●鬼神楽● ――――――――――――――――――――――――― 【〜鬼灯の章・第四話{1}〜】 フォルダ名【ho-zuki04-1_役名】 ――――――――――――――――――――――――― | ||
キャラ | :番号 | |
(里を見下ろせる位置に比奈伎が座っていると、近づいてくる気配が) | ||
比奈伎 | :01 | 「…佐久弥か」 |
佐久弥 | :02 | 「またむくれてる」 |
比奈伎 | :03 | 「…大きなお世話だ」 |
佐久弥 | :04 | 「お頭と何かあった?」 |
比奈伎 | :05 | 「どうしてそう思う」 |
佐久弥 | :06 | 「別に? なんとなくそう思っただけ」 |
比奈伎 | :07 | 「…お前は嫌なヤツだな」 |
佐久弥 | :08 | 「(くすりと笑って)良く言われるよ」 |
比奈伎 | :09 | 「……それだけじゃない」 |
佐久弥 | :10 | 「え?」 |
比奈伎 | :11 | 「お頭とだけじゃない。さっき…寿々加ともやり合ったんだ」 |
佐久弥 | :12 | 「そう…」 |
(静かな風が行過ぎたり、鳥の鳴き声が聞こえる穏やかな午後) | ||
比奈伎 | :13 | 「―――喪いたくないと思うことは…いけないと分かっている。 それは…最終的には掟に背くことだとも」 |
佐久弥 | :14 | 「でも…その優しさは、今この時代に絶対に必要な事なんだと…私は思うよ」 |
比奈伎 | :15 | 「……寿々加には、優しすぎると…注意したばかりなんだがな」 |
佐久弥 | :16 | 「二人は似ているから…余計に気になってしまうんだよ」 |
比奈伎 | :17 | 「……」 |
佐久弥 | :18 | 「…あれ、不満そうだ」 |
比奈伎 | :19 | 「うるさい。……でも、真実だ。俺はあいつの気持ちがわかる… だから、何をしたいのかもすぐに分かってしまう」 |
佐久弥 | :20 | 「それはきっと…逆の事も言えるんじゃないかな」 |
比奈伎 | :21 | 「え?」 |
佐久弥 | :22 | 「比奈伎は比奈伎なりの思いで、あの二人を心配して育てようとしているんだって事、 寿々加は本当は分かってるよ。 ただ、それを素直に言えないから…ぶつかってしまうだけだ」 |
比奈伎 | :23 | 「………」 |
佐久弥 | :24 | 「なに?」 |
比奈伎 | :25 | 「お前、実は俺や寿々加より年上なんじゃないのか?」 |
佐久弥 | :26 | 「(楽しそうに笑って)そうかもね? (冗談も言える性格です)」 |
各務 | :27-01 | 「(M)ふと気づいた時から、一族はあった。ふと気づいた時から、一族の中にあった。 これほどまでにごく自然に存在するべき物を―――疑ったことがあったろうか。 『疑う』。そう考えるだけでひどく頭が痛む。 そんな時にはある人を見つめた。 いつも、自分のすぐ前を歩く人。すぐ隣で、戦う人。すぐそばで、生きる人。 目の前に、確かにある背中。 静かに振り向けば、少しばかり目線の高い、優しい眼差しを見せる。 包み込むように温かく、時には突き刺すように鋭く、その気配を変える人。 唯一、我が上に立つ者として認めた人」 |
各務 | :27-02 | 「このところ、ずっとずっと同じ夢ばかりを見ている。 それは、我の記憶。我の、頭の中に仕舞われている、古い古い記憶。 一番古い記憶は…我の目の前に立つ、すらりと背の高い一人の少女。 丈の短い着物に身を包み、まるで男(おのこ)のような仕草で、 馬を乗りこなし、剣(つるぎ)を振るい、血の雨を降らせる人。 だから、最初は、おのこなのだと思いこんでいた。 目の前に立つ、すらりと背の高い影―――我は、その手を取って…並んで驚いた。 見上げるほどに高い上背の上にあったのは、紛れもなく… 美しい少女の物であったからだ」 |
各務 | :27-03 | 「涼やかな目元に、微かな笑いを浮かべて少女は言う。 剣(つるぎ)を振るうとはとても思えない、細く柔らかい掌で、我の手を包み込みながら。 『おかえり』―――おかえり、と。 …ああ、そうか。そうだ。思い出した。ここは、我の居るべき場所。 我は、還ってきたのだから―――」 |
各務 | :28 | 「(タイトルコール)『鬼神楽』 〜鬼灯の章・第四話〜」 |
伊織 | :29 | 「―――え? その夢、アタシも見たことあるよ」 |
各務 | :30 | 「…え?」 |
伊織 | :31 | 「『おかえり』、って朱音さまが迎えてくれるってヤツ。 アタシの場合は、里の中じゃなくて、どっか別の…良くは思い出せないけどさ」 |
各務 | :32 | 「そうか…。偶然なのか、それとも…」 |
伊織 | :33 | 「(楽しそうに)そういえば、羽霧と珠菜も、似たような事言ってたよ。 (笑いを堪えられず噴出しながら) その時、どっちが朱音さまに先に手を取ってもらうかで、大喧嘩した夢だって!」 |
各務 | :34 | 「(笑う)それはそれは…夢の中までも争うことは無いだろうに」 |
伊織 | :35 | 「その辺が、いかにもあの二人だよね」 |
各務 | :36 | 「そうかもしれぬな」 |
伊織 | :37 | 「…そういえば…」 |
各務 | :38 | 「どうした?」 |
伊織 | :39 | 「あ、ううん! 何でもないよ。 (M)夢と言えば…あの、男の人の声が聞こえる夢―――最近、見ないなあ…」 |
各務 | :40 | 「伊織? 何ぞ、気になる事でもあるのかえ?」 |
伊織 | :41 | 「あ、ごめん! えっと、じゃあこの図面は睦月に預けてくるね」 |
各務 | :42 | 「役に立てば良いがな」 |
伊織 | :43 | 「各務、ありがと!」 |
各務 | :44 | 「お安い御用だよ(伊織を見送り)……夢、か―――」 |
(ここから追加シーン) | ||
朱音 | :44-01 | 「(E)…彩登。彩登、最後まで良くやったな、偉いぞ」 |
彩登 | :44-02 | 「朱音さま、彩登、上手くやれた?」 |
朱音 | :44-03 | 「(笑って)ああ。これが初仕事なのにな、満点をやっても良いと思うぞ。 彩登はすごいな。よし、ご褒美をやろう―――(F.O)」 |
彩登 | :44-04 | 「―――って言って、朱音さまがくれたんだ!」 |
瀬比呂 | :44-05 | 「へええ…そうだったんだ、知らなかった。 それに彩登、僕より先にお仕事をこなしてたんだね、すごいなあ…!」 |
彩登 | :44-06 | 「えへへ、すごいでしょお!」 |
瀬比呂 | :44-07 | 「彩登だけ褒められてずるいよぉ、僕もこれ欲しい! 僕も、朱音さまからご褒美もらいたいよー!」 |
彩登 | :44-08 | 「ええっ!? 駄目ぇ、これは彩登の宝物なんだから!」 |
伊織 | :44-09 | 「まあまあ…! 瀬比呂ももうだいぶ仕事もこなせるようになったんだし、 朱音さまもちゃんと分かってくれてるよ」 |
瀬比呂 | :44-10 | 「ええ〜? そうかなあ? ほんとに、そう思う?」 |
睦月 | :44-11 | 「(くすくす)思います思います」 |
夜紫乃 | :44-12 | 「…それにしても…この組紐を、朱音さまが自分で…? うーん…何だかちょっと意外だなあ」 |
千波流 | :44-13 | 「? 何故そう思うんだ? 夜紫乃」 |
夜紫乃 | :44-14 | 「だって、さー。あの朱音さまが 蝋燭の火の元で、こんなちまちましたものを 一生懸命編みこんでる姿なんて、…ああだめだ、想像出来ないよ!」 |
千波流 | :44-15 | 「(思わず笑って)それはそうかもな」 |
伊織 | :44-16 | 「(笑いながら)うんうん、それは言えるよねえ!」 |
千波流 | :44-17 | 「ああ見えて、というか…意外?と何でも大雑把だからなあ、お頭は…」 |
睦月 | :44-18 | 「(楽しそうに)ですね。性格的にも、あまり 細かい物を作ったりとか、そういう事に向かないんですよね」 |
亜夏刃 | :44-19 | 「(少し苦笑気味)ああ。だから、自らの武器の調整さえも、自分たちに任せきりだしな」 |
珠菜 | :44-20 | 「そりゃあ修理となると、わたくしたちもさすがにお二人にお願いしますけれど…」 |
羽霧 | :44-21 | 「俺らは、自分の武器の手入れくらいなら、自分たちでするよなあ」 |
瀬比呂 | :44-22 | 「それくらいなら、僕も出来るよ?」 |
彩登 | :44-23 | 「彩登もーっ! こないだ、修練に使った小刀全部、磨いたの彩登だもん」 |
睦月 | :44-24 | 「ああ! そうでしたよね、あれはすっごく助かりました」 |
瀬比呂 | :44-25 | 「僕が、手伝うよって言ったんだけど、結局全部一人でやったんだよね!」 |
彩登 | :44-26 | 「うん。『武器を自分で扱えば、それだけ上達も早くなる』って、比奈伎も言ってたから」 |
千波流 | :44-27 | 「そうか、それを実践してるとは、偉いじゃないか彩登」 |
彩登 | :44-28 | 「えへへ〜」 |
瀬比呂 | :44-29 | 「僕も、この前千波流からもらった弓、手入れ欠かさずにしてるよ!」 |
羽霧 | :44-30 | 「へえ、瀬比呂はもう弓の手入れなんて出来るのか」 |
珠菜 | :44-31 | 「あら羽霧、瀬比呂の弓の遠打ちの腕前は、なかなかのものですのよ? これは将来有望ですわよね」 |
瀬比呂 | :44-32 | 「えへへ、ありがとう珠菜!」 |
羽霧 | :44-33 | 「なるほど? 自分の間合いが狭いお前には、羨ましい存在なわけだ」 |
珠菜 | :44-34 | 「ああら。羽霧より背丈がある分、わたくしの方が間合いは広いのですわよ? はぁ…そんな簡単な事さえお認めになれないなんて、可哀想ですわ、羽霧」 |
羽霧 | :44-35 | 「いいや、指弾の弱いお前よりは、俺の方が広いはずだ」 |
珠菜 | :44-36 | 「では、腕と武器を含めての寸法を、一度測ってみるのがよろしいですわよ。 そうすれば自ずと現実という物が見えてきますわ」 |
羽霧 | :44-37 | 「そうだなあ。じゃあお前は自分の腕の胆力を自覚する事をおススメするぜ。 お前こそ現実が見れるだろうよ(以下延々)」 |
亜夏刃 | :44-38 | 「(聞いてない)しかし、自らの武器の手入れくらいは日常茶飯事だ、 自分たちにとっては、だが。…という事は、お頭以外は、という事でもあるか」 |
夜紫乃 | :44-39 | 「…………亜夏刃って…結構ツワモノだよね。 どうしてあの弾丸の中に、するりと入り込めるんだろう…」 |
伊織 | :44-40 | 「……だよ、ね。アタシですら怖いのに」 |
千波流 | :44-41 | 「(頷いて)…俺には永遠に真似出来そうもない…。…というよりも…亜夏刃の場合、 不可抗力で入り込んでしまってる、という感じでもあるがなあ…」 |
睦月 | :44-42 | 「…かも、しれませんね…」 |
亜夏刃 | :44-43 | 「(それも聞いてません)………そうだ。そういえば(ぽむ」 |
羽霧 | :44-44 | 「うん?」 |
亜夏刃 | :44-45 | 「…これは寿々加から聞いた話だから、本当かどうかは分からないが…」 |
珠菜 | :44-46 | 「何ですの、亜夏刃?」 |
亜夏刃 | :44-47 | 「何でも…お頭が以前、小刀を自分で手入れしようとして」 |
彩登 | :44-48 | 「手入れをしようとして?」 |
亜夏刃 | :44-49 | 「……手を切ったとか」 |
珠菜 羽霧 夜紫乃 伊織 |
:44-50 _役名 |
※「(思い切り噴出す)」 |
瀬比呂 | :44-51 | 「ええっ!? あ、朱音さまが!? それホント!?」 |
千波流 | :44-52 | 「(ちょっと遠い目)ああ…その話、俺も聞いたぞ」 |
各務 | :44-53 | 「…ふふ、ずいぶん盛り上がっているようだね」 |
千波流 | :44-54 | 「お、各務!」 |
瀬比呂 | :44-55 | 「ねえ、ねえねえ各務っ、朱音さまが…」 |
彩登 | :44-56 | 「小刀手入れしてて、手を切っちゃったって…」 |
瀬比呂 彩登 |
:44-57 _役名 |
※「ホント!?」 |
各務 | :44-58 | 「(笑いながら)ずいぶん懐かしい話だが… ああ…そう言えば確かに、そんな事もあったねぇ」 |
彩登 | :44-59 | 「(びっくり)各務、それって、ホントにホントの事なの!?」 |
各務 | :44-60 | 「(頷く)そうとも。我はこの目で、それを見たのだからね」 |
彩登 | :44-61 | 「…朱音さまって…不器用だったんだね…。彩登、全然知らなかった…」 |
瀬比呂 | :44-62 | 「…うん…。…僕も、全然気がつかなかったよ…」 |
伊織 | :44-63 | 「(半笑いのまま)まさか…朱音さまったら、あんな事言って… 実はその組紐、比奈伎に作らせた、とか?」 |
千波流 | :44-64 | 「比奈伎に!? 比奈伎が、組紐を、ちまちま…ちまちま…」 |
羽霧 | :44-65 | 「はははっ、けど、その方が何となく想像出来るような気がするぜ?」 |
亜夏刃 | :44-66 | 「うん? それはどうだろうな。比奈伎も、あまり器用な方ではないと思ったが」 |
睦月 | :44-67 | 「え、そうなんですか?」 |
朱音 | :44-68 | 「―――みんな、ずいぶん楽しそうだな」 |
千波流 伊織 夜紫乃 睦月 瀬比呂 彩登 |
:44-69 _役名 |
※「おおおお頭っ!?」 ※「あああ朱音さま!?」 |
朱音 | :44-70 | 「(悪戯っぽく)何だ? 何をそんなに焦ってるんだ、みんな」 |
千波流 伊織 夜紫乃 睦月 瀬比呂 彩登 |
:44-71 _役名 |
※「べべべ別に…!」 |
朱音 | :44-72 | 「(くすくす)そうか? ―――ところで、瀬比呂、彩登」 |
瀬比呂 彩登 |
:44-73 _役名 |
※「は、はい!」 |
朱音 | :44-74 | 「(急に真面目くさって)人間、誰しも得て不得手があるものだぞ。 それに、何でも一人で出来てしまっては、面白くないだろう?」 |
瀬比呂 | :44-75 | 「…そうなの?」 |
朱音 | :44-76 | 「そうとも。それに、誰かの出来ない事を補うために、一族があるのだからな」 |
彩登 | :44-77 | 「ああ、そっか」 |
各務 | :44-78 | 「(くすくす)確かに正論だが、物は言いよう、だねえ、お頭」 |
朱音 | :44-79 | 「(楽しそうに)そうか? これでも、もっともっとみなに頼りたくてたまらないのだがな」 |
珠菜 | :44-80 | 「まあ、これ以上頼られては、わたくしたちの 微弱な体力が保ちませんわよ(笑う)」 |
朱音 | :44-81 | 「(楽しそうに笑う)」 |
瀬比呂 | :44-82 | 「ねえ彩登、今度その飾り紐 僕にも貸してよ」 |
彩登 | :44-83 | 「駄目だよお、これは彩登の大事なお守りなんだもーん!」 |
瀬比呂 | :44-84 | 「ちぇーっ!」 |
朱音 | :44-85 | 「(笑って)そう不貞腐れるな、瀬比呂。 お前の働きも、私はちゃんと心得ているさ」 |
瀬比呂 | :44-86 | 「本当?」 |
朱音 | :44-87 | 「ああ。…ただ」 |
瀬比呂 | :44-88 | 「ただ…な、なあに?」 |
朱音 | :44-89 | 「(真面目な顔で)その組紐はな、一つ作るのに丸二日かかるという、 実に恐ろしい代物なんだ」 |
千波流 各務 珠菜 羽霧 夜紫乃 伊織 睦月 瀬比呂 彩登 |
:44-90 _役名 |
「(噴出す)」 |
亜夏刃 | :44-91 | 「………それは難物だな」 |
(回想シーンにて、エコーから/後ろで、戦の効果音がF.IN) | ||
彩登 | :44-92 | 「(M)…どうしよう…どうしよう…あ、彩登…」 |
(エコー/後ろで、戦の効果音) | ||
彩登 | :44-93 | 「(M)彩登…っ、……怖いよう…っ!!!」 |
瀬比呂 | :44-94 | 「―――彩登!!」 |
彩登 | :44-95 | 「!!」 |
瀬比呂 | :44-96 | 「―――彩登! 彩登!! 大丈夫!?」 |
彩登 | :44-97 | 「せ、瀬比呂…!」 |
瀬比呂 | :44-98 | 「彩登は僕の後ろにいれば良いよ! 絶対離れちゃ駄目だからね!」 |
彩登 | :44-99 | 「……。…うんっ!」 |
(エコー/後ろで、戦の効果音F.O) | ||
彩登 | :44-100 | 「―――うん! よぉおし、決めた!」 |
(ここまで追加シーン) | ||
(別の場所にて:彩登が息を切らせ、走ってくる) | ||
彩登 | :45 | 「瀬比呂〜」 |
瀬比呂 | :46 | 「彩登、どうしたの? 今日は遅かったじゃない。 僕、一人で千波流と修練してたんだよ?」 |
彩登 | :47 | 「ごめん。ずっと、考えてて」 |
瀬比呂 | :48 | 「考え事?」 |
彩登 | :49 | 「うん。あげちゃうか、どうするか…」 |
瀬比呂 | :50 | 「???」 |
彩登 | :51 | 「あのね、そのね…。…瀬比呂…これ、あげる!!」 |
瀬比呂 | :52 | 「え? …この飾り紐、朱音さまからもらったものじゃないの? 彩登のお守りだよね」 |
彩登 | :53 | 「うん。でも、あげるって決めたの!」 |
瀬比呂 | :54 | 「あ…ありがとう…! けど、ホントにもらって良いの? これ… すっごく大事な物だったんじゃないの?」 |
彩登 | :55 | 「うん、すごく大事! 彩登の一番の宝物だもん。 でも、この前の初めての戦で、瀬比呂が彩登をいっぱい助けてくれたでしょ? だから…そのお礼なの! どうしたら瀬比呂が喜んでくれるかなーって ずっとずうっと考えて、これにしたの!」 |
瀬比呂 | :56 | 「!(嬉しい!!) ありがとー! 絶対絶対大事にするよ!!」 |
千波流 | :57 | 「彩登のその気持ちはたいしたモンだな! 瀬比呂も、ずいぶんたくましくなったもんだ!」 |
瀬比呂 | :58 | 「もう一人前だよ!」 |
千波流 | :59 | 「(楽しそうに笑って)そうだな! 頼りにしてるぞ!」 |
瀬比呂 | :60 | 「うん!」 |
彩登 | :61 | 「彩登だって、負けないんだから!」 |
(SE:鳥の声) | ||
千波流 | :62 | 「なんだと?」 |
彩登 | :63 | 「千波流、どうしたの?」 |
千波流 | :64 | 「また戦だ。昨日あったばかりなのに…」 |
瀬比呂 | :65 | 「朱音さまも、まだ帰ってきてないよ?」 |
千波流 | :66 | 「とにかく、みんな集合だな」 |
(頭領の屋敷にて、書状を受け取り、目を通す各務) | ||
佐久弥 | :67 | 「―――各務」 |
各務 | :68 | 「…佐久弥、お前の予想が当たったようだえ。 嫌な知らせだ(今届いたばかりの書状を佐久弥に手渡す)」 |
佐久弥 | :69 | 「(書状を読み終えて)…マズイね。 こっちの思惑が 完全に露見したわけじゃ無さそうだけど… 向こうは、完全にコチラを『敵』と判断してしまったみたいだ」 |
各務 | :70 | 「この書状に書かれた『お頭の武器』…この作りからいって、 これは間違いなく、睦月が設計して作成したものだえ」 |
佐久弥 | :71 | 「…予定通り、お頭は行方知れずという事にする?」 |
各務 | :72 | 「主に拝謁に行った帰りにか? 無理があろう。…いきなり幸先が悪い…。どうする」 |
佐久弥 | :73 | 「迷っている暇はそれほど無いよ。無理矢理にでも事を進めないと… 私たちに待っているものは、全滅でしかなくなってしまう」 |
各務 | :74 | 「そうだな」 |
(SE:寿々加、刀を抜く) | ||
寿々加 | :75 | 「(押し殺したように)―――何の話だそれは」 |
各務 | :76 | 「!」 |
佐久弥 | :77 | 「寿々加…」 |
各務 | :78 | 「(苦笑)お前は本当に…厭味なくらいに気配を消すな…」 |
寿々加 | :79 | 「(厳しい声音で)話を逸らすな。お頭が行方知れずとか、全滅とか、 どういう事なんだ。…それから、こないだのもだ」 |
佐久弥 | :80 | 「この前?」 |
寿々加 | :81 | 「比奈伎の事は任せるだの、千波流の激昂だの…。 ―――お前たち、何を企んでる?」 |
各務 | :82 | 「企むとは…人聞きの悪い」 |
寿々加 | :83 | 「良いから答えろ。答えによっては―――」 |
各務 | :84 | 「よっては…どうする」 |
寿々加 | :85 | 「……例えお前たちでも、―――討つ」 |
各務 | :86 | 「……」 |
佐久弥 | :87 | 「…各務」 |
各務 | :88 | 「(ふう…)寿々加、おまえを敵には回したくないもの。仕方なかろうな」 |
佐久弥 | :89 | 「そうだね…遅かれ早かれ、協力者は欲しかった所だ。 …寿々加。まずは、刀を引いてくれないかな。危なくて話も出来ないよ」 |
寿々加 | :90 | 「油断出来ない」 |
佐久弥 | :91 | 「これだけは信じて。私たちは決して仲間を裏切ることはしない。 仲間のためにならないことはしない。 今は…少し、比奈伎たちを傷つけてしまうことになるかもしれないけれど、 でもそれはお頭を、そして一族を救うためだ」 |
寿々加 | :92 | 「…お頭を…俺たちを救うだと?」 |
佐久弥 | :93 | 「そうだ。お頭は…そして私たち一族は今、非常に危険な状態にいる。 私たちはどうしても…助け出したいんだ」 |
寿々加 | :94 | 「(やや疲れたように)………あのなあ」 |
佐久弥 | :95 | 「? なに?」 |
寿々加 | :96 | 「そういう事は、こそこそやらずにもっとはっきり言えっての!!!」 |
(朱音と各務と佐久弥が、何を考えていたか、寿々加に告白します) | ||
寿々加 | :97 | 「(思わず)―――直訴ォッ!?」 |
各務 | :98 | 「シッ! …声が大きい」 |
寿々加 | :99 | 「(慌てて口をふさぐ)!!! ……じ、直訴って…お頭が!?」 |
佐久弥 | :100 | 「そうだ」 |
寿々加 | :101 | 「けど…そんな事したら―――(書状を手渡され)なんだ、これ」 |
佐久弥 | :102 | 「今朝、この里に届いた。『主』からの書状だよ」 |
寿々加 | :103 | 「お頭しか読んじゃいけねえってやつだろ?」 |
佐久弥 | :104 | 「通常ではね。けれどこれは…『一族宛』になっている」 |
寿々加 | :105 | 「えーと…『―――オニビ ノ アタマ ウラギリ…。 シヨウ ブキ ノ ケイジョウ イカ ノ ゴトク… ―――イチゾク センメツセシ―――』………なんだ、これは―――」 |
各務 | :106 | 「そのままだよ。お頭は主に対し、猜疑の念を抱いていた。だから、裏切ったのだよ」 |
寿々加 | :107 | 「猜疑って…」 |
比奈伎 | :108 | 「―――お頭が、主に対して…掟を抜けたんだな?」 |
寿々加 | :109 | 「比奈伎!」 |
各務 | :110 | 「いつから聞いていたのだえ?」 |
比奈伎 | :111 | 「寿々加の大声からだ。…それで佐久弥、お前の考えは?」 |
佐久弥 | :112 | 「―――掟を抜ける」 |
比奈伎 | :113 | 「…わかった。それは、俺が引き受ける」 |
寿々加 | :114 | 「おい」 |
比奈伎 | :115 | 「憎まれ役は慣れているからな」 |
佐久弥 | :116 | 「…比奈伎。お頭から伝言がある。『一族を、よろしく頼む』と」 |
比奈伎 | :117 | 「(苦笑)…嫌な伝言だ」 |
寿々加 | :118 | 「(比奈伎が去るのを見送る)オイ…」 |
佐久弥 | :119 | 「(頷いて)大丈夫だよ」 |
各務 | :120 | 「あれをただの憎まれ役にせぬように…我らが援護する」 |
寿々加 | :121 | 「…期待してるぞ、ほんとに…」 |
(各務、佐久弥、寿々加。会合の間へ移動中の頭領の館の廊下にて) | ||
寿々加 | :122 | 「だいたい、掟、掟って言うけどよ… 俺が知ってるのは、そんな厳しいもんじゃないぞ? 数だって…」 |
佐久弥 | :123 | 「うん。…例えば、主のいる屋敷に、武器を警乗した状態で入る事も掟破り。 主を疑う事、これも、掟破りだね。その上での直訴も、もちろん――― これは、死罪に値する。それは知ってるだろう? …本当は、ほかにもいろいろあるんだよ。『無断で里を離れるべからず』 『戦での馬は使用するべからず』『年齢が達すれば戦いに出るべし』 『主の屋敷に入るは、頭領のみ』それから―――」 |
珠菜 | :124 | 「あらあら…一概に『掟』とは言っても…ほかにも、いろいろございましたのねえ」 |
寿々加 | :125 | 「…珠菜!!」 |
羽霧 | :126 | 「こりゃもっと、俺たちには聞かされてないモンもあるって事なんだろうな」 |
寿々加 | :127 | 「羽霧まで…いつの間に」 |
珠菜 | :128 | 「気配を消す事は、それこそ朝飯前でしてよ」 |
羽霧 | :129 | 「でなきゃ、斥候役なんてつとまらねえよ」 |
各務 | :130 | 「…珠菜。羽霧。これは、危険な事だよ―――知らぬフリが出来るかえ?」 |
佐久弥 | :131 | 「出来れば、聞こえなかったフリでも良いんだけれど」 |
珠菜 | :132 | 「あらあら、今更聞こえなかったフリなど、そんな器用なことは出来ませんわよ。 わたくしはともかく、羽霧は特に。ね」 |
羽霧 | :133 | 「聞いちまったもんは仕方ねえだろ」 |
佐久弥 | :134 | 「(息をつく)」 |
羽霧 | :135 | 「どうせ、いずれは全員に、大体の事は喋るつもりなんだろ」 |
佐久弥 | :136 | 「うん。…でも、私は、まだ早いと考えてるよ。もう少し、様子を見てからと」 |
羽霧 | :137 | 「何、悠長な事言ってんだ。さっき、すげえ顔した比奈伎とすれ違ったんだぞ。 アイツは、もう全部言う気なんだろう? 何を言うかは知らねえが、その結果一人になってもやる気だぞ。 それに、佐久弥や各務が言わなくても、 遅かれ早かれ、どうせ巻き込まれるに決まってるぜ」 |
珠菜 | :138 | 「ですわよねえ。それでしたら、こちら側でいますわ。 (指折り数える)佐久弥、各務、寿々加、比奈伎、羽霧、そしてわたくし… ちょうど半分ずつ。これなら、例えどなたかが暴れだしても、抑えられますわよ」 |
寿々加 | :139 | 「(少し笑って)協力者が増えたな」 |
佐久弥 | :140 | 「(溜息)…仕方ないか…。確かに、のんびりとはしていられないし、 それに―――私たちだけじゃ、千波流を抑えられないかもしれないしね」 |
各務 | :141 | 「(息をついて)確かに…」 |
佐久弥 | :142 | 「…では、二人にも手伝ってもらう事にするよ。…けれど、時間が無いから 今は詳しくは話せない。でももしかしたら…、真実を聞いたら、 協力したくなくなるかもしれないよ? …それでも?」 |
羽霧 | :143 | 「見縊るなよ」 |
珠菜 | :144 | 「ですわね。それに、時間が無いのでしょう? 何よりも、お頭の命がかかっている。もたもたと悩んでいる暇はありませんわよ」 |
佐久弥 | :145 | 「(少し考えて)…わかった。 じゃあ、私たちが今まで何をしていたのか、教えるよ―――」 |
(廊下を抜け、別の部屋にて落ち着いて話を続ける佐久弥) | ||
佐久弥 | :146 | 「―――実際に、私たちに聞かされている掟は数少ない。 みんながはっきりと知っているのは、『直訴をするべからず』『戦から逃れるべからず』 『頭領の命に従うべし』『掟に背くべからず』…重要なものはこれくらいだね。 これを破れば…つまり『抜ければ』、間違いなく、罰を与えられる。 けれど実際には、もっと数多くの掟が存在しているんだ。 …一族を、精神的に縛ってはいけないと、お頭が巧妙に隠してくれていたんだよ」 |
各務 | :147 | 「だが、そのお頭は…その中で最も罪深いとされる事をしたのだよ」 |
羽霧 | :148 | 「それが、直訴、か」 |
寿々加 | :149 | 「…で、お頭は…比奈伎にわざと、抜けさせようとしてたっていうのか?」 |
各務 | :150 | 「このまま主の下にいること自体が危険だと、お頭は判断したんだろうねえ」 |
珠菜 | :151 | 「何がなんだか…どうして急にこんなことに」 |
佐久弥 | :152 | 「急ではないよ。ずっと…それこそ、何年も前から調べてきたことだ」 |
寿々加 | :153 | 「俺らが知らなかっただけか…」 |
佐久弥 | :154 | 「そりゃあ。気づかれないように努力したもの」 |
寿々加 | :155 | 「何もこそこそやらせなくても、 お頭の指示としてやりゃ、誰も反対したりしないはずだろ」 |
各務 | :156 | 「お前…いきなり掟から抜けると言われて、あっさり承知出来るのかえ?」 |
寿々加 | :157 | 「う」 |
各務 | :158 | 「抜けるという事は、総てから命を狙われる事になる、ということだえ。 主の率いる者はもちろん、最悪…一族の者からも、な。 万一の場合意見が割れれば、一族の中で殺し合いになる可能性もあるのだよ。 幼き者らにそれが耐えられるかえ?」 |
珠菜 | :159 | 「…一族全員で抜ければ」 |
佐久弥 | :160 | 「…そうだね。それを考えている。そのための一番の理由は、『お頭の救出』なんだ。 それなら、きっとみんな納得してくれるだろうと思ってる。 だから、最初は、それを仕立て上げるつもりだったんだけれど… それが本当になってしまって」 |
羽霧 | :161 | 「どういうことだよ?」 |
佐久弥 | :162 | 「つまり、お頭は本当に捕らえられてしまって、行方知れずの状態なんだ。 私たちとすら、連絡の取れない状況なんだよ。 …主は、本当に危険なんだ。これは、あとでみんなに一緒に説明するけれど。 だからこそお頭は、自分は裏切り者だと思われても、 自分を理由に、比奈伎に一族を率いて抜けてもらおうと思っていたんだ。 私と各務は、ずっとその準備を任されていた。 ―――主が、お頭を『怪しんだ時』が、その時だと」 |
寿々加 | :163 | 「怪しんだ時?」 |
各務 | :164 | 「お頭は、心のどこかで、主を信じていたかったのだよ。 一度は、我があるじと決めた方だものな。 だから、こちらから行動はせずに、じっと…待っていた。主が、動くのを―――」 |
珠菜 | :165 | 「…佐久弥…各務。本当に、ご苦労様ですわ。影で、つらい思いをなさっていたのね」 |
羽霧 | :166 | 「水臭えなあ」 |
各務 | :167 | 「(苦笑)すまぬな」 |
寿々加 | :168 | 「まあ、もうしょうがねえけど―――」 |
(SE:遠くで、食器の割れる音) | ||
寿々加 | :169 | 「うわっ…比奈伎のヤツ、始めやがったな!!」 |
珠菜 | :170 | 「急ぎましょう」 |
羽霧 | :171 | 「おう!」 |