●鬼神楽●
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【〜鬼灯の章・第二話〜】 フォルダ名【ho-zuki02_役名】
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キャラ :番号
「セリフ」
謎の男 :01 「(E)…お前…に……しているよ…」
伊織 :02 「(M)あ……まただ…」
謎の男 :03 「(E)私は…お前を信じているよ…」
伊織 :04 「(M)戦いの続く毎日だったけど、それでも充分幸せだった。 幸せだと言えた。

…足元に目をやると、息絶えた人間が幾人も倒れていて、
その血が辺りの草花を、自分の掌すらを真っ赤に染め上げていて、
思わず心臓を掴まれるような痛みを 感じることもあったけど。
でも、アタシの中には真実があった。何よりも信じられるものがあった。
大好きな人の隣で戦える事。大事な仲間と共に戦える事。
そして、戦いの間の、みんなと一緒に過ごす暖かい時間が、好きだった。

みんなと修練をしながら、一つずつ 強くなっていく事。
笑いあって、泣きあって、何もかも分かち合える事。
みんなと一緒に、…ずっと一緒に生きていけること。

それだけを胸に抱いて、武器を振るう。
それだけを胸に潜めて、命を奪う。
正直、少し怖いけれど、みんなと一緒なら、ずっと頑張れる。

それが終われば、また、仲間と一緒にいられるから。そうすれば、笑い合えるから。
奪った命の一つ一つを、自分の命に重ねて、
これからもずっと、みんなと一緒に生きていけるから。

短いけれどこの幸せな空間が、
ずっと存在すると、…そう信じていた―――」
伊織 :05 「(タイトルコール)『鬼神楽』 〜鬼灯の章・第ニ話〜」
(SE:鳥など)
寿々加 :06 「(いきなり声をかける)おい、伊織!」
伊織 :07 「! …あ、寿々加…ごめーん、転寝しちゃってたよ!」
寿々加 :08 「(ちょっと笑って)良いよ、疲れてるんだろ。…またあの夢か?」
伊織 :09 「うん。…誰だかわからないけど、懐かしい声の…夢」
寿々加 :10 「その夢を見るようになったの、最近だっけか?」
伊織 :11 「最近…最近? どうだったろ、良く思い出せないや」
寿々加 :12 「ふーん…。…!(何かに気づく) おい!」
(SE:鳥の鳴き声に似た音)
伊織 :13 「……召集だ。ずいぶん早いね」
寿々加 :14 「またか…こないだからまだ三日だぞ」
伊織 :15 「それだけ、今が荒れてるってコトなんだけど」
寿々加 :16 「急ごう…ありゃ? あいつら、一人前だとか口では言っておきながら…
召集合図に気づかねえようじゃ、まだまだ先は長いよなあ」
伊織 :17 「ホントは、それはそれで面倒見れるから嬉しいくせにい」
寿々加 :18 「うるせー! …ま、ついでだ、あいつらも拾っていくか」
伊織 :19 「そだね!」
寿々加 :20 「おーい年少組〜召集だぞ!」
彩登
瀬比呂
:21_役名 ※「はーい!」
(会合の間にて。すでに全員揃っている所に、寿々加たちが駆け込む)
比奈伎 :22 「遅い!」
寿々加
伊織
瀬比呂
彩登
:23_役名 ※「悪い!」
※「ごめーん!」
※「すいません!」
※「すいません!」
朱音 :24 「良い。座れ」
寿々加
伊織
瀬比呂
彩登
:25_役名 ※「はい」
※「はい」
※「はい!」
※「はい!」
朱音 :26 「(ぐるりと見回して)―――そろったな。ご苦労」
千波流 :27 「お頭。戦況はどうなんですか」
朱音 :28 「ん…」
千波流 :29 「(苦々しく)…やはり、見通しは立たないんですね」
朱音 :30 「…集まってもらったのはほかでもない。その事なんだ。
先日の戦いで勝利は我らが主にもたらされたはずだった。
だが、敵もさるもの…そう簡単には落ちてはくれん。我らが尽力せねばならない。
…そこで今晩また、私は殿にお会いしてくる。それ以後、これからの針路を決める。
みんなもそのつもりで居てくれ。―――比奈伎、後は頼む」
比奈伎 :31 「はい」
朱音 :32 「千波流。高見だけでなく、補佐も頼む」
千波流 :33 「わかりました」
朱音 :34 「各務は、今回は同行してくれ」
各務 :35 「承知」
朱音 :36 「―――私が帰らずとも、急ぎ、戦、ということになるかもしれない。
みな、準備を怠らないように。睦月、亜夏刃、武器の調整・調達を急いでくれ」
睦月 :37 「はい!」
亜夏刃 :38 「ああ」
朱音 :39 「その際、羽霧、珠菜は斥候として動いてもらう事になる」
羽霧 :40 「わかった」
珠菜 :41 「おまかせを」
朱音 :42 「寿々加、夜紫乃はその後方で待機、いつでも斬り込めるように」
寿々加 :43 「了解!」
夜紫乃 :44 「腕が鳴るね」
朱音 :45 「伊織は後方の陣につけ。佐久弥には別に頼みたい事がある」
伊織 :46 「わかりました!」
佐久弥 :47 「はい」
朱音 :48 「瀬比呂、彩登」
瀬比呂
彩登
:49_役名 ※「は、はい!」
朱音 :50 「お前たちもみんなを手伝うように。頼むぞ」
瀬比呂
彩登
:51_役名 ※「はい!!」
朱音 :52 「ではひとまず解散してくれ。後ほど、再び召集をかける」
比奈伎 :53 「…待ってください」
朱音 :54 「何だ?」
比奈伎 :55 「……いや、何でもないです。後でまた」
朱音 :56 「―――そうか。…では、あとでな」
比奈伎 :57 「…はい」
(会合あと)
彩登 :58 「ふふふ…朱音さま、『頼むぞ』だって!」
瀬比呂 :59 「何言ってんの? あれは僕に言ったんだよ、絶対!」
彩登 :60 「えー!? 違うよ彩登にだよ!」
瀬比呂 :61 「絶対、僕だよー!」
伊織 :62 「どっちでも良いじゃん」
瀬比呂
彩登
:63_役名 ※「良くないー!」
伊織 :64 「はいはい。…さーってと。
ではお二人にしっかりばっちり、いろいろと手伝ってもらうからね!」
瀬比呂
彩登
:65_役名 ※「う、うん」
伊織 :66 「返事が小さ〜い!」
瀬比呂
彩登
:67_役名 ※「はい!!」
千波流 :68 「おっ、二人ともやけに良い返事だな!(笑う)」
寿々加 :69 「さーてと、俺らも年少組に負けないようにしっかりやりますか!」
夜紫乃 :70 「あ、じゃあ僕、睦月と亜夏刃に頼んである武器調整を手伝うよ」
睦月 :71 「はい、助かります」
羽霧 :72 「こりゃ、まずは全員腹ごしらえした方が良さそうだな。
珠菜、厨房行くぞ、手伝え」
珠菜 :73 「はいはい。全く、人使いが荒い人ですこと」
羽霧 :74 「あ、いっけね、山菜切らしてたんだ!
珠菜、ちょっと行ってきてくれ。ついでに肉もな」
珠菜 :75 「…わたくしの話、全然聞いてませんのね」
羽霧 :76 「どうせお前も食うだろーが」
珠菜 :77 「あら心外な。わたくしそんなに食べませんわよ」
羽霧 :78 「一人頭、飯一杯の煮干一匹で良いなら良いけどよ」
珠菜 :79 「………」
伊織 :80 「珠菜ぁ。煮干はきついよ、煮干は」
千波流 :81 「…珠菜。ここは折れてくれ。俺らも手が空いたら手伝うから、な」
珠菜 :82 「(溜息)はいはい。しょうのないこと」
彩登 :83 「珠菜って、絶対いつもおっきなキノコとか見つけてきてくれるから大好き!
彩登、キノコ好きー!」
瀬比呂 :84 「あとあと、お肉も食べたい!
こないだ珠菜が捕まえた鳥さん、すっごく美味しかった!」
珠菜 :85 「(軽やかに笑って)年少組さんは、人を煽てるのがお上手ですわね。
では、ご期待に沿えるように頑張りますわ」
瀬比呂
彩登
:86_役名 ※「やったー!!」
亜夏刃 :87 「珠菜。自分が手伝うか?」
珠菜 :88 「(一瞬、目を見開く)……珍しいこと。
ありがたいですけれど、亜夏刃は、武器の調整の方を優先なさって?」
亜夏刃 :89 「睦月、どうだ?」
睦月 :90 「えっ?」
伊織 :91 「(こそっと脇をつつく)睦月!」
睦月 :92 「あっ、あ〜、えーと………こ、こっちは夜紫乃が手伝ってくれるから大丈夫です!」
夜紫乃 :93 「そうそう! だから、肉をたくさん頼むよ、亜夏刃!」
亜夏刃 :94 「…? わかった。尽力しよう。…珠菜、行くか」
珠菜 :95 「いつでも」
(SE:戸が閉まる)
伊織 :96 「(二人の後姿を見送って)ね、ね、あの二人、結構良い雰囲気だと思わない?」
寿々加 :97 「何だよ、そういう事なのか?」
千波流 :98 「何だお前、気づいてなかったのか?」
夜紫乃 :99 「いっその事、夫婦(めおと)になっちゃえば良いのにね」
(ここから追加シーン)
彩登 :99-1 「めおと? 『めおと』って、なあに? ねえ千波流、それって、なあに?」
千波流 :99-2 「へ? あー、めおとって言うのは、つまり…えー…
(ぽん、と肩に手を置いて)…寿々加、頼んだ」
寿々加 :99-3 「げっ! 卑怯者っ!」
彩登 :99-4 「ねぇねぇ寿々加、『めおと』ってなあに?」
寿々加 :99-5 「…あー…、めおとって言うのはだな、つまり」
瀬比呂
彩登
:99-6 ※「(わくわく)つまり?」
寿々加 :99-7 「えー…、つまりぃ…(期待されすぎて何だか言いにくい)」
夜紫乃 :99-8 「(静かに)…一生を、共に添い遂げる相手になるって事かな」
寿々加 :99-9 「(ほっとして)そうそう、それそれ」
瀬比呂
彩登
:99-10 ※「へえ〜…!」
彩登 :99-11 「ねえねえ、彩登にもいつか、そういう相手が見つかるかな?」
千波流 :99-12 「彩登は器量良しだからな、『引く手数多(あまた)』ってヤツだぞきっと!」
彩登 :99-13 「そっかあ…! えへへ」
瀬比呂 :99-14 「そんなの、彩登にはまだ早いよー」
彩登 :99-15 「そんな事ないもん〜」
伊織 :99-16 「なぁに瀬比呂、ヤキモチ焼いてんの?(笑いながら)」
瀬比呂 :99-17 「ちっ、違うよぅっ 変な事言わないでよ伊織っ!」
彩登 :99-18 「瀬比呂、顔赤ーいっ! ね、ね、その『めおと』に、亜夏刃と珠菜がなるの?」
(ここまで追加シーン)
千波流 :100 「…いやー、でもなあ〜…亜夏刃はな……あれじゃどうだか…」
伊織 :101 「……。…だよ、ね…」
夜紫乃 :102 「にしても…(溜息)今回、伊織は後方かあ」
伊織 :103 「なーに夜紫乃、アタシがいないと寂しいワケ?」
夜紫乃 :104 「……」
伊織 :105 「…何ヨ」
夜紫乃 :106 「…実はそうなんだ、って言ったら、どうする?」
伊織 :107 「ばーか! 何言ってんの!(殴る・全く本気にしてません…)」
夜紫乃 :108 「いってー!! 伊織、今 本気で殴ったろ!! 信じられない馬鹿力!!」
伊織 :109 「馬鹿とは何よ、馬鹿とは!!
つまんない冗談言ってる暇があったら修練あるのみ!」
夜紫乃 :110 「へいへい〜」
寿々加 :111 「なんだよ、やけに不満そうじゃねえか」
伊織 :112 「ねえ」
夜紫乃 :113 「だってさあ。寿々加と二人だけだと、疲れるんだよね、
後先考えないで突っ走るからさあ。
伊織がいてくれると、止められるんだけどなあ」
伊織 :114 「アタシは寿々加の手綱ぁ!?」
寿々加 :115 「手綱って事はないだろ! それじゃ俺が馬だ!」
千波流 :116 「(大笑い)これぞ『言いえて妙』、というヤツだな!」
伊織
寿々加
:117_役名 ※「千波流、笑いすぎ!!」
※「千波流、笑いすぎだ!!」
(頭領の館の廊下にて)
比奈伎 :118 「―――佐久弥」
佐久弥 :119 「うん? …どうしたの、比奈伎。怖い顔」
比奈伎 :120 「お頭が、お前に頼む別件とは何だ」
佐久弥 :121 「さあ? 私も詳しくは聞いていないよ」
比奈伎 :122 「(小さな溜息)…そうか」
佐久弥 :123 「比奈伎。―――お頭を、信じて」
比奈伎 :124 「…言われなくても分かってる」
佐久弥 :125 「…不安になってるの?」
比奈伎 :126 「そういうワケじゃない。…呼び止めて悪かったな」
佐久弥 :127 「良いよ。…比奈伎、大丈夫だから」
比奈伎 :128 「? ああ」
佐久弥 :129 「(去っていく後姿に)大丈夫。…きっと、大丈夫にしてみせるから―――」
(夜。各務が様子を見に武器庫に来ると、睦月が一人で調整をしている)
各務 :130 「どれ、調整は総て終わったのかえ?」
睦月 :131 「あ、はい! …これでどうですか?」
各務 :132 「(武器を触って)良いようだね。相変わらず、睦月は良い仕事をするな」
睦月 :133 「ありがとう、各務!」
各務 :134 「さて、あちらで賄いさんが首を長くして待っておるよ。早く行っておやり」
睦月 :135 「えっ…やだ、もうこんなに暗いの!?」
各務 :136 「我らのために頑張ってくれるのはありがたいが、決して無理はせぬようにな」
睦月 :137 「はい、…でも大丈夫! アタシ、丈夫さだけが取り柄だし!」
各務 :138 「そうか」
睦月 :139 「じゃあ、とりあえず行ってきます」
各務 :140 「ああ」
(睦月走ってきて、みんなが食堂にしている小屋の引き戸を開ける)
羽霧 :141 「―――遅いんだよ睦月!!」
睦月 :142 「は、羽霧、すいません〜!」
羽霧 :143 「ホラ! もうすっかり冷めちまったぞ?(と言いつつ、暖めてます)」
睦月 :144 「わあ、青菜のおひたしだ! 嬉しい〜! いただきます!」
羽霧 :145 「おう。あ、こら! 野菜だけじゃなくて魚も食えよ」
睦月 :146 「はーい」
羽霧 :147 「早く食べないと来ちまうぞ」
睦月 :148 「え?」
羽霧 :149 「―――ホーラ、来た」
(羽霧がそう言い終るやいなや、だんだん近づいてくる寿々加、夜紫乃、千波流の声)
寿々加 :150 「腹減ったぞー!!」
夜紫乃 :151 「羽霧〜! なんか夜食ある〜?」
千波流 :152 「それよりまず水だ水!」
(食堂に入ってくるなり、三人は卓につく。食事中の睦月に気づく千波流)
千波流 :153 「ん? なんだ睦月、今から食事か?」
睦月 :154 「あ、はい」
珠菜 :155 「あらあら…みなさま、今の今まで打ち合いですの?」
亜夏刃 :156 「珠菜、悪いが、自分にも水をくれるか」
珠菜 :157 「はいはい。…今夜はいつもよりずいぶん遅いですわよね」
寿々加 :158 「ああ、夜紫乃が全然・退かねーのが原因!」
夜紫乃 :159 「悪かったね!
負けっぱなしっていうのが気に入らなかったんだから、しょうがないだろ!」
羽霧 :160 「勝てなかったのか」
夜紫乃 :161 「もうボロ負け! 悔しいけど、勝てないや〜」
寿々加 :162 「ヘヘ、俺に勝てるのは千波流とお頭ぐらいなモンだぜ!」
千波流 :163 「煽てるなよ。それに…、多分、佐久弥も勝つな」
寿々加 :164 「アイツは別格だろ!」
亜夏刃 :165 「比奈伎とも良い勝負じゃないか?」
寿々加 :166 「アイツは…異常に粘る上に、頭脳戦で来るからな〜…」
夜紫乃 :167 「頭を使わない寿々加には、かなり相性悪いんだよね」
寿々加 :168 「そうそう…って、一言多いぞ夜紫乃!」
亜夏刃 :169 「自分も、力では負けない自信があるんだがな」
夜紫乃 :170 「亜夏刃も良いセン行くんだけどね、やっぱり寿々加のあの速さは大きいよな〜」
千波流 :171 「加えて、天性の勘というのか…かわすのが抜群に上手い」
夜紫乃 :172 「そうそう」
寿々加 :173 「武器を交える事なく、勝利を収める…これが鉄則ってヤツだぜ」
夜紫乃 :174 「あのかわし方は限りなく本能に近い…動物並みだよね」
寿々加 :175 「てめえ!」
珠菜 :176 「さあ、みなさん、そろそろお静かに…
奥で伊織と年少組さんたちが寝息を立てはじめましたわ」
寿々加 :177 「おっと…」
亜夏刃 :178 「…今日も朝一だったな」
珠菜 :179 「昨日もですわよ」
千波流 :180 「伊織も付き合って、朝からずっと修練してたらしいぞ」
羽霧 :181 「(嬉しそうに小さく笑って)お頭に『頼む』と言われたことが、余程嬉しかったんだろ」
夜紫乃 :182 「結構、頑張るよなあ」
睦月 :183 「なんか…負けられないなって思っちゃいますね」
千波流
寿々加
夜紫乃
:184_役名 ※「だな」
※「だな!」
※「だね!」
(食堂の引き戸が開いて比奈伎が現れる)
比奈伎 :185 「…なんだ、みんなこんなに遅くまで修練していたのか」
羽霧 :186 「比奈伎。おまえも何か食うか?」
比奈伎 :187 「いや、とりあえず今は良い。何か飲めるか?」
羽霧 :188 「じゃ、お茶でも淹れるか」
珠菜 :189 「お湯は沸かしてありますわよ」
羽霧 :190 「夜紫乃、湯飲み用意してくれ」
夜紫乃 :191 「はいよー」
(みんなにお茶を配る羽霧と珠菜。みんなで食後の一服)
寿々加 :192 「なあなあ比奈伎、今日の打ち合い、誰が勝ったか聞きたいか?」
比奈伎 :193 「聞かなくても結果は分かってる。
途中までお前が勝ってたが、最終的には千波流が勝ったんだろ」
寿々加 :194 「ちぇ、可愛くねえなぁ」
珠菜 :195 「(小さく笑って)でも当たっていますわよね」
夜紫乃 :196 「じゃ、僕らの結果はどう見る?」
比奈伎 :197 「(少し考えて)…技で夜紫乃の勝ち、力では亜夏刃の勝ち。
最終的には、粘り強さと元来の持久力で亜夏刃の勝ち…というところか?」
夜紫乃 :198 「当たり〜。基本的に、僕自身が主になる戦い方って、どうも苦手なんだよね」
羽霧 :199 「それはお前の課題だな」
夜紫乃 :200 「うん」
亜夏刃 :201 「そのかわり、寿々加と夜紫乃 対 自分と千波流では、どうしても勝てない」
千波流 :202 「亜夏刃と夜紫乃 対 俺と寿々加だと、今度はそっちに勝たせてもらえないぞ?」
羽霧 :203 「そういや…こないだは俺と珠菜、伊織と夜紫乃で五分五分だったんだぜ」
珠菜 :204 「ああ…あれは本当に苦労させられましたわ。
全く、切り込み隊の名が泣きますわよね」
夜紫乃 :205 「あれ? そうだっけ?」
比奈伎 :206 「お前は人を生かす技に長けているからな。
一対一では分が悪くても、二対二になれば決して引けは取らないさ。
夜紫乃、これからも上手く寿々加たちを助力してやってくれ」
夜紫乃 :207 「比奈伎にそんな事言われると、自信持っちゃうよ」
寿々加 :208 「エラく素直じゃねえか! 俺が言っても聞かないくせに」
亜夏刃 :209 「寿々加と比奈伎では言葉の重みが違う…ということか」
夜紫乃 :210 「うわ…っ亜夏刃、さらっとめちゃくちゃひどい事言ってない?」
夜紫乃
亜夏刃
珠菜
羽霧
睦月
千波流
寿々加
:211_役名 ※「(思わず笑いをこぼす)」
比奈伎 :212 「…そういや(そういえば)、各務は(来て)いないのか?」
睦月 :213 「さっき、武器庫に様子を見に来てくれましたよ」
比奈伎 :214 「そうか。…お頭は? (見なかったか?)」
夜紫乃 :215 「さあ? そー言えば、見てないや」
千波流 :216 「確か…昼間、殿からのお呼びがかかったらしいと聞いたが」
比奈伎 :217 「またか? …短い期間に何度も呼ぶなんて『わがまま』ぶりもずいぶんだな」
千波流 :218 「それだけ、こっちの軍勢の勢いが危ういって事なんだろう」
睦月 :219 「近いうちにまた戦がありそうですね」
珠菜 :220 「それではみなさま、明日に備えて今日はもうお休みなさいまし」
(頭領の屋敷にて、戸を叩く比奈伎)
朱音 :221 「―――比奈伎か」
比奈伎 :222 「お頭。今、良いか?」
(朱音が自ら近づいてきて戸をあけ、比奈伎を迎え入れる)
朱音 :223 「どうした、こんな遅くに」
比奈伎 :224 「帰ってきてたんだな―――また呼び出しか」
朱音 :225 「(苦笑)呼び出しだなんて言い方はよせ。仮にも主を相手に」
比奈伎 :226 「下に戦わせておいて、顔を見せないヤツに 敬意を払う義理はない」
朱音 :227 「比奈伎。私の主だぞ」
比奈伎 :228 「……悪かった」
朱音 :229 「(ちょっと笑って)しょうのないやつだな」
(しばし黙る二人。ゆらゆら蝋燭の火に揺れる影。静かな夜に、虫の音などが聞こえてくる。
書状を読んでいる朱音の背中に、ぽつりと話しかける比奈伎)
比奈伎 :230 「―――お頭」
朱音 :231 「ん?」
比奈伎 :232 「…主は…殿はどんな…どのような様子なんだ」
朱音 :233 「(書状から目を離し)……決して思わしくはない。
私に『頼む』とお声をかけては下さったが…
まだお若いのにな。以前の覇気は、ちらとも感じられない状態だ…」
比奈伎 :234 「…そんなに悪いのか…」
朱音 :235 「………比奈伎」
比奈伎 :236 「お前の考えてる事は分かっている。だが、俺はまだごめんだぞ」
朱音 :237 「…ダメか?」
比奈伎 :238 「当たり前だ。各務に頼め」
朱音 :239 「ふふ、お前ならそう言うだろうと思ってな、とっくに打診してあるさ」
比奈伎 :240 「どうだったんだ?」
朱音 :241 「言わなくても分かるだろう?」
比奈伎 :242 「…振られたのか」
朱音 :243 「見事にな」
比奈伎 :244 「…当たり前だ。だれも、お前の代わりになんかなりたくない」
朱音 :245 「…比奈伎。それでも、掟だ」
比奈伎 :246 「わかってる。…わかっている」
朱音 :247 「今の世の、我が主―――斉彬様ご崩御の折には、
現・頭領である私も共に命を絶つ。
一族は、主が代替わりしようとも、変わらず尽くし戦うものだが…
頭領は、そのときの主だけのものだからな」
比奈伎 :248 「(諌めるように)朱音」
朱音 :249 「まだ、みんなには言うなよ。
―――だが、私の主はもう長くは無い。これは現実なんだ。
主の時代が終わると共に私も終わらねばならない。
そうなる前に、きちんと後の整理をしておきたいのさ」
比奈伎 :250 「…」
朱音 :251 「比奈伎。…私のあとは、…お前に頼むのだと、ずっと決めていたんだ」
比奈伎 :252 「俺は……嫌だ。どうしてもというなら、千波流を選んでくれ」
朱音 :253 「あれは良いやつだが、上に立てる男じゃない」
比奈伎 :254 「じゃあ寿々加を」
朱音 :255 「お前がそれを言うか?
悪くは無いがあれも優しすぎる。この戦乱の世では上には立てまい。
もう一つ付け加えるならば…各務もアレで弱いところのある女だ。
その点、弱さはあるが、お前はそれを隠せる。…頭領向きだよ」
比奈伎 :256 「…上手く隠せたからって、弱くないとは限らない」
朱音 :257 「そりゃそうさ。…私だってそうだ」
比奈伎 :258 「朱音」
朱音 :259 「…もう時間はあまり無いんだ。―――ごめんな、ヒナ」
比奈伎 :260 「……そう呼ぶなよ……」
朱音 :261 「どちらにしろ…決意しなくてはならない日が来る。―――近いうちにな」

【第二話終わり・第三話に続く】