●鬼神楽●
【〜楽業の章・第4話〜】
この色…東風
この色…鬼火
この色…武士・女中・ガヤ(注:ガヤ・全員部分は、ファイル名 セリフ番号_お名前 )
ガヤ:一本のファイルに、最低でも三パターンほど入れて下さい。
    その際には、それぞれの間を2秒ほど空けてくださると助かります】
※万一使用セリフに不安がある場合には、よろしければ、こちらから指定させていただきます。
セリフ番号
「セリフ」
(睦月を東風の里に連れ帰ってから割りとすぐの出来事。羽霧が死んですぐあとくらい)
01_真木 「―――鬼火一族の一人を捕らえたのですって?」
02_碧 「うん。アタシたち東風一族がこの前まで使ってた 丘の向こうのあの里で、
左京が一人仕留めて、もう一人を白銀が連れて帰ってきたんだ」
03_八重 「人質に、だって」
04_真木 「わざわざそんな事を…? 役に立つのかしら」
05_春日 「良くわかんないけどさあ。でもあれを使っておびき寄せれば、
馬鹿みたいに仲間思いの連中らしいって言う話だし、少しはひっかかるんじゃない?」
06_碧 「円や浅葱なんかは、それを狙ってるみたいだけど。真木はどう思う?」
07_真木 「わたくしは何とも。そもそも人質を取るだなんて方法、好きではありませんわね」
08_碧 「だよね…アタシもなんかヤだな」
09_真木 「―――卓麻、何処へ行くんですの?」
10_卓麻 「その鬼火とやら、どんなヤツか興味ある」
11_八重 「あのねえ、女の子なんだよ!」
12_卓麻 「女ぁ?」
13_碧 「まだ子どもらしいけど」
14_卓麻 「ふうん。強いのか?」
15_碧 「さぁ…どうなんだろ。白銀は何も言ってなかったよね、春日」
16_春日 「うん」
17_真木 「行って、ご自分でお確かめになったら?」
18_卓麻 「ま、アイツに捕らえられるようじゃ、期待は出来そうもねえか」
19_真木 「本当に、卓麻はいつも「強いか否か」。こればかりですのね」
20_卓麻 「うるせえな、殺すぞ」
21_真木 「ふふ…。今、有能な駒を減らすのは、得策とは言えませんわよ、卓麻」
22_卓麻 「…」
23_真木 「お気に障ったのでしたらいつでも殺して下さって結構。
でも、今だけはお勧め出来ませんわね」
24_碧 「ま、真木…」
25_真木 「さ、早くお行きなさいな、卓麻。近衛に報告もなさるのでしょう?」
26_卓麻 「―――ああ」
(卓麻出て行く)
27_真木 「(その後姿を見送って)…やっぱり、本気だと気づいてないようですわよね」
28_碧 「真木…やっぱり本気だったんだ…」
29_真木 「おーほほほ! 戦で討ち死にも結構ですけれど、
そういう死に方もありかしら、と思っただけですわ!」
30_八重 「…難しい話だね、春日」
31_春日 「…それが乙女心ってヤツなんだろ」
(モノローグ)
32_亜夏刃 「―――特に、強く何かを望んだ事はなかったかもしれない。

当たり前の日常を過ごしていられれば、それで良かったからだろう。
いつもと同じ顔ぶれに囲まれて、任務で戦い、里で安らぐ。
単調にさえ見える、ただその繰り返しだけだったとしても、
その、当たり前さが大切だった。

…口に出して言う事は無いが、自分にとって、
当たり前の事が、何よりも失くしたくはない物だった。

…特に、強く何かを望んだ事はなかったかもしれない。
―――今まで、今、この瞬間までは」
(卓麻、入ってくる)
33_卓麻 「随分回りくどい事するんだな、近衛」
34_近衛 「戻ったか卓麻。守備はどうだ」
35_卓麻 「まあまあってとこだ」
36_近衛 「主の屋敷の方はどんな様子だ」
37_卓麻 「これが屋敷の見取り図だ(巻いた紙を放る)」
38_近衛 「(受け取って広げる)…ふむ。想像以上だ。かなりの広さだな」
39_卓麻 「馬鹿みたいに武士共が群がってるが…役に立つんだか捨て駒なんだか」
40_左京 「いくら数だけがあっても無駄な気がするがな」
41_卓麻 「同感だぜ、左京。で、人質だって?」
42_左京 「ああ。一人は殺したが、子どもの方をな」
43_近衛 「白銀が連れて来た。今、円と浅葱が立ち会っている所だ」
(タイトルコール)
44_亜夏刃 「『鬼神楽』最終章  〜楽業の章〜 第四話」
(そのころ、その里では。羽霧を簡単に埋葬した4人)
45_彩登 「(心配そうに見上げる)…珠菜ぁ…」
46_珠菜 「彩登、…大丈夫。…わたくしは、大丈夫よ」
47_彩登 「珠菜…」
48_千波流 「とにかく、…出来るだけみんなと合流した方が良いかもしれん」
49_亜夏刃 「自分も千波流に同感だ。このままバラバラに行動するのは―――」
50_千波流 「(頷いて)睦月たちの行方を追う手がかりが何も無い以上―――
闇雲に探し回るのは危険すぎる」
51_亜夏刃 「(頷く)主の屋敷へ戻ろう。比奈伎と佐久弥、寿々加、各務が残っているんだろう?」
52_千波流 「ああ」
53_珠菜 「では、決まり。ですわね」
54_千波流 「ああ。…みな、無事でいてくれると良いが―――」
(東風の里にて。人質とした睦月を囲む、円・浅葱・白銀。睦月、震えながらも気丈に耐えている)
55_円 「―――名は?」
56_睦月 「…アタシは睦月です。鬼火の睦月」
57_浅葱 「鬼火…。こんなに早く本物に出会えるとは思っていませんでしたね」
58_円 「本当だな。鬼火一族の構成は、どうなっている?」
59_睦月 「……」
60_浅葱 「…大人しく、質問に答えてくれませんか?」
61_睦月 「ねえ…羽霧をどうしたの!?」
62_円 「はぎり?」
63_浅葱 「白銀、心当たりは?」
64_白銀 「ああ…あの女か。左京にやられて、あれで生きてるとは思わないけど?」
65_睦月 「ひどい…!! 羽霧をかえして!! かえしてよぉ!!」
66_白銀 「(溜息)キャンキャンうるさいなぁ…」
67_円 「おい、白銀やめないか」
68_白銀 「(円にかぶせて)あのさぁ(ぐいっと睦月の頭をつかむ)」
69_睦月 「!(びくっ)」
70_白銀 「アンタたち鬼火一族だって、主の命令で散々戦に出てるんだろ?
山ほど相手を殺してるんだろ?」
71_睦月 「そ、それは…っ」
72_白銀 「自分の仲間だけは死なないなんて、そんな夢みたいな事信じてたわけ?」
73_睦月 「…っ!」
74_白銀 「随分、都合が良いよね(手を離す)」
75_睦月 「(息を整える)……あ、アタシをどうするつもりですか」
76_白銀 「アンタは餌だよ。鬼火の連中を釣る、ね」
77_睦月 「餌―――」
78_円 「白銀! 言い方が悪いぞ」
79_白銀 「言葉を飾ったってしょうがないだろ、円。本当の事だ」
80_睦月 「(ぼそ)足手纏いになんか、絶対ならないんだから―――」
81_浅葱 「? 今、何て」
82_卓麻 「(少し遠くから)―――オイ! そいつを止めろ!!」
83_円 「え?」
84_睦月 「(素早く小刀を出して、喉をつく)…っ」
85_浅葱 「!!」
(睦月の脳裏に、別れ際のみんなの顔が浮かぶ)
86_千波流 「(E)睦月、今回は特に重要な役どころだ。羽霧と二人で、しっかり頼むぞ」
87_瀬比呂 「(E)睦月、気をつけてね。僕らも頑張るからね!」
88_彩登 「(E)それじゃ、後で会おうね、睦月!」
89_羽霧 「(E)睦月、逃げろ―――!」
90_睦月 「はぎり、……っ、み、んな、…ごめ、…な、さ―――(倒れる)」
91_朱音 「(E・微笑んで)すごいな、睦月は。私の刀は、お前に研いでもらうのが一番だ」
92_睦月 「(E)朱音さま…アタシの研いだお刀、今も、持っていてくれていますか…?」
93_睦月 「(E)アタシは…、力でも、戦の技でも、お役に立てなかったけど……
アタシの作った武器が、みんなを、朱音さまを、守って、くれます…ように―――」
(睦月の小さな手から力が消える)
94_浅葱 「…しまった…っ」
95_円 「クソッ、仕込み刀か! やられた!」
96_浅葱 「卓麻、どうですか」
97_卓麻 「―――ダメだな。完全に死んでる」
98_円 「…(溜息)しくじったな」
99_卓麻 「(溜息)」
100_白銀 「…なんだよ、卓麻」
101_卓麻 「お前の落ち度だな」
102_白銀 「ハ!? 何でボクの!」
103_卓麻 「ここまで連れてきたのはお前なんだろうが。仕込み武器に気づかなかったのは、
落ち度とは言わねえのかよ?」
104_白銀 「…!」
105_近衛 「…敵ながら見事というべきか」
106_浅葱 「子どもで、女だと思って油断しましたかね」
107_円 「近衛。とりあえず、生きているという事でしばらくは誤魔化しますか」
108_近衛 「仕方がない、それでいこう―――どうした、浅葱」
109_浅葱 「…いえ。嫌なものですね、こんな…少女を」
110_近衛 「そうだな。だが、それが戦というものだ」
111_円 「相変わらず、女子どもには、甘い顔を見せるんだな、浅葱」
112_浅葱 「円。弱者であれば、それは決して敵にはなりえないからですよ」
(突然喧嘩を始めている二人…)
113_白銀 「―――ふざけるな!!」
114_卓麻 「フン、悔しかったら一度でも俺を殺してみせろよ」
115_白銀 「…へえ? 殺していいんだ。ふぅん」
116_卓麻 「(壮絶な微笑み)……やれるンならな」
117_白銀 「やってやろうじゃないか。後悔しても知らないよ―――近衛! 聞いたな!」
118_円 「白銀! 何を勝手な事を―――」
119_近衛 「全く…仕方ないな、お前たちは。好きにするがいい」
120_円 「近衛! こんな時に何を言ってるんです!」
121_近衛 「だが、止めた所で抑えられる状態ではないからな。
一度思い切りやらせた方が、かえって良いかも知れんぞ」
122_円 「そんな、呑気な事を言っているような状況ではないはずでしょう」
123_近衛 「大丈夫だ。いざとなれば、私が止める」
124_円 「近衛…」
(白銀、刀を抜く)
125_白銀 「(刀を構える)獲物はどうする気? まさか丸腰で僕とやり合おうってわけじゃないだろ」
126_卓麻 「……―――やめた。お前ごときに、武器を振るうのも面倒臭い」
127_白銀 「!! お前―――!」
128_卓麻 「くだらねえ。わざわざこんな事に付き合う義理はねぇな」
129_白銀 「卓麻ァ!! お前が言い出したんだろうっ!」
130_卓麻 「なんとでも好きに言えよ」
131_白銀 「じゃあ、やるんだな」
132_卓麻 「(じいっと白銀を見る)―――お前こそ。
わざわざ、近衛の許可無くして、動けねえのかよ?」
133_白銀 「…っそんなわけないだろ!」
134_卓麻 「フン、口では何とでも言えるよなァ」
135_白銀 「近衛は一応一族の頭だから、使える駒が減る事を知っておくべきだろ!」
136_卓麻 「は、ご丁寧な事で。ついでに、墓石も主にねだってもらったらどうだ? お前のな」
137_白銀 「―――ッ!!」
138_円 「もういい加減にしないか、二人とも。
今後、お前たち二人で組んでもらおうと思っているのに…」
139_白銀 「ハァ!? 僕が卓麻と!?」
140_円 「卓麻! 何処に行く気だ。単独行動は控えろ、計画通り白銀と組んで動け」
141_卓麻 「断る」
142_円 「卓麻!」
143_卓麻 「つるまなきゃ、俺には仕事が出来ないとでも?」
144_円 「そういうわけじゃない、
今回は 一人でやるよりも数名で組んだ方が確実だ、と言ってるんだ」
145_卓麻 「円。足手纏いなら居ない方がマシだぜ」
146_円 「卓麻!」
147_近衛 「では、左京と組んでくれ。それならどうだ?」
148_卓麻 「ふぅん……。分かった。それなら異存はない(さっさと出て行く)」
149_白銀 「―――!! な…っ」
150_近衛 「(白銀の激昂を遮るように)白銀。私の顔を立てて、今はそれに従ってくれ」
151_白銀 「近衛…っ! 僕の技量が左京に劣るって言うのか!?」
152_卓麻 「(ゆっくり振り向き)お前と左京とは違う」
153_白銀 「!」
(出て行く左京と卓麻)
154_碧 「な、何? ちょっとどうしたの、何かあったの? 左京と卓麻、出て行っちゃったけど」
155_真木 「それに、随分と騒がしいですわよね」
156_浅葱 「碧、真木。…ええ、まぁ…いつもの事なんですけど」
157_円 「白銀! 何処へ行く気だ!」
158_白銀 「うるさいっ!! 誰かと組む必要なんてない、僕は一人でもやれる!」
159_近衛 「白銀。一人で何処へ向かう?」
160_白銀 「…主の屋敷だよ。何人か殺してくる」
161_春日 「白銀! ま、待ってよ!」
162_白銀 「春日。ついて来たら、―――殺す」
163_春日 「…!」
164_白銀 「(出て行く)」
165_春日 「白銀…っ!!」
166_芳 「騒がしいな、何事だい?」
167_春日 「芳…っ、白銀を止めてよ!」
168_芳 「アタシが白銀を? そりゃやるだけ時間の無駄ってもんだよ、諦めな、春日」
169_真木 「そうですわよ春日。あまりにも、いつもの事すぎますわ」
170_浅葱 「……図らずも、これで予定通りですね、円」
171_円 「…(少しだけ疲れたように息をつく)、そう、だな―――」
(外を移動しながら)
172_左京 「…卓麻。分かっていて言っているのか? 情けなら無用だぞ」
173_卓麻 「ハン? …ああ、お前の病の事か」
174_左京 「長くないとお前も分かってるんだろう」
175_卓麻 「ンな事は不安材料にはならねえよ」
176_左京 「何? どういうことだ」
177_卓麻 「もしお前が俺の足を引っ張れば、その時は俺がお前を殺すからな」
178_左京 「……」
179_卓麻 「最初から一人だったと思えば、同じ事だろ」
180_左京 「…なるほどな。それは確かに、その通りだ」
(倒れている睦月の身体を前にして)
181_碧 「…ねえ浅葱。その子、死んでるの?」
182_浅葱 「ええ」
183_円 「喉を一突きだ。この潔さ、まるで、絵に描いた武士のようだな」
184_真木 「鬼火のかたは、育ちがよろしいのかもしれませんわよ」
185_近衛 「そうかもしれん。―――敵の手中にあって己の一族を守るため果てる、か。
どうも、ただの烏合の衆では無さそうだな」
186_円 「そうですね。…頭領の人格が伺えるようです」
187_近衛 「ああ。是非とも、会ってみたいものだ」
188_浅葱 「そういえば、当面、ここに、その鬼火の頭領を預かっている事としろ…とは、
随分変わった指示だと思いますが…これはいつまで有効なんでしょうか」
189_近衛 「さてな。主のお考えは、我々の考えの及ばぬ所にある―――」
(会話にかぶせて)
190_芳 「ふぅ…手足もこんなに細くて、ほんの子どもなのにな。
たいしたものだ。碧と同じくらいじゃないのか」
191_春日 「潔いのは格好良いのかもしれないけどさあ」
192_八重 「でも、死んじゃったらそれまでじゃん。ね、春日」
193_碧 「それで芳、どうするの、これ」
194_茶々 「…このままと言うわけには、さすがに、いかないと思うけれど…」
195_春日 「茶々。静の面倒見てたんじゃないのかよ」
196_茶々 「見ていたわよ、…いえ、見ているわ」
197_春日 「え?」
198_静 「…死んじゃったの? その女の子…」
199_芳 「静! お前、下に居たんじゃなかったのかい」
200_巴 「どうしても、みんなの居る所に行くんだと言ってきかないのよ。
うるさいから、連れて来たわ」
201_静 「ねえ、巴…この女の子、死んでるの?」
202_巴 「…そうみたいね」
203_静 「どうして、死んじゃったの?」
204_円 「それは、…」
205_真木 「今更ですわよ、円。隠したからって真実が消え失せるわけではありませんわ」
206_円 「真木」
207_真木 「それに、この少女の死だけが、特別なわけではありませんわよ」
208_碧 「アタシたちだって、いつこうなってもおかしくないって事でしょ」
209_浅葱 「(頷く)碧の言う通りですね」
210_近衛 「ああ、そうだ。それは」
211_静 「…それ、は?」
212_近衛 「―――今が、戦乱の世だからだ」
(主の屋敷で合流した寿々加・比奈伎・佐久弥組、その後)
213_寿々加 「―――比ィー奈」
214_比奈伎 「なんだ」
215_寿々加 「お前、朱音の行方知れずの話聞いてからずっとヤバイ顔してるな。
眉間にしわが寄りまくってるぞ」
216_比奈伎 「はあ? ッ、触るなっ!」
217_寿々加 「悪い方悪い方にばっか考えるんじゃねえぞ?」
218_比奈伎 「余計なお世話だ」
219_寿々加 「何を考えてる?」
220_比奈伎 「関係ない」
221_寿々加 「………はぁ…」
222_比奈伎 「……何だよ」
223_寿々加 「もちっとだけで良いからさ、素直になれよなあ」
224_比奈伎 「そんな必要ない」
225_寿々加 「会合ではあれだけ口も聞くし、理路整然と
理屈を捏ね回してる割には、日常では、ほんっと言葉が不自由だよなあ」
226_比奈伎 「う、うるさいっ」
227_寿々加 「はははー、年中以下がいなくなると途端にこれだよな、うちの副頭領は」
228_比奈伎 「寿々!」
229_佐久弥 「―――(様子見から戻ってきて・苦笑)寿々、比奈。
あんまり大きな声を出してると、敵に殺到されるよ?」
(一人でイライラしながら主の屋敷に入った白銀)
230_近衛 「(E)では、左京と組んでくれ」
231_卓麻 「(E)それなら異存はない」
232_白銀 「(M)全く…! 何様だよ卓麻のヤツ―――!
ちょっとくらい強いからってさ。―――左京とは仕合うくせに」
233_卓麻 「(E)お前と左京とは違う」
234_白銀 「(M)お前・お前って―――人を物みたいに―――、(ハッ)! 気配だ。
あれは…鬼の面! (T・にや)…1人目、見ぃつけた」
(そのころ、反対側では)
235_寿々加 「しっかし…なんでこう、複雑な造りになってるんだこの屋敷は!」
236_佐久弥 「声が大きいよ、寿々加」
237_寿々加 「(気持ち声を抑えて)他の大名とかの屋敷も、こんなんだったか?」
238_比奈伎 「いや…少なくともこんなに複雑ではなかったはずだ」
239_寿々加 「だよなぁ…。佐久弥、その、謁見の間とやらは、どの辺りなんだ?」
240_佐久弥 「もう少し、先だよ。あの角を曲がって、突き当りを右へ」
(警戒しつつ、進んで行く三人)
241_比奈伎 「寿々加。他のみなはどうしている」
242_寿々加 「横槍と、先発隊は、そろそろここに居るんじゃねえか? ほかは、里に戻ってるはずだ」
243_佐久弥 「うん」
244_寿々加 「こっちには、各務も追ってきてるはずだ。もうすぐ合流するだろ」
(その反対側に、追ってきていた各務)
245_各務 「(殺気を感じ)!(ばっと振り向く)」
246_白銀 「―――あれ? アンタ、もしかしてあのときの」
247_各務 「…! その白い狐の面…お前は」
(回想シーン{神立風第二話・2の84〜/楽業第一話 〜参照})
248_白銀 「―――鬼火と呼ばれる者は、護りが得手と聞いた。出直すよ」
249_各務 「駄目だ―――完全に消えた。追えぬな―――」
(回想シーン終わり)
250_白銀 「ふーん…まーた一人でウロウロしてるわけ。
よっぽど自分の力に自信があるのか…それとも、よっぽどの、
―――愚か者なのか!(攻撃!)」
251_各務 「くうっ!!」
252_白銀 「ちょうど、むしゃくしゃしてた所だったんだよね…アンタ、運が悪いな」
253_各務 「―――っ」
254_白銀 「限界まで粘ってよね? そうでないと、つまんないじゃん」
255_各務 「何?」
256_白銀 「少しでも、僕の憂さ晴らしになってくれなきゃ、困るんだよ」
257_各務 「勝手な…事を!(刃を弾く)」
258_白銀 「(もちろんそれを簡単に受け流して)さっきの変な仕込み武器、
あれは嫌な感じだったから…まずは、それ!」
259_各務 「くっ!!(仕込んでいた睦月の装置を壊される)しまった…っ」
260_白銀 「(…とん)ヘェ…すごい仕掛けだよね、これ。
あれ…どっかで、同じようなものを見たなァ…」
261_各務 「……なに…っ」
262_白銀 「あぁ、そうだ。思い出した! 里で捕まえた子どもが持ってたんだっけ。
使えそうだからって、八重がもらってたな」
263_各務 「まさか…睦月!?」
264_白銀 「ああ、そうそう、確か、そんな名前」
265_各務 「睦月を…どうしたっ!!」
266_白銀 「死んじゃったよ?」
267_各務 「!?」
268_白銀 「言っておくけど、僕が殺したわけじゃない。勝手に死んだんだよ」
269_各務 「そんな…睦月、が…!」
270_白銀 「里では、ほかに一人殺ったばっかり! はぎり、とかいう、生意気そうな女」
271_各務 「何っ、…羽霧までも…」
272_白銀 「大丈夫だよ」
273_各務 「なに…?」
274_白銀 「どうせアンタも、すぐ追う事になるんだから」
275_各務 「おのれ…っ」
276_白銀 「ははは! 恨むなら、自分の力不足を恨むんだね!!」
(そのころ、反対側では)
277_比奈伎 「…っ」
278_佐久弥 「比奈伎」
279_比奈伎 「…悪い、大丈夫だ」
280_寿々加 「どうした?」
281_比奈伎 「…何でもない」
282_佐久弥 「少し、休む?」
283_比奈伎 「そんな事を言える状況じゃないだろう」
284_寿々加 「なんだぁ? 酷い顔色だなお前」
285_比奈伎 「何でもないと言ってる」
286_佐久弥 「…」
287_寿々加 「(ぼりぼりと頭をかいて)あのなぁ。言っておくが」
288_比奈伎 「…何だ」
289_寿々加 「頭領が居ない今、確かに副頭領のお前があとを継いで動くのは必然かもしれない。
けど、別にお前一人で何もかも背負えってわけじゃねえ。
お前が一人で何でもやれちまったら、俺や佐久弥は何のためにここに居るんだよ」
290_佐久弥 「…」
291_寿々加 「朱音だって、決して一人で総て背負おうとはしなかっただろ」
292_比奈伎 「…っ」
293_寿々加 「力不足結構! それが何だっていうんだ?
足りない分は誰かが補えばいい。そのための仲間だろ」
294_比奈伎 「―――……」
295_寿々加 「―――バーカ。ンな事くらいで、泣くな」
296_比奈伎 「な、泣いてない…っ」
297_寿々加 「ははっそーかそーか。じゃ、俺は先を見てくる。佐久弥、任せた」
298_佐久弥 「ん」
(片手を振りつつすいっと去る寿々加)
299_比奈伎 「(その背中を見送って)寿々加…っ 勝手な、事を…」
300_佐久弥 「私も同意見だよ、比奈伎」
301_比奈伎 「ぅ」
302_佐久弥 「一人でいこうとしないで」
303_比奈伎 「…」
304_佐久弥 「寿々加の言う通り、みんながいる。…もちろん、朱音も、だよ」
305_比奈伎 「…佐久弥」
306_佐久弥 「比奈伎は、独りじゃないんだよ」
307_比奈伎 「……」
308_佐久弥 「…ね」
309_比奈伎 「………ん(頷く)」
310_佐久弥 「…比奈」
311_比奈伎 「もう、…大丈夫だ」
312_佐久弥 「…ん」
313_寿々加 「(ちょっと遠くから)―――オイ! 何だか変な部屋を見つけたぞ!」
(SE:武器と武器が激しく交差する)
314_各務 「しまった…っ」
315_白銀 「遅い! ―――とった!」
316_各務 「!!」
(ついさっきまで羽霧と睦月がいた、パネルのある部屋に入った三人。やはり画面が映し出されている)
317_寿々加 「佐久弥。これが何だか分かるか?」
318_佐久弥 「こんなものは…私も初めて見るね」
319_比奈伎 「…何なんだ、これは…」
320_佐久弥 「―――寿々加、比奈伎、ここを見て」
321_寿々加 「えっ…な、なんだこれ!?」
322_比奈伎 「……朱音!?」
323_寿々加 「お頭だ! お頭っ!! …聞こえてねえのか!? なんなんだ、これはっ」
324_比奈伎 「この里…鬼火の里に見えるが…何となく、違和感があるな」
325_佐久弥 「うん。とても良く似ているけれど…そっくりだけど、違うね―――何処なんだろう」
326_寿々加 「そうだな……って、冷静に話してる場合か!
これ…絵みたいに見えるが、動く絵なんてあるのかよ」
327_佐久弥 「…おそらくこれは、絵ではないよ。…今、起こっている出来事なんじゃないかな」
328_比奈伎 「何故そう思う、佐久弥」
329_佐久弥 「一番下の、左側のを見て。―――私たちだ」
330_寿々加 「…!!! う、動いてる…おんなじように」
331_佐久弥 「どういう事かは分からないけれど、これは…今起きている事を、
見る事が出来るんだと…(はっとして)右上の!」
332_比奈伎 「―――あれは!」
333_寿々加 「…各務っ!!!」
(刺された各務、辛うじて倒れず、ただ立ち尽くしている。足元には夥しい血が)
334_各務 「……っ」
335_朱音 「(E)各務」
336_各務 「―――ああ…我は…」
337_朱音 「(E)各務―――私がいなくなったあとは、一族を…みなを頼む―――」
338_各務 「(M)―――お頭!!!―――(腕を伸ばす)」
(屋敷を取り囲むように物々しく警備を続ける武士たち)
339_武士:ガヤ ※(戦ガヤ5〜10秒になるくらい)「もたもたするな」
「持ち場に着け!」「準備は出来たのか!?」「今しばらくのお待ちを」など
340_武士:1 「一の郭、固めました!」
341_武士:2 「二の郭、同じく厳重に固めました」
342_武士:4 「三の郭、四の郭は、現在陣を組んでいる所です」
343_大将 「急げよ。あまり猶予はないぞ」
344_武士:4 「は!」
345_武士:7 「(少し遠くから)本陣、整いましてございます!」
346_武士:6 「(少し遠くから)こちらも、抜かりなく整いましてございます!」
347_大将 「よし!」
348_武士:5 「殿を本陣にお呼びいたしますか」
349_大将 「いや。殿は、屋敷にて我らの働きを見ておられる」
350_武士:5 「ははっ」
351_大将 「みな、存分に戦おうぞ!」
352_武士:全員 ※「はっ」
353_大将 「東風も鬼火も関係はない。―――総て、討つべし!」
354_武士:全員 ※「はっ!!」
355_大将 「鬼火・東風、共に討つべし!!」
356_武士:全員 ※「討つべし!!」
357_武士:全員 ※「えい、えい、おー!」
358_武士:全員 ※「えい、えい、おー!!」
【続く】