「亜夏刃っ!!!」 |
263_寿々加 | 「馬鹿、お前…っ!!」 |
264_亜夏刃 | 「くっ…だが、抑えたぞ…!(瀬比呂を羽交い絞め)」 |
265_黒幕 | 「うわああああ! ……なーんてね」 |
266_亜夏刃 | 「!?(刺さる)」 |
267_寿々加 | 「亜夏刃ァ!!」 |
268_朱音 | 「亜夏刃!」 |
269_亜夏刃 | 「(がくりと膝を突いて)…仕込み、か…っ」 |
270_黒幕 | 「(くすくす…)睦月の作った こんなおもちゃみたいな武器が、 役に立つなんて思わなかった。お礼を言わなきゃだね」 |
271_寿々加 | 「あれは…睦月の作った、仕込み武器じゃねえか…」 |
272_黒幕 | 「うん。東風の里に来た時にね、もらっといたんだ。 そうそう、睦月の死に様は、そりゃ見事だったよ? みんなにも見せてあげたかったなぁ」 |
273_睦月 | 「(E)朱音さま。朱音さまのお刀は、アタシが責任もって研いでおきますからね! ぴっかぴかに仕上げておきますから、安心して任せてください」 |
274_睦月 | 「(E)みんなが思い切り武器を使えるように、細かい調整とか、仕上げとか、 何でも言ってください。少しでも良い物になるよう、アタシ、頑張っちゃいます!」 |
275_睦月 | 「(E)みんなの足を引っ張るなんて…絶対しないんだから…!」 |
276_朱音 | 「…っ…睦月…っ」 |
277_黒幕 | 「とはいっても…ここに残ってるのは、強いのばっかりだもんなぁ。 じゃあ…まずは、あっちに残ってる連中からにしようか!」 |
278_寿々加 | 「何だと!?」 |
279_黒幕 | 「じゃあね!」 |
280_朱音 | 「待て…! (ハッと立ち止まる)」 |
(轟音と共に壁が閉まる/そして、現れる武士たち) | |
281_武士:7 | 「こちらだ!」 |
282_武士:ガヤ | ※(わらわらっと現れる一言) 「急げ!」「出あえ出あえ!」「遅れをとるな!」など |
283_大将 | 「ここから先へは行かせぬぞ!」 |
284_武士:2 | 「止まれ!」 |
285_武士:4 | 「武器を下ろせ!」 |
286_武士:5 | 「逆らうと分かっているだろうな!」 |
287_武士:6 | 「鉄砲隊、構え!」 |
288_寿々加 | 「(激しく舌打ち)こんな時に…っ!」 |
289_亜夏刃 | 「…ここは自分が抑える」 |
290_朱音 | 「亜夏刃!」 |
291_亜夏刃 | 「瀬比呂…いや、ヤツを追え…」 |
292_寿々加 | 「おまえ一人で残るっていうのかよ!?」 |
293_亜夏刃 | 「千波流たちが、―――危ない」 |
294_寿々加 | 「!」 |
295_亜夏刃 | 「早く戻ってヤツが本当の敵だと教えてやらなければ」 |
296_寿々加 | 「(頷く)朱音、比奈と佐久弥を拾って先に戻れ!」 |
297_朱音 | 「ああ!(身を翻す)」 |
298_亜夏刃 | 「寿々加、おまえも行け」 |
299_寿々加 | 「一人よか二人の方が戦いやすいだろうが!」 |
300_亜夏刃 | 「…(どんっと寿々加を突き飛ばす)」 |
(亜夏刃が壁をいじると、寿々加の目の前で壁が落ちてくる) | |
301_寿々加 | 「!? なっ…壁が!」 |
302_亜夏刃 | 「先ほど瀬比呂が、ここを触っているのを見たんでな… こうでもしなければ、おまえは残ると言い張るだろう」 |
303_寿々加 | 「亜夏刃っ!? 開けろ…っ開けろって!! 聞こえてんだろうが!!」 |
304_亜夏刃 | 「…自分一人で抑える、と言ったはずだぞ、寿々加」 |
305_寿々加 | 「バカヤロ…バッカヤロォ…誰もこんな事してくれなんて…頼んでねーだろーが……ッ」 |
306_亜夏刃 | 「……寿々加。自分は、…珠菜を信じて、たった一人で残してここまで来たんだ」 |
307_寿々加 | 「…っ…亜夏刃」 |
308_亜夏刃 | 「だからと言うわけではないが…自分も、一人で、大丈夫なんだ」 |
309_寿々加 | 「亜夏刃…っ」 |
310_亜夏刃 | 「良いから、早く行け、寿々加」 |
311_寿々加 | 「良いか亜夏刃…絶対死ぬんじゃねえぞ…!」 |
312_亜夏刃 | 「こういった状態でのしんがりは、何度も経験している。 寿々加こそ、先走りすぎるなよ」 |
313_寿々加 | 「言ってくれるぜ…!」 |
314_亜夏刃 | 「行け!」 |
315_寿々加 | 「(走り出す)」 |
(寿々加が走り去ると、亜夏刃の後ろで小さな足音が) | |
316_黒幕 | 「―――わざわざ一人になってくれるなんて…ありがたいというか、愚かと言うか」 |
317_亜夏刃 | 「…瀬比呂」 |
318_黒幕 | 「(くすくす)うるさい武士共を下がらせて、 この僕がせっかく戻ってきてあげたって言うのに、何その顔?」 |
319_亜夏刃 | 「……いや、…もうお前は瀬比呂ではなく、総てを企てた、憎むべき相手、だったな…」 |
320_卓麻 | 「―――黒幕、とはな。…随分出世したじゃねえか」 |
321_亜夏刃 | 「!」 |
322_卓麻 | 「道理で昔から気に食わねえヤツだと思ってたぜ―――八重」 |
323_黒幕 | 「卓麻」 |
324_卓麻 | 「お前が裏で糸を引いてたとはな」 |
325_黒幕 | 「驚いたなあ、まだ生きてたんだねえ」 |
326_卓麻 | 「往生際が悪いからな」 |
327_黒幕 | 「ちょうど良いや。手間が省けちゃった。これ、殺っちゃってよ」 |
328_卓麻 | 「…鬼火か」 |
329_黒幕 | 「そ。卓麻の好きな、強い人間、だよ」 |
330_亜夏刃 | 「―――くっ…仲間か…」 |
331_黒幕 | 「きっと卓麻なら倒せるよ。頑張って」 |
332_卓麻 | 「ハ、よく言うぜ―――どうせ俺とこいつの相打ちでも狙ってんじゃねえのか」 |
333_黒幕 | 「ふふ…妙に勘が良いね卓麻。じゃあね、亜夏刃。 みんなにまた会いたかったら、卓麻を殺す事だよ」 |
334_亜夏刃 | 「…っ」 |
335_黒幕 | 「お前には、もうそれしか選択肢は残されてないんだ。あっははは!」 |
336_亜夏刃 | 「瀬比呂!」 |
337_卓麻 | 「せひろ? ははぁ…お前たちにとってあの顔はその名前の持ち主って事か」 |
338_亜夏刃 | 「…そうだ。お前たち東風にとっては、…八重、と言ったか」 |
339_卓麻 | 「薄気味悪い話だが…同じ顔がいるってのはどうやら本当らしいな」 |
340_亜夏刃 | 「あんな―――もの、に、良いように使われて、お前は―――なんとも思わないのか」 |
341_卓麻 | 「ハ、何を思えって? 裏切られて悲しい、とでも?」 |
342_亜夏刃 | 「…仲間、なんだろう」 |
343_卓麻 | 「生憎―――俺にはそんな感情はない。仲間意識なんざ、持ち合わせた事はねえよ」 |
344_亜夏刃 | 「なん、だと…?」 |
345_卓麻 | 「強ければ勝ち、弱ければ負ける―――即ち、死ぬ(刀を突きつける)。 俺にとってはただそれだけだ」 |
346_亜夏刃 | 「(刀を突きつけられて)! …。(小さな溜息) …これが、東風と鬼火との明らかな違いか」 |
347_卓麻 | 「フン。お前…左腕をやってるようだが、戦えるんだろうな?」 |
348_亜夏刃 | 「………やるしかないようだな」 |
349_卓麻 | 「(笑って)退屈させてくれるなよ?」 |
350_亜夏刃 | 「仕方ないか―――(武器を構える)」 |
351_亜夏刃 351_卓麻 |
※「―――(互いに間合いを計り、しばし対峙)」 |
352_亜夏刃 352_卓麻 |
※「―――ハ!!(同時に武器を繰り出す)」 |
(武器が交差する効果音が響く/武器を探している比奈・佐久の元に駆け戻って来た朱音) | |
353_朱音 | 「比奈伎! 佐久弥! 急いで戻ってくれ」 |
354_佐久弥 | 「朱音。何があったの」 |
355_朱音 | 「…裏切っていたのは、瀬比呂だったんだ」 |
356_比奈伎 | 「瀬比呂が!? …どういう事なんだ、朱音」 |
357_朱音 | 「瀬比呂は…いや、やつは―――ずっと、仲間を演じてきたんだ。 一族と共にありながら…こうなるように私たちを影で導いていた」 |
358_佐久弥 | 「…盲点だったね」 |
359_朱音 | 「ああ。まさか…こんな事になるなんて思ってもいなかったさ」 |
360_寿々加 | 「(走って追いついてくる)お頭!」 |
361_朱音 | 「寿々加、後ろはどうなってる」 |
362_寿々加 | 「亜夏刃が残って足止めしてくれてるぜ」 |
363_朱音 | 「…そうか」 |
364_寿々加 | 「とにかく、早く千波流たちと合流しねえと…瀬比呂が、 …いや、ヤツが先回りしてたら、危ねえぞ」 |
365_朱音 | 「そうだな。…急ごう」 |
(朱音たちの懸念どおり、朱音たちが戻ってくる前に、瀬比呂が先回りして千波流たちの元に走ってくる。 怪しさを完全に消して『瀬比呂』として振舞う黒幕。千波流たちは気づかない) | |
366_黒幕 | 「千波流、伊織、彩登…! 良かった、みんな…無事だった!? (ここは怪しさを消して完全に瀬比呂を演じてください)」 |
367_千波流 | 「瀬比呂!」 |
368_彩登 | 「瀬比呂っ!! 良かったぁ…っ」 |
369_千波流 | 「(駆け寄って)瀬比呂、お前…無事か!」 |
370_黒幕 | 「うんっ大丈夫だよ、千波流(ここは瀬比呂を演じてください)」 |
371_伊織 | 「向こうで凄い音がしてたから…心配してたんだよ!」 |
372_彩登 | 「瀬比呂だけ先に戻ってきたの? 朱音さまたちは?」 |
373_黒幕 | 「朱音さまなら、直ぐに戻ってくるよ(ここは瀬比呂を演じてください)」 |
374_千波流 | 「そうか!」 |
375_黒幕 | 「うん。朱音さまも、寿々加も、比奈伎も佐久弥も、 みんな、今、来るところだよ(ここは瀬比呂を演じてください)」 |
376_伊織 | 「みんな、無事だったんだ…良かった」 |
377_黒幕 | 「でも、亜夏刃が…(ここは瀬比呂を演じてください)」 |
378_彩登 | 「亜夏刃…亜夏刃がどうしたのっ!?」 |
379_黒幕 | 「亜夏刃…(泣き出して)僕を、庇ってくれて…っ、僕、ぼく…っ (ここは瀬比呂を演じてください)」 |
380_千波流 | 「瀬比呂…(膝を突いて、瀬比呂の頭を撫でる)泣くな―――」 |
(そこに、朱音たちが戻ってくる) | |
381_佐久弥 | 「(遠くから)―――いけない!」 |
382_朱音 | 「(遠くから)千波流下がれぇっ!!」 |
383_千波流 | 「え―――(どしゅ、と腕を刺される)………っ」 |
384_黒幕 | 「…くすくす」 |
385_千波流 | 「(ぽたぽたと腕から血がたれる(辛うじて身体がかわし、腕で済んだ))せひ、ろ…!?」 |
386_彩登 | 「きゃあ!? 千波流ぅっ!! 腕が!」 |
387_伊織 | 「瀬比呂…っ、アンタ、何をっ!!」 |
388_黒幕 | 「僕、すごく怖かったよ、千波流…」 |
389_千波流 | 「お、前…っ!」 |
390_彩登 | 「な、なんなの…っ!?」 |
391_寿々加 | 「千波流っ! 大丈夫かっ!!」 |
392_比奈伎 | 「みんな下がれ! 瀬比呂から離れるんだ!」 |
393_伊織 | 「えっ……ど、…どういう事!?」 |
394_黒幕 | 「あーあ。全ー然急所を外しちゃった。これを避けたのって、戦う者の勘てヤツ?」 |
395_彩登 | 「……瀬比呂……?」 |
396_黒幕 | 「(彩登を見て微笑む)」 |
397_伊織 | 「まさか、…まさか!」 |
398_千波流 | 「…総ての黒幕は、……瀬比呂……お前だったのか…っ!?」 |
399_黒幕 | 「―――素直で実直な鬼火と、天邪鬼で純粋な東風と。 行き交うのは大変だったけど、面白かったよ」 |
400_千波流 | 「…な、に言ってるんだ…? 瀬比呂……」 |
401_黒幕 | 「『八重は、まだまだやれるって…言ったじゃん、彩登』」(ここは八重声で) |
402_彩登 | 「―――八重の声!? ま、まさか…っ」 |
403_朱音 | 「…鬼火の瀬比呂、そして東風の八重―――そのどちらもお前であり、お前は… 私たちを影でずっと、滅びに導いていたんだな」 |
(明かされた事実に衝撃を受ける者たち。遠くで鳴り響く爆音が聞こえてくる) | |
404_千波流 | 「馬鹿な…馬鹿な! …瀬比呂が俺たちを裏切っていただと!? そんな事信じられん!」 |
405_伊織 | 「そ、そうだよ…! ねぇ瀬比呂、嘘なんでしょ!?」 |
406_黒幕 | 「(鼻で笑って)相変わらずおめでたいな。まぁ、それが鬼火の良い所なんだけどねえ。 …千波流、変だと思わなかった? 下界の里には赤ん坊や母親もいるのに、一族にはいない」 |
407_千波流 | 「(言葉に詰まる)…それは、…」 |
408_黒幕 | 「しかもみんな、年少時代以下の記憶はない。いつ、どうやって里に来たのかも」 |
409_彩登 | 「…っそう、言えば…」 |
410_黒幕 | 「それに、武士に比べて随分桁外れだよねえ、みんなの強さは」 |
411_伊織 | 「そ、それは、…アタシたち一族が、特別な一族だからで、 …毎日修練だって欠かさなかったし、…だ、だから、どんな戦にでも絶対勝ってきたし」 |
412_黒幕 | 「そうだねえ。簡単に死なれちゃつまらないからね」 |
413_彩登 | 「ねぇ…っ、どうして、急に、みんな死んじゃったの!? みんなすごく強いのに! 絶対、死んだりしないのに…っ」 |
414_黒幕 | 「(優しく)彩登―――まさか、そんな夢みたいな事、本気で思ってたわけ?」 |
415_彩登 | 「え…」 |
416_伊織 | 「だ、だって、…実際に、今まで、誰も…死ななかったよっ!」 |
417_黒幕 | 「伊織…可笑しいとは思わなかったの? こんな年若い連中だけで、誰一人欠けることなく生き延びてこれていること」 |
418_朱音 | 「(ハッとする)―――まさか!」 |
419_黒幕 | 「そう! お前たちが壊れるたびに、僕が、取り替えてあげてたからだよ」 |
420_主 | 「(E)損じたのであれば取り替えれば済む事だ」 |
421_朱音 421_佐久弥 |
※「!」 ※「…」 |
422_寿々加 | 「取り替えるだと…!? どういう事だ!」 |
423_黒幕 | 「(笑みを浮かべたまま皆を見回し、優しく)夢を見ただろう? 寿々加。それに、伊織も」 |
424_伊織 | 「え、…ゆ、夢?」 |
425_黒幕 | 「伊織だけじゃない。千波流もだよね。何人も、同じ夢を見てる」 |
426_彩登 | 「…その、夢って」 |
427_黒幕 | 「夢で、『朱音さま』が「おかえり」って言って、手を握るんだろう?」 |
428_伊織 | 「ど、どうしてその事」 |
429_黒幕 | 「(くつくつ笑いつつ)あれは、データのインプット… つまり、記憶のすり替えを簡略化した、最高の方法だよ」 |
430_寿々加 | 「どういう、事だ…」 |
431_黒幕 | 「一度壊れた…つまり、『死んだ』者を回収して、設定を上げて戻す。 その際の以前の記憶の受け渡しが、朱音との握手、というわけ」 |
432_千波流 | 「記憶の、…受け渡し…?」 |
433_黒幕 | 「あとは、キーワード―――「おかえり」と言う言葉をきっかけに、 お前たちは何一つ疑問を抱かず里に戻り、 里の連中も何の違和感も無く受け入れる…ってこと」 |
434_寿々加 | 「…それじゃ、まさか…」 |
435_黒幕 | 「そう! つまり、その夢は現実に起こった事だ。それを見た事があるって事は――― お前たちは少なくとも一度は、確実に『壊れた』って事だよ!」 |
(次々と明かされる事実に、みんな、言葉を失っていく。調子良く話を続けていく黒幕) | |
436_黒幕 | 「東風の方はそういうまどろっこしい事はなしで、いきなり里に放り込んだ。 仲間意識の違いは、これも要因かもね」 |
437_朱音 | 「私が、迎え入れるだと? そんな事は…私はしていない!」 |
438_黒幕 | 「朱音、お前は、修理の終わった仲間をその言葉と共に受け入れたあと、 その事実を忘れるよう、設定してあるからだよ」 |
439_朱音 | 「…っ!」 |
440_黒幕 | 「更には…こんな事もしてたって、知ってた?」 |
441_主 | 「―――『良く来たな、朱音。余は、そなたがいれば心強い』」 |
442_朱音 | 「! 斉彬、さま…!」 |
443_黒幕 | 「ついでに言えば、東風の方の主・隆利も、僕」 |
444_朱音 | 「主は…お前が演じていたのか!?」 |
445_伊織 | 「…この声…アタシの夢に出てきた…」 |
446_黒幕 | 「へえ…? 培養器にスピーカーで話しかけてたから、 潜在意識のどこかで覚えていたんだろう。また一つ新しいデータが増えたな」 |
447_朱音 | 「あの時の主の…『壊れたら取り替える』とは―――この事だったんだな」 |
448_黒幕 | 「ふふ…そうだよ。文字通り、新しく設定を変えて取り替えてたんだ。 …そうしたかったのに、出来なかった存在も居たけどねえ」 |
449_佐久弥 | 「…」 |
450_黒幕 | 「…ね、比奈伎。比奈伎も、何度も夢を見たんだろう?」 |
451_比奈伎 | 「(びくっ)……俺、は…迎えてもらう夢は、見てない…」 |
452_黒幕 | 「そうだね。比奈伎は一度も壊れなかった。壊したかったのに」 |
453_比奈伎 | 「―――」 |
454_謎の男 | 「(E)―――おいで―――」 |
455_黒幕 | 「でも、違う夢を見ただろう?」 |
456_謎の男 | 「(E)おいで…闇に身を任せれば総て終わる―――おいで…」 |
457_黒幕 | 「それこそ、何度も―――何度も…」 |
458_比奈伎 | 「…っ」 |
459_佐久弥 | 「それで、おまえの狙いはなに?」 |
460_黒幕 | 「(ちょっと目を見開いて)別に、狙い、っていう程のものじゃないけどねえ」 |
461_寿々加 | 「真面目に答えろ!」 |
462_黒幕 | 「そうだね。強いて言えば―――神の気分を味わいたかった。…かな?」 |
463_朱音 | 「…神、だと」 |
464_黒幕 | 「それに、『この中』にいるのもいい加減飽きたところだったしさ」 |
465_朱音 | 「貴様…ッ」 |
466_黒幕 | 「アハハハハハ!! …何だかんだいって、可愛いよねえ、鬼火の連中は。 疑うことを知らなくて、素直に言う事を聞く… おかげで、ずいぶんやりやすかったよ。お前たちには感謝しなきゃね」 |
467_伊織 | 「…何もかも全部、仕組まれてたって言うの…?」 |
468_黒幕 | 「東風はもっと動かしやすかった。単純なんだよねえ。 光を見せて、後ろからちょっと突いただけで、すぐに行動に移してくれて」 |
469_彩登 | 「…瀬比呂…うそ、だよね…」 |
470_伊織 | 「こんなの、悪い冗談…」 |
471_黒幕 | 「まだ信じられない? じゃあ、まずは僕が瀬比呂だって言う証拠を見せてあげる」 |
472_千波流 | 「証拠だと?」 |
473_黒幕 | 「ほうら。これ、彩登が『僕』にくれたんだよね」 |
474_彩登 | 「その組紐…」 |
(エコー・彩登が、瀬比呂に組みひもをあげる回想シーン{鬼灯第四話・1の51〜 参照}) | |
475_彩登 | 「あのね、そのね…。…瀬比呂…これ、あげる!!」 |
476_瀬比呂 | 「え? …この飾り紐、朱音さまからもらったものじゃないの? 彩登のお守りだよね」 |
477_彩登 | 「この前、彩登をいっぱい助けてくれたでしょ? だから…そのお礼なの!」 |
478_瀬比呂 | 「! ありがとー! 絶対絶対大事にするよ!!」 |
(回想シーン・エコー終わり/そのことを思い出して愕然とする彩登) | |
479_彩登 | 「ほんとに、瀬比呂、なの…?」 |
480_千波流 | 「瀬比呂、お前…っ、本当に俺たちを裏切っていたのか!?」 |
481_黒幕 | 「違うよ千波流。裏切りじゃあない。ずっと、こうなると決まってただけ。 僕の予定通りに事が運んだだけだよ」 |
482_伊織 | 「じゃ、じゃあ、アンタが瀬比呂だったとして…っ、なんでこんな…っ」 |
483_黒幕 | 「じゃ、証拠の次は、もっと面白いもの…見せてあげる」 |
484_朱音 | 「面白いものだと?」 |
485_黒幕 | 「ついておいで」 |
(黒幕についていくと、今まで見たことの無い大きなスクリーンのある部屋に。謁見の間よりも奥。
/そのスクリーンに何か写る/画面が移る電子音/ぼこぼこと、水が湧き上がるような音。 大きな、円柱型の水槽のようなものの中に、ぷかぷかと人が縦に立っているのが見える) | |
486_千波流 | 「…なんだこれは…!?」 |
487_伊織 | 「え…っ…なにこれ…っ、あ、アタシ…!?」 |
488_彩登 | 「え…っ!? ほ、ほんとだ、伊織だ…」 |
489_千波流 | 「伊織だけじゃない…俺たちが、全員いる…なんだ、この…水槽のような」 |
490_伊織 | 「なにこれ…、本物じゃないの?」 |
491_黒幕 | 「画像だよ。これは、培養所の映像だ」 |
492_伊織 | 「画像…?」 |
493_寿々加 | 「…(はっとして)謁見の間に行く直前にあった部屋にも…こんなのがあったな」 |
494_黒幕 | 「そう。あれは、屋敷内総て、それから里の様子を見るためのモニターだよ」 |
495_彩登 | 「も、にたー?」 |
496_黒幕 | 「簡単に言うとね。遠くからでも、おまえたちの事は毎日監視してたって事」 |
497_佐久弥 | 「…」 |
498_朱音 | 「人の気配の無い屋敷の中でも視線を感じたのは、これのせいなんだな」 |
499_寿々加 | 「これはいったい何なんだ! 俺たちそっくりの…人形みたいな」 |
500_彩登 | 「まるで本当の彩登たちみたい…」 |
501_黒幕 | 「そりゃそうだよ。これはおまえたちそのもの。培養した、ね」 |
502_伊織 | 「ば、培養?」 |
503_黒幕 | 「お前たちには説明しても分からないだろうけど… つまり、この画面に写っているこの部屋がお前たちの誕生の場所。 お前たちが作られた場所だよ」 |
504_彩登 | 「…え? つ、作られた…?」 |
505_寿々加 | 「作られたって…どういう事だ!」 |
506_黒幕 | 「一番最初は…、そうそう、確か、佐久弥だったな」 |
507_佐久弥 | 「!」 |
508_佐久弥 | 「(E)私が一番最初だと思っている夢―――」 |
509_黒幕 | 「次は、朱音だったかな? 個々の身体能力から精神能力、総てを綿密に設定してね。苦労したんだよ?」 |
510_朱音 | 「…それでは、私たちは」 |
511_黒幕 | 「お前たちには親というものは存在しない。 何故ならそれは…お前たちが人工培養で飼育された、家畜だからだ」 |
【続く】 |