●鬼神楽●
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【〜神立風の章・第ニ話{2}〜】 フォルダ名【kami02-2_役名】
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キャラ :番号
「セリフ」
(里の奥に、小さく盛り上がった丘があり、そこで一人膝を抱え涙ぐんでいる碧がいた)
:01 「(半泣きです)何よ…何よぅ…」
浅葱 :02 「良い景色ですね」
:03 「(いきなり話しかけられてびっくりする)!! あ、あさぎ(急いで涙をぬぐう)」
浅葱 :04 「碧、隣、良いですか?」
:05 「…………」
浅葱 :06 「(隣に腰を下ろす)―――さすがに、真木は良く分かっていますよね」
:07 「!! な…何よ、何よ! どうせアタシは何にも分からないよ!
それなら真木の所にいれば良いでしょ!」
浅葱 :08 「ああ見えて、本当は無意味な『仲間殺し』をしたくない。
卓麻が本心ではそう思っているって事、真木以外には、誰も知りえなかったでしょうね」
:09 「…え?」
浅葱 :10 「真木が『何でも分かっている』のは、卓麻の事なんですよ」
:11 「で、でも、だって…」
浅葱 :12 「私が巴を庇う形に見えたかもしれませんが、本当は、真木が先に、
気配を飛ばしていたんですよ。さすがの卓麻も、真木の気持ちが分かったんでしょうね。あえて、私の方に矛先を向けた。(苦笑)…私にしてみれば、とんだ災難です」
:13 「そ、う、…そうだったんだ…(急に力が抜ける)」
浅葱 :14 「ええ。そうなんですよ」
:15 「(ちょっと笑って)そっか。そうだったんだ」
浅葱 :16 「(微笑んで)そうなんです―――安心しましたか?」
:17 「うん! ―――う、や、べべっ、別にっっ!」
浅葱 :18 「(笑う)」
(左京と卓麻が仕合う前の回想シーン・エコー〜エコー)
左京 :19 「(血を吐く)―――(溜息)」
卓麻 :20 「…病んでンのか」
左京 :21 「!(いきなりの出現に、らしくなく驚く)―――卓麻…」
卓麻 :22 「七日以上も前からだな。肺か? 気管か? それとも胃の腑か?」
左京 :23 「―――関係ない」
卓麻 :24 「咳はねえな…と言う事は、やっぱり胃か」
左京 :25 「……」
卓麻 :26 「かなりつらそうじゃねえか。
意地を張らずに、しばらく前線から下がったらどうだ? 左京」
左京 :27 「言われなくても、ニ、三日は戦には参加するつもりは無い」
卓麻 :28 「(軽く目を見張る)―――ハ、やけに素直だな。らしくない」
左京 :29 「勘違いするな―――次の戦は、わざわざ俺が出る必要がないと判断したからだ…」
卓麻 :30 「じきにそんな事を言えなくなるぜ」
左京 :31 「何? どういう意味だ… ―――!(よろける)」
卓麻 :32 「オイ―――!(思わず手を差し出し、払われる)…」
左京 :33 「…余計な事はするな。これ以上、俺に触るなよ卓麻…死にたくなかったらな」
卓麻 :34 「(鼻で笑う)そっちこそ勘違いするなよ。俺はお前が生きようが死のうがどうでも良い。
だが、今はまだダメだ。近衛はまだ濁してるが…近いうち、必ずデカイ戦にぶち当たる。
こんな時に戦力を減らすわけにはいかねえだろ。
それこそ、意地を張ってでも生きててもらわねえと、こっちに負担がかかりすぎる」
左京 :35 「勝手な事を」
卓麻 :36 「勝手はどっちだ。(袋を投げる)薬だ。内腑に効くらしいぞ。嫌でも飲んでおけよ」
左京 :37 「……俺の事は構うな―――この事も、絶対に言うな。
お前が誰かに話せば―――俺はお前とソイツを殺す」
卓麻 :38 「良く言うぜ―――先に死ぬのはどっちだろうな。
(近づいてくる気配に気づく)………すぐに邪魔が入るぞ」
左京 :39 「(溜息)…気づいてる」
卓麻 :40 「どうする? このまま、俺とお前が話していた内容を全部あいつらに知られるか、
それとも、俺に合わせて気を逸らし、お前の…血の臭いを隠すか」
左京 :41 「(更に溜息)…本当なら、どちらも気が進まんが…今は病の事は知られたくは無い。
余計な事で騒がれたり気を揉まれたりするのは、うっとおしいしな。
…しかし、おかしな事につき合わせる事になったな…」
卓麻 :42 「全くだ。…だが、今は知らせるつもりはないんだろ? それなら嫌でも合わせろ」
左京 :43 「……病の気を隠すには、確かに殺気が一番だが…、芝居か…面倒だ」
卓麻 :44 「ぼやくな。それは俺の言う事だぜ」
左京 :45 「お前には悪いが、しばらく付き合ってもらう事になるか…」
卓麻 :46 「(軽く笑って)お前とは久々の仕合だ。せいぜい楽しんでやるよ」
左京 :47 「(軽く咳払いをしてから)―――ほう…俺が、お前に、引けを取ると?」
卓麻 :48 「ハ、強く出るじゃねえか。左京…お前―――本気で俺に勝てると思ってンのか?」
左京 :49 「やってみなければ分からん」
卓麻 :50 「言うじゃねえか…。完全に俺の口を塞ぎたかったら、今殺しておけよ。後悔するぞ」
左京 :51 「―――(武器を構える)」
:52 「―――左京! 卓麻! ―――またやってるのか、お前たちは―――」
卓麻 :53 「(T)―――アイツは―――もう長くないか―――」
(所変わって、会合の間。浅葱が、一枚の書簡を持って入ってきた所、騒ぎに)
:54 「―――え? 主の屋敷に侵入者?」
春日 :55 「面倒くさいなあ…そんなもの、自衛で何とかして欲しいよね」
浅葱 :56 「それが、少数ではあるんですが、相当の手練れらしいんです」
茶々 :57 「何者なの?」
浅葱 :58 「今はまだ。『鬼火』という名だけ」
:59 「―――鬼火だと? …聞いたことがないような、あるような…」
八重 :60 「何なに? そいつら強いの?」
白銀 :61 「面白そうだね…是非とも手合わせしてみたいな」
春日 :62 「次の標的は…決まったな」
浅葱 :63 「書簡によれば―――私たちと同じく、一人の頭領を中心とした戦闘集団だとか」
八重 :64 「へえ…八重たち以外にもそういう人たちがいるんだ」
白銀 :65 「それなら話は早い。そういう連中は頭をやれば早い」
:66 「…そうかな? もし本当に、俺たちと同じような一族だったとしたら―――
俺たちを見ろ。指揮系統は確かにあるが、個人能力は優れてる。
頭領一人を失ったくらいでは、実際にはびくともしない」
白銀 :67 「…そりゃ、統計的にはね。けど、精神的に『くる』のは絶対いるからねえ」
:68 「まあ、それは言えるな」
茶々 :69 「力云々ではなく…頭領という存在そのものが要になっている、と言う事…?」
浅葱 :70 「一概に全員がそうだとは言えませんが、可能性としては―――
しかし、頭を叩くだけ、というのはかえって危険…という気もします」
春日 :71 「それって。あっちにも言えるって事?」
浅葱 :72 「…どう思います」
白銀 :73 「そうだね。そういう意味では近いかもね…彼らとは。
確かに…一人くらいどうって事ないか。完全に…叩かないと駄目だな」
:74 「具体的にどうするか、だな」
白銀 :75 「面白そうだし―――まずは僕が見てくるよ。直接ね」
春日 :76 「白銀、近衛に黙って勝手な真似するのはマズイよ!
この前言われたばかりじゃないか!」
白銀 :77 「知らないね。―――(軽く笑って)楽しくなってきたな」
(その後、近衛に事の次第を報告する円。あたりに人の気配はない)
:78 「―――白銀が、斥候に向かいました」
近衛 :79 「(ちょっと笑って)やはりアイツが動いたか。で、どうだ」
:80 「はい。睨みどおりかと」
近衛 :81 「…では、動くのも近いか―――」
:82 「その答えは、白銀が持ってくると思います」
近衛 :83 「その答えが、『あの一族』ならば―――我らの起つ日も近い…か」
(主の屋敷の近くにて。白銀、こっそりと木の上で気配を探っています)
白銀 :84 「(M)いる―――。女が一人か。余裕だな。(T)…試してみるか」
(SE:白銀、いきなり小刀を投げつける)
各務 :85 「!!(受け止める)」
白銀 :86 「ッ!(間髪いれずに切り込む)」
各務 :87 「くうっ(受けながら、指弾装置)」
白銀 :88 「(もちろん避けて)(M・嬉しそうに)―――コイツ―――結構出来る。
あの変な仕掛けは、やっかいそうだけど―――でも、僕の敵じゃあ無いな」
各務 :89 「―――ッ」
白銀 :90 「…アンタ、鬼火?」
各務 :91 「……そうだ」
白銀 :92 「やるね」
各務 :93 「そちらこそ」
白銀 :94 「…おっと、救援か」
千波流 :95 「(武器を構えて)そういうことだ」
(しばし睨み合い)
白銀 :96 「(ククッと笑って)…甘く見すぎてたかな。
鬼火と呼ばれる者は、護りが得手と聞いた。出直すよ」
各務 :97 「―――名は?」
白銀 :98 「(軽く微笑って)何れ死に逝く者に、知らせる名前なんか無いよ(去る)」
千波流 :99 「逃がすか!!」
各務 :100 「駄目だ―――完全に消えた。追えぬな」
千波流 :101 「何者なんだ―――」
(会合の館にて。戻ってきた白銀が、報告する)
:102 「―――やはり鬼火とかいう連中だったか」
白銀 :103 「何人かで組んでるみたいだったな」
卓麻 :104 「ハン、それで、お前は逃げ出してきたってわけか」
白銀 :105 「(むっとして)逃げたわけじゃない。退くのも戦法のうちだろ」
卓麻 :106 「つまらねえ言い訳するなよ、真実だろ」
白銀 :107 「言い訳なんかしてないだろ!」
:108 「よさないか二人とも!!」
白銀 :109 「卓麻! どこ行くんだよ、お前こそ逃げる気!?」
卓麻 :110 「(ゆっくり振り向いて)何を言ってる。
俺が何故、わざわざ、お前なんかの相手してやらなきゃならないンだ?」
白銀 :111 「―――!!」
(卓麻、会合の間から出て行く)
:112 「卓麻! 今時期は一族同士での争いを控えろ!
(溜息)……やれやれ、聞こえてないか。
白銀もだ。あまり挑発するんじゃない。今は、良い時期じゃないんだ」
白銀 :113 「何それ、そんなもの関係ないね! あー、それにしても頭にくる!!」
(白銀、怒り心頭状態で、会合の間から飛び出す)
:114 「こら、白銀!! これから会合だぞ! 
(溜息)……まったくしょうがないな、本当に…」
春日 :115 「…しょーがないよ、白銀はさ、卓麻と左京との仕合がよっぽど羨ましかったんだよな。
本当は自分が卓麻と仕合いたいんだからさ。
けど卓麻は、ああやって全然、普段から相手すらしないじゃん?」
:116 「バカみたい。子どもじみてるよ」
春日 :117 「そう言ってやるなよ。ああ見えてさ、白銀は卓麻の強さに憧れてんだよ、きっと!
だから、つい、ああやって突っかかっちゃうんだよね」
近衛 :118 「(入ってきて)なんだ、やはり卓麻も白銀も…左京もいないのか」
:119 「(苦笑)いつもの事ですがね」
:120 「(楽しげ)全くだな。…ところで、どうだったんだ、結局」
浅葱 :121 「白銀によると…『鬼火』と名乗る連中で、間違い無さそうですね。
それも、何人か組んで屋敷に張り付いているようです」
近衛 :122 「鬼火? …どこかで聞いたな」
:123 「そうなんです、確かにどこかで―――待てよ…? …鬼火…鬼火一族…
そうか、思い出した、『主・斉彬』についている一族か!
確か彼らが、『鬼火一族』と名乗る者だったはずだ。
我らと同じように、『主』を掲げ、頭領を中心とした戦闘集団―――」
:124 「主・斉彬に?」
八重 :125 「なりあきら? だれそれ?」
近衛 :126 「『主』の一人だ。『表』で絶大な勢力を誇っている」
:127 「そう…。あの他人を頼る事でしか身を守れない、
どうしようもなく弱い殿様にも、ずいぶん心強い味方がいるのね」
近衛 :128 「(頷く)そういうことになるな」
:129 「『護りが得手』とされる、『鬼火』と呼ばれる者…
それが、あの一族と同一だったとはな…。
何故、ただの侵入者の存在ごときで、こうも世情が乱れ、
更に我ら東風一族が総出で起たされたのか…、これで、やっとつながった。
彼らが主の屋敷に攻め入ったという事は―――彼らは、反乱を起こしたという事だ」
浅葱 :130 「…そうなると、書簡にあった『屋敷を守るべし』、この指示は、
要するに『鬼火一族』の反逆行為から屋敷を守れ、との指示だった、という事ですよね。
ならば、本格的に彼らを排斥するべきだ。
遅かれ早かれ、鬼火殲滅の指示は出るのでしょう?」
:131 「そう簡単にいくの? あの白銀が、一人も殺せずに戻ってきたんでしょ?」
真木 :132 「―――けれど彼らをつぶせば、わたくしたち東風が、
『表』に出て行けるってわけですわよね」
茶々 :133 「…そういう事に…なるのかしら」
八重 :134 「じゃあ、それこそ腕の振るい甲斐があるってものじゃん!
ねえ近衛! 今こそ、東風が『表』に起つときなんじゃない!?」
:135 「時期が来た、と言う事?」
春日 :136 「『主』ねえ。今までは、うっとおしい存在だと思ってたけど…
そのおかげで『鬼火』なんていう 強そうなヤツらに出会えたんなら、
感謝しなきゃかな。そういや、うちの『主』はご健在でいらっしゃるわけ?」
:137 「厭味な言い方だな。当たり前だろう」
春日 :138 「…そういや、なんて名前だっけ」
近衛 :139 「(楽しそうに)薄情なヤツだな」
春日 :140 「だってさ。顔も見たことないヤツの名前なんか、覚えたってしょうがないし」
:141 「(諌めるように)春日」
春日 :142 「冗談だよ。『隆利(たかとし)さま』でしょ。
近衛を呼び出しては、生活に必要な衣類やら食材やら武器を渡して帰す。
この里も用意しといてくれたらしいし、ま、確かにありがたい存在ではあるけどね」
:143 「不敬だぞ!」
八重 :144 「良く言うよ〜。円だって、実際には尊敬のその字もないくせに。ねえ、近衛!」
近衛 :145 「(楽しそうに)それについては…私がどうこう言う事では無いだろう。そう思わんか?」
:146 「ずるーい!」
近衛 :147 「(笑って)そう言ってくれるな。私の立場も慮ってくれ」
:148 「―――で、どうする? アタシは、アンタの決定に任せるよ」
八重 :149 「聞かなくったって、答えは一つだよね」
近衛 :150 「時は満ちたり、か。―――よし!(力強く頷く)
―――いざ、我が一族が起つ時が来た! この時を逃す術はもはや無い!
歯向かう者は総て、叩き潰せ!!」

【〜神立風の章〜終わり・〜楽業の章〜に続く】