●鬼神楽●
【〜楽業の章・第1話〜】
この色…東風
この色…鬼火
この色…武士・女中・ガヤ(注:ガヤ・全員部分は、ファイル名 セリフ番号_お名前 )
この色…その他
ガヤ:一本のファイルに、三パターンほど入れて下さい。
    その際には、それぞれの間を2秒ほど空けてくださると助かります】
※万一使用セリフに不安がある場合には、よろしければ、こちらから指定させていただきます。
セリフ番号
「セリフ」
(主の屋敷にて。主・斉彬と謁見する朱音)
01_朱音 「―――…っ、今、何と」
02_主 「聞こえなかったのか?」
03_朱音 「は、…いえ、…出過ぎた事を申しました。ご無礼をお許し下さい」
04_主 「いや…。……朱音よ」
05_朱音 「―――は」
06_主 「余は、もう、長くないだろう」
07_朱音 「! 殿、そのようなお気の弱い事を」
08_主 「―――…余の時代はもう終わる。
余の後を狙う者たちによって、この世は乱世となるだろう。
むろん、そちの一族については、余も尽力するつもりでいるが…、朱音。そちは―――」
09_朱音 「は。既に承知しております。…元より、覚悟の上なれば―――」
10_主 「(頷いて)そちのような臣下を持ち、余は幸せだな」
11_朱音 「(深く頭を下げて)もったいなきお言葉―――」
(やがて、主・斉彬の訃報が知らされる/次々に伝令を読み上げるような雰囲気で)
12_武士:1 「―――斉彬候(なりあきらこう)、崩御!!」
13_武士:2 「主(しゅ)が、お隠れに―――!!」
14_武士:4 「主・斉彬(しゅ・なりあきら)さま、ご崩御!!」
15_武士:5 「殿が、お隠れ遊ばされた…!!」
16_武士:6 「鬼火に、伝令を飛ばせ!」
17_武士:全員 ※「鬼火の主・斉彬候、ご崩御!!」
(やがてその知らせは、鬼火一族の里にも届く{鬼灯第三話・2の229〜参照})
18_各務 「―――お頭」
19_朱音 「(書状をばさり、と広げる)…。(やや溜息)とうとうこの時が来たな」
20_各務 「はい」
21_朱音 「(M)…とうとう、この時が来た―――もし真実、私が主と共に命を絶つのだとしても。
この、一族だけは―――」
22_朱音 「首尾良く運ぶように…尽力するさ」
23_朱音 「(M)この一族だけは、絶対に、護ってみせる」
(モノローグ)
24_千波流 「ただ削り取っただけのような、荒涼とした景色が広がっている。

その先には、屋敷を中心とする 無機質な色合いの城壁が 何処までも続いており、
まるで俺たちを飲み込もうとするかのように、その大きさを誇示しているようにも見える。

この、門の向こうにお頭がいる。
今、俺が考えられる事は、たった一つ。
それだけだった。それだけの、はずだったというのに。

目の前に晒された言葉だけに動揺して、
その奥に隠された真実から 目をそらしていたんだ―――
…こんな事が待ち受けていたなんて思いもしなかった。

それは…俺達の存在そのものを、覆して(くつがえして)しまう…事だったのだから」
(モノローグ終わり/朱音、馬にて主の住まう屋敷に参上。目の前には多くの武士が待ち構えている)
25_朱音 「―――開門!!」
26_武士:7 「何だ!?」
27_朱音 「開門! 鬼火の朱音だ! 主・斉彬様にお目通り願おう!! 開門ッ!!」
28_武士:1 「どうしたっ、何事だ!」
29_大将 「(上の方から)―――何者だ!? 名を名乗れ!!」
(ばらばらっと武士が多く出てくる。朱音、そちらに馬の向きを変えて)
30_朱音 「私は、主・斉彬さまに仕える者、鬼火一族の頭領、朱音だ!
主への拝謁をお許し願いたい!」
31_武士:2 「な、何ぃっ!? 鬼火一族だと!?」
32_武士:4 「鬼火一族とは、まさか、あの…」
33_朱音 「(武士にかぶせて)速やかに門を開けていただきたい!」
34_武士:ガヤ ※(迷い、動揺など:一言)
「ど、どうする」「そんな事を聞かれても」「お伺いを立てろ」「奥に使いを」など
35_大将 「(奥から出てくる)ええい者共、うろたえるな!」
36_武士:全員 ※「は…、はっ!」
37_大将 「(朱音に向き合い)鬼火の朱音とやら。殿は、昨日お隠れあそばしたばかりだぞ」
38_朱音 「……否。それは、偽りだ」
39_大将 「何? …何ゆえそう思う」
40_朱音 「―――では逆に問う。主が亡くなった今、何故、こんなにも厳重に警護をしているのだ。
…私が来る事を、予測していたからではないのか」
41_大将 「……。(後ろの武士たちを振り向き)
このような者は存ぜぬと殿は仰っておられる! 曲者だぞ!!」
42_朱音 「何…!?」
43_武士:5 「何者をも屋敷へは入れるなとのお達しだ!」
44_武士:6 「殿の家人(かじん)を騙る(かたる)とは…この不届きものが!!」
45_武士:7 「曲者だぁ!! みなの者、出あえー!!」
46_武士:1 「怪しい女だ、斬れ斬れーい!!」
47_朱音 「(歯軋り)…おのれ…ッ、
やはり我らを謀って(たばかって)いたのか………斉彬!!!」
48_武士:2 「こ、この無礼者め!!」
49_武士:4 「口を慎まぬか!!」
50_武士:5 「恐れ多くも殿の御名(おんな)を呼び捨てるとは!」
51_大将 「ええい構わん、斬り捨てろ!!」
52_武士:全員 ※「はっ!!」
53_武士:6 「かかれ!!」
54_武士:ガヤ ※(いっせいに刀を抜き、かかっていく武士たち:掛け声一言)
やあああ! おりゃあああ! など
55_武士:7 「でやああっ(刀を振りかぶり)―――(かわされて、斬られる)うわっ、ぎゃああ!!」
56_武士:ガヤ ※(競り合い、攻撃され、逃げ惑う武士:3秒〜5秒ほど)
「ぐああああ!!」「うわあああ!」「何だ!?」「何事だ」「く、くそお!」「食らえ!」など
果敢にも攻めるものや逃げる者。動揺・恐怖のどよめき、言葉と、悲鳴で、何種類か
57_武士:5 「(ガヤにかぶせて)…バ、馬鹿な、たった一人を相手に!?(動揺)」
58_大将 「(かぶせて)ええい…っ、たかが女一人ではないか! 何をしているのだ!?」
59_武士:ガヤ ※(どよどよっ…という、朱音の強さに動揺・迷い・恐れ。
得体の知れない化け物を前に、躊躇っているようなセリフいくつか:5秒ほど)
「なんて強さだ…」「そ、そうは言っても…」「し、しかしながら…っ」など
60_武士:6 「こ、これは…っ、ただの女ではありませんっ!!(必死の叫び)」
61_大将 「く…っ」
 ≪【59】のガヤここまで≫
(少しだけざわめきが静まり、武士の間を割って馬上の朱音に地面からゆっくりとズームアップ)
62_朱音 「(静かに)―――確かに、私はたかが女だが…、
伊達に鬼火の頭領などやってはいない。
(刀を構えて)―――死にたい者から前へ出ろ!!」
63_武士:ガヤ ※「(確実に迫る死の恐怖に、震え上がる)」
64_武士:4 「―――ば、化け物―――!!」
65_武士:7 「お、鬼だ…っ! 鬼だああっ!」
(やがて、朱音を遠巻きにして後ずさりを始める武士たち)
66_朱音 「―――お許しが通らぬのならば…力づくでも罷り(まかり)通る!!」
67_武士:ガヤ ※次々と斬り捨てられ、逃げ惑う。悲鳴、恐怖など数種類。だんだんF・O(5秒ほど)
「鬼だあ!」「ぐああああ!!」「助けてくれ!」「腕があ!」など
(SE:悲鳴と交差して風が行き過ぎる/最終章開始)
68_ナレ男 「―――願った事は何だろうか。望んだ事は何だったろうか。
そう、心に深く問いかけてみる」
69_ナレ女 「だが、思い出そうとしても、それは、すでに忘却の彼方でしかない」
70_ナレ男 「ただひたすらに、歩む事をやめなかった」
71_ナレ女 「ただひたすらに、真っ直ぐに進んできた。そのはず、だった―――」
72_ナレ男 「―――いったいどこで道を逸れてしまったというのだろうか。
それはもう、誰も思い出す事は出来ない」
73_ナレ女 「彼らは決して、間違えたわけではないのだから―――
―――そう。間違えたわけではないのだ―――そして」
74_ナレ男
74_ナレ女
※「―――『本当』の『物語』は―――ここから始まる―――」
(タイトルコール)
75_千波流 「『鬼神楽』最終章   〜楽業の章〜 第一話」
76_ナレ女 「時は泡沫(うたかた)の乱世なりき。―――死は」
77_ナレ男 「死は 常に目の前に存在する」
(主の屋敷の前、戦の続く中で―――亜夏刃・珠菜組【SE:戦ガヤバックで小さく】)
78_武士:6 「おりゃああ!」
79_亜夏刃 「(槍を受け流し)―――妙だな」
80_武士:7 「たあああ!」
81_珠菜 「(刀を弾く)―――妙ですわね」
82_武士:6
82_武士:7
※「(やられた悲鳴)」
83_亜夏刃 「(構え直し)…急に動きが退き始めた」
84_珠菜 「ええ…手応えが随分と薄いですわ」
85_亜夏刃 「向こうで、何か動きがあったのかもしれん」
86_珠菜 「ですわね」
87_亜夏刃 「ひとまず、このまま屋敷へ入ろう。行くぞ珠菜」
88_珠菜 「ええ」
(亜夏刃、珠菜、警戒しつつ主の屋敷へ潜入を果す…が)
89_珠菜 「(しばらく様子を探った後)―――亜夏刃。…これは、おかしいですわよ」
90_亜夏刃 「(頷いて)静か過ぎるな。この状態であっけなく護衛が退くとは…
まるで、自分たちが屋敷へ入る事を、待っていたかのようだ」
91_珠菜 「…誘っていますわね」
92_亜夏刃 「…『少しでもおかしな様子ならば引き上げろ』、か」
93_珠菜 「(頷いて)―――では、わたくしたちの屋敷潜入はここまで」
94_亜夏刃 「急ぎ戻って、先発の千波流、寿々加と合流するぞ」
95_珠菜 「ええ。合流後、即、里へ引き上げましょう」
(主の屋敷から舞台は山へ。山中にて夜紫乃・伊織・瀬比呂・彩登組)
96_武士:1 「―――そっちはどうだ!?」
97_武士:2 「いや、こちらには来ていないようだな」
98_武士:4 「やれやれ…気の回しすぎではないのか?
まさか、ここまで攻め入ってくるとは思えんが」
99_武士:5 「しかし、念には念を入れるべきだろう」
100_武士:6 「(頷いて)少数とはいえ…かなりの手練れの集団だからな」
101_武士:5 「ヤツラは、人ではないという話だぞ」
102_武士:4 「そんな根も葉もない噂を信じているのか!?」
103_大将 「(遠くから)―――おい、何をしている!? 探索の手を緩めるな!」
104_武士:全員 ※「は!」「はい!」など返事
105_大将 「(少しだけ近づいて)よし、気を抜くなよ! もうしばらくこの辺りの散策を続ける!」
106_武士:全員 ※「はっ!」
(その武士たちの様子を木の陰から伺っている夜紫乃)
107_夜紫乃 「(少し唸って)こんなところにまで斥候が来てるのか…。
まあでも、この人数ならたいした事ないな。ね、伊織…
…って、あれっ瀬比呂、彩登、伊織は?」
108_彩登 「えっ?(振り向いて)あれっ!? さっきまで彩登のすぐ後ろにいたよ!?」
109_夜紫乃 「! (少し声を潜めて)二人はここで待ってて!」
110_彩登 「(少し緊張して)えっ、う、うん!」
111_夜紫乃 「瀬比呂、彩登を頼むよ」
112_瀬比呂 「うんっ! 分かった、任せてよ!」
(夜紫乃が来た道を少し戻ると、少し離れたところに伊織の姿が)
113_夜紫乃 「(少し遠くから)―――伊織、遅れてるよ!」
114_伊織 「夜紫乃! …ごめん!」
115_夜紫乃 「(近づいてきて)どうしたの? なんか、調子悪そうだけど」
116_伊織 「そういうわけじゃないんだけどさ、…や、やだなあ…
なんか緊張しちゃってさぁ…震えてきちゃって」
117_夜紫乃 「この四人での任務なら、何度も行った事あるじゃん」
118_伊織 「そーだけど! でもそれは荷物運びだったり、探索だったりとかで…
そもそもアタシ自身、今までにこんな重たい任務、受けた事ないし…」
119_夜紫乃 「伊織、それでも、僕らがちゃんとしっかりしてないと、瀬比呂と彩登が不安に思うよ」
120_伊織 「わ、分かってるわよっ!」
121_夜紫乃 「あ、そこ滑るよ、気をつけて」
122_伊織 「分かってるってば! 大丈夫! …ぅあっ!?」
123_夜紫乃 「あっ!」
124_伊織 「(ずでーんっ)」
125_夜紫乃 「……」
126_伊織 「……」
127_夜紫乃 「ふーん、大丈夫、ねぇ…」
128_伊織 「な、何よその言い方っ!! 厭味っぽいーっ!」
129_夜紫乃 「(くっくっ)ホーラ、掴まんなよ」
130_伊織 「(むっとして)ふんっ、いらないわよっ!!(がばっと立ち上がり、ぼかっ!)」
131_夜紫乃 「いってーっ!! 八つ当たりだっ!」
132_彩登
132_瀬比呂
※「(少し離れた位置から)シーっ!!!!」
133_瀬比呂 「(少し離れた位置から)もーっ、夜紫乃、伊織、うるさいようっ!」
134_彩登 「(少し離れた位置から)向こうの敵に聞こえちゃうよっ!」
135_夜紫乃
135_伊織
※「(がばっと口を押さえて)……ごめんなさーい」
136_彩登
136_瀬比呂
※「(偉ぶって)うむ。よろしい」
137_夜紫乃
137_伊織
※「……(一瞬きょとんとして)(笑いながら)何、今の! 誰の真似!?」
※「……(一瞬きょとんとして ぷーっと吹き出して、口を押さえて、でも堪えきれず笑う)」
138_彩登
138_瀬比呂
※「朱音さま!!(笑)」
139_伊織 「あははは、やだ、似てなーい!」
140_瀬比呂 「ええっ? そうかなあ」
141_彩登 「似てたよねえ、ね、瀬比呂」
142_瀬比呂 「うん、そっくりだったよぅ。ね、彩登」
143_夜紫乃 「(くっくっ)」
144_伊織 「(笑いを納めて)あーもう、なんだか今ので緊張も解けちゃった!」
145_夜紫乃 「そ? じゃあ良かったじゃん!」
146_伊織 「……」
147_夜紫乃 「ん? 何?」
148_伊織 「別に〜!」
149_夜紫乃 「??」
150_伊織 「さ、行くよ瀬比呂、彩登!」
151_彩登
151_瀬比呂
※「はーい!」
152_伊織 「でも、(すれ違いざま…ぼそりと)…ありがと夜紫乃っ」
153_夜紫乃 「…。(嬉しそうに顔いっぱいで微笑んで)いいえ、どういたしまして!」
(またもや舞台は主の屋敷、屋敷の入り口手前にて。遠くで戦の続いている音)
154_各務 「切り込みの亜夏刃と珠菜は屋敷へ入ったか―――
先発まで、上手く入れるかどうか―――」
(潜んでいる白銀の気配を、感じた各務{神立風第二話・2の84〜参照})
155_各務 「(M)…誰か…いやるな―――来た!
(いきなり小刀を投げつけられる・T)!!(受け止める)」
156_白銀 「ッ!(間髪いれずに切り込む)」
157_各務 「(M)早い―――!(T)くうっ(受けながら、指弾装置)」
158_白銀 「(避ける)」
159_各務 「―――ッ(M)―――出来る」
160_白銀 「…アンタ、鬼火?」
161_各務 「(M)我らの事を知っているのか―――(T)……そうだ」
162_白銀 「やるね」
163_各務 「そちらこそ」
164_白銀 「…おっと、救援か」
165_千波流 「(武器を構えて)そういうことだ」
(しばしの睨み合い)
166_白銀 「(ククッと笑って)…甘く見すぎてたかな。
鬼火と呼ばれる者は、護りが得手と聞いた。出直すよ」
167_各務 「―――名は?」
168_白銀 「(軽く微笑って)いずれ死に逝く者に、知らせる名前なんか無いよ(去る)」
169_千波流 「逃がすか!!」
170_各務 「(虚空を睨みながら)駄目だ―――完全に消えた。追えぬな」
171_千波流 「何者なんだ―――?」
172_各務 「かなりの使い手であったな…ただの斥候とは思えぬが…
(指弾装置を見て)この装置が早速、役に立つとは―――」
173_千波流 「(少し笑って)睦月に感謝だな。
しかしまさか…、一人きりで鬼火をつぶしに来たわけじゃないだろうが」
174_各務 「(頷く)気になるな。あの白い狐の面…我らに近い者であろうか」
175_寿々加 「(ざっと現れて)―――オイ、各務、千波流。
なんかヤバそうな気配が居たみたいだが…大丈夫か?」
176_千波流 「寿々加」
177_各務 「ああ。とりあえず問題は無いえ。そちらは?」
178_寿々加 「粗方片付けた。―――比奈伎と佐久弥は?」
179_各務 「既に先へ行かせた」
180_寿々加 「…。しんがりを務めると言っておいて―――
その実(じつ)、途中で先発の俺たちと入れ替わるのも 計画のうちだったんだな?
…どうせ狙ってたんだろ。佐久弥の案か?」
181_各務 「…そうえ。この計画での囮役は比奈伎だからね」
182_千波流 「(ハッ)まさか…、お頭のいない今、比奈伎が…いや、副頭領だけが
主に追われる対象となるという事を予測していたのか!?」
183_寿々加 「どーせそれも、佐久弥の考えだろうけどな」
184_各務 「ああ。…当たりだったようだね」
185_寿々加 「(頷いて)武士の連中、俺たちには見向きもしない。
まるで吸い寄せられるみたいに、あの二人を追い始めたんだ。…不気味だぜ」
186_千波流 「確かに…。何と言うか、手応えがない連中だったな」
187_寿々加 「先へ行った亜夏刃と珠菜も、きっとそれは感じてるはずだ」
188_千波流 「ということは―――最初の計画そのものが、
俺たちを欺く(あざむく)ための物だったって言うのか!?」
189_各務 「(息をついて)ひとまず先発として、千波流・寿々加に敵を抑えてもらい、
その間に、主の屋敷へ入り込む―――
そのまま、外の敵はお前たちに任せるという形でな」
190_寿々加 「(溜息)やっぱりな。今思えば、あっさり俺たちに話を漏らしたのも、佐久弥らしくねえ。
それに比奈伎も…千波流に喧嘩まで吹っかけておいて、さっさと退いただろ。
おかしいと思ってたんだよ」
191_各務 「……」
192_寿々加 「『あの時』…わざと、俺たちに話を聞かせたんだな? (鬼灯4−4参照)
193_千波流 「だからと言って、わずか二人でどうしようというんだ!
切り込みの二人には、少しでも様子がおかしければ里に退くように言っておいて、
その実、自分たちは屋敷の奥へそのまま潜入するつもりか!」
194_各務 「それは」
195_寿々加 「(溜息)各務を責めてもしょうがねえ。俺が行くぜ。少なくともここに残るよりは、動ける」
196_千波流 「む…、…まあ、そうなるか。…(苦)…あいつらの考えはどうあれ、
元からしんがりは俺の務めだからな。互いにこっちの方が性に合ってるんだろう」
197_寿々加 「善は急げだ、俺はひとまずあの二人を追う」
198_各務 「寿々加。…頼むえ」
199_寿々加 「(返事をして、駆け去る)」
(風のように消えた寿々加の後姿を見送って)
200_千波流 「(大きく息を吐き出して)まんまと佐久弥にしてやられたか」
201_各務 「(ふぅ…)我にも、詳しい事は何も言わぬままだ」
202_千波流 「各務、お前ももう行け。屋敷の中では寿々加一人より良いだろう。
ここはもう、俺一人で大丈夫だろうからな」
203_各務 「すまぬな、結局お前一人に最後を任せる事になってしまった」
204_千波流 「なに、今回はどこに配置になったとしても、苦労は多いさ。
寿々加が追いつけばそちらは安心だろう。…それにしても」
205_各務 「…どうした、千波流。何か不安かえ?」
206_千波流 「不安というのか…こんなに、嫌な気分は久しぶりだ。
おまけに、嫌な風が吹いてる―――」
207_武士:ガヤ ※(戦場から風に乗って遠く武士たちの声が聞こえてくる。
掛け声や悲鳴、戦場での声など5秒〜7秒ほど)
208_各務 「―――では千波流、頼むえ」
209_千波流 「心得た。…大丈夫だ、任せろ」
210_各務 「(頷いて)信じておるよ。
亜夏刃、珠菜と合流後、千波流は、夜紫乃たちの援護に向かっておくれ」
211_千波流 「ああ、わかってる。各務、お前も気をつけろよ。
あいつらに合流するまでは気を抜くな。何が潜んでるかわからないからな」
212_各務 「ああ。…では、あとで」
213_千波流 「(頷く)各務。…武運を」
214_各務 「千波流こそ。―――武運を」
(主の屋敷の、南側。高い崖が目の前を覆っている。それを見上げる羽霧。睦月少し遅れている)
215_羽霧 「(少し離れたところから)―――睦月、こっちだ!」
216_睦月 「(軽く息を切らせて)す、すいません! …はぁはぁ…この上ですね」
(SE:風など。目の前には高いがけがそびえ、その上に主の屋敷の一角が見える)
217_羽霧 「(崖を見上げて)思ったより高い崖だな…この距離で、この矢が届くか?」
218_睦月 「(やや不安を残して)多分―――縄の長さはぎりぎりで足りると思いますし」
219_羽霧 「(不安を振り払うように、一つ頭を振って、ボウガンを構える)
習うより慣れろだ、とにかくやってみるしかない。…やるぞ」
220_睦月 「はい。…羽霧、矢についてる縄を絡ませないように、気をつけて撃ってくださいね」
221_羽霧 「わかってるって!」
222_睦月 「この矢は 岩にめり込ませるだけの強度はあるはずなので―――
思い切って、なるべく高い位置を狙ってください」
223_羽霧 「おう!」
(ボウガン発射! どす、っと崖の壁に突き刺さり、そこから羽霧の足元まで縄がぶら下がっている。
 力を入れてぐいぐいと引っ張ると、良い反応だ)
224_羽霧 「ん、よし! 思った以上にしっかり刺さったな!
これで、この縄を伝って上までいけるぞ…上手くいったな睦月!」
225_睦月 「はい!」
(その縄を手繰りながら、するすると遙か高い崖を登り始める二人)
226_羽霧 「睦月、上からの弓に気をつけろよ、こんな状況じゃ狙い撃ちだからな」
227_睦月 「はい。でも羽霧…何だか気味が悪いくらい静かで…気配は無いみたい」
228_羽霧 「…。(上を振り仰ぐ)…確かに―――何だか妙だな―――」
(縄を上ると、がけに面した部分に裏口がある。
 主の屋敷の、奥にある、とある一角にて/コツコツ、と小さく壁を叩く)
229_羽霧 「…ここだな」
230_睦月 「はい。間違いないです。ここが、佐久弥の言っていた、主への『横槍』―――」
231_羽霧 「主の屋敷で唯一の、死角か」
232_睦月 「この向こうにも、人の気配はありません。見張りもここにはいないみたい…
変ですよね…何だか、無用心過ぎませんか?」
233_羽霧 「(頷いて)とにかく、気を抜くなよ―――行くぞ」
(とある部屋に、謎の男が一人座っている。周りでは、何やら電子音が。
 男の顔は逆光で見えないが、痩せぎすで、どうやら静かに笑っているようだ)
234_謎の男 「…来たな。来るならば鬼火が先と思っていたが、思った通り―――」
(SE:ピピッ、と何か操作したような電子音)
235_謎の男 「あの裏口の存在に気づくとは、さすがは佐久弥か。
東風では、気づいた所で入る術は無かろうが…睦月のあの装置が役立つとはな。
―――余計な知恵をつけすぎたか…」
(SE:こぽこぽと水音?)
236_謎の男 「どのみち、―――既に終焉は、見えた―――(くつくつと笑う)
(酔いしれるように)さあ―――お前たちは、
どんな最期の舞台を見せてくれる―――?」
(SE:F・O/羽霧・睦月、長い廊下を走り、ひとまず、手近なある部屋へ入ってみた。
その部屋の天井は妙に明るく、よく見ると壁にびっしりと監視用モニターが。
当然、羽霧たちにはそれがいったい何なのかは分からない。手元には操作パネルが広がっている)
237_羽霧 「(警戒して見回しつつ)何なんだ? この部屋は…。座敷の中にしては変だよな…」
238_睦月 「見たこと無い物がたくさんある……これ、何でしょう…」
239_羽霧 「わからない。とにかく、うかつに触るな―――って、うわわっ!!」
240_睦月 「あっ、羽霧、触っちゃ駄目…って、な、何!?」
(羽霧が、つい軽くふと手をついたところから、手元のパネルに明かりが一気に広がる。
それを合図にしたように、全てのモニターに画面が)
≪実はそれらには、主の屋敷をはじめ里人の里や、山々、任務で行く戦場、鬼火の里の中など、
彼らの立ち寄る先全てが、なんと小屋の中まで細かく映し出されていた≫
241_睦月 「(びっくりして悲鳴)な、…何これ…っ!?」
242_羽霧 「な……何だこりゃ……絵か!?」
243_睦月 「で、でもよく見ると、…動いてます!」
244_羽霧 「待てよ…!? この場所、何だか見たことある―――
(はっと気づき)この屋敷の入り口だ!」
245_睦月 「あ、あれ、か…各務!? 各務じゃないですか!?」
246_羽霧 「各務だ!! なんだこれ…!! おい! 各務、聞こえないのか!?」
247_睦月 「各務は、屋敷の入り口を担当してたはずですよね…え、こ、これって?」
248_羽霧 「こっちには、亜夏刃と珠菜だ。あいつらは正面から屋敷に入るはずで…」
249_睦月 「ま、待ってください羽霧! これ見て下さい! こっちのは…アタシたちの里みたい!」
250_羽霧 「なんだって!?」
(睦月の指差す目の前のモニターの中には、確かに鬼火の里と思われる里の入り口等映しているものが)
251_睦月 「あ、あれ…っ!? 里の入り口に居るの…朱音さま…!?」
252_羽霧 「何!?(画面を覗き込む)…確かに…お頭だ!!」
253_睦月 「里に戻ってきてたんですか朱音さま…っ、じゃ、じゃあアタシたち、何のために」
254_羽霧 「………落ち着けよ睦月」
255_睦月 「で、でも」
256_羽霧 「…どうも、…すっきりしない。…何だか臭うな」
257_睦月 「! …それって、まさか」
258_羽霧 「―――罠、…だったかもしれない―――」
(主の屋敷の、正面に近い屋敷の中を移動する比奈伎・佐久弥組)
259_佐久弥 「比奈伎、こっちが謁見の…」
260_比奈伎 「―――ッ」
261_佐久弥 「比奈伎」
262_比奈伎 「………あ、あ…悪い。…何でもない」
263_佐久弥 「……比奈伎、―――大丈夫?」
264_比奈伎 「―――(小さな溜息)…お前には、…隠せないな…」
265_佐久弥 「………」
266_比奈伎 「……我ながら、情けないと、思う。正直…。
ここに、朱音がいない。ただそれだけで―――こんなに、…」
267_佐久弥 「情けなくなんか、ないよ」
268_比奈伎 「もし、朱音に何かあったら―――そう思うだけで、…震えが、止まらない」
269_佐久弥 「うん」
270_比奈伎 「絶対に…失いたくないのに。何よりも、絶対に」
271_佐久弥 「うん」
272_比奈伎 「……俺は…怖いんだ」
273_佐久弥 「…うん―――」
(回想シーン/エコー/主に対してのこれからの一族の動向を話し合っていた朱音と佐久弥)
274_朱音 「―――何よりも、一族の存続を―――それも、ただの一族ではなく…
この、私の鬼火一族の存命が、望むべき事だ」
275_佐久弥 「うん」
276_朱音 「主に反する事は―――この一族の命運すらも量りにかける事になるが―――」
277_佐久弥 「私は―――」
278_朱音 「……」
279_佐久弥 「…私は、ずっと感じてた。…何かを。何か、予感めいたものを。
それが何なのかは結局わからないけれど…それでも」
280_朱音 「佐久弥」
281_佐久弥 「そしてそれは、…これからも」
282_朱音 「分かっているさ、佐久弥。―――大丈夫だ」
283_佐久弥 「―――うん」
284_朱音 「―――大丈夫だ―――」
(回想シーン終わり)
285_佐久弥 「………大丈夫」
286_比奈伎 「…佐久弥?」
287_佐久弥 「…大丈夫。絶対に、大丈夫に、してみせるから―――」
288_比奈伎 「べ、別に、俺は―――……いや…」
289_佐久弥 「…」
290_比奈伎 「…うん。そうだな。……信じてる」
291_佐久弥 「…うん」
(そのころ、夜紫乃・伊織・瀬比呂・彩登組は山中にて)
292_伊織 「…どう? 夜紫乃、なんか動きあった?」
293_夜紫乃 「(押し殺したように)―――伊織」
294_伊織 「…な、なに? どうしたの怖い顔して」
295_夜紫乃 「(やや早く)瀬比呂と彩登を連れて、山を降りて、早く誰かと合流して」
296_伊織 「…は? 何言ってんの?」
297_夜紫乃 「僕が、自分主流の戦い方、得意じゃない事知ってるだろ。だから、行って」
298_伊織 「夜紫乃!? だから、アタシたち一緒に―――」
299_夜紫乃 「良いから、瀬比呂と彩登には何とでも言って、早く山を下りろ!」
300_瀬比呂 「い、伊織! 夜紫乃ぉ!!」
301_伊織 「瀬比呂、どうしたの!?」
302_瀬比呂 「あ…彩登が…彩登がいないんだ! 僕、探したんだけど…!」
303_夜紫乃 「…くそ!! こんな時に―――!!」
304_伊織 「(大勢の武士を見て竦む)!! ………こ、これって…ど、どうして…!?」
305_夜紫乃 「どうなってるんだ…どうなってるんだ!? 千波流が高見を間違うわけない!
それなのに…どうして、こんな!!」
306_武士:ガヤ ※(大勢の武士たちの鬨の声など掛け声の波:5秒以上)
【続く】