●鬼神楽●
【〜楽業の章・第6話〜】
この色…東風
この色…鬼火
この色…武士・女中・ガヤ(注:ガヤ・全員部分は、ファイル名 セリフ番号_お名前 )
この色…その他
ガヤ:一本のファイルに、三パターンほど入れて下さい。
    その際には、それぞれの間を2秒ほど空けてくださると助かります】
※万一使用セリフに不安がある場合には、よろしければ、こちらから指定させていただきます。
セリフ番号
「セリフ」
(主の屋敷にて。変な部屋に入り込んだ夜紫乃・伊織。目の前には見たことのないパネルやボタンが)
01_夜紫乃 「―――え? 伊織、今何か言った?」
02_伊織 「えっ? 何も言ってないよ」
03_黒幕
03_謎の男
※「―――押せ」
04_夜紫乃 「そっか、気のせいかな」
05_伊織 「それより夜紫乃、ここからどうやって抜ける?」
06_夜紫乃 「うん」
07_黒幕
07_謎の男
※「―――押すのだ」
08_夜紫乃 「……うん」
09_伊織 「…。夜紫乃?」
10_黒幕
10_謎の男
※「―――押せ!」
11_夜紫乃 「(びくんっ)!」
12_伊織 「よ、夜紫乃、どうしたの?」
13_夜紫乃 「あ、…ううん、ごめん、何でもない。…なんだろ、なんだか…変な声がして」
14_伊織 「この部屋…なんか変なものがいっぱいあるね…って、夜紫乃、ほんとにどうしたの?」
15_夜紫乃 「うん。…ね、伊織、…これ、押したらどうなると思う?」
16_伊織 「わかんないよ…でも、やたらと触らない方が良いってば、絶対」
17_夜紫乃 「そう、だよね」
(そのころ、主の屋敷の別の場所では。待機中の左京の元に卓麻が戻ってくる)
18_卓麻 「左京」
19_左京 「―――やっと戻ったのか卓麻。何処まで偵察に出かけたのかと思ったぞ」
20_卓麻 「巴は死んだぜ」
21_左京 「…巴が?」
22_卓麻 「ああ。さっき、転がってた」
23_左京 「…そうか。巴が、な」
24_卓麻 「ハ、少しは気になるのかよ」
25_左京 「俺が? 何故、俺が気にする必要がある」
26_卓麻 「ふぅん? ま、そう言うと思ったけどな」
27_左京 「卓麻。何処に向かう気だ?」
28_卓麻 「さてな。鬼火の連中にでも会えりゃ良いと思ってるんだが…
探してみると案外見つからねえ」
29_左京 「そういうものだろうな。…これからどうする」
30_卓麻 「適当に動くさ、お互いな」
31_左京 「結局は、それぞれ単独行動と言うわけか。それが良いだろうな。
俺も、…お前は特に、つるんで動くのは性に合っていない」
32_卓麻 「そういう事だ。それに―――」
33_左京 「それに、何だ?」
34_卓麻 「…妙な感じだが俺は、―――死ぬんだと思うぜ、ここでな」
35_左京 「……何だそれは」
36_卓麻 「(くっくっ)さぁな? 俺にも分からねえよ」
37_左京 「弱気になっているのか、卓麻」
38_卓麻 「弱気? それは違うぜ左京。俺にとって、自分の死は恐れるべき事じゃねえからな」
(巴を看取ったあと、走って武士を撒いている千波流・亜夏刃・彩登)
39_彩登 「ね、ねえ千波流、どこまで走るの!?」
40_千波流 「もう少し頑張れ彩登」
41_亜夏刃 「千波流、彩登! こちらだ!」
42_千波流 「さ、行くぞ!」
43_彩登 「う、うんっ」
(横の部屋にざっと逃げ込んだ三人/少し息を潜めて)
44_亜夏刃 「(向こうを窺いつつ)とりあえず、武士は…撒けたようだな」
45_千波流 「ああ…。亜夏刃、奥はどうなっている?」
46_亜夏刃 「少し先までは廊下が続いていて、そこから正面に向かって広くなっているようだ。
その先にはかなりの気配を感じたな」
47_千波流 「くそ…っ、主は…一体どれだけの手勢をこの屋敷に詰め込んだんだ!」
48_彩登 「(息を切らしつつ)…ねぇ、千波流ぅ…珠菜、一人で大丈夫なのかなあ…」
49_千波流 「(一瞬だけ言葉に詰まって)あ、ああ(ちらりと亜夏刃を伺う)…」
50_亜夏刃 「(千波流の視線に気づいて)…自分たちは、珠菜を信じると言って、独りにしたんだ。
自分はそれを曲げる事はしない。絶対にだ」
51_彩登 「亜夏刃…」
52_亜夏刃 「自分は、…珠菜を信じている。だから、アイツは、絶対に大丈夫なんだ」
53_千波流 「…ああ、そうだな」
54_彩登 「うん、そう、だよね。珠菜はすっごくすっごく強いもん。彩登も、珠菜の事信じるっ」
55_亜夏刃 「ああ―――」
(亜夏刃の脳裏に思い出されるのは、相棒羽霧を失ってもなお気丈に微笑み続ける珠菜の凛とした姿)
56_珠菜 「(E)亜夏刃。わたくしを信じて」
57_亜夏刃 「…ああ。信じている」
(比奈伎が夢にうなされるわけ。夜毎受ける朱音を使っての黒幕からの暗示。謳うように(エコー))
58_朱音 「比奈伎」
59_黒幕 「…おいで」
60_朱音 「比奈伎、こっちだ」
61_謎の男 「おいで」
62_朱音 「さあ…比奈伎、大丈夫だ。こちらへおいで」
63_黒幕 「さあ…おいで」
64_朱音 「さあ…こちらへおいで、比奈伎」
65_黒幕 「おいで…おいで」
66_朱音 「闇を畏れる事は無い…その畏れは一瞬で希望へと変わるさ。
それとも…私を信じられないか?」
67_謎の男 「不甲斐ない自分を責めているのだろう?」
68_黒幕 「そんなおまえが生まれ変われる契機なんだよ」
69_朱音 「そのまま闇に身を委ねてごらん…
闇に包まれて、再び目覚めた時おまえは…きっと、希望を見るだろう」
70_黒幕 「ほんの少しだけ諦めれば良いんだ」
71_謎の男 「今のままで良いのか?」
72_朱音 「さぁ、大丈夫だ。私と一緒に…」
73_黒幕 「そうすればおまえは、もう自分の弱さを責める事はなくなる」
74_謎の男 「今のままのおまえは本当に必要なのか?」
75_朱音 「比奈伎。強くなりたいんだろう? 私を、守ってくれるんだろう?」
76_黒幕 「おまえは、本当に必要とされているのか?」
77_比奈伎 「…俺、は―――」
(回想シーン終わり)
78_佐久弥 「…比奈?」
79_比奈伎 「…っ」
80_佐久弥 「…大丈夫?」
81_比奈伎 「………あいたい…」
82_佐久弥 「…うん」
83_比奈伎 「早く、朱音に、会いたいよ…」
(卓麻と別れ一人になっていた左京の元に、どやどやと近づく足音)
84_武士:1 「見つけたぞ!」
85_武士:2 「こっちだ!!」
86_武士:4 「逃がすな、囲め!」
87_左京 「…やれやれ。役立たずの武士共が雁首並べてお出ましか」
88_武士:5 「その狐の面―――おまえは東風の一人だな!」
89_左京 「…だからどうした」
90_武士:1 「これから先は、我らの命に従え」
91_武士:2 「さすれば、おまえは生かしておいてやろう」
92_武士:7 「他の東風一族たちは何処にいるのだ!」
93_大将 「ここに全員を集めろ!」
94_武士:5 「お前たち東風一族の者は、我らと共に来い。我らの指揮のもと、鬼火を狩るのだ」
95_武士:6 「我らの手足となって働け!」
96_左京 「…何だと?」
97_武士:4 「どうした東風の者、答えぬか!」
98_左京 「ハ…ハ、ハハハッ! …ふざけるな!」
99_武士:ガヤ ※(ざわっっという一言)
100_武士:2 「(ガヤにかぶせて)何!? 口を慎め、下郎!」
101_武士:6 「我らの命に従えぬと申すか!? この身の程知らずめが!」
102_左京 「―――貴様らごときが、俺を使うだと?
身の程知らずはどちらだ…東風の左京をなめるな!!」
103_武士:7 「我らに刃向かうというのか―――これは主の厳命なるぞ!」
104_左京 「厳命だか何だか知らんが…そんなものはそちらの勝手だろうが。
わざわざ俺が従う必要は無い!」
105_武士:5 「貴様ら東風の主君・隆利さまの主命なるぞ!?」
106_左京 「それがどうした。東風の頭領・近衛を通さない主命など、聞く耳は持たんな。
そもそも それが本当に主命かどうかすら怪しいものだ」
107_武士:4 「何だと!? 我らを疑うというのか!?」
108_大将 「それは反逆罪だぞ、東風の者よ」
109_武士:1 「お前は、主の掟を抜けると言うつもりか」
110_左京 「俺は最初から掟に従う気など無い」
111_武士:6 「そうか、従えぬのならば仕方あるまい、使えぬ駒は消すまでだ」
112_大将 「みなのもの、構え!!」
113_武士:全員 ※「は!(構える)」
114_大将 「かかれ!!」
115_左京 「!(ずきっと痛みが走る)…ッごほごほ…っ
(吐血して、がくりと膝をつく)、ぐっ…こんな時に―――!!」
116_武士:5 「もらったぁ!!(武器を振りかざす)」
(武器が激しく交差する)
117_珠菜 「(…とん、と着地し、静かに)…たったお一人を相手にこのような多勢とは―――
もののふという潔さを現す名が聞いて呆れますわね」
118_左京 「―――!(M)何者だ?」
119_大将 「何!?」
120_武士:6 「鬼の面、女、お前…鬼火のものか!」
121_珠菜 「(ため息)全く…下郎はどちらです?
お一人に対して独りで向かっては来られませんの? 情けない限りですわね」
122_武士:5 「何だと!? この無礼者め!」
123_武士:1 「ちょうど良い! この女もここで始末してしまえ!」
124_武士:6 「ええい、何をしているのだ、たかが女独りに!!」
125_珠菜 「は!(武器を振るう)」
126_武士:5 「(斬られる)」
127_珠菜 「(武器を構え直して)…そのような口を利きたければ、まずは、
たかが女と仰るわたくしを相手に、お一人ずつで向かっていらっしゃったらいかが?」
128_武士:4 「ええい、構わん、二人諸共殺せ!!」
129_武士:2 「逆らうものはみな殺せ!」
130_武士:全員 ※「殺せ!! 殺せ!!」
131_珠菜 「(溜息)まるで何かに取り付かれでもしている様子ですわね…って、ちょっと、貴方!」
132_左京 「…くっ!(武器を受け損なう)」
133_珠菜 「危ないですわ! ハッ!(左京に向かってきた武器を弾く)」
134_左京 「…く…っ、こんな肝心な時に…力が入らないとはな」
135_珠菜 「貴方…時折動きが鈍いですわよっ!
(くるりと振り向き)―――それでは、せっかくの豪腕が泣きますわ」
136_左京 「…、……(溜息)…鬼火にも勇ましい女が多い」
137_珠菜 「あら、東風「にも」そういう方々がいらっしゃるんですのね?」
138_左京 「…」
139_珠菜 「(武器を真っ直ぐ左京に向ける)…わたくしたち鬼火の事、知ってらっしゃるのね」
140_左京 「一人、この手で殺ったからな」
141_珠菜 「…それは、里で?」
142_左京 「(頷いて)―――羽霧、と言う女だ」
(そのころ、夜紫乃は頭に響き渡る嫌な声に支配されていた)
143_黒幕
143_謎の男
※「押せ!!」
144_夜紫乃 「…あ…(ふらり、と動いて、ぴ、とボタンを押す)」
145_伊織 「よ、夜紫乃っ、ダメだってば、勝手に押しちゃ―――」
(爆音/遠く離れた場所にて、わずかに変わった空気を読み取った佐久弥)
146_佐久弥 「! 寿々、比奈! 早くここから出た方が良い!」
147_寿々加 「な、何だあ!?」
148_比奈伎 「見ろ! 壁が!」
149_寿々加 「カラクリ天井ならぬカラクリ壁かよっ!!」
150_佐久弥 「走って!!」
(轟音と共に、分厚い壁が寿々加・佐久弥と比奈伎を分離させた)
151_寿々加
151_佐久弥
※「!!」
152_寿々加 「塞がれた…っ!?」
153_佐久弥 「(素早く壁に近づき、壁を叩く)比奈伎!」
154_寿々加 「(続いて壁を叩く)比奈伎! 比奈っ!」
155_佐久弥 「(息をついて)―――…聞こえないか」
156_寿々加 「くそ、…こんな時にアイツを一人きりにしちまうなんて…
お頭が知ったら怒髪天ものだぜ…ッ」
157_佐久弥 「…狙われたかもしれない」
158_寿々加 「―――どういう事だ」
159_佐久弥 「頭領朱音がいない今、一族の決定権は副頭領の比奈伎が握っている」
160_寿々加 「…ヤツらが、アイツに何かをさせようと考えてるってのか…?」
(モノローグ)
161_佐久弥 「謁見の間に向かっていたはずなのに、途中で見つけたあのおかしな部屋。
そして、やはり謁見の間には辿り着けないまま、進路を塞がれた。

…私たちをバラバラにする事が目的であるかのような、あの仕掛けも―――
意識しない所で、まるで誘い込まれるように、導かれるように、
私たちはこの屋敷の中で惑わされている。

一体何処に誘おうとしているのか。
迷わせる事にどんな目的が隠されているというのか。
…それは、何のために。

あの、動く絵の中の一枚―――誰かがこちらを見て、確かに―――嗤っていた」
(モノローグ終わり/その、絵の中…スクリーンの向こう側では)
162_黒幕
162_謎の男
※「(くすくす…)―――ようこそ。我が城へ(たっぷり溜めて、尊大に)」
(轟音が響いてくる)
163_珠菜
163_左京
※「な、んですの…!?」
※「なんだ…!?」
164_珠菜 「…っ、なんだか、屋敷中が大きく揺れたみたいですわね…」
165_左京 「この奥で、一体何があったというんだ」
166_珠菜 「…ちょっと! …気配が」
167_左京 「…武士共が大量に移動でもしてるのか…ひどく気配が動いてるな」
168_珠菜 「これは…臭いますわね」
169_左京 「何か仕掛けでもあると言うのか?」
170_珠菜 「それは分かりませんけれど…
今はまず、目の前の障害を何とかする方が先ですわよね。
東風だ鬼火だと言っている場合ではありませんわ。貴方は敵ですけれど、
今はこの障害を抜けるために わたくしに協力していただきますわよ」
171_左京 「…断れる状況ではなさそうだな……女。おまえ、腕は」
172_珠菜 「自慢じゃありませんけれど、鬼火では斥候と切り込みを務めていますわ」
173_左京 「…俺と同じとはな。それは、心強いというべきか」
(轟音のあと)
174_伊織 「ちょっと夜紫乃っ! なんか、変な音がしたよ…!?
やっぱりそれ、押しちゃマズかったんだよ」
175_夜紫乃 「え…っ、そ、そうかなあ…」
176_伊織 「どうしたの? …大丈夫なの?」
177_夜紫乃 「うん―――(やや呆然と、頭を振る)
何だか、急に頭がぼうっとしてさ…変な、…声が聞こえた気がして」
178_伊織 「変な声?」
179_夜紫乃 「うん…何て言ってるかは、良く聞こえないんだけどさ」
180_伊織 「夜紫乃…」
181_夜紫乃 「あ、でももう大丈夫! 声も聞こえなくなったし」
182_伊織 「…ほんとに、大丈夫?」
183_夜紫乃 「うん。…心配かけてごめん、伊織」
184_伊織 「(ほっとして)ううん、良いよ! でも良かった! ね、これから、どうする?」
185_夜紫乃 「うん。…とりあえず、もう少しだけ奥に行ってみよ…(気配に気づく)!!」
186_伊織 「夜紫乃(警戒する)」
187_夜紫乃 「…何か来た(武器を握り直す)」
(そこに現れたのは、いわゆる現代の武器を構えた武士たち)
188_武士:7 「いたぞ! 鬼火だ! 二人いるぞ!」
189_武士:1 「取り囲め! こっちだ、回り込め!」
190_武士:2 「絶対に逃がすな!」
191_武士:4 「一斉射撃用意、―――構え!」
192_伊織 「ちょ、ちょっと…夜紫乃、あれ見て!」
193_夜紫乃 「えっ!? …な、何だあれ!?」
194_伊織 「何なのアレ、あいつらが持ってるヤツ…まるで、鉄砲の化け物みたいな…!」
195_夜紫乃 「(はっとして)伊織、下がって!!」
196_大将 「撃て!!」
(攻撃を受ける)
197_夜紫乃
197_伊織
※「うわっ!!(かろうじて避ける)」
※「きゃあっ!!(かろうじて避ける)」
198_伊織 「(息を切らして)あ、あんなの…見た事無いよっ!」
199_夜紫乃 「(息を切らして)とにかく、逃げた方が良い! 伊織、こっち!!(走り出す)」
200_武士:ガヤ ※(逃げた夜紫乃と伊織を追いかける)
「追え!」「逃がすな!」「逃げたぞ!」など
(走る夜紫乃、伊織。後ろから武士が追ってくる【ガヤ:遠くで追いかけてくる声】
201_伊織 「もう…っあいつらしつこい…っ」
202_夜紫乃 「このまま奥まで行ってみよう―――」
203_芳 「―――おっと。坊やたち、何処に行こうってんだい?」
204_夜紫乃 「―――!!(バッと構える)」
205_伊織 「…誰?」
206_芳 「ふぅん…その鬼面。鬼火一族の者だね?」
207_夜紫乃 「…だったら、何だよ」
208_芳 「(肩でくつくつ笑う)ちょうど良い。探す手間が省けたよ。
ああ、本当に鬼の面を着けてるんだねえ」
209_伊織 「そ、…そっちこそ狐の面なんかして…! あんたたち、何者なの!?」
210_芳 「ハハハッ」
211_夜紫乃 「何がおかしい!」
212_芳 「(くっくっ)アタシたちは、『東風一族』。
そうだねぇ…あんたたち鬼火が表の一族なら、アタシたちは裏の一族ってとこかね」
213_夜紫乃
213_伊織
※「裏の一族…!?」
214_円 「―――芳。楽しんでいる時間はあまりないぞ」
215_芳 「分かってるよ、円。そう急くんじゃないよ」
216_真木 「円の言う通りですわよ、芳。とにかく、武士たちよりも先に、捕らえる事ですわね」
217_伊織 「捕らえるって…なんなのあんたたち!?」
218_夜紫乃 「伊織、ここは僕が抑えるから、走って!」
219_伊織 「うんっ(反射的に走り出そうとする)」
220_芳 「おっと! そうはさせないよ!(武器を振るう)」
221_夜紫乃 「くっ!(刀を弾く)伊織、逃げろ!!」
222_伊織 「夜紫乃!!!」
(SE:武器の交差する音/タイトルコール)
223_佐久弥 「『鬼神楽』最終章   〜楽業の章〜 第6話」
(寿々加・佐久弥と、壁を隔ててはぐれた比奈伎)
224_比奈伎 「(ドン!と壁を叩いてみる)―――鉄で出来ているのか…たいした屋敷だな」
(後ろの方で武士たちの足音が)
225_比奈伎 「―――来たな」
226_大将 「鬼火の副頭領だな」
227_比奈伎 「……」
228_武士:7 「一族を引き渡せ」
229_比奈伎 「断る」
230_武士:6 「お前が 一族を総てこちらに引き渡すと言えば、
鬼火の頭領の命は 奪わずにいてやろう」
231_比奈伎 「…………何だと?」
232_武士:5 「殿の御意思によるものだ。謹んで受けるが良いぞ」
(何となく、ひやりとした空気が部屋を伝う)
233_寿々加 「(静かに辺りを探って)嘘みたいに静かだ……―――」
234_佐久弥 「ただの武士が相手なら、比奈伎に危険はないだろうけど…」
235_寿々加 「そりゃそうだ、相手にならねえよ」
236_佐久弥 「戦いを仕掛けるのではなく―――何か、取引を申し出てくるかもしれない」
237_寿々加 「取引?」
238_佐久弥 「朱音の命を救いたければ、…代わりに何かを差し出せ、というような」
239_寿々加 「……考えられるな。
もし、比奈伎の、お頭に対する固執を向こうが知っていたとしたら…」
240_佐久弥 「…どのみち、何かしらの接触を受けるはずだ」
(ちょっと時間軸は戻って(最初だけエコー)
241_寿々加 「あー、そうだ。佐久弥にも聞きたい事があったんだよな」
242_佐久弥 「私に?」
243_寿々加 「…また、何を企んでる?」
244_佐久弥 「企んでなんていないよ」
245_寿々加 「嘘をつくなよ」
246_佐久弥 「嘘じゃあない」
247_寿々加 「じゃあお前は何故、俺たちに嘘をついてまで、自分が屋敷に入る事を選んだんだ?」
248_佐久弥 「以前…お頭と一緒に来た事があって。自分の目で確かめたかったから」
249_寿々加 「この屋敷にか?」
250_佐久弥 「うん。…その時も、謁見の間までは辿り着けなかったけれど」
251_寿々加 「はー…狐狸(こり)辺りにでも騙されてるみてーだな」
252_佐久弥 「うん。…それにしても寿々加こそ、
私たちが結果的にこの屋敷に入ろうと計画していた事、良く気付いたね?」
253_寿々加 「ばぁーか、年長者を舐めるなよ!
おまえや比奈伎の考えてる事くらいどうとでも読めるさ」
254_佐久弥 「…比奈伎の鉄面皮も、通用しなくなってきてるのかな」
255_比奈伎 「…。俺のせいか?」
(廊下を進む三人)
256_佐久弥 「位置的にはね、もうすぐ謁見の間に着くよ」
257_寿々加 「案外、そこにお頭がいるかもしれねーな」
258_比奈伎 「……」
259_朱音 「(E)比奈伎。私に万一の時は―――、一族を、みなを頼む」
260_比奈伎 「(M)朱音が守ろうとしているものならば、…俺は…」
261_黒幕
261_謎の男
※「(E)おまえは、本当に必要なのか?」
(武士に囲まれた比奈伎)
262_武士:4 「お前が頷けば、鬼火の頭領の存命を約束する。
だがもし断ればその時は―――分かっているだろうな」
263_比奈伎 「………本気で、言っているのか…?」
264_武士:1 「頭領・朱音の命は助けてやろう」
265_比奈伎 「…朱音が、……助かる―――」
(比奈伎の脳裏に、朱音の後姿がよみがえる)
266_朱音 「(E)―――(少し先を進んでいて、ふと、振り向き微笑んで)比奈」
(現実に引き戻される比奈伎)
267_比奈伎 「―――あかね…」
268_武士:5 「鬼火の副頭領、比奈伎。
おまえは副頭領と言う立場にありながら、その実、一族よりも大切なものがあるな」
269_武士:6 「お前にとって、頭領・朱音のその存在は何物にも変えられるものではない」
270_武士:2 「―――お前は何と引き換えにしてでも、頭領・朱音を救いたいのだろう?」
271_武士:4 「我らが何も知らずにお前にこうして話を持ちかけていると思うのか?」
272_武士:1 「我らには―――そして、主には、お前の思いが手に取るように分かっているのだぞ」
273_武士:7 「主は、おまえが一番望んでいる事を、既にご存知なのだ―――」
(ところ戻って、東風と対峙する夜紫乃、伊織。伊織を逃がそうとするが、真木が行く手を遮る)
274_真木 「残念ですけれど、このお嬢さんも逃がすわけにはいきませんわ」
275_夜紫乃 「伊織! 逃げてってば!」
276_伊織 「夜紫乃を置いてなんて行けないよぉ!」
277_芳 「ちょこまかと…うるさい小僧だね! ヤァッ!(刀を弾く)」
278_夜紫乃 「く…! しま…っ」
279_円 「…ここまでだな」
280_夜紫乃 「(刺される)っ!!」
281_伊織 「…っ…夜紫乃おお!!!」
(武士の取引に心が揺れる比奈伎)
282_朱音 「(E)私にとって、一族はすべて―――
一族は、私の手足、体、そのものだ。
絶対に守りたい。
比奈伎―――おまえにも、それを手伝って欲しいんだ」
(芳に刺されて、夜紫乃、ぐらりとよろめく)
283_夜紫乃 「(倒れこむ)……い、伊織…無事?」
284_伊織 「ばか…ばか!! 何やってんの…っ(駆け寄る)」
285_夜紫乃 「あはは…やっぱり、佐久弥みたいに上手く出来なかった―――(咳き込む)」
286_伊織 「と、とにかく…っ 止血…止血しなきゃ…!!」
287_夜紫乃 「(M)ずっと言えなかったことがあったんだ…
いつか言おう、いつか言おうって思ってるうちに…今日になっちゃったよ」
288_伊織 「夜紫乃…っ」
289_夜紫乃 「(M)僕じゃ、頼りないかも、しれないけど」
290_伊織 「ちょっと、やだ、目開けてよっ」
291_夜紫乃 「(M)出来たら、ずっとずっと僕のこの手で守りたい。そう思ってたのに」
292_伊織 「ねえ…っ!!」
293_夜紫乃 「(小さく咳き込んで)はは…かっこわるいな、僕…―――」
294_伊織 「―――夜紫乃、…夜紫乃…?」
295_円 「終わった、か」
296_芳 「―――まあまあ、手強かったね」
297_円 「さすがは鬼火という所か」
298_真木 「さぁ、さっさと戻りますわよ」
299_伊織 「―――うわああああああああっ!!!」
300_円 「ッ!?」
301_伊織 「なめんじゃないわよっ!!」
302_芳 「何?」
303_伊織 「アタシだって…アタシだって鬼火一族の一人なんだ!
仲間が…っ、夜紫乃が殺されて、戦わずに引けるもんか…!!」
304_円 「(溜息)…無駄な事を」
305_芳 「アタシがやろう、円」
306_円 「殺すか?」
307_芳 「いや―――連れて帰る」
308_真木 「芳、円。そういう事でしたら、わたくしが」
309_芳 「真木。…そうだね、アンタに任せようか」
310_伊織 「させるもんか!(構える)」
311_真木 「貴女、随分威勢が良いですわね! わたくしは、そういうのは嫌いではありませんわよ」
312_伊織 「やああああっ!!」
313_真木 「けれど!」
314_伊織 「(かわされる)くうっ!?」
315_真木 「威勢の良さだけではわたくしには勝てませんわよ! ハ!」
316_伊織 「(鳩尾に思い切り入れられる)ぐっ!!」
317_円 「(溜息)…やれやれ」
318_伊織 「―――よし、の…(倒れる)」
319_円 「…とんだじゃじゃ馬だ」
320_芳 「(小さく笑って)うちにも居たねぇ、そういうのが。どうしてるんだい?」
321_円 「白銀を迎えに行ってるはずだ」
322_芳 「…さて。じゃあアタシは、別のを迎えに行かなきゃだ」
323_真木 「芳ったら…本当にあの仕掛けに乗るつもりなんですの?」
324_円 「武士共が芳個人に、その手を仕掛けろと伝えてきたからな。
勝算があっての事なんだろうが…」
325_真木 「作戦の中身は聞きましたけれど。そんな事で上手く行くのかしら?
だいたい、悪趣味ですわ」
326_芳 「試してみる価値はあるって事だろ? 本当にそうなら…だけどね」
327_円 「ああ」
328_真木 「何故―――鬼火の副頭領を捕らえるのに、芳でなければならないのかしら」
329_芳 「さてね。何やら…『フリ』をしろ、との事だったけど」
330_真木 「わたくしは反対ですわよ。そんな、当ても無い仕掛けは!」
(武士と対峙する比奈伎)
331_武士:2 「頭領・朱音に会わせてやろう」
332_武士:7 「朱音の命をつなぐか否かは、お前の返答次第―――」
333_比奈伎 「俺の命で朱音が戻るなら喜んでこの命をやろう」
334_武士:5 「お前一人では全く足りない。
頭領の命は、一族全てを秤にかけてようやく釣り合うものだ」
335_比奈伎 「…一族全て…一族の事に関しては、俺がどうこう言える立場ではない」
336_武士:6 「お前は副頭領だ。朱音の次に決定権を持つ」
337_武士:4 「お前が頷けば、一族は必ず従うはずだ」
338_武士:1 「朱音を助けたくは無いのか?」
339_武士:2 「朱音の命を救いたくは無いのか?」
340_比奈伎 「…だが、一族を差し出すわけには行かない」
341_比奈伎 「(M)朱音がその命を懸けて守ろうとしたものを、俺が滅ぼす事は絶対に出来ない」
342_武士:7 「一族を差し出せば、朱音の命は助かるのだぞ」
343_比奈伎 「(M)…だが。もし、本当に―――朱音が助かるのならば、俺は―――」
344_武士:4 「さあ、どうする、鬼火の副頭領」
345_比奈伎 「(M)俺は、どんな汚名をも被る事が出来る。
例えそれで…朱音自身に、罵られようとも―――」
346_武士:6 「さあ、決断は如何に!」
347_比奈伎 「…どうすれば良い」
348_大将 「(頷く)まずは、朱音に会わせてやろう」
【続く】