●鬼神楽●
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【〜鬼灯の章・第五話{1}〜】 フォルダ名【ho-zuki05-1_役名】
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キャラ :番号
「セリフ」
瀬比呂 :01 「(下から)千波流ー、どう?」
千波流 :02 「瀬比呂。なんだ、次の高見はお前の番か」
瀬比呂 :03 「(やや興奮気味)うん! 初めて任せてくれたんだ!
伊織が、瀬比呂ならやれるって言ってくれて」
千波流 :04 「(優しく)そうか。気をつけて登れよ」
瀬比呂 :05 「うん!」
(高台の頂上にて。向かいの山に松明が大量に灯されているのが見える)
千波流 :06 「―――見ろ」
瀬比呂 :07 「(息を呑む)…!! すごい、篝火だね…」
千波流 :08 「(ちょっと笑って)怖いか」
瀬比呂 :09 「怖くなんか…ッ、…、……ううん、やっぱり…怖いよ、すごく」
千波流 :10 「(頷いて)恥じる事はない、オレだって初陣の時には手足の震えが止まらなかった」
瀬比呂 :11 「千波流も?」
千波流 :12 「ああ、だから別に恥ずかしい事じゃないぞ」
瀬比呂 :13 「(ほっとして)そっかあ」
千波流 :14 「瀬比呂、あの松明の数に怯えることはない。(瀬比呂に合わせて腰を下げる)見ろ」
瀬比呂 :15 「うん」
千波流 :16 「ものすごい数の松明をたいているだろう」
瀬比呂 :17 「うん…」
千波流 :18 「だが決して目を逸らすな。火を恐れるな。炎の動きに誤魔化されるな。
―――見るんだ。目に見えるものじゃない、気配を見ろ。人間の息吹を感じろ。
本当にそこに生命があるかを…目で感じるんだ。お前なら出来る」
瀬比呂 :19 「(目の前に見えているものに吸い込まれるように)うん―――」
千波流 :20 「(そっと尋ねる)………どうだ」
瀬比呂 :21 「―――いない…ううん、いるんだけど…すごく、弱弱しい」
千波流 :22 「(明るく、パン!と手を叩く)上出来!」
瀬比呂 :23 「(嬉)!」
千波流 :24 「(すっくと立ち上がり)オレの見立てでも、実際にあそこにいる人間は
50かそこらだな。その程度なら、俺たちの敵じゃない」
瀬比呂 :25 「でも…じゃあなんで、あんなにたくさん火をたいてるの?」
千波流 :26 「あれはようするに、威嚇だ」
瀬比呂 :27 「いかく?」
千波流 :28 「そうだ。弱いものが、少しでも自分を強く見せようとすること。
おまえ、あの火の数を見たとき、恐ろしく感じただろう?」
瀬比呂 :29 「うん」
千波流 :30 「ヤツらは、それを狙ってる。オレたち敵に対して、
目で見える恐怖感を…先入観として植えつけようとしてるんだ」
瀬比呂 :31 「でも、それは千波流の目には効かないね」
千波流 :32 「(嬉しそうに笑って)ああそうだな。瀬比呂、お前にもな」
瀬比呂 :33 「うん!」
(高台の下に、瀬比呂を心配そうに見守る伊織と、様子を窺う夜紫乃の姿)
伊織 :34 「(恐る恐る)…どう?」
夜紫乃 :35 「(ぴっと指を立てる・笑顔で)良い感じ」
伊織 :36 「(溜息)良かったあ…」
夜紫乃 :37 「良かったね」
伊織 :38 「うん。瀬比呂なら出来るって言い切ったものの…実は、ちょっと心配だった」
夜紫乃 :39 「瀬比呂は良く見えてるよ。あれなら充分、高見として使える」
伊織 :40 「うん。…強くなったよね。瀬比呂、頑張ったもんなあ…」
夜紫乃 :41 「伊織が頑張って教えてたからね」
伊織 :42 「(じーっと夜紫乃を見る)………」
夜紫乃 :43 「(見られている事に気づく)? …なに?」
伊織 :44 「な、何でもないっ! いちおー、素直に『褒めてくれてありがとう』って言っとくわ」
夜紫乃 :45 「…素直に、ねえ…(苦笑)」
伊織 :46 「何よ!」
夜紫乃 :47 「いえいえ〜」
伊織 :48 「何かむかつくわね!(バシッ!)」
夜紫乃 :49 「痛ッ!!」
千波流 :50 「(上から)こら! 高見中だぞ、静かにしないか!!」
伊織
夜紫乃
:51_役名 ※「はーい…」
彩登 :52_01 「(M)―――朱音さまは、どこまでも彩登たちの朱音さまだった。
どこまでも、彩登たちの一族を率いる、お頭だった。
朱音さまが、どんな思いで、どんな気持ちで、彩登たちの前から姿を消したのか、
それを考えるだけで胸が張り裂けそうになる。
今、朱音さまの事を思うだけで、涙が溢れそうになる。

本当は、大声で泣き叫びたかった。
どうして、こんな事になってしまったのか。
どうして、朱音さまを一人で行かせてしまったのか。

各務や佐久弥を、大声で怒鳴ってしまいたかった。
どうしてそんな事を許してしまったのか。
比奈伎たちに八つ当たりしてしまいたかった」
彩登 :52_02 「…だけど。彩登は気づいてしまった。…ううん、きっと、ずっと知っていた。
きっと…何もかも分かっていて、知っていて、
それでも、ずっと何でもない振りをし続けていた各務と佐久弥。
彩登たちを傷つけると分かっていて、それでも嘘を突き通していた、比奈伎と寿々加。
真実を知る事を選んだ羽霧も、珠菜も。

みんなの方が、ずっとずっと泣いてしまいたいのだと。
ずっとずっと、涙を堪えているのだと―――」
彩登 :52_03 「だから、彩登も泣かないと決めた。
大好きなみんなが我慢しているのなら、彩登も一緒に我慢しなきゃいけない。
朱音さまが決めたことだから、彩登はそれを信じる。

…きっと大丈夫。だって、みんなが一緒だもん。
彩登は一人じゃないんだもん。だから、きっと…きっと、大丈夫。

また、元の通り、みんなで暮らせる日が戻ってくる。
彩登の中で、たったそれだけ。たったそれだけが、本当。―――絶対に―――」
彩登 :53 「(タイトルコール)『鬼神楽』〜鬼灯の章・第五話〜」
(少し巻き戻って、会合の間のシーンの続きです)
佐久弥 :54 「宣戦、布告…」
寿々加 :55 「良い案だろ!」
羽霧 :56 「あのな…」
千波流 :57 「(溜息)事の重大さを分かっていないな、お前は…」
寿々加 :58 「な、何だよ」
夜紫乃 :59 「そんな事をしたら、いきなりお頭の身が危うくなるって…思わない?」
寿々加 :60 「…あ!」
佐久弥 :61 「いや―――意外に良い案かもしれない」
寿々加 :62 「意外とは何だ、意外とは!」
伊織 :63 「良い案って、どこが?」
佐久弥 :64 「うん。宣戦布告というか―――」
(ここから追加シーン●追加シーン4● フォルダ名【5-1-02_役名】
(出陣の準備の準備)
瀬比呂 :64-01 「彩登、大丈夫?」
彩登 :64-02 「う、うん…大丈夫、だと思う…」
瀬比呂 :64-03 「彩登! 僕、一生懸命 彩登の事、守るからね!」
彩登 :64-04 「…うん、ありがと瀬比呂! 彩登、すっごくすっごく頼りにしてるから!」
瀬比呂 :64-05 「(嬉しそうに笑って)うん!」
彩登 :64-06 「でも、彩登だって頑張るよ! 彩登も、一生懸命瀬比呂を守るね!」
瀬比呂 :64-07 「ええっ!? 僕は守られなくっても大丈夫だもん」
彩登 :64-08 「ええ!? そんなの、瀬比呂ばっかりずるいよぉ!」
瀬比呂 :64-09 「そんな事ないー!」
羽霧 :64-10 「(年少組のやり取りを聴きつつ)…千波流、顔がにやけてるぞ」
千波流 :64-11 「む、そうか?」
珠菜 :64-12 「口元から締まりが消え失せていらっしゃいますわよ」
千波流 :64-13 「むむ」
各務 :64-14 「ふふ、千波流の気持ちも分からぬでは無いよ」
羽霧 :64-15 「各務」
各務 :64-16 「あの小さかった子らが、あのように互いを思いやれるまでに成長してくれて
…嬉しいのであろ?」
千波流 :64-17 「ああ。これぞまさしく、万感の思いとでも言おうか」
珠菜 :64-18 「あら。それでしたら、もちろんわたくしたちとて同じ思いですわよ」
羽霧 :64-19 「だよなあ。ついこの前までは、小刀だってロクに扱えなかったのによ」
亜夏刃 :64-20 「大きく目には見えなくとも、年少組は年少組なりに
確実に成長しているという事だな」
珠菜 :64-21 「ですわねえ」
瀬比呂 :64-22 「あ、各務、各務! これ見て」
各務 :64-23 「どうした?」
彩登 :64-24 「うん、自分たちで篭手もつけてみたんだけど…これであってるかなあ?」
各務 :64-25 「どれ…うん、良く出来ているね。
ああ、もう少しここをきつくしておくと安定するよ」
彩登 :64-26 「え、どこ?」
各務 :64-27 「ほら、ここの…ちょうど良い、睦月に教わると良い。睦月、頼めるかえ?」
睦月 :64-28 「はい! 任せてください」
瀬比呂 :64-29 「睦月、僕にも教えてね」
睦月 :64-30 「はい。じゃあ順番にやって見せますから、良く見ていてくださいね」
瀬比呂 :64-31 「うん!」
彩登 :64-32 「あ、じゃあねえ睦月、この胴巻きのつけ方も見てくれる?」
瀬比呂 :64-33 「あ、それ僕も!」
睦月 :64-34 「ふふ、良いですよ。それじゃあ、最初からしっかりやってみましょうか!」
彩登 :64-35 「うん、お願い!」
瀬比呂 :64-36 「お願いしまーす!」
睦月 :64-37 「ふふふ、二人とも、良い返事ですね!」
瀬比呂 :64-38 「えへへ〜」
彩登 :64-39 「褒められちゃったね」
各務 :64-40 「(少し笑って)さて、それじゃあ我もあちらで仕度をしてくるとしよう」
彩登 :64-41 「うん、各務、またあとでね!」
各務 :64-42 「ああ、二人とも睦月にしっかりと教わって、抜かりなく準備するのだよ?」
瀬比呂
彩登
:64-43
_役名
「はーい!」
各務 :64-44 「ふふ、元気の良い事だね」
羽霧 :64-45 「これからどんな戦が待ってるかわからねえって言うのにな」
珠菜 :64-46 「けれど、年少組さんがああして元気でいて下さるとこちらも和みますわよ」
千波流 :64-47 「そうだな。ほっとすると言うか…先だっての緊迫した空気が嘘のようだ」
羽霧 :64-48 「俺もそう思うぜ。…けど、嘘にはならねえんだよな」
珠菜 :64-49 「はい。これからわたくしたちのやろうとしている事は、
紛れもなく事実なのですわ」
亜夏刃 :64-50 「それも、かなり厳しい現実だ」
千波流 :64-51 「ああ。そうだな。
だが俺たちは、その厳しさを乗り越えるだけの力は持っているさ」
珠菜 :64-52 「ええ。そうですわよね」
羽霧 :64-53 「今までだって、多くの戦を勝ち抜いてきたんだからな」
千波流 :64-54 「俺たちはこれまで通り、全力を尽くすだけだ」
珠菜
羽霧
:64-55
_役名
「(頷く)」
各務 :64-56 「それじゃあ、我は夜紫乃と伊織の様子も見てくるとするえ」
亜夏刃 :64-57 「あちらは寿々加が手伝っているはずだが…」
千波流 :64-58 「ああ、だから大丈夫だろう。あ、しかし武器の調整が必要か」
亜夏刃 :64-59 「では、自分が行ってこよう。睦月は年少組の仕度を手伝っているからな」
各務 :64-60 「そうしておくれ。では千波流、亜夏刃、珠菜、羽霧。
お前たちも、抜かりなく仕度をするように」
羽霧 :64-61 「おう」
珠菜 :64-62 「こんなことを言っては不謹慎かもしれませんけれど…」
羽霧 :64-63 「腕が鳴るぜ、ってヤツだな」
珠菜 :64-64 「ええ」
千波流 :64-65 「よし、それじゃあ俺たちも最後の準備に入ろう。
亜夏刃、夜紫乃と伊織の方は頼むぞ」
亜夏刃 :64-66 「ああ、分かっている」
珠菜 :64-67 「そういえば…各務」
各務 :64-68 「何だえ?」
珠菜 :64-69 「アレは、大丈夫そうなんですの?」
羽霧 :64-70 「アレ? …ああ、あれか! そういやどうなんだ?」
千波流 :64-71 「アレって、…もしかしてアレの事か? 何だ、結局準備してたのか?」
亜夏刃 :64-72 「準備というほどの事でも無いんだが、材料をそろえてあるだけだ」
珠菜 :64-73 「まあ…亜夏刃まで関わっていたんですのね?」
亜夏刃 :64-74 「ああ。念のためという事で、佐久弥に頼まれていた」
千波流 :64-75 「しかしいつの間に…とっくに諦めたと思っていたぞ」
亜夏刃 :64-76 「準備とは言っても、まだそのものを作り上げてあるわけじゃないんだがな」
千波流 :64-77 「じゃあ、これから作るというわけか。
…それは、比奈伎は当然知らないんだろう?」
亜夏刃 :64-78 「ああ。
…本来ならば一番に了承を得なければならない立場にいるわけなんだが…」
羽霧 :64-79 「こんな時でも、例の持論を重視するかもしれないって事か?」
珠菜 :64-80 「大いに、ありえますわよね」
羽霧 :64-81 「…ありえるよなあ。全く、あの頑固者め」
千波流 :64-82 「それで、比奈伎に言わずに準備をして、
比奈伎に有無を言わせぬ状況で押し切るということか」
羽霧 :64-83 「ちょっと乱暴な方法かもしれねえけど、ま、その方が確実だろうな」
亜夏刃 :64-84 「一応、伊織が、責任を持って比奈伎を説得すると息巻いてはいるんだが」
珠菜 :64-85 「まあ、伊織が?」
亜夏刃 :64-86 「(頷いて)考え出したのは自分だから、使う事になれば、
それをきちんと納得させるのは自分の義務だと言っていた」
千波流 :64-87 「ははは、なるほど、伊織らしいな」
各務 :64-88 「だが念のために、比奈伎に言う時には、みなで援護をしてあげておくれよ?」
羽霧 :64-89 「(笑って)ああ、分かった」
珠菜 :64-90 「お任せを」
亜夏刃 :64-91 「だが、今はまだ年少組はもちろん、睦月にも言わずにいる事だ。
だからひとまずは他言無用で頼む」
千波流 :64-92 「承知した」
亜夏刃 :64-93 「では、行こう。
伊織と夜紫乃の武器調整が終わり次第、自分も最終準備に入る」
各務 :64-94 「ああ、そうしておくれ」
彩登 :64-95 「(少し遠くから)ねえねえ、千波流!」
千波流 :64-96 「うん? どうした!」
彩登 :64-97 「睦月に教わってやってみたんだけど、これでどうかなあ?」
千波流 :64-98 「お、なかなか良く出来てるじゃないか!」
瀬比呂 :64-99 「ねえねえ、僕はどう?」
千波流 :64-100 「お、瀬比呂。しっかり仕度出来たな!」
睦月 :64-101 「二人とも、覚えるのがとっても早いので、教える方は楽ですよ」
千波流 :64-102 「それはすごいな!」
羽霧 :64-103 「まずは形からって言うしな。うん、二人とも充分強そうに見えるぜ」
瀬比呂 :64-104 「ほんと!?」
珠菜 :64-105 「ええ、瀬比呂と彩登と一緒に立っていたら、迫力すら感じますわよ」
彩登 :64-106 「えへへ」
睦月 :64-107 「さ、それじゃあ二人とも、最終点検をして終わりですよ!」
瀬比呂
彩登
:64-108
_役名
「はーい!」
睦月 :64-109 「自分の支度が終わったら、次は
みんなの使う武器の準備を手伝ってあげて下さいね」
瀬比呂
彩登
:64-110
_役名
「うん!」
千波流 :64-111 「『うん』?」
瀬比呂 :64-112 「え?」
羽霧 :64-113 「さーてと、物を教わった時は」
珠菜 :64-114 「どうするのがよろしいんでしたっけね?」
彩登 :64-115 「あ!!」
瀬比呂
彩登
:64-116
_役名
「(背筋を伸ばして)はい、分かりました!」
千波流 :64-117 「よおし、良い返事だ!」
睦月 :64-118 「(くすくす)なんだか、急に偉くなった気分がします」
羽霧 :64-119 「(笑いながら)―――お、ちょうど向こうも終わったみたいだぜ」
睦月 :64-120 「それじゃあ、武器も最終調整に入りますね」
珠菜 :64-121 「ええ、お願いいたしますわね」
睦月 :64-122 「はい、任せてください!」
(ここまで追加シーン)
(というわけで、みんなで出陣の準備をしています)
寿々加 :65 「…何だかんだ言って、佐久弥も過激だよな、性格が。温厚な俺とは大違いだ」
夜紫乃 :66 「ぶつぶつ言ってないで、こっちも手伝ってよ!」
亜夏刃 :67 「しかし…思い切ったことを考えるな」
千波流 :68 「大胆不敵と言うべきか…無謀と言うべきか」
珠菜 :69 「あら…この手甲、少しゆるいですわよ?」
羽霧 :70 「そっち、もっときつく締めてくれ」
睦月 :71 「はい。篭手のほうはどうします? 中にも重ねますか?」
羽霧 :72 「だな。下手な一撃なら受け止められるだろ。
形はどうあれ、少しでも長く衝撃に耐えるようにしてくれ」
伊織 :73 「で? 例の物は間に合いそうなの?」
睦月 :74 「はい。各務にも手伝ってもらって、予定よりも一つ多く作れそうです」
夜紫乃 :75 「誰が使うの?」
伊織 :76 「アタシは、年少組に、って思ったけど、佐久弥にも反対されちゃったからさ、
一つは睦月、もう一つは各務が持つ予定でしょ。…で、残りの一つは?」
睦月 :77 「それは、形状を全く変えて、羽霧に。
飛礫ではなく、木杭を連射出来るようにしてあるんです。
ただ、どうしてもバネを大きくしたりしないといけなくて、重さがすごくて…」
伊織 :78 「それで羽霧かあ、なるほど」
羽霧 :79 「ああいう連射ものは、片手で扱えないと意味がない。
両手をふさがれたんじゃロクに動けないからな。確かに適役だ」
珠菜 :80 「具体的には、どこで使うんですの?」
羽霧 :81 「横槍だよ」
(回想シーン/総てエコー)
朱音 :82 「―――比奈伎。戦において最も重要なものは、何だと思う」
比奈伎 :83 「…主戦力だろう。それから、指揮系統だ」
朱音 :84 「(少し笑って)なるほど、お前らしいな」
比奈伎 :85 「違うのか」
朱音 :86 「ハハハ、それはそれで違わないさ」
比奈伎 :87 「あとは兵糧と持久力か」
朱音 :88 「そうだな、それも確かに重要だ」
比奈伎 :89 「(苦笑)まだ合格点じゃないんだな。降参だ」
朱音 :90 「(笑って)諦めるのが早すぎるぞ、比奈伎」
比奈伎 :91 「負けると分かっている戦はしない主義だからな」
朱音 :92 「(少し笑って)『退(しりぞ)きて追う可(べ)からざるは、
速(すみ)やかにして及ぶ可からざればなり』―――」
比奈伎 :93 「(笑って)何だ、それが正解か」
朱音 :94 「(笑って)そういう事だ。『敵わぬと分かったならば、
敵が追いつけぬよう、全速力で逃げろ』と、そう言う事だな」
比奈伎 :95 「逃げるが勝ち、か」
朱音 :96 「そうだ。…だが、逃げるためには抑えが必要となる」
比奈伎 :97 「抑え?」
朱音 :98 「(頷いて)総ての者が、敵から逃げおおせるだけの速さを持っているわけじゃない。
だから、『抑え』が必要だ。
敵が追って来れぬよう、抑えだけはそこに残らなければならない」
比奈伎 :99 「要するに、しんがりの務めだな。数を残すために、少数が犠牲になる、か」
朱音 :100 「…間違えるなよ、比奈伎。
上に立つ者は、下の者を護る義務があり、しんがりはその最たる物とも言える。
…だが、みなに旗印を失わせる事だけはしてはならない」
比奈伎 :101 「………」
朱音 :102 「頭領に何かあれば、副頭領がそれを継ぐ。
そうすれば、副頭領が、一族の旗印になる。…短慮は起こすなよ」
比奈伎 :103 「それはあくまで、頭領に何かあれば、だろう?」
朱音 :104 「まあ、な。だが、先は分からない物だ。万一私が―――」
比奈伎 :105 「その先は言うなよ朱音。いい加減怒るぞ」
朱音 :106 「……。……悪かった」
比奈伎 :107 「(憮然として)謝るなよ」
朱音 :108 「けれど比奈伎。お前は、一族にとって必要なんだ」
比奈伎 :109 「朱音以上に必要な人間はいない」
朱音 :110 「(思わず息を呑んで)お前は…全く、口が上手い。
嬉しい事を言ってくれるじゃないか」
比奈伎 :111 「本気だぞ。この鬼火一族の頭領は、朱音…お前だけだ」
朱音 :112 「比奈伎―――」
比奈伎 :113 「俺は、お前を守るためならどんな事でもする。絶対に、約束する」
朱音 :114 「…そうか」
比奈伎 :115 「(溜息)この手の話はもう終わりだ。これ以上続けてもキリが無いからな」
朱音 :116 「(両手を軽く上げて)わかった。お前の言う通りだな、やめよう。
…比奈、お前は変わらないな。あの時と、同じだ」
比奈伎 :117 「あの時?」
朱音 :118 「ああ、そうだ。私にとっては、あれが………いや、やっぱりやめておこう、秘密だ」
比奈伎 :119 「何だよ、途中でやめるなよ、気になるだろ」
朱音 :120 「(楽しげに)いいや、秘密だからな、絶対に言わない」
比奈伎 :121 「心が狭いぞ」
朱音 :122 「(笑う)ああ、そうだな、私は心の狭い人間だぞ、良く分かってるな」
比奈伎 :123 「まったく…」
朱音 :124 「私の後はお前にしか継がせない。それ以外には考えられない。
…それくらい、心の狭い人間なんだ」
比奈伎 :125 「…口が上手いのは、どっちだ」
朱音 :126 「(笑う)」
比奈伎 :127 「(M)―――思えば…あの時既に、朱音の心は決まっていたに違いない
―――だが、朱音が一人で決めてたように―――
俺にも、ずっと前から決めていた事がある―――
あの時の、約束を…必ず、守るのだと―――」
(また少しシーンは戻って…)
寿々加 :128 「―――で、具体的に、どういう計画にする?」
千波流 :129 「問題は、外を固めている徒歩(かち)の者たちよりも、屋敷の中だろう」
佐久弥 :130 「ちょっと待って。まずは、組み分けだ。それぞれ、別に動いてもらう事になると思う」
千波流 :131 「別に? ということは、もう片方は陽動か」
瀬比呂 :132 「ようどう?」
彩登 :133 「なあに、それ?」
瀬比呂 :134 「囮って事?」
各務 :135 「そういうことになるね」
比奈伎 :136 「―――分かった、それでいこう」
羽霧 :137 「マジかよ!? 俺は好きじゃねえな、そういうやり方は」
亜夏刃 :138 「危険ではないのか?」
佐久弥 :139 「もちろん危険だよ」
各務 :140 「…今までに、危険ではなかった戦など一度も無い。
命を懸けなかった戦など、ただの一度も無い。
…だが、…こんな事を言えば、不敬だと言われるかもしれぬが、
今までのどの戦よりも、勝ちたいと思う気持ちが強い。…と、我は思っておるよ」
千波流
寿々加
珠菜
亜夏刃
比奈伎
羽霧
佐久弥
伊織
夜紫乃
睦月
瀬比呂
彩登
:141_役名 ※「(頷く)」
伊織 :142 「それじゃ、本題に―――」
夜紫乃 :143 「問題は、誰が囮になるか、じゃない?」
伊織 :144 「囮って言い方やめようよ。陽動担当、でしょ」
佐久弥 :145 「陽動は…かなり厳しい役どころになると思う。
なるべく、たくさんの障害を引き受けて欲しいからね」
比奈伎 :146 「それは俺がなる」
寿々加 :147 「は?」
比奈伎 :148 「お頭を救い出すのに、副頭領の俺が先頭に立って、何かおかしいか?」
千波流 :149 「そういうことじゃなくてだな!」
寿々加 :150 「お頭のいない今、お前がこの一族の旗印なんだぞ!?
いきなり先陣切るヤツがあるか!」
比奈伎 :151 「この戦に必要なのは、『俺』と言う、目に見える旗印ではなく、
『お頭を助ける』という目に見えない旗印だろ。それで充分だ」
寿々加 :152 「けどなあ」
夜紫乃 :153 「僕らに任せておけば良いじゃん!」
伊織 :154 「そうだよ! それに、そんなの的確な戦法って言わない…無茶苦茶だよ…!
…そりゃ、誰かがやるしかないのはわかってるけど…!」
比奈伎 :155 「任せられないと言ってるわけじゃない。ただ、俺がやると、そう決めただけだ」
千波流 :156 「いい加減、意固地になるのはよせ!」
比奈伎 :157 「意地なんか張っていない」
千波流 :158 「お頭のいない今、仮にもお前は頭領の立場に居るんだぞ!?」
比奈伎 :159 「俺は朱音とは違う!!」
千波流 :160 「―――!」
彩登 :161 「比奈伎ぃ」
比奈伎 :162 「頭領になる気も無い。朱音は必ず助け出す。死なせたりしない。
…だから、俺が行く。一人でだ。朱音が帰ってこなくなったあの日から…
いや、その前から、こうなった時にはそうすると、当に…決めていたからな」
寿々加 :163 「一人でって…!」
比奈伎 :164 「俺一人では不安か?」
千波流 :165 「比奈伎!! …ふざけるなよ、そんなんで済むか!
お前一人がどうこうって問題じゃないだろうが!
一族で協力してやるべきだ! …そんな事、俺にだってわかる!」
比奈伎 :166 「……」
千波流 :167 「(ふうっと息を吐いて)―――お前は一人で何もかも抱えすぎだ」
比奈伎 :168 「千波流―――」
千波流 :169 「お前がお頭と違うことなんか、百も承知だ。
誰も、お前にお頭のようになって欲しいだなんて思っちゃいない。
だが…お前が今、仮でも頭領という立場に居るなら、なおさら―――
少しは、俺たちを…俺を頼れ。そのための一族、そのための仲間だろうが」
比奈伎 :170 「―――…なに?」
千波流 :171 「あのなあ…! 何回も何回も言わせるなよ、こんな事!
ちゃんと聞いとけってんだ」
比奈伎 :172 「……。(少し笑う)不器用だな」
千波流 :173 「(照れたように笑い返して)お互い様だ」
伊織 :174 「(わざとらしく咳払い)―――えーとぉ」
千波流
比奈伎
:175_役名 ※「!」
夜紫乃 :176 「もう良い?」
伊織 :177 「話がまとまった所で…いー加減、本題に入りたいんだけど?」
千波流
比奈伎
:178_役名 ※「あ……すまん」
※「あ……悪い」
寿々加 :179 「(息をつく)全く、人騒がせな…」
亜夏刃 :180 「お前が言うと激しく違和感があるな」
(一息。落ち着いたところで、改めて作戦会議です)
各務 :181 「陽動には、かなりの戦力を当てたい」
佐久弥 :182 「そうだね。どれだけ引き付けていられるか、が鍵になると思う」
寿々加 :183 「んー、簡単に言えば―――篭城してる相手方を無理矢理外へ引きずり出して、
火をかけずに、城を落とす…ってとこか?」
各務 :184 「かなり近いな」
比奈伎 :185 「―――よし。(立ち上がる)…今までと違って、明確な指揮がいない。
一人ひとりがこの計画を頭に叩き込め。瀬比呂、彩登。お前たちもだ」
瀬比呂 :186 「う、うん」
彩登 :187 「はい」
瀬比呂 :188 「頑張ろうね!」
彩登 :189 「うん!」
佐久弥 :190 「亜夏刃と珠菜には、切り込みを務めてもらう事になる」
亜夏刃 :191 「心得た」
珠菜 :192 「おまかせを。わたくし、難しい事は良くわかりませんけれど…
要するに、勝てばよろしいのでしょう?」
佐久弥 :193 「頼むよ」
珠菜 :194 「そうと決まれば、身支度をしてまいりますわね」
(珠菜、亜夏刃・出て行く)
羽霧 :195 「ちょっと待てよ、佐久弥。切り込みって、俺と珠菜じゃねえのかよ」
各務 :196 「羽霧には、睦月と共に、ほかに頼みたい事があるのだよ」

【第五話{1}終わり・{2}に続く】